軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヴァニエルの後悔(2)

下町のギルド酒場――ここは、訳ありが集う場所だ。店主のバルドは、額に深い傷を刻んだ大柄な男で、朝から晩まで一言も無駄にせず、従業員たちを容赦なく叱咤する。彼の口癖は「文句言う暇があれば働け!」。その厳しさは、酒場で働く誰もが痛感している。

そんな中、俺の妹であるリリアーネも給仕として働いている。彼女はかつて貴族令嬢としての輝きを放っていただけあって、見た目は立派で、瞬く間に酒場の人気者となった。しかし、人気が災いしてか、常連客たちからセクハラを受けたり、元々トップだった女給のリーダー格から嫉妬混じりの嫌がらせを受けるようになった。

「最悪!!あのクソ女、絶対わざと私の服にワインこぼしたでしょ!! おかげで上客を取り損ねたわ!」

「それに、あのセクハラジジイ……わざと尻触りやがって……!」

今日もリリアーネはこぼしながら、渋々職場に向かう。

だが、彼女が受ける嫌がらせの原因は、単にその美貌だけではない。

リリアーネの仕事初日のことである。彼女は自分の誇りに溢れ、他の女給に対して

「私は、公爵夫人になる予定だった女よ!!」

「あんたらブスと一緒にしないでよね!!」

「私は成り上がるんだから!」

と豪語し、接客にばかり熱中して掃除や雑用を徹底的に拒否したのだ。もちろん、その態度は上司であるバルドの激怒を買い、彼女はゲンコツを喰らい、衝撃のあまり号泣してしまった。

今まで貴族令嬢としてしか扱いを受けてこなかった彼女のことだ、当然ゲンコツを喰らうのも初めてで、おそらく相当な衝撃だったはずだ。彼女はその日は仕事を休むことになったが、翌日からは大人しく仕事をこなすようになった。

だが、女給たちはその一件を口実に、リリアーネをさらに嘲笑する。

「あの子、結局昔の栄光に縋ってるだけよ!」

「自分は私たちとは違う、とでも思ってるのかしら?ちゃんちゃらおかしいわ」

そんな中、バルドが厳しい声で従業員たちを叱責する。

「陰口叩いてる暇があったら働け! どんなに高飛車な態度でも、ここは酒場だ。全員が同じ土俵に立っているんだ、忘れるな!」

俺はその光景を横目に見ながら、心の奥で苦々しい後悔と悔しさに苛まれていた。かつては、王家に認められる存在だと自負していた俺が、今やこのような惨めな環境にいること――それは、俺自身の過ちの賜物だった。だが、リリアーネが泣きじゃくりながらも、明日からまた働こうと奮い立つ姿を見ると、俺はどうしても胸が締め付けられるのを感じた。