軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第77話  海底の戦い

ソナーで確認した敵は時速100キロでこちらに向かってきている。“千里眼”で確認しようとしたが、暗すぎて姿が見えなかった。

「俺の“敵意感知”にも反応があった! 間違いないドラゴンだ!!」

狩人のルカが叫ぶ。水中を移動するドラゴンはいないと言われていたので、ここにいる全員が驚いている。

「魚雷で迎撃するか? あるいはエンジンを切ってやり過ごすか? レオ、お前が決めろ!」

敵が迫ってくる中、艦長のシモンがレオに判断をゆだねた。

「魚雷ではドラゴンに効かないだろう。エンジンを切っても相手が見逃してくれるかどうか‥‥‥逃げようにも相手は100キロ、こちらは30ノット(55キロ)では話にならない」

少し考えたレオだったが、すぐに決断する!

「エリアス! 結界術で艦を守れ!!」

「おう!」

「フレイヤ、迎え撃つぞ!」

「分かった!」

エリアスは胸の前で魔法陣を展開する。この潜水艦全体が何か大きな力で覆われる感じがした。“千里眼”で外を見ると潜水艦の周りに光の魔法陣が三枚、艦を守るように並んでいた。

コレが聖戦士の職業スキル“結界術”か‥‥次の瞬間、潜水艦が大きく揺れる衝撃が走る!!

俺がもう一度“千里眼”で外を見ると、巨大な口で噛みついたドラゴンの姿が魔法陣の光で少しだけ見えた! 通常のドラゴンとは違う水中で進化したような見た目だ。大きさも以前見た飛竜の数倍はある。

「一撃目は防げたが、そう長くは持たんぞ、レオ!!」

「分かってるエリアスが防いでいる間に、こちらも迎撃に転じる。ルカ、敵の姿は“千里眼”で見えるか!?」

「だめだ。暗すぎて見えない! 大ざっぱな位置しか分からないぞ!!」

ドラゴンに見つからないように夜に移動したのが裏目に出たな‥‥‥。レオはどうやって対応するんだろうか?

「もう一度来ます!」

ソナーを監視している軍人が緊迫感のある声で現状を伝えてきた。

「フレイヤ! 敵の動きを止めてくれ」

「うん、やってみる!!」

フレイヤは手のひらに魔力を集め、それをゆっくり上に 掲(かか) げる。“千里眼”で外を覗くと、遥か上、海面にたくさんの光が見える。

最初は星かとも思ったが、その光は海の中に落ち数千の雨のように降り注ぐ!

「― ―光源の流星―(ラディウス・ミーティア) ―!!!」

フレイヤがそう叫ぶと、凄まじい数の光が辺り一面を貫く!! 何発かはドラゴンに命中したようだ。だが、位置が正確に分からないため、致命傷にはならなかった。

二回目の体当たりで潜水艦は大きく揺れた。守っているエリアスも、かなり苦しそうだ。本来、この二人の力ならあの程度のドラゴン軽く倒せるだろうが‥‥‥。

「海面に浮上しろ! 水中では分が悪すぎる」

「すぐには無理だ! 浮上している間に襲われるぞ!!」

レオと艦長が言い合っている。かなり切羽詰まってきてるな。俺がなんとかするしかない‥‥‥そう思い一人で発令所を離れた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

潜水艦の中はパニックに近くなっている。特に軍人の動揺はひどいな‥‥‥レオの旦那は冷静に対応しようとしてるが、厳しい状況だ。

そんな時、 あ(・) の(・) 五条が部屋から出ていった。

こんな状況でどこに行くのか気になったんで 跡(あと) をつけることにした。奴には“空間探知”の能力もあったはずだ。気付かれないよう細心の注意を払う。

五条はトイレに入っていった。こんな時にトイレか!? とも思ったが、数秒後に艦全体に強い衝撃を受ける。

ゴボッ!! バチャバチャバチャ!!!

トイレの中からも凄い音が聞こえてきた! 何が起きてるんだ!? その後は静かになった‥‥‥‥トイレの扉が開き、中から五条が出てくる‥‥‥。

◇◇◇◇◇◇◇◇

発令所を出て色々悩んでいた。水中戦は考えてなかったな‥‥‥フレイヤのように潜水艦の中から魔法を使うことは俺にもできるだろうか?

あんな器用にする自信は無いな‥‥失敗したら威力が強すぎて艦自体を沈めてしまうかもしれない。召喚はどうだ? 呼べるとしたらギガスかスプリガンくらいだが、水の中での戦いは厳しそうだ。

だとしたら、確実な方法でいくか‥‥‥そう考えてトイレに入った。

俺は亜空間への入口と、海の中への出口を開いた。いつも瞬間移動する時は、入口と出口をくっつけて使っていたが今回入口と出口を少し空けて開くことにした。

亜空間の中は時間が止まっているため、こうすることで海の水が入ってこない!

ちょっと頭が良くなってきたんじゃないだろうか? 大きめに開いてもまったく水が入ってくることはない! 俺は海の中に手を突っ込んだ。

ドラゴンの正確な位置は分からないが、こっちに向かってきているのは分かる! この あ(・) た(・) り(・) 一(・) 帯(・) をまとめて凍らせれば倒すことはできるだろう。

「―― 氷結する世界(フローズン・ワールド) ――!!」

海が急速に凍り始め、向かってきたドラゴンも避けるすべもなく周りの海と共に凍結した世界に閉じ込められていく!

だが、海の水が瞬間的に氷になってしまったため体積が膨張したことによる水流の衝撃が襲ってきた! 潜水艦が波の圧力により大きく揺れる。

「あっ!」

俺は揺れた勢いで、そのまま海に突っ込んでしまった。

発令所に戻ると‥‥‥。

「五条!? どうしたんだ? ビチョビチョじゃないか!」

「艦に穴でも開いたのか!? 大丈夫か?」

王とレオに心配されてしまった。

「いや‥‥ウォッシュレットの使い方、間違ったかな‥‥‥」

「潜水艦にウォッシュレットあるわけないっしょ!」

カルロに全否定された。そりゃそうだろう‥‥‥よく考えれば亜空間の中に完全に入っていればこんなことにはならなかったかも‥‥やはり早々頭は良くならないようだ。

その後は突然消えてしまったドラゴンの話で持ち切りになったが、なぜいなくなったかは結局結論が出ないまま、イギリスの領海に入った‥‥‥。

◇◇◇◇◇◇◇◇

NATO軍司令部

司令部の司令官を務めるハンゼン陸軍大将は、その日朝早くに部下の緊急報告を聞くことになる。

「監視班から、イギリス海峡に信じられないものが浮かんでいると報告が入りました!」

「信じられないもの? なんだいったい‥‥‥」

「氷山です」

「なに?」

「北極にあるような巨大な氷山が一夜にして出現しました」

部下の訳の分からない報告に困惑したが、確かに巨大な氷山が浮いていることが確認された。しかも中には見たことも無いドラゴンの死骸まであった。