軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話 オースティン・セレストーム

「どうした? 兄を倒されたから、弟が復讐に来たのか?」

目を冷たく光らせ、レオンは眉をひそめて冷たく問いかけた。

自分の前に立っているのは他でもない、レオンの異母弟——オースティン・セレストームだった。

赤い髪に鋭い目。十四歳にして四つ星初期の魔法師。熱力系の使い手であり、過去二年間、家族魔闘会で連続優勝を果たしている実力者だ。

同じ父親を持つが、母親が違う。オースティンの母は侯爵の側室であり、レオンの母は正妻だった。エイドリアンとオースティンは同母兄弟だが、レオンとは異母兄弟だ。その差は、幼い頃から明確だった。

突如として現れた変化に、ようやく静まりかけていた人々が再び騒然となった。

オースティン——セレストーム家の若い世代の中でも最強の存在。家族魔闘会の現チャンピオン。そしてエイドリアンは、彼の同母の兄だ。今、エイドリアンが重傷を負った以上、彼が兄のために出てきたのだろう。

「あいつ、終わったな……」

「惜しかったな……」

たちまち、皆の目つきが変わった。幸災楽禍の目でレオンを見る者もいれば、同情の目で見る者もいた。

「復讐だと?」

オースティンは冷笑した。だが、その目には明らかな怒りが燃えていた。

「レオン、お前は自分が何をしたか分かっているのか?」

オースティンは一歩近づき、声を荒げた。赤い髪が怒りで揺れる。

「お前は加減というものを知らないのか!? これは試合だぞ! 殺し合いじゃない!」

オースティンは歯を食いしばり、レオンを睨みつけた。

「両腕の骨を折った! あれがもし魔法回路に影響を与えていたら!? エイドリアン兄さんの将来に傷がついたら、お前は責任を取れるのか!?」

周囲から、囁き声が漏れた。

「確かに……あれは少しやりすぎだったかも……」

「エイドリアンの将来が……」

「オースティン様の言う通りだ……」

オースティンは周囲の反応に満足げに頷き、さらに声を荒げた。

「分かっているのか!? 兄弟同士の試合で、あそこまでやる必要があったのか!? 加減を知れ! お前は一体何を考えている!?」

まるで年上の者が愚かな弟を叱りつけるかのような態度だった。年齢はレオンより下だが、家族内の地位は遥かに上だ。正妻の子と側室の子——その差が、この態度に表れていた。

レオンは黙って聞いていた。

だが、その目には冷たい怒りが燃え上がっていた。

「ふん」

レオンは冷たく鼻を鳴らした。

「加減か。面白いことを言うな」

「何だと?」

「この試合はエイドリアン兄さんが先に提案したものだ」

レオンは一歩前に出た。目はまるで冷たい刃のようにオースティンを射抜いた。

「お前たちはあの時止めたか? 一つ星と三つ星の差を知らないとでも言うのか?」

声は少しかすれていたが、その中には押さえきれない怒りがあった。

「もし俺が負けていたら、エイドリアン兄さんが俺の腕を叩き折っていただろうな」

レオンは冷笑した。

「その時、お前はどうしていた? せいぜい、この哀れな出来損ないのために心の中で数分間黙祷して、それで終わりだろう? 俺が残りの人生を障害者として過ごすことになっても、お前には何の罪悪感もない。違うか?」

「貴様……!」

オースティンの顔が怒りで歪んだ。

だが、レオンは止まらなかった。

「前にも言ったはずだ。オースティン、お前は理性のかけらもなく身内を庇うこと以外に、一体何ができる?」

レオンは一歩また一歩と近づき、声を荒げた。

「お前みたいな奴が一番ムカつくんだよ! お前の兄は人間で、俺は人間じゃないのか!? ああ!?」

その怒声が演武場に響き渡った。

場の雰囲気は一瞬にして凍りついた。

レオンの言う通りだった。もし本当に彼が負けていたら、今の彼はエイドリアンよりもっと悲惨だっただろう。そして誰も、「加減を知れ」とは言わなかっただろう。

「お前たち兄弟は、母親に全然似ていないな」

レオンは静かに言った。その声には、怒りとは違う何かが混じっていた。

「イザベラ様は、お前たちとは違った。少なくとも……あの人は——」

◆◇◆

「黙れ!」

オースティンの顔が、一瞬にして蒼白になった。

「母上の名を……お前の口から出すな……!」

その声は震えていた。怒りだけではない。何か別の感情が混じっていた。

「母上のことは……お前には関係ない……!」

オースティンの周囲に、熱気が立ち上り始めた。四つ星の魔力が暴走寸前まで膨れ上がる。だが、その目には——怒りの奥に、深い悲しみが宿っていた。

『ほう……? 面白い反応だな、小僧。あの赤毛の小僧、母親の名前を出されただけで、あれほど取り乱すとは……何かあるな』

オーグリが興味深そうに呟いた。

レオンもそれに気づいた。オースティンの反応は、単なる怒りではなかった。まるで、触れてはいけない傷に触れられたかのような——

「……」

レオンは何かを言いかけたが、やめた。

◆◇◆

「オースティン、やめなさい!」

凛とした声が響いた。エヴィルが二人の間に割って入った。

「この試合は皆が見ていたわ。エイドリアン従兄さん自身が提案したの。あなたが今ここで暴れても、恥をかくだけよ」

「エヴィル、お前はこの出来損ないの味方をするのか!? こいつは……母上の名を……!」

「落ち着いて、オースティン」

エヴィルは冷静に言った。

「レオン兄さんは何も侮辱していないわ。ただ名前を出しただけよ。それで暴れるのは、セレストーム家の恥よ」

オースティンは歯を食いしばった。だが、彼の目には——怒りの奥に、隠しきれない痛みがあった。

◆◇◆

「いい加減にしないか?」

その時、威厳ある怒声が後方から響いてきた。

「大長老!」

来た人物を見て、皆が一斉に恭しく呼んだ。

「試合は全て見ていた。オースティン、エイドリアンを連れて帰れ。夜、会議室に来い。説明してもらう」

冷たくオースティンを睨み、大長老は有無を言わさず命じた。

「しかし、大長老! こいつは母上の——」

「帰れ」

大長老はオースティンの言葉を直接遮った。その目は氷のように冷たかった。

「それと、私的に争いがあったことを知ったら、容赦しないぞ」

オースティンは歯を食いしばった。大長老の命令には逆らえない。

「……いいだろう」

深く息を吐き、オースティンはレオンを睨みつけた。だが、その目には——殺意だけではなく、何か複雑な感情が渦巻いていた。

「家族魔闘会で会おう、出来損ない。その時、今日の借りを返してやる」

「楽しみにしている」

レオンは淡然と答えた。

「ただ、その時に『出来損ない』と呼べるかどうか、よく考えておくんだな」

オースティンは何も言わず、踵を返した。倒れているエイドリアンの方へ向かっていく。その背中は、どこか寂しげに見えた。

◆◇◆

「二週間後か……」

その場に立ち、レオンは独り言のように呟いた。去っていくオースティンを見つめ、目に恐ろしい闘志が燃え上がった。

『よくやった、小僧。七年間の鬱憤を吐き出せたな。これからは、誰にも見下されるな』

オーグリの声が、静かに響いた。

『それにしても……あの赤毛の小僧、母親のことになると随分と敏感だな。何かあったのかもしれんぞ』

「……ああ」

レオンは小さく頷いた。

イザベラ様。オースティンとエイドリアンの母親。側室でありながら、かつて——

あの日、あの炎の中で、自分を守ってくれた人。

(あの人は……お前たちとは違っていた)

レオンは心の中で呟いた。

(少なくとも、あの人は——俺を見捨てなかった)

◆◇◆

エヴィルは複雑な目でレオンを見つめていた。

「レオン兄さん……イザベラ様のこと、覚えているの?」

「……少しだけ」

レオンは振り返った。その目には、七年間の屈辱と——かすかな記憶が渦巻いていた。

「俺は、証明しなければならない。俺は出来損ないなんかじゃないと」

銀髪が風になびく。その目には、全てを覆す決意が宿っていた。

だが、その心の片隅には——あの日の炎と、自分を守ってくれた淡い水色の髪の女性の姿が、ぼんやりと残っていた。

【続く】