作品タイトル不明
エピローグ
迷宮から脱出した俺は、そこで鈴木と別れた。
疲れているであろう、フリオ、スッチーノ、ミルキーの三人をポチに乗せようと思ったのだが、スッチーノが背負った金羊毛が邪魔になるため、スッチーノは徒歩で移動、代わりにエリーズが乗るようになったのだが、エリーズがジョフレと別れるのは嫌だと言い出し、結局はミルキーとフリオだけを乗せて帰って行った。
先頭をジョフレとエリーズを乗せたケンタウロスがのんびり歩き、その後ろを、俺達とスッチーノが歩く。
キャロルとマリーナから、空を覆い隠すほどに大きな竜王の話を聞かされ、それはぜひ見てみたかったと思った。
そして、一番後ろを歩くスッチーノに声をかける。
怪我はないとはいえ、数日に渡る迷宮内での野宿の疲れ、そして背負う金羊毛の重量を考えると遅れるのは当然だ。俺が半分持とうかと言ったのだが、スッチーノは断固として拒否した。
ジョフレのアイテムバッグに入れて貰い、ポチに乗って帰れとも言ったんだが、彼は自分で持って帰ると言って聞かなかった。
「生憎と、俺はフリオほど他人を信じることができない性分でね。でも、助けてもらったことには礼をいうよ」
「その後に、礼を言うだけなら無料だからな、って続くのか?」
「はは、まぁ、国に戻れたら、宿代くらいは奢ってやるよ。俺の実家は宿屋だからな」
実家が宿屋だったら、それは奢りではなく部屋を貸してやるってだけじゃないか?
そう言えば、昨日、宿屋の女将さんと酒場のマスターが、息子が帰ってこないって言っていたが、もしかしてその息子がスッチーノだったのか?
だとしたら、宿代はもう先に払っているんだが。
払った分返してくれっていうのも言いにくいよな。
金には困ってないからいいんだけどさ。
スッチーノには、重くなったらいつでも運んでやると言い、俺はハル達の元に戻った。
「ご主人様、先ほどは――」
ハルが何度目かになる頭を下げてきた。
「いいって、気にするな。そりゃ、敬愛する女神様に会えたんだ。気絶くらいするさ。ところで、ハルは何のスキルを貰ったんだ? アイテムじゃなかったからスキルだったんだろ?」
「私がいただいたスキルは三本槍です。槍で攻撃をするとき、二本の槍の分身を生み出す、女神様からいただく槍技のなかでは有名なスキルです。槍でなくても剣で突く時にも使えますので、セトランス様には感謝しないといけません」
ハルはそう言うと、近くに生えていた背の低い木に向かって、愛剣・火竜の牙剣を突く。
すると、剣が三本に分身して見えた。
だが、ただの残像でないことは、木に残った三つの焦げ跡を見ればわかる。
「たしかに便利な技だな」
「イチノ様は何をいただいたのですか?」
「タワシであろう」
キャロの質問に、マリーナが被せた。
タワシに愛されているのはお前だろうが。
「生憎、タワシはスッチーノとフリオに当たったよ。俺は生活魔法だった」
でも、この生活魔法って正直微妙なんだよな。
そりゃ、どちらも役に立つ魔法であることには違いない。
特に、 浄化(クリーン) は風呂があまり普及していないこの世界ではとても役に立っている。
だが、浄化もそうだが、どうも 沈黙の部屋(サイレントルーム) とかの利用方法がな。
夜の生活魔法とか、それこそ性活魔法とか、そういう魔法であるような気がする。
俺の使い方が悪いだけなんだろうが。
「ということは、イチノ様、生活魔法Ⅲになられたんですね。それなら、今後は料理が楽になりますね」
「え? 料理?」
「はい、生活魔法Ⅲは料理のための魔法です」
料理か。
キャロの言葉に、俺は胸を撫で下ろした。
精力回復とかそういう魔法が出てきたらどうしようかと思ったよ。
浄化(クリーン) では衣服の洗濯、 沈黙の部屋(サイレントルーム) では住居の防音、そして今回の料理スキル。つまり、衣食住を充実させるための魔法というわけか。
なかなかよくできている。
「マジックリストオープン」
俺は安心してどんな魔法か、この目で見ようと思い、魔法のリストを開いた。
そして――
「生活魔法Ⅲで覚えるスキルは――」
キャロの説明の中、俺はその魔法を見つけた。
『オイルクリエイト』
その名前の意味を考える間もなく、キャロが答えを告げた。
「魔法によって油を作り出す魔法です」
「油か。揚げ物をするのには便利そうだな」
マリーナが笑うと、キャロは頷いて説明を続けた。
「料理や燃料にもなり、熟練度が上がれば多くの種類の油が……イチノ様、どうしました?」
わなわなと震える俺に気付き、キャロが訊ねた。
だが、俺は――やっぱりその魔法の想定外の、もしかしたら想定内の魔法の使い方を想像し――
「やっぱり性活魔法じゃねぇかぁぁぁぁぁっ!」
思わず絶叫していた。
キャロ達は「生活魔法であっていますよ?」という顔をしていたが、俺はとにかくこの魔法について物申したい気持ちになった。
ここまで来ればR-15指定は確実だ。
ミリがいなくて本当によかった。
と、俺と深い絆の持ち主の中で、唯一15歳未満である妹の、今の俺の姿を見ればするであろう呆れ顔を思い浮かべた。
※※※
一方そのころ。
フロアランスとベラスラの間にある、大樹に偽装された部屋の中――
「戻ってきたわ……アザワルドに」
ミリが立っていた。
「おにい、待っていてね」