作品タイトル不明
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そんなことを話していると、訓練場の扉の方から足音が聞こえてきた。視線を向けると、学園長先生が早足で歩いてくるのが見える。
「レナード君、メイベル君! すまない、遅くなった」
「学園長先生。僕たちは大丈夫ですよ」
「すまないな。……ん? メイベル君のその手に持っている冊子はなんだ?」
学園長先生は私の持っている冊子を目に留めると、険しい表情で尋ねてくる。
ラネル魔術院の運営者である学園長先生に伝えるのはちょっと言いづらいなと思いつつも、私は先ほどレナード様にした説明を繰り返した。
説明しているうちに、学園長先生の表情はどんどん引きつっていった。
「ダレル・カーターが勧誘してきたのか! まったく、なんと図々しい奴だ。抜け目ないところは学園時代から変わっていないな!」
「あれ。学園長先生、ダレルさんとお知り合いだったんですか?」
「ああ、私が魔法省を辞めてラネル魔術院を創設する前、一年だけルヴェーナ魔法学園で特別講師をしていたんだ。ダレルはその時の生徒だった」
「まぁ、そんなご縁が」
「当時から私の授業に反発してきて生意気な子供だった。メイベル君。あんな大きいばかりの学園になんて行くことないぞ。私は生徒としても教師としてもあそこにいたことがあるが、ルヴェーナ魔法学園の教育は形式に囚われてばかりでつまらんものばかりだ。その上、魔獣を街中で逃がすような教師がいるようでは教師の質も思いやられる。メイベル君は我がラネル魔術院で伸び伸びと才能を伸ばすべきだ」
「え、ええと……」
学園長先生は、やけに力を込めてルヴェーナ魔法学園を否定する。
すると、横からレナード様が言った。
「ちょっと先生、そんな端から否定するのはよくないですよ。メイベルさんが決めることなんですから」
「いや、しかしだな。せっかく我が魔術院に来た優秀な生徒を取られるのは困る!」
「先生の都合じゃないですか」
レナード様は呆れ顔をして言う。それから私の方を見て言った。
「メイベルさん、こういう重要なことは自分の選びたい方を選んだ方がいいよ。入りたかった魔法学園に入れるチャンスなんだから、すぐに断らなくてもいいんじゃないかな」
「レナード様……」
レナード様にそう言われ、少し心に迷いが出てきた。
ここまで気になるのは、本心ではルヴェーナ魔法学園が気になっているからなのかもしれない。すぐに決断せずに、もう少しじっくり考えてから決めてみたほうがいいのかも。
私が少し考えてみると伝えようと口を開きかけると、レナード様は寂しげな表情になって言った。
「……メイベルさんがルヴェーナ魔法学園に行って、簡単に会えなくなっちゃうのは寂しいけどね」
レナード様にそう言われて、言いかけていた言葉が止まった。
よく考えたら、今こんな風に毎日レナード様に会えるのは、同じ魔術院の生徒だからだ。私がここの生徒でなくなったら侯爵家のご令息であるレナード様とは簡単には会えなくなるだろう。そう考えると、なんだかすごく寂しい気持ちになる。
しんみりしてしまう私に、レナード様ははっとしたように言った。
「いや、メイベルさんの決めることだから! メイベルさんの選択なら、どんな選択でも応援するよ」
レナード様はそう笑顔を向けてくれた。私もレナード様に向かって曖昧な笑みを返す。
それから、転校の話は一旦置いておいて、訓練を始めることになった。
学園長先生はその日の訓練の間中、ルヴェーナ魔法学園の悪口と、ラネル魔術院の魅力を力説していたので、レナード様に呆れられていた。
私は訓練を受けている間も、ルヴェーナ魔法学園のことが頭から離れなかった。