軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百三十三話 亡霊の揺り籠

自分がその『おっかない誰か』になってしまったという自覚など微塵もないまま、俺はごく自然な、かつての自分と同じトーンで名乗った。

「忘れたのか? ……って、今のこの見た目じゃ誰だか分かんないよな。俺だよ、六条祐太。ほら、前に退学組の騒動の時に一度話しただろ? 久しぶり!」

俺の精一杯の親しみの声を出したその瞬間、古見の顔から血の気が一気に引いた。目玉が飛び出しそうになるほど見開かれ、ガタガタと膝が震え始める。彼は土下座でもしかねない勢いで腰を折り、頭を下げると裏返った声を上げた。

「ろ、ろ、六条様……っ!? な、な、な、何か、我らのような者に不手際がございましたでしょうか!? ご、ご用であれば何なりと! 命に代えても!」

「ああ、いや……うん。別にそういうんじゃないんだ」

予想していた反応と違う。というか違いすぎる。何でそんなに俺に怯えてるの? 下手するとあの当時のミカエラ以上に怖がられてない? 俺は無意味に人を殺したことなんてないよ? なのにこの反応はちょっとショックなんだが……。

「別の何か気に障ったことが……。ひょ、ひょっとすると当時の私に何か失言がありましたか!?」

「いや、そんなのないけど、まあそんなに緊張するなよ」

「は、ははっ、そうですっか!?」

ああ、これは……理解した。これは間違いなく声をかけちゃいけなかったんだ。心底そう思った。かつての『六条祐太』として、少し気楽に知人へ声をかけたつもりだったが、周囲の温度が劇的に下がっていくのを感じる。

俺の赤い髪と瞳、隠しきれないサファイア級の圧が、かつての親しみやすい俺という雰囲気を破壊してしまっていた。今の俺はちょっと余裕があるから、あの時の黒木にしたみたいに何か簡単なアイテムでもあげようかと思った。

そんなちょっとした成金思考の軽いサービス精神が、こいつからしたら怖いだけなんだ。当然のごとく周りがざわつきだした。

「……おい、今、あの人なんて言った? 六条、って……」

「馬鹿言え、六条様がこんなところに御一人でいるわけないだろ。同姓同名の別人か、聞き間違いだ」

「待てよ、知らないのか? 先日、政府の閣議決定で『五英傑』の姓名は公的な使用や名乗りが制限されたんだぞ。あまりに恐れ多いし、混乱を招くからって、すげえスピードで決まったんだ。偽名すら許されないレベルだぞ」

「じゃあ……本人? あの赤い髪の、あれが、本物の……」

「でも今の姿って不明なんじゃ」

ざわざわとした私語が広まると同時に、潮が引くように周囲の喧騒が止まった。静寂が痛いほど辺りを支配し、古見以外のパーティーメンバーまでもが、まるで猛獣から逃れるようにずざざっと数メートル後退した。

誰もが息を潜め、遠巻きにこちらの様子を伺っている。

桜千が『人払い』を提案してきたのは、この異様な光景を予見していたからだろう。今さらながら、あいつの配慮の深さが身に染みた。でも、ちゃんと理由まで教えてくれたら完璧だった。

このまま古見を無視して立ち去ることもできるが、それではこの『フリーズ』した男が、明日から周囲にどんな目で見られるか分かったもんじゃない。

「えっと、古見。……元気にしてるか?」

「は、はいっ! 六条様のお導き、そしてこの素晴らしい世界のおかげをもちまして、死ぬ気で励んでおります! おかげさまで、つい先日ブロンズ級に昇格いたしました!」

「あ、ああ、そうなんだ。それは……良かったな。えっと」

言葉に詰まる。特別な神託でも授けるような目で見つめられると、中身が『普通の十六歳』に戻った俺には荷が重すぎる。お導きって何だよ。誰も導いてねえよ。

《主様。深刻にならず、適当に『頑張れよ』と一声かけて背中を押してあげてください。彼らのような者には、それが何よりの加護となりますから》

《……おお、了解》

桜千のアドバイスに従い、俺は努めて穏やかな笑みを浮かべ、古見の肩をポンと叩いた。

「まあ、頑張れよ。ダンジョンってのは自分次第だ。諦めなきゃ、どこまでだって行ける」

ただの励ましのつもりだった。だが、叩かれた古見の肩がびくんと震え、彼の瞳にみるみるうちに涙が溜まっていく。どうやら過剰なまでに感動させてしまったらしい。これ以上ここに居続けるのは、俺にとって拷問に近い。

俺は逃げるようにゲートへと足をかけ、その向こう側へと飛び込んだ。

後ろで古見たちがどうなっているかは、もう振り返らない。ゲートをくぐり抜けて入った瞬間、俺は誰もいないであろう場所に【転移】して、

「うわあああ!」

と叫びながら自分の頭を抱え、恥ずかしさのあまり壁を殴りつけたい衝動に駆られた。でも殴ると物理的にいろいろ本当に壊れてしまうのでやめておいた。

美鈴のようにテレビに出るなんて、逆立ちしても御免だ。あんな視線に晒され続けるくらいなら、一生顔も名前も隠し続けてやる。俺は羞恥を洗い流すように、ともかく大八洲国の本洲からゲートを中継して桃源郷へと抜けた。

懐かしい温泉街の硫黄の香りが鼻をくすぐる。空中を滑るように飛び、ほどなくして目的地である『六条屋敷』へと到着した。

今の拠点である『千年郷の六条屋敷』を出て、かつての拠点である『桃源郷の六条屋敷』に到着する。まるで同じ場所に帰ってきたような奇妙な感覚だ。おまけに表の見た目はほとんど一緒なので、その思いはひとしおだった。

「どっちも自分の家なんだけどな。まあ、相変わらず無駄にデカい」

ひとりごちながら門をくぐり、玄関を開ける。人の気配はない。どうやらこちらの屋敷は現在、放置されているようだ。それでも管理用のからくり族は稼働しているらしく、廊下の角をノーマル型の個体が音もなく通り過ぎていくのが見えた。

「ヒノエ! いるか! 六条祐太だぞ! 帰ってきたんだ!」

俺は腹の底から声を張り上げた。広大な屋敷の内部に、俺の声が幾重にも反響して消えていく。……返事はない。ここにいないとなると、地球と広大なダンジョンのどこから彼女を探し出すか、随分と面倒な話になる。

できればここに居てほしかったのだが。俺は念のため【意思疎通】のスキルを最大出力で放射した。

それでも、明確な反応は返ってこない。

「……隠れてるのか、それとも本当にいないのか」

俺は意識を集中させ、索敵の密度を上げた。

索敵魔力を球体状に広げ、屋敷を構成する物質の隙間まで徹底的に舐めるように調べていく。かつての祐太なら精一杯だったこの探査も、100万年生きた『あいつ』のスキルの廉価版を使えば、子供の遊びのようなものだ。

永劫に近い年月の中で、あいつはあらゆる事象を一人で完結させる能力を身につけていた。その膨大なライブラリから、今の俺の出力でも扱える魔法やスキルをいくつか拝借する。

「……地下か」

米崎本人がいなかったとしても、彼がこの屋敷を私物化して弄り回していたことだけは間違いない。本人もそのようなことを悪びれもせず、認めていたのを覚えている。だから、その形跡を探っていくと、不自然な箇所が見つかった。

この屋敷は大八洲国の階層に合わせて三層と、さらに同じ構造のものが四層にも存在する。つまり空間を超えた二重構造なのだ。そのさらに深淵の奥深くに、俺の意識を弾き返す領域が存在していた。

ぽっかりと学校の体育館が収まるほどの巨大な空間。

そこだけが、次元の膜に包まれたように情報の侵入を拒んでいる。

「わざわざこんなもん作るなんて、あいつらしいな」

俺は迷わず歩き出し、エレベーターに乗り込んだ。大八洲国の最新技術で、ここから四層の六条屋敷にも行けるようになっている。階数表示のないボタンを押し、一気に下降する。

到着した場所は、見た目こそ三層の六条屋敷と変わらなかったが、確かに地下に何かがあるのが先ほど以上に明確に分かった。

「ここよりまだ下……」

米崎の異常なまでの警戒心が形になったものだろうか。通常の物理空間の下に、さらに次元を隔離した特殊な空間を構築しているようだ。

「さて、これは一筋縄じゃいかないな。入れるか?」

俺は【異界反応】を起動した。エレベーターを降りた場所の床に、自らの肉体を幽霊にでも変えたかのように沈み込んでいく。

ダンジョンの動力源である【異界】を利用し、この現世との干渉を一時的にゼロにする物質透過魔法だ。本来、戦いに使えば圧倒的に有利ということで覚えた魔法だが、今の高レベル帯の戦いではあまり役に立たない。

相手も【異界反応】を使えれば、干渉し合って効果が打ち消されるからだ。だが、この状況ならいけるかと思った。

「……うーん。弾かれるな」

米崎の次元隔離は執拗だった。【異界反応】をもってしても、その境界線を超えることができない。

「面倒な真似を……」

俺は一旦透過を解除し、元の床へと這い上がって思考を巡らせた。しかし結局のところ力技が一番いいと思えた。だから下を向く。そして床に向かって再度叫んだ。

「米崎! ヒノエ! そこに居るんだろ! 返事をしろ!!!!!」

今度はただの大声ではない。声に指向性を持たせ、床下に向けて物理的な破壊を伴うほどの音波攻撃スキル――【咆哮】に近い衝撃を叩きつけた。このレベルになれば床板が粉々に砕け散り、むき出しの土壌が露出する。

しかし、その先の『次元の膜』は、黒いドームのように音波さえも飲み込み、侵入を許さなかった。

「まあこれで無理なのは理解してる……。邪魔なのはこれだな」

俺は、自身の内側にある『出力』を切り替えた。

自分で勝手に名付けた形態――【 羅鬼(らき) 】モードである。

100万年前の俺の力。それを今の俺が使いこなすのは、高等数学の極致を小学生が解くようなもので、不可能に近い。だが、あいつ……『100万年前の自分』は、今の俺でも扱えるように、力をダウンサイジングして最適化してくれていた。

あいつはヨミからもたらされた『現在の祐太』の戦闘データをベースに、羅刹としての性質を強引に、インストールした今の俺のレベルを超えた、強引なアップグレード形態だ。

全身の筋肉が膨張し、身長は二メートル五十センチを超える巨大な偉丈夫へと変貌する。燃えているようにも見える赤い肌、その姿の由来となった【羅鬼】の巨大な一刀が俺の手に握られた。

「……ちょっと強引に行くぞ。返事をしないお前が悪い。壊しても文句は言うなよ、米崎」

俺は迷うことなく、次元の境界目掛けて、その漆黒の大刃を振り下ろした。

「お待ちください! 壊さないで!」

鋭い制止の声が響いた。

黒い膜で仕切られた次元の壁、そのわずか数センチ手前で、俺は【羅鬼】を無理やり静止させた。あらかじめ誰かに声をかけられる可能性を考慮し、途中で止められるよう加減はしていたつもりだ。

だが、この 形態(モード) の出力はあまりにも荒々しく、繊細な制御には向かない。

大刃が放った圧だけで、黒い膜が縦に大きく裂けた。その裂け目から、向こう側の情景がわずかに覗く。並ぶサーバーラック、明滅するインジケーター、複雑に絡み合う配線――やはり、ここには米崎の極秘研究施設が存在していた。

そして、主を失ったはずの今も、ここを死守している『誰か』がいる。

「……久しぶり。ごめん、ちょっと壊した」

俺はゆっくりと振り返った。そこに立っていたのは、大方の予想通り、ヒノエだった。

吸い込まれるような金色の瞳に、今の俺と奇妙に符合する赤い髪。和の意匠を大胆に解体した装束は、胸元を深く割り、帯の下からは透けるような質感を残して太ももの付け根まで露わにした超ミニ丈の袴風スタイルだ。

「いいえ。あなたがこの屋敷に足を踏み入れた時点で、私の方から声をかけるべきでした。……今のあなたは、私から見ても『特別』すぎて、つい警戒を。博士からは、何があっても、たとえ誰が相手でもここを通すなと厳命されておりましたので、反射的に存在を隠匿してしまいました。こちらこそ、非礼をお詫びいたします」

からくり族の中でも最高位の自律思考回路を持つヒノエが、深々と頭を下げた。ヨミや桜千と同じく機械知性であるが、その立ち居振る舞いが余りにも人間的な女性のそれであるせいか、あいつらとはまた違う印象を覚える。

俺は集中を解き、巨躯を包んでいた力を霧散させて元の姿に戻った。

「……よく俺だって分かったね。今の俺、自分でも誰だか分からないくらい変わっちゃってるんだけど」

「どうしてでしょうね。理屈ではなく、一目で分かりましたよ。六条様は私のサブマスター権限保持者ですから、印象以前に魂の波長が記録されています。……それで、やはり御用は『マスター』のことでしょうか?」

「ああ。聖勇国での話は知ってる。でも米崎にしては、あっさり死にすぎたと思ってね。それでなんとなく思ったんだ。あいつ死んだことになったし、ついでに『自由』になりたかっただけじゃないかって」

「だとしたら放置しないのですか?」

「しないよ。あいつ一人だけが楽をするなんて許せないし、死んだふりをしてるなら、ちょっと無理に連れ戻してやろうかと思ってさ。まあ本当に死んでたら残念だけど」

「六条様ぐらいです。博士を使い倒そうなどと考えているのは」

「そんなにひどいことは思ってないんだけど……心情としても、あいつには生きていて欲しいから、こうして探しに来た」

俺の言葉を聞いたヒノエの唇が、わずかに弧を描いた。

「やはり、そうなのですね。ふふ、博士は常々仰っていましたよ。『僕のような嫌われ者が消えたところで、誰も気に留めはしないだろう。せいぜい精巧な道具が一つ壊れた程度に思われるぐらいさ』と」

「あいつにしては、珍しく予測が外れてるな。他のみんなはともかく、俺は結構気にしてたよ。多分、南雲さんや他のみんなだって、いろんなバタバタが落ち着けば、真っ先にここを疑いに来たはずだ」

「……私も、そう思います」

ヒノエの瞳に、プログラムされた色ではない、本物の親愛の情が宿ったように見えた。

「あいつについて、何か知っていることがあるなら教えて欲しい。もし生きて別の場所にいるなら、案内してくれるかな?」

「畏まりました。……こちらへ。ついてきてください」

俺が無理やり破壊しようとした場所ではなく、正規の『入り口』があるらしい。ヒノエは俺の先を歩き出し、屋敷のさらに奥、廊下の突き当たりへと向かった。そこは俺の索敵でも『ただの壁』としか認識できなかった場所だ。

ヒノエがその壁に指を触れると、彼女の手首から先が水面に沈むように壁の中へと消えていった。

「ここは、権限を持つ私だけが透過できる特殊な境界です。他の者にとっては、どれほどの索敵もごまかす絶対不透過の壁となります。……今、六条様にもゲスト権限を発行しました。そのまま中へ」

「了解。……正規ルートを知らなきゃ一生たどり着けないな」

苦笑しながら、俺は壁の中へと足を踏み入れた。特定の生体・魔力反応に呼応して、局所的に【異界反応】を引き起こすギミックだ。米崎らしい、嫌らしいほどに徹底したセキュリティである。

壁の向こう側は、一転して完全な闇だった。

米崎が指定した座標以外はすべて【異界】の虚無。足場があるのかさえ判然としない闇の中を、俺は五感ではなくサファイア級の直感と気配を頼りにヒノエの背を追った。

闇の中で、何度も鋭角に曲がる。物理的な距離感さえ狂わせる、空間拡張を応用した三次元迷路。この様子だと、仮に俺が力技で次元の膜を破って突入したとしても、座標の不一致で虚空に放り出されていた可能性が高い。

迷路を抜け、さらに深く。

物理階層で言えば地下数百メートルに相当する地点まで、幾重にも折り重なった階段を昇り降りした末、ようやく一つのフロアに辿り着いた。

剥き出しの無機質なコンクリート壁。それほど広くもない、息苦しいほどの空間だ。羅鬼の姿のままだったら、確実に天井に頭をぶつけていた。目の前には、装甲板のような分厚い扉が一つ。俺が手をかけようとすると、ヒノエが制した。

「お待ちを」

「何で?」

「その扉に触れないでください。私以外の生体反応が触れた瞬間、室内の【超長距離転移装置】が強制発動します。博士は、私でも予測不能な『世界のどこか』へ瞬時にパージされる手筈になっています」

「あ……うん、了解。徹底してるなあ」

「申し訳ありません。……博士は、何よりも『絶対に死にたくない』と仰る方ですので」

「そっか。……安心したよ」

やっぱり、あいつは潔く運命を受け入れて死ぬようなタマじゃなかった。泥臭く、執念深く生き延びている。その事実に、俺の胸に温かな灯がともる。確実に生きてるんだと思えた。

ヒノエが認証を済ませ、扉をゆっくりと開いた。何らかの手違いでパージされたら目も当てられないので、俺は彼女に促されるまで外で待機した。

「どうぞ。ここから先は、もう仕掛けはございません」

その言葉を信じ、俺は部屋の中へと足を踏み入れた。そして、目の前の情景に絶句した。

「……なるほど。そう来たか」

それは、あまりにも米崎秀樹らしい、合理性と狂気が同居した光景だった。

広大な――それこそ東京ドームの内部を思わせるほど拡張された地下空間に、無数の金属製の円柱が森のように整然と並んでいる。そして、そのすべての柱の頂部には透明な円筒形の水槽が据え付けられており、その中には……。

数えきれないほどの『脳』が、ゆらゆらと浮遊していた。

「……これ、全部あいつの脳みそか?」

若干……いや、かなり引きながら、俺は問いかけた。

マッドサイエンティストという言葉でも生ぬるい。バックアップ用のクローン脳をこれほどまで大量に並べるその姿は、正直言って気持ち悪いし、生理的な嫌悪感を禁じ得ない。だが『死を徹底的に拒絶した男』の執着の結晶なのだ。

「いえ。この無数のアーカイブの中で、二つだけは別の個体の脳です。一つは博士が長年保存し続けていた、かつての『因縁』の方の脳。……そしてもう一つは、ゴールドエリアにて博士と婚姻の盟を結ばれたブリュンヒルデ様。あの方が、博士と共に在るために、自ら望んで 脳殻(ブレイン・シェル) への移行を選択されました」

「う、うーん……。あいつ、愛だの恋だのには興味がないふりをしておいて、やることはしっかりやってるんだな」

「博士は照れ屋ですから」

「照れ屋……」

「さあ、喋れますよ。というか、先ほどから六条様の声を聞いて、いつ、どのタイミングで嫌味を言ってやろうかと悩まれているはずです」

ヒノエがクスリと笑った、その直後だった。空間全体に設置されたスピーカーから、聞き慣れた、あの不遜で、どこか楽しげな男の声が降ってきた。