軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第百三十九話 第五回ガチャ

「——おまたせ」

つやつやの顔になったエヴィーと並んで、俺はホテルから出てきた。エヴィーが常宿にしていたというニューヨークにあるホテルのスイートルームを勝手に使わせてもらったのだ。

「エヴィーどうだった?」

まあ、そうは言っても、ダンジョン内にある建物に所有権など誰にもないし、電気すらも通っていないので、スイートルームだろうと結構不便である。それでも水はエヴィーがお湯で出すことができるので、お風呂に入ることはできた。

「きっちり24時間。ずっとひとつになってたわ」

「……いいな」

レベル上げが早く終わった俺と美鈴は二人でいられる時間が長かった。それでもモンスターが空気を読むわけもない。声が漏れるとすぐにばれるし、こそこそこそこそしていた。まあ、それはそれでよかったけど。

「美鈴は二週間も独占してたでしょ?」

「私はまとまった感じじゃなくて、休憩の時だけだもん。一日30分もないぐらい。トータルしたら絶対エヴィーの方が多い。ね、伊万里ちゃん」

「私に振らないでください」

それにしても酷い会話だ。ダンジョンが現れる前の倫理観なら、間違いなく俺は世間の鼻つまみものである。それがそうではなくなって、男も女もそういう常識的な倫理観がなくなってきている。

むしろ今まで通りの常識が、通用していることのほうが少なくなってきている。そのせいか伊万里は今のところ、この関係性に文句を言ってくることはなかった。それが逆に不気味にも見えたけど、だからってあえて聞くことはなかった。

この三人にはミカエラとの【約束の頚木】のことは話していなかった。そして俺は何も知らない三人に、申し訳ないが甘えさせてもらった。おかげでこの半月程の間でかなりメンタルを持ち直すことができた。

真莉愛……。

自分が決着をつけた。

できればもう二度とこういうことはしたくない。心からそう思った。

「またまたー。伊万里ちゃんが一番すごい癖にー。ちゃんと聞こえてるんだぞ」

「その良すぎる耳、切り落としましょうか?」

女子三人の話に俺は距離を置く。俺は召喚されているリーンとラーイとクーモ。そしてなんだかもう一体いたので声をかけた。

「大きい猫?」

「黒い桜で 黒桜(こくおう) にゃ。宜しくにゃ」

毛足の長い黒い猫。しっぽが三本ある。そしてでかい。5mぐらいあるのだ。どうやらエヴィーの新しい召喚獣だそうで、猫の品種で言えば、シャンティリーのような感じである。

「はあ? 君は女の子?」

まず、そこから確認する。むしろそれ以外はそこまで気にならなかった。

「そうにゃよ」

「な……七対一か」

どこのどなたかは存ぜぬが、女の縁ばかりが増えていく。南雲さんは『ダンジョンでの縁を信じろ』と言っていたけど、俺は男の縁が無いらしい。ああ、マークさんと早く合流したい。今一番会いたい人は南雲さんとマークさん。

なんというか、女子トークを始められると、完全に蚊帳の外になるのだ。だから俺はエヴィーの召喚獣たちにこういうときは相手をしてもらう。

「祐太。白蓮様という方の紹介でな。捕獲したのはいいのだが、『外に出たい』とやたらとうるさいから『連れて行くのじゃ』と言われたのだ」

ラーイが教えてくれた。何気にラーイもすごいことになっている。黒桜みたいに尻尾が何本もあるわけではないけれど、尻尾がヘビになっていた。そして背中からは翼が生えていて、どうやら飛べるらしい。

おまけにたてがみが生えて、なぜかオスみたいになっている。でもメスらしい。たてがみの理由は尻尾のヘビにあるらしいのだ。どうもこの尻尾のヘビは雄なのだそうだ。でも今は黙っていて何も口を利いてくれなかった。

「すまない祐太。どうも気難しいやつでな。普段は私にも口を利かないのだ」

「ラーイ。普通に喋れるのか?」

一通りの説明を聞いて、もう一つだけ疑問がわいて尋ねた。

「ああ」

「黒桜が教えたにゃよ」

どういうわけか獣形態でも、ラーイと黒桜は喋れるようだ。聞くと黒桜がもともと喋れたようで、それを教えたようだ。簡単なスキルとか魔法は、教えてもらえれば使えるようになるということか?

だが、クーモは相変わらず喋らない。クーモにはそういう概念がないのかもしれない。リーンはそんなクーモの上で寝そべりながらこちらを見ていた。どうやらクーモの上がお気に入りらしい。そんなリーンが体を起こして言ってきた。

「祐太。黒桜は魔法に詳しい。主も黒桜に聞いて、お湯の魔法を覚えていた。祐太も教えて貰うといい」

クーモが糸を操って俺を黒桜の体の上に乗せて、モフモフで気持ちよかった。

「へえ、なあ黒桜。俺もなんか教えてくれるか?」

「いいにゃよ。服が透けて見える魔法とか、いろいろ知ってるにゃ」

「じゃあそれからお願いします」

「祐太……」

リーンが蔑んだ眼で見てくる。冗談だから、そんな目で見ないで。

「祐太ー。とりあえずガチャを引きに行こう!」

女子トークは終わったのか美鈴が声をかけてきた。エヴィーと伊万里のレベル上げを待っている間、コイン集めを続けていた俺たちは、そこでガチャコインをまた手に入れていた。

その数、美鈴80枚、俺81枚、エヴィー168枚、伊万里159枚である。

美鈴は【毘沙門天の弓槍】を出すために全部一回使ってしまったので、一番少ない。それでも俺と一枚差である。ひょっとするとガチャ運によってコインのドロップ率が違うのではないか? そんなことも思っていた。

「祐太。ガチャの回し方はどうする?」

エヴィーが言う。

「自分の分は自分で回すってことでいいんじゃないか?」

「ストップ。私は虹カプセルが出るまで、みんなに迷惑かけたし、私の分はみんなに渡すよ。どうせ残り80枚で、虹カプセルがもう一個出たりなんてことはないだろうし」

「却下」

と言ったのは伊万里だった。

「なんで?」

「それ」

伊万里は美鈴の持つ緑と虹色の装飾が施された優美な弓を見た。見ているだけでわかる。恐ろしいポテンシャルを秘めた武器だと。いや、正確に言うと、どれぐらいのレベルの武器なのか、俺には底が知れなかった。

それぐらい異様な雰囲気がある。聞けば美鈴にしか使えず、普段は【天変の指輪】のままなので、【炎帝アグニ】のように超高額で売れるなんてことはないだろうが、とんでもない武器がストーンガチャから出てきたものである。

なんというか、レベルの上がった今の五感で見ていると、周囲に神々しい光を放っているように見えた。

「美鈴さん。虹カプセルからそんなに凄いのが出るんですよね?」

「うん。そうだけど。は!? 言っておくけどちゃんと自分で出したからね!」

「そんなこと疑ってませんよ。そんなものを誰かがくれるわけもありませんしね。それよりも、 田(・) 中(・) の(・) 言(・) 葉(・) が(・) 嘘(・) じ(・) ゃ(・) な(・) か(・) っ(・) た(・) って証明されたわけですから、美鈴さんはどんどんガチャを回してください。その方がパーティーのためになります」

「でも、もう、ストーンから出る可能性は低いんじゃないかな?」

「それは誰も検証していないから分かりませんよね。だったら、さすがに私たちの分まではコインを渡せないけど、800回分。試してみる価値はありますよ」

「俺もそれでいいと思うよ」

「私ももちろんオッケー」

異論があるわけもなく、俺は頷いた。今までは虹カプセルについて、田中の言葉以外何も分からなかった。俺は田中のファンだから無条件でその言葉を信じたけど、

『虹カプセルが出ただけで、12英傑になれた』

とでも言うような田中の発言を、世間では疑っているもののほうが多いのだ。曰く、『田中が自分の能力を隠すために、嘘をついているのだ』という主張だ。だが、美鈴の弓槍を見る限り、あながち嘘ではないと思えた。

何よりも虹カプセルの実在が証明された。正直、世間ではそれすらも疑われていたのだ。まあだからってそれだけではない。仲間に恵まれる運も必要だし、実力もいる。

自分が弱い間、死なないということも必須能力になってくる。俺たちよりも防御力の弱い美鈴はそのことにも気をつけなければいけなかった。あくまで上がったのは攻撃力だけで早く防御力も上げたいのだ。

「そっか。ガチャ回していいんだ」

結果、俺たちは美鈴のガチャ狂いを肯定することになった。

「ところで姿はどうするの?」

エヴィーが聞いてきた。今もまだ姿を変えてしか公の場には出ていない俺とエヴィー。それをどうするかも決めなければいけない。弱いからこそ隠れるしかなかったのだ。だが、

「もちろん。このままで行くよ」

その結論は俺の中ではっきりしていた。

これから先も隠れるのか隠れないのか? レベル100になり、一人前になり、それでも隠れるなんて選択肢はなかった。何よりも俺は曲がりなりにもあのミカエラを殺したのだ。堂々としないわけにはいかないだろう。

「いいのね?」

俺の容姿が飛び抜けて良いのは自覚している。何よりエヴィーはあのエヴィー・ノヴァ・ティンバーレイクである。間違いなく俺たち二人がこのままで行けば悪目立ちする。美鈴と伊万里も魅力値はかなり高い。

この四人でパーティーを組んでいるだけで悪目立ちどころではない。

それでも、

「決めていたんだ。レベル100を超えたら堂々とするって。ミカエラのせい……真莉愛の馬鹿のせいで100になっても暫く隠してきたけどさ。もうそれはやめだ。だいたいコソコソしていたら、弱いって思われるだろう。それも癪だ」

「有象無象がかなり寄ってくるわよ?」

「いいんだ」

こそこそするのが嫌で若干意地になった。

「ふふ、いいわ。まあ、変なのが寄ってこないようにすればいいのなら、ラーイ。私と上まで行くわよ」

「主。良いのか?」

「ええ。いいわ。祐太。私は召喚獣に乗って行くわ。ラーイがいればきっと誰も寄ってこないわ」

エヴィーは楽しそうに言った。5mを超えるライオンが一階層に出現する。間違いなく誰も寄ってこないに違いなかった。

「OK。じゃあそれで行こうか」

「ほかの召喚獣は送還ね。カインでもバハムート以外はほとんど見せないって話だし、手の内は見せない方がいいわ」

「姉貴。あんなこと言ってるにゃよ」

「仕方ない。リーンと黒桜は可愛いすぎる。ファンがいっぱい増えすぎて主に不必要な手間をかけるわけにはいかない」

「おお、そうにゃね! 姉貴と黒桜は可愛すぎるから仕方ないにゃね!」

「そう。それは世界の必然」

「可愛すぎるとは罪にゃ!」

「早く帰りなさい」

エヴィーはそう言うとなんか宣う黒桜達を送還した。そしてエヴィーだけがラーイに乗って、俺たちは自分の足で走り出した。次からは二番目のゲートになる。そこから十一階層は直通である。

だから、ストーンエリアを今回往復すればもう最後である。またストーンエリアに何か用事があればくることがあるかもしれないが、まあまず来ない。

「今回の往復で最後なんだよね」

「そうなるな」

美鈴の言葉に頷く。統合階層での階段は伊万里が発見してしまっているので、うろつくこともない。俺は最後に統合階層の東京スカイツリーを見て、結局一度も上らなかったなと思いながら、上の階層へと戻った。

「お、おい、あれ!」

「うわ、ちょっライオンでか!?」

「なんで!? ゴブリン以上はいないんじゃないの!?」

「落ち着けよ! 人が乗っているだろ! って、なんぞあの金髪美女!?」

「あれ、たぶん召喚獣だぞ!」

「す、すげー」

「俺もいつかあんなふうに……」

「いやいや、お前、夢見すぎだって。見ろよ、あの男。格好良すぎるだろ」

「ダンジョンに好かれてるってやつ?」

「あんな見た目になるのは間違いないよ。ち、ずるいよな」

「ねえ、ライオンの召喚獣って?」

「ああ、たぶん、あの男だ」

「ミカエラを殺した?」

「見た目に騙されるなよ。超おっかない人だからな」

退学組の人達はダンジョンに入ることを再開していた。情報共有の観点から俺はミカエラが死んだことを退学組に伝えないわけにはいかず、教えていた。その結果、俺がミカエラを殺したことは、退学組ならば誰もが知るところとなった。

その人たちが一階層に到達した俺たちに注目していた。それにしても“ずるい”か。ダンジョンに好かれるのはずるいか。そうだな。たとえそのことでどれほどの苦労があったとしても、俺もきっとそう思うよ。

《祐太。超おっかない人だって》

《……まあ、知らなきゃなんとでも思うさ》

実際、俺がミカエラを殺すことにどれだけ悩んだのか、そして、自力では結局勝てなかったことなど人が知るはずもない。そしてたかだかレベル100の俺が、甲府最強にして、一番の危険人物と思われていたミカエラを殺したのだ。

「【魔眼殺し】」

「名前は六条祐太らしいぞ」

「魔眼殺しの六条祐太」

不本意ながら俺はこれから当分【焔斬の武者】というダンジョンからもらった称号よりも、こちらの二つ名で呼ばれることが多くなる。それほどレベル200の中でもトップクラスだったミカエラをレベル100の人間が殺した事はインパクトが強かったようだ。

「オマケにこのパーティー」

「エヴィーだ!」

「俺、外国の有名人見たのは初めてだ」

「後の2人もすごい美人だな」

《後のは余計だよね》

《どっちでもいいですよ》

《醒めてるなー。エヴィーはどう?》

《右に同じく。それより順番譲ってくれるみたいよ。一番はいつも通り美鈴からね》

《お、おう!》

今まで一度もなかったことだが、目の前で並んでいた人たちが、俺たちが直前まで来るとモーゼの十戒のように道を譲ってくれる。まあラーイが後ろに並んでいる状態など、ストーン級の探索者には心臓に悪いこと間違いなしである。

ただ、こうして見ると装備が充実している探索者も増えてきた。初心者ばかりでもなくなってきて、こちらをギラギラした目で見ている者もいる。いずれは追いつき追い越す。そう考えているのだろう。

《憧れられるし、妬まれるようにもなるのよ。どう? なかなか快感でしょ?》

《ああ、悪い気はしない》

ずっと虐められ続けて生きてきた自分である。人から羨望の眼差しを向けられて、悪い気はしない。むしろ気持ちがいい。だからこそ誰にも追い越させないし、奪わせないと思いながらも俺は、ガチャゾーンへと入った。

「——美鈴、ガチャを回す回数が、今回は今までで一番多い。みんな並んでいる中を譲ってもらって、待たせるわけにもいかないから早く回してしまうよ」

俺たちのことを外の人たちは優先してくれて、ガチャを待ってくれている。ブロンズエリアに行けばきっと新米のぺーぺーからやり直しであろうが、ここには俺たちに文句が言える探索者などいない。

でも待たれると急いでしまう。そういう小心者な自分がまだちゃんといた。

「了解」

まず、美鈴がガチャの前に着いた。そしてガチャコインを十枚挿入する。ここで虹カプセルが出たら、美鈴はかなりすごい。もともとガチャ運1の人が珍しく、ガチャ運1の人が諦めずに探索者を続けるのも珍しい。

だから、ストーンエリアで虹カプセルを二つ出せたものはきっとまだ存在しないだろう。

「行くよ! 今までの私とは一味違うところを見せてあげる!」

1回目虹0、銀0、銅0、白100。

2回目虹0、銀0、銅0、白100。

3回目虹0、銀0、銅1、白99。

4回目虹0、銀0、銅2、白98。

5回目虹0、銀1、銅2、白97。

6回目虹0、銀0、銅1、白99。

7回目虹0、銀1、銅0、白99。

8回目虹0、銀1、銅1、白98。

合計虹0、銀3、銅7、白なんか一杯

「……」

美鈴は全部回して燃え尽きた。

「むしろ今まで通りの美鈴で安心した」

「そうね。ここで虹を出すなんて美鈴じゃないわ」

「美鈴さん。次、私の番なのでどいてください」

「はい」

真っ白に燃え尽きた美鈴が、伊万里に席を譲った。ここで俺の分のコインを渡せば、あるいはもう一つ虹を狙えるかもしれない。だが、ストーンガチャにもう一つ虹があるのかどうかは誰も知らない。

何しろ【毘沙門天の弓槍】は凄まじい武器である。ポテンシャルははかりしれず、田中は虹カプセルから出た武器を未だに使っているという話だった。そんなものが二つも三つもストーンガチャに入っているだろうか?

どんなガチャでも、最高の当たりが出た後は当分、当たりが出ないものである。

「もう一個ぐらいおまけで出てきたらいいのに」

美鈴はガチャゾーンの隅に行き、いじけている。けど、虹カプセル一つで国すら滅ぼせると分かってるだろうか? まあ、美鈴のことなので、そこまでは思ってないんだろうな。

そして俺はそんな凄まじい武器がストーンガチャに二つ入っているとは思えず、美鈴にガチャコインをゆずらなかった。

一方で、次にガチャを回したのは伊万里だった。

1回目金1、銀1、銅7。

2回目金0、銀2、銅3。

3回目金0、銀0、銅4。

4回目金0、銀1、銅1。

5回目金0、銀1、銅7。

6回目金0、銀1、銅8。

7回目金1、銀1、銅3。

8回目金0、銀0、銅5。

9回目金1、銀1、銅6。

10回目金0、銀2、銅3。

11回目金0、銀0、銅5。

12回目金0、銀0、銅3。

13回目金0、銀0、銅2。

14回目金0、銀1、銅7。

15回目金0、銀3、銅6。

10回ガチャ

1~9回目金1、銀1、銅3。

合計金4、銀15、銅74

伊万里も待っている人たちがいるからと、どんどんとガチャを回して、結果が出た。

「金色が四個か……」

伊万里としては不本意だったのか、口がとがった。

「確率的に言うと伊万里は4D4だから金は1/256。だから六個は出てほしかったのよね」

「ええ、やっぱりこういう自分の運を試すみたいなのは苦手だな。まあ、この中から専用装備が二つ出てくれれば、それでいいんですけどね」

金色が出る確率1/256。そこからさらに専用装備が出る確率が1/6ほどと言われている。その結果がどうなるかということなのだが、

「エヴィーさん良いですよ。私は私で勝手にやるから、もう回していってください」

「OK。じゃあ、お言葉に甘えてあとがつかえていることだし、さっさと回すわね」

エヴィーがガチャを回し出す。伊万里はエヴィーがガチャを回す横で自分の金カプセルを開けだした。

その結果は、

一個目力の果実

二個目エンデの魔除けタリスマン

三個目素早さの果実

四個目器用の果実

こんな感じだった。

「ああ、悔しいな。専用装備は五個か」

伊万里は専用装備が半分である。やはり全て揃えようと思うとガチャ運4がいるらしい。

「でも、一個は出てくれたしまずまずの結果だよ」

俺がともかく励ました。

「まあリッチ・グレモンの秘宝が使えそうだし、上々だね」

ガチャ運3だと最終的に専用装備の数が六個になれば【かなり良し】らしい。伊万里は専用装備が四個だったので、これで専用装備が五個揃った。それに加えて、リッチ・グレモンの秘宝が手に入っているし、本人がレア職である。

このことを考慮するなら、伊万里はレベル100の中でも、相当優秀な事に違いなかった。

一方、エヴィーがガチャを回し続けていた。

「ラーイ以外見てない。祐太、ちょっとは見てよ」

さすがにエヴィーは寂しくなったらしい。

「あ、ごめん」

「最後を回すわね」

エヴィーがガチャに手をかけた。ちなみにこのエヴィーも美鈴も伊万里も“ガチャ運は上がっていない”とのことである。ガチャ運はレベル100ごとに上がる機会があるのだが、そのたびにちゃんと上がるのはガチャ運4からという話だ。

ガチャ運3や2や1ではなかなか上がらないようだ。まあそもそもガチャ運1の美鈴はガチャ運が上がると虹カプセルが出なくなる可能性もある。だから、美鈴に関しては上がらなくてよかったねという気もする。

「でもさ。美鈴って、ガチャ運が永遠に上がらずに、ガチャの難易度だけ上がっていくんじゃないの?」

何しろ【毘沙門天の弓槍】は性能が良すぎる。同レベルの装備が、もう一つ出ただけでもかなりのことになる。それだけに難易度が跳ね上がりそうな気がした。

「祐太、言わないでよー。そうじゃないかって気が今ものすごくしてるんだから!」

そう話しながらもエヴィーの結果が出た。

1回目金0、銀1、銅2。

2回目金0、銀0、銅2。

3回目金1、銀0、銅3。

4回目金0、銀0、銅4。

5回目金0、銀3、銅6。

6回目金0、銀0、銅5。

7回目金0、銀0、銅3。

8回目金0、銀0、銅2。

9回目金1、銀2、銅2。

10回目金0、銀1、銅4。

11回目金0、銀0、銅4。

12回目金0、銀1、銅3。

13回目金0、銀0、銅2。

14回目金1、銀0、銅0。

15回目金0、銀0、銅3。

16回目金0、銀0、銅2。

10回ガチャ

1~8回目金0、銀1、銅3。

合計 金3、銀9、銅50。

「よし!」

その結果を見てエヴィーは思いっきり喜んでいた。金カプセルが三個も出てくれるのは、上々だ。エヴィーのガチャ運だと金カプセルが出る確率は1/625なのだ。

「エヴィーさん。なんだか私と結果があんまり変わりませんね」

「問題はここからよ。専用装備が出る確率が1/6よ。せめて、一つだけでもいいから専用装備を出してちょうだい。ガチャ神様お願い!」

エヴィーは美鈴が言い出したガチャ神様が本当にいるのかは知らないけど祈りをささげる。だが、俺は後がつかえているので、さっさと自分のガチャを回していった。

ただ、自分の勝利することが約束されているガチャよりも、エヴィーの結果の方が気になって横目でチラチラと見る。

一個目コーリエの魔法衣

二個目ブルーバー強化素材

三個目ポーション

という結果だった。二個目は赤い宝石で、リーンのものだと主であるエヴィーは何故かわかるようだった。

「美鈴、伊万里!」

エヴィーはかなり嬉しかったのか速攻で美鈴と伊万里に抱きつきにいった。ブルーバーの強化素材か。考えてみれば、エヴィーにとって一番強くなってほしいのは自分もだが、リーン達である。

むしろ、エヴィー自身が強くなるより、あの召喚獣女子?四人組が、強くなければ仕方がないのだ。だからリーンの専用装備の強化が何よりも嬉しいようだ。

「よかったね、エヴィー」

「ええ、祐太!」

俺も抱きついてくれるのかと身構えた。しかし、その直前でエヴィーは止まった。

「祐太。自分のガチャ結果、ちゃんと見てる?」

「み、見てるよ?」

エヴィーに言われて、ようやく自分が何をしているのか気づく。ガチャにコインを入れて回す行為をほとんど無意識にやっていたのだ。

「うわー。なんかいっぱい金色が出てる」

「ガチャ運6でストーンガチャを回したらどうなるの?」

「さあ」

俺のガチャ運は正直、これ以上良くなりようがあるのかというぐらい良い。何よりも専用装備がすべて揃っているのだ。ガチャへの緊張感など欠片もない。それでも性能の良くなった頭は、1回、1回のガチャ結果をちゃんと記憶していた。

内訳はこんな感じだ。

1回目金10、銀7、銅10。

2回目金11、銀7、銅11。

3回目金4、銀7、銅15。

4回目金5、銀5、銅8。

5回目金6、銀3、銅15。

6回目金7、銀4、銅16。

7回目金6、銀5、銅14。

8回目金11、銀5、銅14。

合計金60、銀36、銅93。

「これは……」

「意味がわからないぐらい金色が出まくっているけど、前と何も変わってないね」

ガチャの結果はガチャ運6でも何も変わらなかった。どうやらストーンガチャは、ガチャ運5以上の確率にはならないようである。しかし今初めてはっきりしたが、俺って銀カプセルの方が出にくいんだな。

考えてみれば当然のことである。俺の場合金と銀の出る確率は等分である。その場合、金が出れば銀は出ない。その分銀は金が出るときに自分のあたりを金に取られてしまう。結果として銀の方が出る確率が減ってしまうのだ。

「まあ4D2よりもいいガチャ運なんてありえないわね。4D1だと、全部金カプセルになっちゃうしね。というよりもガチャが壊れているのかというぐらい凄い結果なのだけど、祐太に関してだけは感覚が狂うわ」

「いつもこんな感じですか?」

「ええ、もう、怖いぐらい金色ばっかり出てくるわ。これ、果実とポーション以外を全部売り飛ばしたら100億円ぐらいにはなるかしら? 今回はそれもありかな。祐太。どう思う?」

「いや、エヴィーさん。大八洲国っていう国があるみたいだし、そこでお金が必要な可能性も考えられますよ」

「ああ、まあそうね。国があるなら拠点にする家とか買えるのかしら?」

「家を買ったらインテリアをしたいな」

「伊万里。そういうのが好きなの?」

「はい。結構好きですよ」

「余った一枚は記念にとっておこうかな」

「ストーンガチャのコインなんてもう手に入らないでしょうし、いいんじゃない?」

それぞれ、しゃべりながらも外へと出る。

「あれは……」

クラスメイトの黒木の姿が見えた。卒業式の時以来の姿に嬉しくなる。男に飢えていたのでそれは尚のことである。だが向こうは気まずそうに目をそらした。何かあったのか? 心配になって声をかけた。

「黒木。どうしたんだ? 何か調子の悪いことでもあるのか?」

「お、おう」

ダンジョンの初期がどれほど大変なものか俺もよくわかっている。自分だって南雲さんに散々助けてもらったのだ。できることなら何でもしてあげようと思った。しかし黒木はちらちらと俺の横を見ている。目線の先には、エヴィーがいた。

なるほど。金髪美少女を見て緊張しているのだ。その気持ちはよく分かる。俺だって何も知らない状態でエヴィーを見たらきっと緊張して声をかけられなかっただろう。いや、きっと美鈴と伊万里もダメなのかもしれない。

そういうことに気が付いた俺はわかっているなと思った。

「三人とも先に行ってくれ。俺は黒木と話したらすぐに追いつくから」

女子三人。ラーイも含めて、し、しっと追い払う。こういうことにこの三人は気が利かないから困る。心から思った。

「これでしゃべりやすいだろう。そっちで喋ろう」

「いや、うん。六条が一番なんだが……」

「どうしたんだ?」

「いや、うん。いいんだ。久しぶりだな……ああ、六条さん」

そんなことを黒木が言ってきた。しゃべっているのは黒木だけでパーティメンバーらしい男子は何も声をかけてこなかった。やはり俺は男受けが悪いのかもしれない。

「なんだよ黒木。そんな他人行儀なこと言うなよ。六条でいいだろ。それより順調なのか?」

「あ、えっと、順調だ。それなりに頑張ってるよ。最近三階層に降りられたんだぞ」

「おお、すごいじゃないか!」

「よく言うよ。六……条とは違いすぎて恐れ多いぜ」

「違う? いや、何を言ってるんだよ。確かに今は強さが違うかもしれないけど、俺だって最初は黒木とほとんど変わらなかったぞ」

「六条が? 本当か?」

「そうだよ」

黒木の姿を見る。装備はあの時の俺の方がお金に恵まれていたからよかった。でも、なんというか、この頃の心もとなさというか、そういうのが似てると思った。

「そうなんだ。ああ、すまん。なんかちょっと余計なこと考えた。そうだよな。みんな頑張って強くなっていくことには違いないんだもんな。六条。こいつら俺の仲間なんだ。みんなけっこう頼りになるんだぜ」

黒木がそう言って紹介してくれる。そこからは全員で盛り上がることができた。こういうことが初めてだった俺は何気に一番テンションが上がった。友達とのこういう何気ない会話を俺は学校でしたかった。それが今叶ったのだ。

「——なあ、黒木。不謹慎な聞き方かもしれないが仲間が死んだりしてないか?」

あまりにも話しすぎて、エヴィーから《統合階層についちゃったわよ》と連絡がきた。残念ながらいつまでも話している場合ではなかった。でも、黒木たちメンバーに死人が出ていないか? それが一番気になった。

黒木がダンジョン高校に通わず、ダンジョンに入りはじめたのは俺が原因でもある。だからこそ無事にダンジョンに入っていてほしかった。

「ああ、大丈夫だ。お前に言われた事ちゃんと守ってるしな。みんな元気だよ」

それを聞いて泣きそうなほどホッとする。パーティメンバーの男子たちを見ると確かにみんな元気そうだった。俺は、黒木たちに別れを告げなきゃいけなかった。その前に黒木に1000万のポーションを1本だけあげた。

本当はもっとあげるべきかと思ったが、そのことでかえって黒木のペースが乱れてはいけない。ポーション頼みの探索なんてどのみち黒木にはできないのだ。だからもっと助けたいのだけど我慢した。

そして、「黒木。お前は死ぬなよ」と言って別れた。

ガチャが終わった俺たちは統合階層に戻り、いよいよブロンズエリアへと赴く。

だが、その前に、それぞれのステータスの確認だけしておくことになった。