軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

灰色の七星

ひとつだけ当たり前のことを言っておく。ここは草原だ。あちこちに木が生えているのだが、森の中ではないため、枝などそう簡単に落ちているわけない。

枝を拾いに行くと言ったのは、あくまでハルとふたりきりで話すためであって、実際に木の枝を集めるのが目的ではない。

いつまでもキャロとステラをふたりきりにしておくのもいけないので、先にハルを帰らせ、俺はスキル“引きこもり”により、マイワールドへと移動した。

引きこもりと言いながらも、女神は来るし、お手伝いさんまでできてしまうし、プライベート空間ではあるけれど引きこもりとは程遠いよなと思いながら、俺が見たのは、遠くに広がる森だった。

そして振り返ると、ログハウスが建設途中だった。

ログハウスというには、どことなくクリーム色の材木を使っているが。

「凄いな……」

「お帰りなさいませ、マスター」

何が凄いって、ピオニアの右腕がのこぎりの形になっていたことにまず驚いた。

「 付属装置(アタッチメント) なのか?」

「 変身(メタモルフォーゼ) です」

ピオニアがそう言うと、彼女ののこぎりの腕が、今度はハンマーの形に、さらには剣の形になった。

凄いな、これなら前衛でも戦えそうだ。

「変形できるのは手だけなのか?」

「いえ、そんなことはありません」

そう言うと、ピオニアの体全体が変化していく。

そして、その姿が……ハルそっくりになった。

「このように自由自在です。残念ながら着ている服までは変化できませんが」

そんな! 声まで変わって!?

って、このネタを知っている平成生まれは何人くらいいるんだろうか? 俺もリアルタイムでは知らないし。

それはともかく……うわぁ……胸も大きくなっている。

「もっとも、バランスが悪くなるので、この形状のほうが楽なのですが」

そう言って、ピオニアは元の姿に戻った。まぁ、ピオニアはこのほうが似合ってる。うん。

「そうだ、ピオニア、家を作っているのなら、廃材はあるか?」

「廃材なら、果物と一緒に家の裏に置いてあります」

「果物? トマトじゃなくて?」

「はい。マスターハルワタート、マスターキャロルから頂いた木の苗のうち、木材として使えるのがパインとオークだけでした。オークの木は床材として使わせてもらっています。残りの木の苗は、リンゴや葡萄、パンの木などでしたので、それらは収穫して保存しています。マスターの許可がいただけたら、葡萄からワインを作りますが、いかがいたしましょう?」

「そうだな、ある程度は持っていきたいけど、食べきれる量じゃないんだろ? 残った分でワインを作ってくれ」

「かしこまりました、マスター。では、MPを頂いてもよろしいでしょうか? かなりのMPを使いましたので」

「あぁ、いいぞ」

俺はそう言って、上着を脱いで背中をピオニアに向けた。

そして、ピオニアのマッサージを受けながら、MPが抜けていくのを感じた。

「そういえば、昨日はあまりMPを渡せなかったけど、よくあれだけの木を増やせたな。よく見たら川まで流れてるじゃないか」

「MPに関しては、マスターマリーナから援助をいただきました」

「え?」

俺はピオニアの指差す方角を見ると、見慣れた三角帽子が。

あぁ、マリーナが倒れている。

マスターマリーナと呼ばれて調子に乗ったんだろうな。

MP消費を終えたので、上着を着て、とりあえずマリーナの元へ歩いていき、彼女の首に手を当ててみる。

寝ているだけのようだ。呼吸も安定しているし、脈もある。

典型的なMP切れの症状だ。

「ピオニア、今度からマリーナがいいと言っても、倒れるほどMPを吸うのはやめてやってくれ」

「了解しました、マスター」

マリーナはこのまま寝かせておくか。

「マリーナには、明日の夕方には迎えに来るからって伝えておいてくれ」

「了解しました。それまでにマスターの拠点の設置を完了させておきます」

「頼んだ」

俺はそう言って、廃材を持って、マイワールドを出た。

アザワルドに戻った俺は、歩いて皆の元に戻り、四人で魚を焼いて食べた。

ステラが焼いてくれた魚は結構おいしかった。

一緒に同行する女性メンバーのうち、はじめてまともな料理を作ってくれたのがケット・シーのステラだというのは、ちょいと寂しい話だ。

※※※

馬車の荷台で寝ているハルとキャロとステラ。

焚き火の番をしながら、俺は満天の星空を見上げていた。

交代の時間は少し過ぎているが、眠気はないのでもう少し起きていよう。

そう思った……その時。

俺のスキル――気配察知が何者かの気配を感じ取った。

しかも、その数、ひとつやふたつではない。

こちらを囲むように近付いてくる統率のとれた動きに、野盗の類だろうと思った。

「ご主人様!」

「ハル、起きたのか」

さすがだな。相手は風下から近付いてきているから、匂いとかもわからないだろうし、気配探知のスキルも持っていないはずなのに、野生の勘で感じ取ったのか。

……おっと、ハルは野生動物じゃない。心の中でのこととはいえ失言だ。

「ハル、キャロとステラを起こしてくれ! 盗賊だ!」

そう叫んだ、その時、

「おいおい、ヒューム。我等を盗賊にゃんかと一緒にしてもらったら困るニャ!」

「おとにゃしくそこにいるステラをこちらに渡すニャ」

「あと、 魚(さかにゃ) の匂いもするニャ。 魚(さかにゃ) もよこすニャ!」

「マタタビもよこすニャ!」

「お金はいらないから食い物よこすニャ!」

「あとステラもよこすニャ!」

そう言って俺達を扇状に囲むように現れたのは、六匹の灰色の猫……いや、ケット・シーだった。

全員が短剣サイズの剣を持っていて武装している。

「おい、ステラ、あいつらお前の友達か?」

「ま……まさか、灰色のにゃにゃせいが来るにゃんて……王の身ににゃにか……」

ステラ、何かポーズを付けてカッコいいことを言っているんだけど。

えっと、本当になにこれ?

ただの特別なマタタビ採取の仕事のはずなのに、やはりというか厄介な仕事に巻き込まれた気がしてならなかった。

でも、その前にひとつだけ聞いておく。

「なんで七星なのに、六匹しかいないんだ?」