軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四十四話 パーティー不和

ゴブリンライダーと戦うより怖い食事が終わり、ゴブリンライダーとの戦闘を再開する。手順は変わることなく、それでもやはり4人目である伊万里が、まだダンジョンに入ることができないのが痛かった。3人では思い通りになかなか行かず、最後の止めを20式小銃に頼ることが何度もあった。

しかし危なっかしくはありつつも、俺たちはどんどんとゴブリンライダーの群れを殲滅していった。

【レベルアップのお知らせをいたします。あなたはゴブリンライダー40体を倒しレベル4になりました】

そして、最初に俺、その次に美鈴、さらに2回の戦闘を経てエヴィーのレベルアップアナウンスが脳内に流れた。

「やっぱり伊万里ちゃんが入ってくれるまで、思い通りにはいきそうにないね」

「そうね。これだとさらに下に行くのはイマリがくるまで危険かもしれないわ」

「伊万里の誕生日は3月15日だよ。お祝い何がいいかな」

「知らないわよ」

「自分で考えたら」

二人ともそんな話題を出すから伊万里が入る事を喜んでくれてるのかと思った。でも今の言葉はものすごく冷たかった。氷点下より冷たかった。いつのまにかダンジョンの中も冬になったのかと思った。

これで伊万里が入って大丈夫なんだろうか。しかし伊万里を入れない選択肢なんて取れるわけないし、そんなことしたら寝てる間に伊万里にちんちんちょん切られること間違いなしである。

「とにかくステータスよね」

「やむを得ないところは20式小銃に頼ったけど、ちゃんと魔法とスキルで倒して、近接戦闘もやってるから、ステータスは悪くないかな?」

「や、やったよ二人とも! 俺、スキルが生えてる!」

ちゃんとちんちんも生えてる。いやこの考えはやめよう。不健康だ。それよりかなり良いステータスの上がり方をしていた。

「私も生えてるわね」

「ふふん、次は私もスキルが生えてるよ」

「ゴブリンライダーのレベルは7、レッドは8だもんな。やっぱりレベルが上との戦闘だからそれだけボーナスがつくのかな」

「それにリーンがいるとはいえ、実質3人パーティーだしね」

夕ご飯を挟んで狩りをし続け、夜の9時になろうとしていた。ダンジョンの中なので相変わらずサンサンと太陽が出ていて35度の凄まじく暑い天気だが、かなり動き回ったこともあり眠気もさしてきていた。

「これだけ思い通りにスキルが生えるなんて、ユウタ、やっぱりレベルアップは頭使わなきゃダメね」

「確かに高レベル探索者まで行こうと思うなら絶対必要なことだね」

どういう条件でステータスの上がりが良くなるのか、魔法やスキルが生えてくるのか。色々と考えていた。そしてその結果としてある程度思った通りのスキルが生えた。それは、かなり嬉しいことだった。

「拳銃とか現代兵器を使うマイナス分はこういうやり方だと考慮されないのね」

「結果から考えて、銃を使って全部倒さない。あくまで生命の危険がある場合のみ銃は使う。この二つを守ってれば、現代兵器を使ってもステータスの上がり方にマイナスはないと考えて良さそうだね。まあ3人パーティーのハンデも考慮されたのかもしれないけど」

「現代兵器の使用の考察ってみんなどのぐらいやってるのかしら? 10階層以降では使ったところで意味がないって話だけど、最初は結構重要な要素だと思うのよね。ユウタ、ネットとかだとどう?」

「ネットは人によって全部内容が違うから参考にならないよ。自分のステータスなんてみんな明かすわけがないから、効果的な現代兵器の使い方とかアップしてても、それでどういうステータスになるのか教えてくれないんだ。『スタングレネードはかなり効果的だ』とかそんな曖昧なこと言われても、ステータスの上がりが悪かったら意味ないし」

結果として上を目指すものほど現代兵器が効果を示す低階層でも縛りプレイのようなことをしなければ仕方なかった。それか、現代兵器を使いたいなら自分たちで実際使って確かめるしかないのだ。

「秘密主義よね。まあダンジョンに少しでも関わったら警戒心強くなるのもわかるけど」

「ね。ステータスの見せあいっこしようよ。今回は負けないから」

美鈴がそんなことを言った。何を負けないと言ってるのだろう。前回何か負けたことがあったのか。

「OK。その勝負、乗ったわ。なんならステータスの上がり幅が大きい方が、ユウタと一緒に寝られるって事にしましょうよ」

「い、いいよ。負けない自信あるし」

どちらに転んでも幸せな賭けの対象にされた。文句はない。むしろ幸せです。と言うか二人とも俺の横に陣取ってしっかり胸を押し当てるほど腕を組んでくる。右がエヴィーで、左が美鈴だった。

なんだろうこの状況。言い争いをしている状態ではないのだろうか? 不安を抱きながらも俺達はそれぞれのステータスを公開した。

名前:六条祐太

種族:人間

レベル:3→4

職業:探索者

称号:新人

HP:20→26

MP:14→17

SP:18→24

力:19→25(+3)

素早さ:19→25(+3)

防御:20→26(+3)

器用:15→18(+3)

魔力:14→17

知能:16→17

魅力:24→32

ガチャ運:5

装備:ストーン級【額当て】

ストーン級【胴鎧】

ストーン級【脛当て】

ストーン級【小手】

ストーン級【陣羽織】

ストーン級【護符】×2

ストーン級【美火丸の炎刀】六条祐太専用装備

ストーン級【短刀】

ストーン級【履き物】

ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)

魔法:ストーン級【石弾】(MP4)

スキル:ストーン級【二連撃】(SP3)

ストーン級【加速】(SP3)

名前:エヴィー・ノヴァ・ティンバーレイク

種族:人間

レベル:3→4

職業:探索者

称号:新人

HP:17→21

MP:22→29

SP:15→18

力:16→19

素早さ:16→19

防御:17→20

器用:18→22

魔力:20→26

知能:17→20

魅力:72→73

ガチャ運:2

装備:ストーン級【下着】

ストーン級【魔法衣】

ストーン級【マント】

ストーン級【グローブ】

ストーン級【髪飾り】

ストーン級【アミュレット】×2

ストーン級【魔力杖】

ストーン級【指輪】

ストーン級【ブーツ】

ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)

魔法:ストーン級【リーン召喚】(MP15)

ストーン級【火弾】(MP4)

スキル:ストーン級【召喚獣強化】(SP5)

名前:桐山美鈴

種族:人間

レベル:3→4

職業:探索者

称号:新人

HP:18→23

MP:14→19

SP:16→21

力:17→22

素早さ:17→22

防御:17→21

器用:19→25

魔力:16→20

知能:16→18

魅力:46→49

ガチャ運:1

装備:ストーン級【髪飾り】

ストーン級【胴鎧】

ストーン級【脛当て】

ストーン級【小手】

ストーン級【肌着】

ストーン級【護符】×2

ストーン級【弓】

ストーン級【短刀】

ストーン級【履き物】

ブロンズ級【アリスト】(バリア値100)

魔法:ストーン級【レベルダウン】(MP3)

スキル:ストーン級【精緻一射】(SP2)

ストーン級【剛弓】(SP3)

「召喚獣強化。消費は激しいけど、これでリーンを前面に出していけるわ」

エヴィーはかなり嬉しそうだ。やはり召喚士として、召喚獣がポーションの渡し役しかできなくなっていたのは思うところがあったのだろう。

「エヴィー。明日はリーンのためだけのレベル上げをしないか?そうしたらリーンもかなり次のステータスが期待できると思うんだ」

リーンは今回ほとんどサポート役に回っていた。

だからレベルが上がっておらず、レベル3のままだ。このままレベル4になった俺達と組んで、レベル上げをしてもいいが、それよりも、ゴブリンライダーの数を銃で調整して、リーンのためだけにレベル上げをしたほうが良いはずだ。

「いいの? そんなことしたら明日はそれだけで終わっちゃうわよ」

「リーンが良いレベルの上がり方をすればするほど、俺たちのパーティーは4人になる。伊万里が来てくれたら実質5人で戦えることにもなる」

うまくいけば、戦いがもっと楽になる。一度上がってしまったレベルは下げることができず、悪いレベルの上がり方をするほどタチの悪いことはない。それはデビットさんたちで嫌というほどよくわかった。

「エヴィー、私も祐太に賛成。明日はリーンのレベルを上げてあげましょう」

「ミスズ……ありがとう。ではお言葉に甘えさせてもらうわ」

「美鈴のスキルもいいのが出たね」

俺は次に美鈴のスキルを確認した。エヴィーの確認をしてたら、こっちも見てくれという意思を感じた。実際服をくいくい引っ張られたし。

「うん。クエストをこなせるかどうか心配だったんだけど、これでちょっと道が見えた。【剛弓】は放った弓の攻撃力がかなり上がるはず。調べた限りだとゴブリンライダーの鎧ぐらいなら貫通してくれるって」

よほど嬉しかったのか美鈴の顔の距離が近かった。キスしてほしいそうだなと思ったからキスした。そうすると正しいことだったのかますますニコニコしていた。

「美鈴、狙いは行けそうか?」

「【精緻一射】と併用することになると思う。【剛弓】はそうしないと命中率が悪すぎるんだって。だから弓は4回打つのが限界。ただし射程が伸びるの。150m先からでもゴブリンの頭を正確に狙える。威力が高い分スピードも速いから、避けられることもあんまりないみたい」

「そっか。うん。美鈴、俺達確実に強くなってるよ」

その実感が湧いて嬉しかった。俺は握り拳を強くした。

「でもやっぱりユウタのスキルが一番使い勝手はいいと思うわ。【加速】。私もそれだったらユウタ級の近接戦闘が出来るのだけど」

「エヴィーにそんなのやられたら、俺の立場がないよ」

「使い勝手がいいって、有名なスキルだよね。かなり素早さが速くなるって」

「有効時間は10秒だけだけどね」

「10秒でも十分よ。ユウタなら、ゴブリンライダーを2体は完全に仕留められるわ」

つまり10秒の間に2騎のゴブリンとライオンをことごとく仕留める。実質4回攻撃の必要がある。できるかどうかと考えて【石弾】を入れれば、3体仕留めることもできるかもしれないと思った。それほど【加速】は使い勝手の良いスキルだ。

「まあ甘い見積もりはやめとこう。実際どうなるかはやってみなきゃわからない。明日も気を抜かずに頑張ろう」

ぎゅっと二人の腰を引き寄せる力を強める。二人とも頷いてくれた。よかった。どうやら妙な緊張状態が終わったらしい。それから俺たちは寝る準備のために天幕を張る。寝ると言っても完全な日中だ。

うだるような暑さは変わらず、 2人とも装備を脱ぐと水場でガチャから出てきた石鹸を使い、体をきれいにしていた。それでもすぐに汗が流れてきていた。

「じゃあエヴィー。ステータス勝負は私の勝ちだから、祐太と一緒に寝るのは私だよ」

「了解。ねえ、1日1日交代でしましょうよ。今日はあなたに譲るから明日は私にちょうだい」

「本気で言ってる?」

「ダメかしら?」

天幕だけを張り終わってこれからいつも通り美鈴と一緒に寝るのだと思ったら、二人がそんな話をしだした。どうなったとしても怖いので逃げたくなった。浮気なんてするもんじゃないなとつくづく思う。昨日に帰ってやり直したい。

しかしそうするとエヴィーの不満が最高潮に達しそうだし、そうなったらそうなったでパーティー崩壊するし。と言うか、エヴィーの言葉で俺は確信した。昨日の夜のことをエヴィーは美鈴に言ってしまったようだ。

なぜそんなことをしたのだろう。どう考えてもエヴィーに得があるとは思えない。それとも他にバレる要因があったのか。本当にわからない。美鈴はそれでも俺のことを直接責めてなかった。別れ話にもなってなかった。

どういうことだ?

2人の間にいつそんなやりとりがあった。

誰か教えて……。というか怖い。超美少女の2人が言い合いをする姿が本当に怖い。それでも二人は話を止めない。俺のライフはゼロだった。

「駄目って言ったらどうするの?」

「隠れてするわ。私も彼の事が好きになったの。あなたを優先させるのは構わないけど、独占しないでって言ったはずよ」

怖い。アメリカ人はっきりしすぎ。綺麗な青い瞳が、しっかりと美鈴を捕らえて、絶対に引かないと主張していた。

「じゃあいい。隠れて勝手にすればいいじゃない。でも私の視界に入るところで祐太と馴れ馴れしくするのはやめて」

「それでいいのね?」

「いやに決まってる! でも隠れてされたらわからないじゃん!」

「……それは謝るわ。ごめんなさい。でも、見せつけられるのはつらいのよ。私だって男にピンと来たのは初めてなの。だからユウタと仲良くなりたい。でも、それと同じぐらい、あなたとも仲良くしたいのよ。ダンジョンの中なんかで揉めたくもない。そこを理解してくれないかしら」

「エヴィーから仲が悪くなるようなこと言ってくるからじゃない! 祐太は私の恋人なの! 私はちゃんと告白されたし好きだって言われた!」

え? 言ってない気が……。

「わ、私だってユウタから好きだと言われたわ!」

こっちは言ってない! 言ってないって断言できる! いや、俺どっちみち最低だ……。

「そんなのその場の気持ちよさに流されただけだよ! ねえ、祐太、そうだよね?」

美鈴が縋るようにこっちを見てきた。

「違うわ! あれは確かに私の事を本当に好きで言ったことよ! そうよね!?」

エヴィーもこっちを見てきた。やっぱりこっちに来るよねって心から思った。俗にいう修羅場だった。おそらく対応を間違えたらパーティーが崩壊してしまう。というか、なぜこの二人は俺なんかを取り合う。

俺なんてちんちんついてるだけの道具ぐらいに割り切ってくれていいのに、俺の何がそんなにいいのか、俺が一番理解できない。ここでもしもエヴィーも美鈴も2人とも好きとか言ったらどうなるんだ。

南雲さんにこの間相談した時なんて言ってたっけ?

『女なんてどれもこれも見てくれだけで中身は一緒だしな。適当に抱いて適当に喜ばせておけば大丈夫だ』

思い出してみてビックリするほど何の役にも立たない言葉過ぎて絶望した。南雲さん。俺にはそれはレベルが高すぎて無理です。

「あ、あの、えっと、ダンジョンの中ではもういっそそういうこと禁止ということで」

「「それは嫌」」

二人の声がハモった。

しばらく考える。

しばらく考える。

だめだ何も思いつかん。

「ご、ごめん。正直二人とも好きです。どっちか選べと言われたらどっちも選びたいです。でも無理なので、美鈴を選びます。ご、ごめん。エヴィー」

「祐太……私でいいの?」

「ごめん。昨日、エヴィーと浮気した。でもやっぱりどっちを好きかと言われたら俺は美鈴が好きだ」

中学1年の頃に美鈴を初めて見た。世の中にこんな綺麗な子がいるのかと思うくらい綺麗だと思った。そしてずっとその頃から好きだ。エヴィーはそれ以上に綺麗な子で、きっと出会いが早ければエヴィーが好きだったのかもしれない。

でもそうじゃないのだ。

「……エヴィー、ごめんね。そういうことだから、エヴィーは祐太にこれから手を出さない。それでいいよね?」

美鈴がエヴィーに追い打ちをかけた。これでエヴィーがパーティーから抜けたらと思うと心が痛む。それでも仕方なかった。漫画やアニメのようなわけにはいかない。女の人に同時に手を出せば大変な目に遭う。俺が人生を学んだ瞬間だった。

「お、OK。ユウタの気持ちはわかったわ。ミスズ、余計なことして悪かったわね。どうぞ二人で仲良くしてちょうだい。私は手を引くわ」

エヴィーはこれでパーティーから抜けるのか。探索者としては最高の仲間だと思っていたのに本当に残念だ。これからの探索を心配する思いもあるが、心のどこかがほっとしていた。

これでもう胃の痛くなるような毎日から解放される。やっぱりこういうことははっきりしなきゃダメなんだな。しかし、エヴィーはそのまま天幕の外に立って、特に出て行く準備をするというわけでもなかった。

「エヴィー、出て行かないの? 一人だと怖いなら入口まで送ってあげるよ」

美鈴はさっさと出て行ってくれと言いたげだった。

「パーティーから抜けるなんて一言も言ってないでしょ。あなたたち2人が仲良くするのは許す。でも私もそんなに簡単にアメリカに帰れないのよ。あっちのダンジョンじゃこっちと比べ物にならないぐらいダンジョンの中の治安も悪いの」

「じゃあ日本で別の人探せば?」

「ミスズ、そんなのいないわ。ユウタ以上のパーティー仲間なんて存在しないの。ユウタに手は出さないって言ってるんだから問題ないでしょ。それにあなた達だって高レベル探索者を目指すなら、私以上のパーティー仲間がいる? 召喚士なんてめったに現われない。大体ミスズあなた私への借金どうするつもり? 今すぐ耳を揃えて返してくれるの?」

「それは……」

美鈴は言葉に詰まった。召喚士の仲間などそう簡単に見つかるものではない。何よりも初期の段階でエヴィーの桁違いの財力にかなり助けられている。それがあるとないとで探索そのものが変わる。

エヴィーが抜ければ今のようなレベル上げは出来なくなる。そして借金問題である。ここで俺が美鈴の代わりに出すと言えばそれでよかった。しかし、じゃあ他に誰を仲間にするんだと言われたら、そんな当てはなかった。

何より伊万里である。伊万里は俺が好きだ。この時点で俺は女の問題が避けては通れないことが確定している。俺は自分自身に自信がないだけに、男の仲間なんて入れたくないし、できることならエヴィーに残って欲しかった。

「ユウタ、あなたがリーダーよね?」

「う、うん、一応」

「じゃあ私をパーティーから追い出したい?」

「いや、そんなことはないけど」

というか居て欲しい。居てほしいけど……。おかしい。はっきりさせたはずなのに余計に空気が悪くなった気がする。

「祐太」

責めるように美鈴が見てきた。

「いや、でも、エヴィーは引いてくれるみたいだし」

「……」

こいつ最低だ。みたいな目で見ないで。でもどうしても俺はレベル1000になりたいんだ。人の限界を超えて見たいんだ。その先の景色が見てみたいんだ。それには絶対にエヴィーが必要だと俺は思うんだ。

「わかった。じゃあエヴィーはそこで毎日見てれば」

「そうさせてもらうわ」

美鈴はそれ以上言わなかった。自分もエヴィーに借金がある手前それ以上言えなかったのだと思う。そこからは黙って天幕の外で見張りをしてくれるようだ。距離は俺達とめちゃくちゃ近い。なんなら手を伸ばせば届くほどの距離である。

あまりにも暑いので寝る時は天幕は絶対に必要だし、見張りにも日陰は必要である。そうすると距離が近くならざるを得なかった。

「あーあ、やだな。ダンジョンの中のパーティーって、もう何もかも隠し事なしって感じだね」

「我慢しなさいよ。私だって喜んでここで立ってるわけじゃないんだから」

「エヴィー、静かにしてて。集中できない」

「はいはい」

草原に引いたシートの上で、美鈴が汗でべたつく体で抱きしめてくる。さらに美鈴からもう一度唇を重ねられた。そのままなかなか離れなかった。お互いにお互いを求めていると思った。エヴィーが気になって見てしまう。

後ろ姿だったから何を考えているかわからなかった。