作品タイトル不明
3-17
彼らの話を聞いていたレナード様が、さっとこちらに視線を向けた。
「メイベルさん、昨日ドレクスモルに襲われていたのって……」
「はい……。ブラッド様でした……」
私が答えると、レナード様はショックを受けたような顔をする。そして額に手を当てて、何やらぶつぶつ呟き始めてしまった。
「やっぱりメイベルさんはまだブラッド殿のことを……? だから危険を冒してまでドレクスモルの元へ行ったのか……? なぜあんな勝手な人のためにそこまで……」
「レナード様?」
私は頭を抱えてしまったレナード様を、戸惑って眺める。
すると、後ろから弾んだ声が聞こえてきた。
「メイベル! 俺に会いに来てくれたのか!?」
「ブラッド様……。いえ、ただ通りがかっただけです」
「メイベル、俺は今、あの時の君がいかに気高く美しかったかみんなに広めているんだ。君の勇姿は全員に知ってもらわなければならないからな!」
「やめてください! 広めなくていいです!」
私は慌てて止める。しかしブラッド様は全然聞いていなかった。
「メイベル、俺は愚かだった。ドレクスモルがあれほど恐ろしい生き物だとは思わず、危険な場所も防御の呪文も聞き流していた。まして、ドレクスモルにはご法度の水までかけるなんて……」
「過ぎたことですからお気になさらず。でも、せめて水はかけないでおいて欲しかったです……」
「ああ、今心から反省している。ラネル魔術院にはメイベルがいるから入っただけで、授業には全く興味がなかったけれど、今日から真面目にやるよ。すぐにメイベルにふさわしい男になってやるから待っていてくれ!」
「え、いや、いいです」
「君に求婚しても恥ずかしくない自分になれるようがんばるよ!」
ブラッド様は目をキラキラさせてそんなことを言う。
私が困惑していると、先ほどまで頭を抱えていたレナード様が割って入ってきた。
「ブラッド殿、メイベルさんが困っているじゃないですか。強引に言い寄るのはやめていただけませんか」
「なんだ、またお前か。邪魔をするなよ」
「メイベルさんの気持ちを考えられないうちは、彼女に近づかない方がいいんじゃないですか? 余計に嫌われるだけですよ」
「余計にとは何だ。俺がメイベルに嫌われていると言いたいのか? 失礼な奴だな」
レナード様が冷めた声で言うと、ブラッド様も冷たい目で睨み返す。
また空気がぴりぴりしてきたのに気づき、私は慌てて割って入った。
「二人ともやめてください! 授業がもう始まってしまいますよ! レナード様、教室に戻りましょう!」
私は慌ててレナード様を引っ張って、ブラッド様から引き離す。
廊下を駆けていると、後ろからブラッド様が、「メイベル、俺、頑張るからな!」という声が聞こえてきた。
頑張らなくていいので、私にはもう構わないで欲しい。