軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第70話 ないないしよー

タリスマンの作成をジェリーさんに丸投げはしたけど、ドロップ品の収集と鑑定の協力をするので、時間を作り出すために暫くは俺の料理はお休みしたい。だがそれにはオネーサンのお店を昼夜開店して貰わないといけないのである。

朝食はいいんだけどね。朝だけオープンの喫茶店ごっこも楽しいし。

【GGG】のみなさんがアントネストを拠点にするつもりなら、シャバーニさんやロベルタさんのためにもオネーサンのお店を繁盛させなければならないだろう。

どうしたらもっとお客さんを呼び込めるのかなぁ? オネーサンの料理は本当に美味しいのだ。爬虫類系の肉で料理をすることに拘っているので、そこをもっと世間にアピールしないとダメだよね。いや、だから駄目なのかな?

俺の中では通常の手段では手に入らないので、ヘビやカエルの肉は割と高級食材なんだけど、この世界ではそうでもないらしい。

魔獣の肉の方が重宝されてるのもあるんだろうけど、野生の 猪(ボア) の肉とか勿体ないことに捨てられてたしね。

でもヘビやカエルなどの爬虫類の肉ってヘルシーなんだよ。

味は鶏肉と似ていながら、アミノ酸が豊富なので体力回復に有効だし、そして高タンパクだから【GGG】のみなさんにとっても理想的な肉であると言える。だからここを拠点として考えるのは、ある意味理に適っていた。

それにアントネストは、高価な皮素材より、肉の方がドロップ率が高いしね。

そういうところをもっとアピールすればいいのに―――と思ったところで、そう言えばこの世界って、栄養学的な分野はどこまで進んでいるのだろうか? と思った。

俺は日本人だから、食に関する知識やバランスの良い食事をする『食育』を当たり前のように学ぶけど、他の国って食育はあんまりしてなかったような気がする。

食品表示基準が厳しいのも日本だけだったような―――あ、確か無添加表示をしないようになったんだったか。ネットニュースで大荒れしてたよね。日本人って他国に比べるとまぁまぁ健康に気を使う民族だからなぁ。他国がこっちに合わせればいいのに、何故か向こうに合わせなきゃいけなくなっているし。文化の違いか、日本が進み過ぎているだけか―――と、今はそんな事よりも。

そもそも魔物のヘビやカエルの肉の栄養素はどうなってんだろう?

アミノ酸やタンパク質も、俺の世界のカエルやヘビ肉を参考にしてるだけで、実際のところは判らない。

鑑定虫メガネで見れば何か判るのかなぁ? でもこれ、アントネストの魔昆虫しか情報が入ってないんだよね。

仕組みがどうなってんのかよく判らない鑑定虫メガネだけど、魔物の爬虫類(両生類)を登録すれば、俺がディエゴ作の図鑑で見た情報が表示されると思うんだけど、お肉の成分とかは表示されないだろうね。食べ物全般の栄養素が鑑定できないかな?

知りたいことは沢山あるのに、選べるものが一つだけだから、登録したいとは思えど中々決まらないんだよなぁ。

「ふむ……」

俺は鑑定虫メガネをじっと見た。

食べ物の栄養素とか表示されないかなぁ。どうかなぁ。そうなるといいなぁ。

「リオンは何を考え込んでるんだ?」

「ドロップ品を見ながら、黙り込んでるっすねぇ」

残念ながら本日のドロップ品に肉はなかった。

目当てのトンボ玉を筆頭に、様々な魔昆虫類や爬虫類系の魔物からもドロップがあったのだが、何故か肉はドロップしていない。

確かに皮素材の方が高価なので、運気の上がるタリスマンを持っていれば、安く買い叩かれる肉がドロップしないのは判るんだけどね。

ヘビの魔物やトカゲ類の魔物の皮はギルドへ買取りに出したので、俺に渡されたのはその他の意味不明なゴミ扱いされているドロップ品だけである。

そしてギガンたちの『運気上昇』のタリスマンだけど、運気上昇というだけあってドロップ率は確かに上がったのか、今までは五~十体倒して一回ドロップする確率が、二体に一回はドロップするようになったそうだ。

それでもドロップ率の低いオニヤンマは三体~五体に一個のドロップ率だった。

なので何度かダンジョンを出たり入ったりしてくれて、その度にエンカウントするオニヤンマを倒しまくってドラゴンフライボールを六個ほど手に入れてくれた。

ただし、三ツ星エリアでアクータートルという亀の魔物を斃した際に、甲羅をドロップしたのを最後に壊れて霧散したそうだ。

その他に、アマンダ姉さんに渡した『火力上昇効果』のタリスマンは、使っている間の魔力は体感で約半分しか減らなかったそうだ。

一応みんなで使用感を試してくれたようなのだが、チェリッシュは放った矢の威力が倍増したのか、矢が当たった部分が爆散したとのこと。なにそれこわい。

テオの場合はバスターソードがいつもの半分ぐらいの重さに感じられ、筋力がアップしたような感じだったらしい。しかしギガンが使う前に壊れたので、使用感は判らないけれど、おそらくテオと同じようなもんだろうとのことだった。

使用回数は三回が限界ってところかな。

なので、魔力的には通常の半分の消費となり、体力と共に武器の威力は凡そ倍となるので、ここぞという時に使う方が良いとの意見だった。

数回の使用で壊れる結果となったが、物凄く強い魔物相手の時に使用するのが正しい使い方かもね。普段使いしてたら実力が上がらなくなるもん。

今日は午前中に二ツ星エリア(草原)と、午後は三ツ星エリア(森林&沼地)でドロップ品を回収してくれていて、予想以上の収穫となった。

三ツ星の沼地エリアで亀の甲羅がドロップしているのだが、今までアクータートルを倒しても肉以外ドロップされていなかったらしく、ギルドへ査定に出しても値段が付けられないので一旦保留となった曰く付きだ。

そんな訳で、改めて査定できなかったドロップ品である、亀の甲羅―――アクータートルという亀の魔物からドロップした物を鑑定虫メガネで見ることにする。

『アクータートルの甲羅:霊亀の下位種の甲羅

長寿 健康 財 何れかに効果あり

善良で誠実な者にしか効果はない

悪意や不誠実な者には逆の効果となる

粉末状にして服用すれば、治癒効果が期待される』

あ、これやっぱヤバイドロップ品だ。

こいつがドロップしたから、タリスマンが壊れたに違いない。

しかも治癒効果がある薬として粉末にして服用するのはいいけど、鑑定説明の通りだとすれば、悪人にとっては毒になるってことだよな?

誰にでも効果がある訳ではないというところに、何らかの意図を感じるんだけど。

効果の高い薬は、毒にもなるっていうし、その逆もある訳で。

これはちょっと、扱いが難しいドロップ品のような気がする。

我こそは自他ともに認める善人であると言い切れる人が、この世に一体何人いるのだろうか。ノーベル平和賞を受賞したからと言って、その人が本当の意味で人々を救済した訳じゃないという話を耳にしたこともある。実際そうだしね。

善意というのは難しい。その人のためにとすることでも、余計なお世話になることも多いし、相手にとって実は迷惑な行動は、果たして善意であると言えるのか。

頼まれてもいないことをし続けて、自己満足に陥っていないか。己の行動を振り返り、同じことをされて迷惑と感じれば、それは最早善意ではないだろう。

まぁ、そういう人間は、己を顧みたりはしないんだろうけど。

見た目が善良でも、それを装っている場合もあるし、見た目が悪人でも、中身は善人で誠実だって人もいる。

慈善事業をしている人の中には、そうすることで得る利益が目的でもあるしね。救済だのなんだのと言いながら、募金集めをする本人が豪邸に住んでる奴は要注意だ。

それに視点を変えれば、正義が悪になり、悪は正義へと逆転する。おまけに悪は悪でも必要悪だってある訳で。

何を基準にして善か悪かを判断するのは、人によって違うものだ。

ということは、逆の効果を期待して使われる可能性がある。

「……ないないしよー」

俺は色々と考えた末に、亀の甲羅をリュックへ放り込んだ。

かぐや姫からもらった不死の仙薬のように、コイツはどこかの山の火口にでも投げ込むべき危険なドロップ品だ。愛する人のいない世界で帝に死なずに生き続けろって意地が悪いよね。かぐや姫も妖精だったのだろうか? (俺的にかぐや姫は月の住人である宇宙人ではなく、座敷童的な妖怪や妖精の類だと思う)

この亀の甲羅が運気上昇のタリスマンによって手に入れられたのかもしれないので、今後ドロップしないとは言い切れないけれど。冒険者ギルドでも査定できないドロップ品なので、無かったモノとしておくに限る。今の今までドロップしてなかったんだから、俺さえこのことを伝えなければいいのだから。

ギルドの鑑定眼鏡でも効果が判らないのは、ジェリーさんの鑑定眼鏡のように表示が妙なことになっていたに違いない。

一時預かりではなく、ギガンたちが持って帰ってくれたことに感謝しよう。

そんなヤバイ 亀の甲羅(アイテム) をリュックにポイしている行動が気になったのか、ギガンとテオが話しかけてきた。

「なぁ、もしかしてその甲羅、ヤバイのか?」

流石ギガン。気付きが早いね。

「うん、ヤバイ」

「え? タリスマンが壊れたのって、そいつのせいなんすか?」

「たぶんねー」

「ギルドの査定でも、見たことねぇって言われたしなぁ。そいつをドロップした瞬間、俺たちのタリスマンが全部ぶっ壊れたしよ」

「それって、なんか怖くないっすか?」

テオの言うように、ある意味怖いドロップ品ではあるので、俺は特に否定はしなかった。

後でディエゴに相談して、詳しい説明をしてもらえばいいだろう。

今回の検証結果として。

運気上昇のタリスマンには、出現率の高い魔物であれば二分の一の確率でドロップさせる効果があることが判明した。

エンカウント率が低い大物の魔物なら、三~五体に一回の割合となり、その効果を最大限に発揮する、ドロップ率の低い希少なアイテムを手に入れた瞬間に壊れてしまうってことだね。

エリアを幾つも回れたのも、ドロップ率が上昇したからでもあるがしかし。このタリスマンを世に出しても良いものか、俺は悩むことになるのであった。

でもジェリーさんに作り方を教えちゃったからなぁ。

組み合わせ次第で何が出来上がるのか判らないのも不安要素なんだけど、この捻くれたアントネストのダンジョンには、とんでもないドロップ品(悪意しか感じられない)もあるようだし、運気が上昇したとして良い結果になるとも限らない。

シュテルさんの収集している ジョークグッズ(おまじないアイテム) とは比べ物にならない程の効果を発揮しただけに、もしかしたら俺は、結構ヤバイ事を仕出かしたのかもしれないという、不安に襲われたのだった。

余談だが。

因みにここにいない三人―――ディエゴは、何故かアマンダ姉さんとチェリッシュに二階で怒られている。

部屋の模様替えのサプライズとして、ディエゴに説明をさせに一緒に上がって行ったんだけどさ。(俺はドロップ品をギガンから受け取っていた)

「キャ~ッ!」っていう喜びの声の後に、「ギャーッ!」っていう悲鳴が聞こえたんだけど、それが原因じゃないよね? 叫んでたのはチェリッシュだけど。

部屋の模様替えに問題はないし、二人ともすごく快適になったって喜んでいたんだけど、《《あるモノ》》について説明をしろと迫られて、ディエゴだけ何故か二人に説教されているのだ。

でも俺を呼び出さなかったってことは、模様替えに直接関係ないことだよな?

素敵な寝室になったってみんなには感謝されたし。

まぁ、ディエゴが怒られるのは今に始まったことではないし、俺にはどうすることもできないからね。

でも可哀想なディエゴには、美味しいおつまみとお酒でも差し入れてあげよう。

少しでも慰めになるよう、お兄ちゃんを気遣ってあげるのも弟役の務めだからね!