軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第61話  止まった世界

【 王欣怡(ワン・シンイー) ―― 】

今のまま逃げようとしても、一人また一人と人数を削られるだけだ。まだ人数が多いうちに相手を倒すしかないが‥‥‥

「五条、何か気配は感じるか?」

「いや‥‥‥まったく感じない」

このまま、この場所に留まるのもマズイ気がする。

「警戒したまま後退する! 臨戦態勢は崩すな!!」

「王!!」

劉の大声で辺りは騒然となる。

「どうした!?」

「また一人いなくなってるぞ!!」

◇◇◇◇◇◇◇◇

俺は時間を止めた。

明らかにおかしな状況を確かめるには時間を止めて確認するしかない。辺りを見回すが特になにも無い。

もし敵が近づいてきているなら足跡などの痕跡があるはずだ。だが、いくら探しても見つからない。

敵の姿すらまったく掴めないなんて‥‥‥‥しかたなく時間を動かした。

「王! もっと開けた場所に行こう! ここでは分が悪い!!」

「そうだな。全員ここから移動するぞ!」

今いる木々が多い場所から、見通しがいい岩場まで移動した。その時、あることに気付いた。

俺の右手の指先‥‥‥わずかにだけど光って見えた。これは王が使っていた気功のオーラと同じ光だ。

まだ少ししか出せないようだが、コツを掴みかけてるんじゃないかな? コツさえ掴めれば“模倣”のスキルがあるため“気功武術”の取得は早いかもしれない。

そんな事を考えていると、どんっ! と体に何かぶつかるような感覚があった‥‥‥。

「なんだ!?」

俺がぶつかった自分の体を見ると、左腕の肘から先が無かった。

「え?」

俺はすぐに時間を止めた。

何が起きた!? まったく気づかないうちに腕が切断されている。そして最も戦慄すべきは 俺(・) の(・) 腕(・) を(・) 切断していることだ!!

防御力のステータスがいくつだと思ってんだ! 至近距離でライフルの弾丸を撃たれたとしても傷一つつかない頑丈さだぞ。

それなのに、いとも簡単に切断されている。辺りを見回すが、やはり何もいない‥‥‥“結界防御”が発動しなかった以上、至近距離から攻撃されたことに間違いない!

こんなことができるのは“統率者”だ!! それしか考えられない。

左腕は急速に再生している。俺の体の中で起こる現象であれば時間を止めた世界でも問題なく機能するようだ。

左手が完全に元通りになってから俺は時間を動かした。すぐさま、今までいた場所を“神眼”で確認する。“神眼”なら過去の映像を数秒さかのぼって見ることができる。

数秒前の自分が見える‥‥‥自分に何が起きたのか、これで確認できるはずだ。

そう思って見ていたが突然、俺の腕が無くなったようにしか見えなかった。時間を止めても、“神眼”を使っても確認できない敵‥‥‥いったいどうしたらいいんだ!?

◇◇◇◇◇◇◇◇

――くそっ! “朱雀”の団員は私にとって仲間であり家族も同じだ! その家族が次々と襲われていく。消えた者は恐らく、もう生きてはいないだろう。

これが本物の“統率者”だとしたら絶対にここで倒すしかない!! 仲間の 仇(かたき) は必ず私が取る!

鉄の棍棒を握りしめる手に力がこもる‥‥‥。

◇◇◇◇◇◇◇◇

また1人“朱雀”の団員が姿を消した‥‥‥。俺に声を掛けてきた張のようだ。

「この野郎! どこだ、どこにいる!? 卑怯だぞ。姿を現しやがれ!」

李が怒鳴り散らした。

マズイな‥‥このままじゃ犠牲だけが大きくなっていく。全員を連れて逃げるという選択もあるが、この“統率者”はここで逃がすと二度と捕捉できないかもしれない。

今回は異能者が集まっているせいか、向こうから攻撃してきている。今を逃すわけにはいかない! ここで決着をつける!!

“朱雀”の団員は円形に布陣し、死角を無くすようにして武器を構えている。だが、この敵は目で見ることができないので、死角を無くしても効果は期待できない。

「私を狙ってこい!! 相手になってやる!!!」

王が全力で体の” 気功(オーラ) ”を高めた。自分を囮にして敵をおびき出そうとしている。

その時、何か嫌な予感がした‥‥背筋が寒くなるような。ほんの 僅(わず) かな違和感。

俺は 三度(みたび) 、時間を止めた! 測ったわけではなく、たまたまのタイミングだった。周りを見渡すと そ(・) れ(・) は突然目に飛び込んできた。

王の真横にいる! 地上1メートルの所に駆けるような体勢で静止している。

体長は8~9メートルくらいだろうか‥‥‥‥

「こんなのが間近にいたのか!?」

流線型の体は日の光を映し不気味に輝いている。

それは全身が金属でできた、獅子のような魔獣だった――