軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五十六話 Sideエヴィー④

「やっぱり写真なんて送ったから嫌われたのかしら。日本では重い女は嫌われるって」

「そんなことで嫌うなら、ミスズが選ばれたのに未練タラタラで、ダンジョンに残っている時点で嫌われてるだろう」

ラーイはかなりはっきりものを言う。そういうところが嫌いではないのだけど、図星を突き過ぎていて結構傷つく。

「そ、そういうこと言わないでよ。私だって自分の行動に驚いてるもの」

「ユウタ、主が好き。間違いない」

「そう? やっぱりそうよね? 私もそんな気がするわ」

幼いリーンに言われると妙に説得力を感じた。

「とにかく一度は連絡は来たんだから、ご飯を食べたらどうだ?」

「断食、体悪い」

「だって食欲が」

「主がやつれてたら、ユウタも気にするぞ」

「そうかしら……じゃあちょっとだけ」

ユウタのメッセージで少しは勇気が出た。食欲も出てきてデビット達に、朝食の用意を頼んだ。朝食のハムエッグとトーストが運ばれてきた。気づかないだけで、かなりお腹が空いていたのかパクパクと喉を通っていく。

「エヴィー。追加注文するか?」

「デビット、ありがとう。でももういいわ。あなた達も心配かけたわね」

運んできてくれたデビットとマークにお礼を言った。

「いや、これも仕事だ。それに元気が出たようで何よりだ」

「ギャーギャー喚くから何事かと思ったぜ」

マークがやってられないという感じで肩を竦めた。目の下にクマが浮かんでいて、あくびをかみ殺していた。眠いなら、もうそろそろ寝させてあげるべきだろうか。いやでもまだユウタから連絡がないしな。

そうするとスマホから着信音が鳴る。メッセージだと思って慌てて電話を取る。ユウタからだ。写真付きでメッセージが送られてきて、それを見て思わず目が点になった。

【アメリカにいます。エヴィーはどの辺に住んでるの?】

そこにはユウタの写真ともう一つビルディングの写真があった。どちらの写真にも見覚えがあった。間違いない。この間ようやく弓神との和解が成立して、復興が進んできているというニューヨークだ。

ダンジョン崩壊によるモンスター被害だけでも大変なのに、人同士でも争って、一番荒廃しているニューヨーク。争いの種はくすぶっているようだが、それでもまだ前よりは落ち着いているのが写真からわかった。

私はミスズとはもう一緒にいないのだと判断して、電話を鳴らした。しかしいくらコールを鳴らしてもユウタは出てくれない。仕方がないのでメッセージを送った。

【どうしてニューヨークにいるの?】

それだけメッセージを送ったのだが返事がない。やきもきしてくる。

「主、何かユウタは言ってるのか?」

ラーイが聞いてきた。

「ユウタがニューヨークにいるようなの」

「は?」

「日本にいるんじゃねえのか?」

「そのはずなんだけど、これはどう見てもニューヨークよね?」

私は写真をデビット達に見せた。

「ああ、間違いないようだな」

何しろかなり傾いているが、自由の女神が後ろに写っていた。

「じゃあやっぱりニューヨークにいるの?」

「そうなるな……」

「わかったぞ!」

急にマークが大きい声を出した。

「何がわかったの?」

「これはあれだ。演出ってやつだ。ダンジョンから出てきてエヴィーみたいな最高の女を抱くために、ユウタがニューヨークでわざわざお姫さまをお出迎えをしてくれるって寸法だ」

ユウタはキスしかしないのだが、それは2人に言ってなかった。そんな話をしたら、きっと生粋のアメリカ男の2人は、意味が分からないと首を傾げることだろう。

「そ、そうなの? でも私の出身はコロラドよ。住んでる場所もウッディクリークだし、ここにいる意味は……」

「そんな野暮なこと言うもんじゃねえぜ。せっかくエヴィーを最高の場所で抱いてあげようと思って、ユウタがニューヨークまで行ってくれたんだ。日本人だからアメリカといえばニューヨーク。そう思ったに違いない。ここまで男がしたんだぜ。そんな冷めたこと言ったら、ユウタが泣いちまうぜ」

「な、なるほど。私のため……それは考えられるわね」

この時もうちょっと冷静になっていればと、私は後々まで思うことになる。私を車に置いてミスズとお泊りデートに行ってしまったユウタが、そのミスズを放置しないとどう考えてもたどり着くはずのないニューヨークにいる。

そんなことがあるわけなかった。後で知った言葉だが、日本語には恋愛脳というのがあるらしい。そう。この時の私はまさに恋愛脳だった。

「主。何か妙な感じがしないか? ユウタが主のためにそこまでするだろうか?」

「え?」

「ユウタは主よりミスズが好きなのだろう? それなのに主を優先させるのか?」

「あん?」

「だから、今アメリカに居るとしたら、大好きなミスズを放置したことになるんだぞ」

「へへ、へえ、面白い言い分ね。 ところで、あなたダンジョンの中ではずいぶんユウタと仲良さそうにしていたわね。背中に乗せてとても楽しそうだった。もうあれは許可しないってことでいいわけね? ラーイ? ねえラーイ、ユウタが私より誰を好きだって?」

「あ、いや……」

「本当のこと言う。よくない。夢見る。幸せ」

「すまない」

私のためだからそこまでしたのだろう。否定する要素があるだろうか。絶対にない。思わずかなりイラッとした顔で、ラーイをにらんでしまった。リーンも若干失礼な気がするが、私はそれよりももう自分の心がニューヨークへと飛んでいた。