軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百七十二話 ブロンズガチャ②

「なんかえらいことになっちまったな」

「本当ですね。マークさん」

局長屋敷から出てきた俺たちは、摩莉佳さんが武官から引き継ぎを終わらせるまで、ガチャを回してしまおうということになった。探索局を出て、転移駅に行き門を潜る。本州まで一瞬でついたことにエヴィーが感動している。

「おう、こんなことまでできるの……」

というより驚きすぎて呆然としていた。ガチャ屋敷の中に入ると、恒例通り、まず美鈴からガチャを回し始めた。

「——もう1回!」

それにしても、回せど回せど美鈴のガチャからは何も出てこない。

「うあーん!」

「しかしまあ、美鈴は悲しくなるほど白しか出ないな」

「美鈴も100回も回せるって事は確率的には1/8ぐらいになってるんだけど……」

「なんか無理っぽいな」

「だー! また外れ! 次!」

それでも50回を超えて、当たりが出る気配はゼロである。まあ気配も何も、美鈴の場合、虹カプセルという年末ジャンボ宝くじで一等が当たるよりも遥かに価値のある代物が当たらなければ白カプセルが出てくるだけなのだ。

美鈴は80回を過ぎたあたりから、空気が淀んできて、やはり今日もダメなのかということがはっきりしてきた。

「やっぱりこれ当たりが入ってないんだ!」

言いたくなる気持ちもわかる。美鈴のガチャからはとにかく何も起きない。ただひたすらに白カプセルが出てくるだけだ。まあ虹が出たら出たで、それこそ本当に大変なことなのだ。

「うぅ、どうせ私はダメ人間だ!」

「あんなこと言ってるけど美鈴は十分強くはなってるよな」

「まあそうなんですけどね」

美鈴も今回のレベルアップで、160になった。そして、

「SP199って、どんな化け物スキルだろうな」

「見てみたいですよね」

【毘沙門天の弓槍】から新しい装備スキルが解放されたのだ。

その名も、

シルバー級【雷槍必誅殺】(SP199)

その威力化け物級。と思われる。まだ使ったところを見たことがない。ただ必要になるSPから考えて、 シ(・) ル(・) バ(・) ー(・) 級(・) に於ける最強スキルと思われる。まさに火力砲台美鈴である。ブロンズ級探索者で美鈴のこのスキルを食らって無事なものなど1人もいないだろう。

しかも美鈴の場合、武器がいいので、ゴールドにも足がかかるような一撃必殺技を使う可能性がある。名前からしてかなり命中に対する補正もかかるものと思われた。

「うわーん!」

そして美鈴は見事撃沈した。全て真っ白のカプセルばっかりが出てきて、白い灰のようになり、部屋の隅に寄って泣いている。そして次はエヴィーである。ガチャ運が悪い人からやっていく。俺たちのガチャは、そういう慣例みたいなものができていた。

「頑張れ主ー」

そしてエヴィーがガチャを回し出して、リーンがガチャ屋敷で出してもらえて機嫌が良かった。

「任せて!」

エヴィーはブロンズガチャが初めてでフンッと気合いを入れた。

「——よし!」

14回目で早速出ていた。

「リーン! もう1回応援して!」

「了。頑張れ主ー」

と、リーンが好きな伊万里が話しかけにいく。

「リーン。元気してた?」

「問題なーい」

そして28回目のことだ。ガチャからかなり硬い音がしたカンッと響く音。割れてしまわないのかと心配になるような音。それはとても綺麗なルビー色の玉。

「やったわ!!」

エヴィーが嬉しそうにそばにいたリーンと伊万里。2人をまとめて抱きしめた。

「エヴィーさんこれだと3個ぐらい出そうですね」

伊万里も言う。この時ばかりは伊万里も、肩の力が抜けるようだ。

「頑張れエヴィー!」

そして美鈴はもう立ち直っている。その立ち直りの原因である【毘沙門天の弓槍】。レインボー級とはよく言ったものである。持ち主のレベルが上がれば上がるほど、自分も強さをクラスアップさせていく。

ストーンからブロンズへ、そしてシルバーへと。勝手にどんどん強くなっていく。それはまるで虹色だ。虹装備、死ぬほど出にくいが、出した時、その価値は計り知れない。

「リーンはなんて言ったっけ?」

不意にマークさんがそう尋ねてきて少し考える。なんのことかと思ったがすぐに思い当たった。

「ブルーウィングですよ」

「おう、それそれ」

そしてエヴィーも召喚獣が順調に成長していた。リーンのブルーバーがレベル3に上がり新しい装備スキル【ブルーウィング】というものが使えるようになった。名前そのままに蜂のような羽が背中に生えて、飛ぶことができる。

リーンと【人獣合体】した状態でも使うことができ、エヴィーは空を飛ぶスキルをラーイだけでなく自分自身も手に入れたことになる。

「ブロンズぐらいからみんな空を飛ぶようになってくるんですね。俺も疑似的に飛べるし」

「いいな。俺も空を飛びてーな」

マークさんに加えて美鈴も飛べないが、俺はガチャの飛行石で飛べる。伊万里も【光天道】で飛ぼうと思えば飛べる。しかし俺たちがどんどん強くなってくればくるほど思う。五郎左衆はそれが250人いる。

「よし!」

そしてエヴィーは何度目かになる喜びをあらわにする。

「エヴィー。結構良かったじゃねえか!」

「ありがとうマーク!」

2人もギュッと抱き合う。そして俺の方にもハグを求めてきて、さらにしっかりキスをした。エヴィーの結果は、ルビー1、金8だった。ルビーはもう1つ出て欲しいところだったが、悪くない結果だ。

そして次にマークだった。

「よし! 俺もやるぜ!」

何気にマークはガチャを回した経験がこれで2回目らしい。以前はデビットさんと回したらしくて、その話になるとかなりしんみりしてしまった。マークさんのガチャ運はレアジョブだから2なのだ。

その結果は、

「——うぬぬぬ」

かなり渋い。マークさんが歯を食いしばる。

ルビー1、金5である。そもそもマークさんは第1クエストに関わっていないから、ガチャを回す数自体がエヴィーより少ない。それもあるのだが、ガチャ運から考えるともう少し出ても良かった。

何よりもマークさんは切実に専用装備が欲しいのだ。レベル130まで一気に上がっているせいで、ガチャを回したこと自体が少ないのだ。

「次は私なんで交代してくださいね」

「……ハハ。OK」

マークさんが大きい体を小さくしてとぼとぼと譲る。伊万里は小さい体で気合を入れる。逃げるよりも戦うしかないとだんだん決めてきてくれてるのか。珍しく明るく笑った。そうして俺たちはガチャを回していくのだった。

「——祐太……」

「なんですかその目」

俺の気味が悪いぐらいの当たりっぷりにマークさんがドン引いてる。

「ガチャ運がいいとは思ってたけど、なんかお前だけ別のことしてるみたいだな。祐太の時だけ当たりしか入ってないんじゃないのか?」

そんなマークさんの言葉は気にせず、俺の方も全部回し終わっていた。

「じゃあここで集計するわよね?」

こういうことを率先してくれるエヴィー。さっさと俺のルビーカプセルを拾い集めて、伊万里と美鈴でカプセルを開けていく。女子3人組で今回のガチャ結果をまとめ始めてくれた。俺はそれを横目で見ながらマークさんとまた2人で喋った。

それにしてもパーティー内に男がいるっていいなと思う。何気ない会話に一切余計なものが混じっていない。何よりもこれは“友達”と言えるのではないだろうか? 友達……いい響きだ。そうか。マークさんは俺にできた初めての友達。

まさかシークレットサービスみたいな人が最初の友達とはな。だが、友達との語らいに邪魔が入った。

「祐太。リーン久しぶり。何か言う!」

リーンである。エヴィーを助けている間、24時間も経っていないのだが、寂しかったようで後ろから首に抱きついてきた。今回はほとんど活躍することができず、召喚もされなかったのだ。リーンとしてはかなり鬱憤がたまっただろう。

「久しぶりに会えて嬉しいよ。リーンがいなくて寂しかった」

「そうだろう。そうだろう」

背はまだまだ小さいくせに胸はちゃんとあって、押し付けてくる。戦闘禁止区域の中なので、鎧は来ておらず、気持ちいいなと思った。やはり女子もいい。何かと厳しいことが多いが、やはり探索者になってよかったとつくづく思った。

「祐太。今回は主の緊急事態だというのに何も役立てず済まなかった」

ライオンの背中に翼を生やしたラーイも傍に来て、感情表現が正直なリーンを羨ましそうに見ている。サイズは小さくなっていて、あまり人型になることはなくなった。こちらの方が気楽らしい。

俺はそんなラーイの毛を撫でる。気持ちよさそうだ。

「お前は相変わらずモテモテだな」

「そうでしょうか?」

「俺なんてもうかなりご無沙汰なんだぜ」

マークさんは彼女をほったらかしにしていたら、振られたらしい。仕方がないとはいえ寂しそうだ。

「お前、寂しそうだから黒桜を抱っこするにゃ」

マークさんに黒桜が飛び乗ると抱っこされた。

「お、おう。よろしくなマークって言うんだ」

「よろしくにゃ」

マークさんは筋肉もりもり男で、小さい猫を抱っこして力を入れすぎないか心配しているようだ。黒服マッチョが子猫を相手にそわそわしている姿はなんだか可愛かった。

「マークさん。黒桜は意外と雑に扱ってもいいんですよ。案外頑丈ですから」

「失礼にゃ。黒桜ほど繊細で壊れやすい猫はいないにゃ」

「よく言うよ。殺しても死なないくせに」

「そんなことないにゃー」

「なあ、祐太。全然話が変わるけど戦力の方を用意できそうなのか? 正直これに関しては、俺は全くアテがない。軍人仲間で強くなったやつはいるが、アメリカにいてそれどころじゃないだろうしな」

「正直、俺も思いつく一番の人は多分アテにできないと思います」

このクエストが手伝いに対して無制限に解放されているなら、それこそ“南雲さん”に手伝ってもらってもいいのだ。ただその場合間違いなく、南雲さんの存在が知れた瞬間五郎左衆はことごとく逃げ散るだろう。

それにあの人レベル1000超えてるのに、隠れるのが苦手とか言ってた。何よりも探索局で、聞こえてきた言葉が気になった。

『あの噂聞いたか?』

『ああ、やべえよな。【軍拡に対する質問状】だったっけな。【近年著しい日本の軍拡による近隣諸国に対する高圧的な外交が目に余る。これは近隣諸国存続の危機ともいえる。よって早期に日本はこれに対応し、軍縮をしなければならない。回答期限までに返答なくば、六英傑による実力行使も辞さず】。だって。これ、すげえ言いがかりだよな』

『要はどういうことだと思う?』

『さあ、まさか今更日本の自衛隊のこと言ってるわけじゃあるまいし、探索者のことを言ってるんだろ。だとしたら、削減ってどうやるんだよ』

「まあなんかきな臭いよな。ある意味日本は勝ちすぎてるからな……。まさかとは思うが」

「想像しても仕方ありませんよ。とにかく俺も一番のアテは頼れそうにないです」

ここ最近ずっと忙しそうだった。もし噂の内容が関係しているなら、俺のことを手伝ってもらうわけにもいかない。別の誰か……一人でもいいから、化け物級に強い人が協力者にいてほしかった。

「……ブロンズ級の人たちは助けてくれそうな人がいるんですけどね。それ以上となると」

「250人全員ぶっ殺すんだろ。こっちが同じブロンズばっかりだと戦力的にやばい。まあ俺たちレベル160にしてはかなり強いと思うが、それでも向こうだって強いやつはいるはずだしよ」

「そうなんですよね」

相手は250人いるのだ。同じブロンズの探索者だけでは、かなり慎重に行動しなきゃいけなくなる。それがもし上手く行ったとしても、壊滅まで追い詰めるのにどれほどの時間がかかることか。

「祐太。集計できたわよー」

エヴィーの言葉を聞きながら、一人、こちらが見返りを用意できる形で誘える高レベル探索者がいる。そう考えていた。