軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

走れイチノ

「グランドクロス!」

鈴木が一本の剣で高速に十字に斬りつける。

すると、衝撃が前方に飛び、通路を埋め尽くした魔物を一掃する。

その威力は二刀流によるスラッシュの比ではない。

「それが聖騎士のスキルなのか? 凄い威力だな」

「あぁ、MPの消費もスラッシュと比べものにならないくらい消費するけどね。シュレイルから貰ったこの護符がなければ一発撃っただけで倒れるほどだよ。聖騎士はMPがそれほど高くないからね」

そういって、鈴木は六芒星が描かれた、神社に売っていそうな紫色のお守りを取り出した。

「……護符か」

「どういう効果なんだ?」

「この護符を持っていると、シュレイルとMPを共有できるんだよ」

MPの共有か。それは確かに便利そうだ。

俺とハルのMPを共有できたら、ハルももう少しスラッシュを撃てるようになるだろう。

「じゃあ、あまり使いすぎたら、あのロリっ娘に負担がかかるってわけか」

「ロリっ娘って……まぁ、否定はできないけど。でも、君と一緒にいたキャロルちゃんだっけ? シュレイルと仲良くなっていたけれど、あの子だってまだ幼いだろ?」

「……あぁ、幼く見えるが、あれでも17歳だからな」

「17!? もしかして、小人族? いや、小人族はもっと小さいか」

「 小人族(ミニヒュム) と 人間族(ヒューム) のハーフだよ」

「なるほど。それならあの見た目でその年齢は頷けるな」

鈴木は何やら思案を巡らせる。

……俺はその鈴木の目を見て、

「お前、もしかして合法ロリとか考えてるんじゃないだろうな? ハルもそうだがキャロに手を出したら怒るからな」

「だ、出さないよ。僕には大切な仲間が三人いるからね」

「大切な仲間にも手を出せないんだろ?」

「……それを言わないでくれ」

鈴木ががっくりと項垂れる。

こいつも憐れだな。

悪いが、俺はキャロの初めてもしっかり予約させてもらっているからな。

DTとは違うのだよ、DTとは。

「二人とも、遊んでないで早く進んでくれ! 後ろからも敵が来てるんだから」

スッチーノが悲鳴を上げる。

振り返ると、後ろからも敵が迫っていた。

かろうじてハルが食い止めている状態だ。

「ご主人様、大丈夫です。まだいけます」

「悪い、ハル! ミルキー、もう一度結界を頼む!」

「わかりました……」

ミルキーはどういうわけか満足気な表情で、結界用の札を取り出した。

ただ、もうあまり数が無いと言っていた。魔記者が作る札は一度作れば一年くらいは使えるのだが、作るのに時間がかかるのが難点であり、あまり数多く持ち運ぶことができないと聞かされた。

それにしても、何故だろう、さっきよりミルキーの鼻血がひどくなっている気がする。

なにかあったのか?

つい鈴木とふたりで雑談してしまったせいで後ろの状況を把握できていなかった。

「よし、できたぜ! 行くぞ、ケンタウロス!」

「行くよ、ケンタウロス!」

ジョフレが剣の鞘から糸でニンジンを垂らして、即席のケンタウロス誘導装置を完成させ――ケンタウロスに跨ると同時にそのまま発進させた。つまりは目の前に吊るされたニンジン目掛けてケンタウロスが走り出した。

ブレーキが壊れた車ほど怖いものはない。

なぜ、そんな危険なものに二人は乗ることができるのか。

「みんな、兄貴に続け!」

フリオが急いでジョフレとエリーズに続いた。

先程、鈴木が魔物を倒したにも関わらず、さらに溢れてきた魔物がこちらに迫ってきた。

その魔物をケンタウロスが跳ね飛ばしていく。

おいおい、ここにいる魔物はかなりの強さ、中級の迷宮で見た魔物と遜色のない、いや、それ以上の敵も混じっているのに。

ケンタウロスにレアメダルを食べさせたという話は聞いたが、いったいどれだけ強化してるんだよ。

それに……ジョフレの奴、器用すぎるだろ。剣の先が敵にぶつかりそうになるたびに見事に避け、できるだけ敵を跳ね飛ばすルートで走らせていた。

走り続けること二十分。疲れが出てきているミルキー、スッチーノ、フリオの三人が遅れないようにニンジンを操り、ぐるぐるとまわるケンタウロスは見ていて可愛いと思ってしまったが、普通に動物虐待なので、とりあえずその一本を食べさせた。

だが……それがいけなかった。

「やばい! 今のニンジンがラストの一本だぞ、エリーズ」

「え? じゃあもう残りのニンジンはないの?」

「そんな、こんなところでニンジンが切れるなんて」

「兄貴、ニンジンが無いと俺達どうなるんっすか!」

ジョフレ、エリーズ、フリオ、スッチーノが騒ぎ出した。

ニンジンが命綱の冒険って情けないような。

「あぁ、ニンジンの代わりになるかどうかはわからないがトマトなら……」

俺がそう言ってアイテムバッグから、俺の世界産のトマトを取り出した瞬間、ケンタウロスがこちらに向かって走り出し、

「え、うわぁぁぁぁっ!」

その勢いに、俺はトマトを投げ出す暇もなく、走って逃げるしかなかった。

それほどまでに、ケンタウロスの目が血走っていた

俺はそのまま敵の中へと入って行く。