軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百一話 Side桜魔 忌み子

Side桜魔

この世界で闇の属性は嫌われていた。だからそんな子供のことは忌み子。闇の属性を持って生まれてくるとそう呼ばれる。生まれなければよかった子供。生まれても誰も喜ばない。早く死んでくれることだけを願われる。

それなのに殺されるわけでもなかった。闇の属性を持つ者を殺せば、自分も闇に呪われる。私の生まれた国、サクラマギア魔導国ではそう信じられていた。実際そういうことが何度かあったらしい。だから私は母から最初に言われた。

『どうしてあなたなんて産んでしまったの。あなたを産んでしまったから私はもう二度と幸せになれない。私が忌み子を産んだから他の者まで私を恐れる。悪魔の子供を産む女。そう言って恐れる。お願いだから早く死んで』

そんな言葉を言われた。母を私が生まれた5年後に自殺した。母はそれで救われたのだろうか? 救われていたらいいなと思う。母は私が悪魔だから生きてる時は毎日泣いてた。私を産まなければよかったと毎日泣いてた。

死ねば楽になったのだろうか。じゃあ私はいつ死ねるのだろうか。私はそんな中で育った。一応サクラマギアの王族として生まれたのだ。母は王様の妹だった。そう知ったのはずいぶん後のことだ。私の中にはかなり濃い王家の血が流れてる。

この国では王家の血統が、代々王様を輩出してきたから、それはとても大事な血統で、『尊き青い血が流れている』と言われた。それでも私は城の地下に住み、外からは隠され、世話をする召使いも私を嫌ってた。

『今日はあの気味の悪い子供のお世話当番よ』

『あんまり言ってると呪われるわよ』

『あんなのでも王族なのよ。あんまり悪口言ったら叱られるわ』

『馬鹿ね。王様も王妃もみんなあの子が死んでほしいって思ってるのよ。誰が咎めるものですか。悪口を言ってあの子が早く自殺でもしてくれたら、お二人とも大喜びでご褒美をくださるわ』

『それは違いないわね』

みんな私が疎ましかった。ただそんな私に一つだけ取り柄があった。この世界では15歳になってダンジョンに挑めるようになる。どんなに小規模なダンジョンでもそのルールだけは同じだった。だから15歳まではみんな弱い。

どんなに強い種族でも、それまでは普通の人と変わらない。そのはずなのだが、私はどういうわけか生まれた頃から魔力が高く、城の中で一番強い騎士団長を10歳の頃に倒した。騎士団長は訓練のはずが真剣を持っていた。

それでも簡単に勝てた。

この人どうしてこんなに弱いんだろうと思ったのを覚えてる。

『お、お許しを! 私は別にあなたを殺そうとしたわけではなく!』

その時勢い余って殺してしまった。その殺した原因が闇魔法の制御ができていなかったこともあり、同時に10人ほどが死んだ。そのことで余計に怖がられるようになり、

『忌み子はやはり生まれた時に殺すべきだったのだ!』

『どうするのだ! 今さら殺そうとしても逆にどんな目に遭わされるか分からんぞ!』

『どうして誰も教えていないのに魔法が使えるのだ!?』

『こうなってはもう“あの方”を頼るしかないのではないか?』

『あの方とはセラス様か?』

『無理だ。セラス様は国の事情なんかで動いてくださる方ではない!』

セラス様。この世界の神様。本当にいるのかいないのかよく分からなかったけど、どうやら本当にいるようだ。どんな存在なのか会ってみたいと思った。でもそれは叶わないのだろうなと諦めた。

『ではローレライ様は?』

『ローレライ様は清廉潔白な方。子供をずっと地下で閉じ込めていたなどと知られれば、こちらの方が処分されかねないぞ』

『ではどうするのだ?』

『だからもう一人いるだろう。こういうことに首を突っ込む清廉潔白にして、悪には苛烈な対応をされるセラス様の騎士が』

誰のことだろう。よく分からなかったけど妙なほど興味が惹かれた。

『あ、あの男は隣国の王だぞ。しかもホメイラとうちの国は長年の敵対関係だ』

『言ってる場合か! 呪いも恐れずにあの子供を処分してくれる存在がいるとすれば、最強の光属性を持つあの男しかいない。それに今しかない。15歳になってダンジョンに入り“超越者”になられたら我らは終わりぞ。我らはあの忌み子に嫌われてる。きっと皆殺しにされる!』

私を処分するべきとお城で声が上がったが、実行する時にまた誰か死ぬかもしれない。だから誰もやりたがらなかった。そして話はまとまらず時間だけが何年も過ぎた。みんな私の成人が近づくほど、私の復讐を怖がってた。

私という悪魔が徐々に城の地下で自分たちの死のカウントダウンを唱えている。

そんな恐怖にとらわれてるようだった。

その恐れは態度に現れ、私の扱いは徐々に良くなって、普通にご飯は出してくれるようになった。今更こんなことでご機嫌を取られても微妙だったし、地下から出るつもりもないし、生まれてずっとここで過ごしたからここが私の家だ。

復讐するつもりもなかった。むしろ事故で殺してしまった騎士団長たちについて申し訳ないと思ってる。でも徐々に扱いが良くなって、優しくされることは素直に嬉しくて、大人たちの好意を私はまだ信じてた。

『あなた。あなた。あなた!』

でも私の15歳の成人が近づくほどに、大人たちは焦って取り繕うことができなくなって、私も大人たちは私がひたすらに怖いだけなのだと理解させられた。

うるさい。もう私に何も聞かせるな!

きっと15歳を過ぎても私は人に怖がられたまま生きていく。

『分かっているのですか! あの子が15歳になるまであと1ヶ月ですよ! 私たちはあの子の存在を今まで外に隠し続けてきた! あの子には教育も与えていない! 5年前まではほとんど食事も与えてなかった! あの子はそれでも死んでくれなくて! 立派に化け物に成長してしまったのですよ! 分かっているのですか!? レベル150の騎士団長をあの子は10歳で殺したのですよ!? 私たちなんて簡単に殺せますわ! 早くホロス様をお呼びしてください!』

楽しいことなんて何一つ起きない。

『しかしホロスは敵国の王ぞ。敵国の最強戦力を自分たちで国の中に入れるのか?』

私は何のために生きてるんだろう。

『そんなことを言っている場合ではないでしょう! 15歳になったら、そのものが望む限り、どんな子供でも絶対にダンジョンに入れなければいけない決まりですよ! これを破ればセラス様に粛清されます! あともう少ししたらあの子に私たちは殺されるのですよ!』

いろんな声が私の耳の中に入ってきた。この頃には城の中で起きていることを全て魔法で知ることができるようになっていた。私は人の声が怖いのに、誰に教えられることもなく自然とできるようになっていた。

いずれ私を殺しに来るホロス。

隣国巨人族の王様。

セラス様は神様。ローレライ様は神の使徒。ホロス様が人間で一番偉い人。そして強い人。多分私より強い人。また中途半端な人が来たら嫌だけど、その人は多分私を殺してくれる。みんな私に死んでくれと望んでる。

でも私は自分で死ぬのは怖いから、誰かがあまり痛くないように殺してくれたら嬉しかった。それでみんな安心して眠れるようになる。私を産んだ女の人も、私に『死んでほしい』と毎日叫んでいたことをまだ覚えてる。

みんなきっと私が死ねばようやく安心できるようになる。

だからその時が来れば今度こそ大人しく死んであげよう。前も死んであげようとしたのに、なんだかチクチク痛いのが続くだけで、なかなか死ななくて嫌だからちょっと魔法で抵抗しようとしたら殺してしまった。

次はそんなことなければいいなと思った。

『この度はようこそおいでくださいました』

その人は噂の通りだった。

『ふん、お前のお爺様はもっと気骨のある人間だったがな。まさかあの年寄りの孫が敵国の王を自分の子供を殺すために国の中に入れるとはな。驚いたぞ。いや、このまま俺が国を乗っ取ってやりたいほど腹立たしい。お前は一体何なのだ? 王か? それとも国の害悪にしかならんウジ虫か?』

まるで巨大なモンスターのように大きくて、縦にも長いし横にも広かった。

『ご、冗談を申しますなホロス様。お互い一国の王ではありませんか。王ならばその重責がどれほど重いかお分かりでしょう。あなたと違い非才なる私は15年もこれで悩み続けてきたのです。偉大なる隣国の王よ。どうか我らにその力をお貸しください。きっとあなた様もあの化け物を見れば納得してくださるはず』

『お前のところに娘がいるなど初めて聞いた。よほど必死になって隠していたのだな。正直、その子供を使って、私を城の中に連れ込んで暗殺する気ではないかと疑っているぞ』

『そ、それは忌み子の存在ですから隠していただけです。ホロス様を殺すなどとんでもない!』

ひと睨みする。それだけで王様は震え上がっていた。本当に怖くて仕方ないみたいだ。私の魔法で仕掛けた目にホロス様が気づいたみたいで、私の仕掛けの方角を見た。

『ふん、まあいい。私を殺そうとするぐらいの根性があれば、まだこの国にも救いはあっただろうに、まあ愚かな王ほど平和な時には向いているか。だとしてもひどい。おい、ウジ虫』

『そ、その言葉をさすがに取り消していただきたい!』

『娘をさっさと連れてこい。お前たちの言う通り本当に殺すべきか否か、俺が判断してやろう』

ホロス様は欠片も王様に興味がないみたいだった。私はそんなあの人にいつのまにか目を奪われていた。みんなが話しているのを聞いていた。声はずっと聞こえ続けていた。このお城の中で起きることは全て私の耳に入ってくる。

大人たちは私に何も教えていないからバカだと思ってるけど、多分私はこのお城の誰よりも賢い。だからこの時だって自分がこれから死ぬと知ってた。ようやく終われるんだ。使用人が震えながら私を呼びに来た。

私はずっとお城の地下にいたから、そこから出るのは久しぶりだった。地上部分に出ると窓から差し込む太陽の光が体に染みた。闇属性だけど、悪魔だけど太陽の光が体に当たることは気持ちが良かった。

でも使用人は私を案内しながら震えすぎて歩くのも辛そうだった。

『大丈夫。そんなに震えなくてももうすぐ死ぬから』

『ひっうっ。お、お許しを! 呪わないで呪わないで!』

ようやくあなたが怖がる原因が死ぬというのに、どうしてか、怖がられて頭を下げてそのまま震えだした。

『……ごめんなさい。もう何も喋らないから案内だけして欲しいのだけど』

あなたが案内してくれないと、私があなたを殺したと思われる。それは困るのだけど怖がりすぎて動かない。

『呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないで呪わないでええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!』

仕方がない。私はため息をついた。私も場所は分かっていたから1人で私を殺してくれる人のところへ向かった。それはお城の中にある訓練場で、人払いされていて他に人はいなかった。王様と王妃様と、そしてあの方だけがいた。

『お待たせしました』

私はその中に1人で歩いて入った。

『お、お前! 案内のものはどうした!?』

それを見て王様が怯えた。ほらやっぱり怖がるじゃない。

『ま、まさか殺したのですか!? ホロス様この子です! この子が全て悪い! 罪の子供です! どうか! どうかこの恐ろしい子供を殺してください! 私達はもうこの子供を見ているだけでも辛いのです!』

王妃様が悲鳴のように叫んだ。

『殺してくれどうか殺してくれ』『怖いのよ。この子が怖くて仕方がないのよ。きっと私たちをいつか殺しに——』『やかましい!!!』

『『ひぃっ!』』

王様と王妃様は訓練場の地面にへたり込んだ。2人とも大人なのにおしっこを漏らしていた。私の方はそれにも興味がなかった。その人を直接見てすぐに分かった。この人は騎士団長なんかとは違う本物だ。

今まで見てきた人間と体から放っているオーラが違う。

強く光り輝くオーラ。

抑えようとしても抑えきれない輝き。

あまりにも圧倒的な存在感。

これが地上最強の人。

ああ、よかった。

きっと私はこの人には勝てない。本当に良かった。

『……やっと死ねる』

心からそう口にした。

『娘。死にたいか?』

その人が歩くと地面が揺れて、その人が目の前に立った。

『はい。もう生きるのがしんどいです。どうか私を殺してください』

『死ぬのは痛いぞ。それでも良いか?』

私を殺す人なのに、その言葉は妙に優しく聞こえた。痛いと言われて、騎士団長のチクチクを思い出す。あれはかなり嫌だった。痛いだけでなかなか死ななかった。

『痛いのは嫌です。できればあまり痛くないのがいいです』

私がそう言うと、ホロス様とは違う人が答えた。

『何を言ってるのこの悪魔! あなたなんて苦しみもがいて死ねばいいのよ! ホロス様! 騙されてはいけません! 見た目は可愛い少女ですがこのものは確かに悪魔なのです! もう10人以上人を殺してますの! 実の母親もこの少女が殺したのですわ!』

『やかましいと言ったな?』

ホロス様が王妃様を見た。

『ひ、ひいっ』

王妃様はもうそれ以上喋らなかった。

『あの、わがまま言ってごめんなさい。痛くてもいいので殺してください』

『そうか。それは困った。私は痛くしないで人を殺すことができん』

『だから痛くてもいいです』

『聞こえん。痛くせずに殺す方法がない。だから殺すのはやめる』

そう言って大きな体を屈めて、あの方は私の頭を撫でた。

『な、何を言われるのだ! それでは約束が違う! 何のためにあなたをこの国の中枢に入れたと思うのだ!?』

王様が震えながら叫んだ。

『そんなことを俺が知ったことではない。だが「これでは約束が違う」というお前たちの言い分を少しは聞いてやろう。娘、名前は?』

『知りません』

名前は呼ばれたことがなかった。だから名前はなかった。私に名前があるのかも知らなかった。

『おい、この子の名は何だ?』

代わりにホロス様が聞いてくれた。

『い、忌み子に名前などつけるわけがありませんわ!』

『名前がないか。よく今まで生きてこれたものだ。では娘、お前はこれから“ 桜魔(おうま) ”と名乗れ。桜の字に魔法の魔だ』

『その名前ってもしかして……』

私はすぐにその名前の意味がわかった。

『おお、気づいたか。察しが良いではないか。そうだ。この国と同じ名だ。サクラマギア。お前の爺様もお前のように才能のある御仁だった。お前の家系は不思議とたまに天才が現れる。その中でもお前は特別に才能が豊かだ。ダンジョンに入る前にここまで魔力が強いのは俺も初めて見たぞ。残念ながらお前の爺様は、超越者にはなれず早く死んだが、お前が立派に国を背負えば喜ぶであろう』

そう言ってあの方は私を持ち上げるとその大きな肩の上に乗せてくれた。そしてそのまま空へと浮かび出した。訓練場は天井がなかったからどこまでもどこまでも空へ行けた。私は初めて空の上に来てとても気持ちいいと思った。

『そ、その子をどうする気ですか!?』

下で王妃様が悲鳴のように叫んだ。

『お前たちがどうしてもいらないと言うなら俺がもらってやろう。しかしこの子は間違いなく超越者になる。俺は誘拐犯ではないからな。超越者になったらこの国に帰してやる。よく覚えておけ。必ずこの国へとこの子は帰ってくる。おそらく10年ほどだ。10年もかからんかもしれん。お前たちはそれまで首を洗って待っておけ。お前たちの処分をどうするかはその時の“桜魔”に任せよう』

私はホロス様の国に来た。城にいるのは巨人ばかりで最初は戸惑ったけど、巨人は闇属性とか全く気にしない人たちで、みんな私に優しかったから私はすぐに慣れることができた。巨人の国では毎日が楽しく、全てが夢のように過ぎた。

ホロス様の言葉通り、私は瞬く間に超越者になった。そして、それ以来私はすっかりホロス様一筋の女だ。ホロス様以外の男など考えられなかった。他の男は全て穢らわしく思えた。それなのに巨人と普通の人では結ばれることはなかった。

『桜魔、俺はこの国で結婚して嫁もいる。だから、お前はお前でちゃんとあの国で結婚して幸せになれ』

『悪魔の私がですか?』

『お前は悪魔などと呼ぶものは、もう、お前の前に現れない。お前も幸せになれるのだ』

私は好きでも、ホロス様はそうではない。娘のように思ってくださってる。そのことは知ってた。でもある日私が告白した。その時、私の思いを否定しなかったのは、ホロス様が優しいからだ。それにあの方にはもう妻がいた。

私などホロス様にとって子供にすぎなかった。それでも私はホロス様のそばに居たくて、国元に帰ってから、ホロス様の城の近くに魔法で丸ごと城を移築した。迷惑でしかないのは分かっていたけど、自分を止められなかった。

『私はホロス様以外の男など無理です』

国に帰ってからも毎日のようにホロス様のところに通った。そんな私をホロス様は許して受け入れてくれた。王妃様も優しい方で私が来ても嫌がらなかった。

『あなた。桜魔はこれほどあなたを思っているのです。巨人と人では子供はできませんが、正妻にしてあげても良いのでは?』

逆に私の応援をしてくれるぐらいだった。でも、

『ダメだ。それは許さん。お前はサクラマギアの女王となるために国に帰り、女王となった。王は王の務めを果たさねばならん。子供を作るのは王の定めだ。特にサクラマギアの王家は、天才が生まれやすい。故に血統主義が取られている。青き尊き血とまで言われるのはそのためだ。サクラマギアの王家にはもうお前しか正当な血統を持つ者がいない。その甘えは許さん』

それでも私は200年ぐらい誰とも関係を持たなかった。それなのにあの人は私の心など分かってくれていないのか、自分の妻が寿命で死ぬたびに、新しい妻を娶って子供を産んで、私にも早く誰かと結婚しろと言ってくる。

勢いに任せてつい一番よく私の言うことを聞く召使いの男の子と関係を持ってしまった。嫉妬させたくてそのことを報告したら、心底喜ばれて釈然としなかった。

『確か今年で219歳だったな?』

『220歳です。誰か様のせいで超越者としても中年おばさんです』

『そうか! ようやく処女でなくなり、大人になったのだな! これで国も安泰だ!』

そんな風に言われたのが悲しかった。でも私は結局召使いの男の子の子供を産んだ。今も大事に育てている。それからさらに2人生まれて、うち1人の末の娘は私と同じく生まれながらに魔力が高かった。

私ほどではないが、多分あの娘が跡継ぎになる。私は役目を果たした。それなのに正当な王族は私しか残っていないせいで、私はずっと国に縛られているままだ。

そんなことが強制的に思い出されて、私の目の前にいた、私とよく似た姿をした女が口を開いた。

「——あなたも苦労したのですね」

黒いゴスロリ服を着て、とても可愛い女だった。しかしこの女はきっと根性が悪い。どれほど言っても私の心を強制的に覗くのをやめず、青く光る瞳で見つめられると心の中が全て見えてしまうようだった。

「国に帰った頃にはもう王も王妃も城にはいなくて、王家の正統な血が全ていなくなっていた。あなたが巨人の国にいる間に、あなたの復讐を怖がった人たちによって、勝手な粛清が起きた。あなたを蔑ろにしていたと断定された者たちは、全て魔女裁判のようなものにかけられ、木に串刺しにされた上に、燃やして殺されてたわけですか。そしてあなたはそのまま超越者として女王となった」

「やめろと言ってる! 私の心を勝手に覗くな!」

あの青い瞳で心を覗かれる時、吐き気のようなものがして強制的にその時のことが全て頭の中を巡ってくる。何とか対抗しようとするのだが、どうしてもうまくいかなくて私の大事なものを全て見られた。

「すみません。ステータスだけを除くつもりだったのですが、つい、あなたの心に共感してしまいました。必要のない部分まで見てしまったことは謝罪しましょう。ごめんなさい。おかげで少し戦いにくいです」

「負けた時の言い訳なら、いくらでも用意しておけ。降伏するなら許してやるぞ。私は早くあの人のもとへ行きたい」

どうしたのだ。私の国に何かあればあの方がいつもすぐに駆けつけてくれた。ホロス様とドルティと私。2人と1体が1つになれば、どんな敵でも勝てるわけがなかった。帝王ロガンが攻めてきた時も追い返した。

しかしかなり経つのにあの方が来ない。

「私も誰かを慕う思いは同じなので降伏はしません」

黒い服を着て最初は私と同じ闇属性かと思った。だが水を主体に戦う女だった。超越者としてなかなか強い。しかしこのまま私が押し切る。私の方が強い。全ての面で私の方が上。だから早く決着をつけたい。

しかし心を読まれてこちらの手の内をさらけ出すことになり、攻撃の先を行かれ、全てにおいて上なのに、なかなか決着をつけられなかった。ドルティが城を破壊してしまったところは見えた。ホロス様も珍しく苦戦してるようだ。

こんな時こそ私がお手伝いしなければいけないのに、こんな女に時間稼ぎをされている。

「いいえ、時間を稼ぐつもりはありません。私も早く終わらせたい。決着をつけましょう」

ゴスロリ服を着た女が口にした。どうしてか目の前の女の雰囲気が変わった。それが何故だろうか? 私と似たものに思えた。