軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

輸送

「これが新型ゴーレムか」

「どうやら新しい技術で作られており、とても性能が良かったそうですが……スイボク様が一度でまとめて破壊してしまったそうです」

「だろうねえ」

ノアに載せられた多くの残骸。

それを見てもパレットも正蔵も、特に思うところはなかった。

なにせ、スイボクが壊した、という時点で完全にかわいそうな兵器でしかない。

「そりゃあこんな大きさのゴーレムじゃあ、スイボクさんに勝てるわけないよな」

「そうですね……」

護衛としてノアに乗り込んでいる風の魔法使いたちも、法術使い達も、全員無言でうなづいていた。

そりゃあそうであろう、スイボクのデタラメさを知っている面々からすれば納得の結果である。

むしろ敵を憐れむぐらいであった。

「アニメやゲームで出てくるロボットなら……地球を壊せるぐらいのを引っ張ってこないとダメだな」

自分でも『惑星破壊クラス』ではないことは理解している正蔵である。

スイボクの最強さも娯楽作品の中ではそこまでではないはず、と想像して、しかし意外と食い込んでいくスイボクのスペックに絶句していた。

「まあいいか。これをドミノに届けて、ウンガイキョウに調べてもらってその情報を持ち帰るのが仕事だよね」

「はい、おそらく問題がないと思います。いくらオセオに革新的な技術があるとはいえ、この高度で飛ぶノアを襲うことは考えにくいです」

「どうだろうね〜〜」

雲の上を飛行するノアは、優雅な空の旅だった。

カプトの面々はよくノアを移動手段として利用しているのだが、何度利用しても空の旅の快適さには感服している。

速度こそ風や火の魔法に劣るが、休みなしで移動できることや一度に多くのものを輸送できる事、地形を完全に無視できることはどう考えても便利すぎた。

「……ショウゾウ。貴方は何か起きると思うのですか? いいえ、もちろんそれが一番ですが」

護送が任務である以上、周囲を警戒するのは正しい。

基本的には離陸と着陸の時こそが一番危険なのだが、道中も警戒するのならそちらのほうがいいに決まっている。

「そりゃあ起きるとは思ってるよ。そんなに都合よくはことは進まないさ」

論理的ではなく、直感的でもない。

ある種の幸運論や帳尻の話でしかない。

それでも、それなりの説得力があった。

「それに、俺が魔法を使えるのはこういう状況だけだからねえ。着陸したりしたら、俺に出来ることなんてないって」

空の旅の間こそ、自分が仕事の出来る時間である。

その認識は間違っていない、というか最初からそう命じられているので、当人としては指示通りに動いているだけなのかもしれない。

「……結局」

傷だらけの愚者は、物憂げに雲の彼方を見ていた。

自分がその気になれば、いくらでも破壊できるものを眺めている。

「このゴーレムを誰がどんな思いで作ったとしても」

争いに満ちた、この俗世を眺めていた。

「誰かを傷つけることに使うんだなあ」

誰かに必要とされて、誰かに感謝される人間になりたい。

そう思っていた自分は、戦う力を望んで戦うことしかできなくなっていた。

自分の浅ましさ、何も考えず選んだことを後悔していた。

「そうかもしれません」

「いやいや、別にこのゴーレムを作った奴が悪いっていうんじゃないよ。ただ、使うやつというか……」

戦争が好ましいというわけではないが、拉致というのはあまりにも卑劣だった。

相手がスイボクだったのでギャグになったが、相手が一般的な技術者であれば悲劇にしかならなかっただろう。

「有効に使うってのも、考えもんだよなあ」

「……貴方は、自分が利用されていると思っていますか?」

「何度も言うけどさ、俺が自分の考えで動くよりはマシだって」

スイボクの場合、他人へ迷惑をかけても宝貝やら蟠桃やら人参果やらで国家に賠償が出来る。

その気になることはないだろうが、本人が世のため人のために振舞おうと思えば、四千年の叡智によっていくらでも人助けが出来るのだろう。

戦うこと、殺すこと、壊すことしかできない自分たち切り札とは偉い違いである。

もちろん、右京はその限りではないと知っているのだが。

『だ、だ、ダヌアに会える〜!』

その一方で、空を飛ぶノアは上機嫌だった。

そのまま楽しそうに歌を歌っているぐらいである。

「盟友に会えるという事で、ノアは楽しそうですね」

『うん、ダヌアは友達なんだ!』

「ダヌアか……俺も楽しみだなあ」

味覚の記憶を共有し、あらゆる料理を再現できる機能を持った恵蔵ダヌア。

右京に会えるという事は彼女にも会えるという事であり、つまり昔懐かしい故郷の料理を味わえるという事だった。

一日で消えてしまうのが残念だが、それでも滞在している間は満腹になるまで食べ続けるつもりだった。

「ショウゾウは故郷の料理を久しぶりに食べられるという事で、とても楽しみなのですね。もし良ければ、カプトでも食べられるように手配しましょうか?」

「……それは無理じゃないかなあ。カップラーメンとか、添加物バリバリだと思うし」

『ダヌアは料理も得意だよ〜〜』

「材料が揃わないと思うんだけど……」

あんまりいい扱いを受けなかった人工添加物や保存料、着色料だが、この世界ではいかなる香辛料よりも貴重だった。

さすがのダヌアも、機能ではなく技術としては材料がないと再現できないだろう。

また、米や麦に関しても品種改良の関係で、そこまで再現できないだろうと思われる。

「……ん?」

地球のことを思い出しながら外を眺めていると、視界の隅でありえないものを見つけていた。

「おいおい……なんであんなものが、この世界にあるんだ?」

呆然と疑問を垂れ流しながらも、正蔵はオセオに地球人がいることを半ば確信していた。

ありえない物が数機、雲の切れ間からこちらへ接近してきているのだから。

「な、なんですか、あの凧のようなものは?!」

『人が乗ってて、飛んでる?!』

それを見つけたパレットもノアも、驚愕して叫んでいた。

そう、人を載せて飛ぶ機械が視界の先に存在していたのだ。

「ライトフライヤーだ……」

極めて原始的な動力付き飛行機。

骨組みと布の翼だけで構成された凧の様な機体が、プロペラではなく乗っている人間の風の魔法を推進力として飛んでいた。

自分でも学がないと理解している正蔵でも、さすがにライト兄弟ぐらいは知っている。

その偉人が作成した最初の飛行機のようなものが数機飛んでいることに感動さえ覚えていた。

その一方で、あまりにも直球で軍事利用されていることが悲しかった。

「銃も爆弾も積んでない感じだな……それなら」

遮蔽物のない空中だからこそ、比較的近くに見えるがかなり遠いとは理解できる。

散開を始めており、そうそう撃墜することができないだろうとも理解できる。

ただし、一般的な魔法使いに限るのだが。

「この程度の技術チートなら問題なくぶっつぶせるな」

一瞬で危機感は喪失していた。

この程度なら、問題なく破壊し尽くすことが出来るだろう。