軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第62話 秘密基地みたいなんだもん

「この貸し店舗、元々は金物屋だったのよ~」

だから防音も十分されているので、多少騒いだところで隣接する店舗には迷惑が掛からないと説明を受ける。

「なるほど。これは良い物件だ!」

「店舗部分が広々としているな!」

「何もないのが却って良い!」

「金物屋だとのことだが、あそこにある道具類は、使っても良いのだろうか?」

鍛冶屋ではなく、金物屋だった物件である。

俺の知っている田舎にある金物屋とは様相が違っていて、仕入れではなく、手作りの金物屋だったのだろう。確かに家の鍵やドアノブ等は各家によって違うだろうし。昔ながらの職人さんの金物屋っぽかった。

そして【GGG】のみなさんが気になっているであろう、あちこちに回収し忘れた道具類が散らばっていた。

必要がないので置いて行ったのだろうか?

「大分前に夜逃げしたみたいに出て行ったし、いいんじゃないかしら?」

「夜逃げ?」

「だって、注文する客が減って、商売が立ち行かなくなっちゃったんだもの。仕方がないことだわ」

「そうなのね……」

「もう反対側の店舗も同じよ。どこも商売が出来なくて、退去した物件ばかりよ」

オネーサンはそう言って、少し寂しそうに笑った。

それとは反対に、大ぶりのトンカチを手にして、早速筋トレを始める【GGG】のみなさんである。今の話を聞いてたのかな? いや、聞いてないな。

隙あらば筋トレをする姿勢は、賞賛に値する。テオも見習えばいいのに。

「じゃぁ、今度はスプリガンのみなさんに、反対側の店舗へ案内するわ」

元金物屋物件が気に入った【GGG】のみなさんには、このまま宿泊してもらうことにして、俺たちは反対隣の物件を案内してもらうことにした。

「こっちは調味料やスパイスなんかを販売していたお店ね。アタシもよく利用させてもらったわ」

「では、ここも夜逃げを?」

聞きにくいことをあっさり聞くディエゴである。

「夜逃げというより、旅に出ちゃったのよね~」

「旅?」

「 妖精の粉(ピクシーダスト) を求めて旅に出るとか言っちゃって、ある日突然アタシに鍵を渡して出てっちゃったのよ」

「 妖精の粉(ピクシーダスト) ?」

「ふぁっ!?」

「ぶっ!?」

思わずテオの口を押えるギガン。チェリッシュの挙動を抑えるアマンダ姉さん。

ナイスフォローだよ!

「この街って、アントネストで成り立ってはいるけど、爬虫類や両生類の肉って、人気がないでしょ? だから妖精の粉さえあれば、一発逆転できるんじゃないかって、そんな夢みたいな調味料を求めて旅に出るなんて、バカな男よね」

どうせもう戻ってくることはないでしょうけれどねと、しんみりしたように語るオネーサンの背後では、テオがギガンにゲンコツを貰っているし、チェリッシュはアマンダ姉さんに鬼のような形相で睨みつけられていた。

「アタシはここで、美味しい料理を作って、それを沢山の人に知ってもらいたいから、残っているけれどね」

「おいしかったよ」

「うふふ、ありがとう」

そうして寂しそうな表情から一変すると、鋭い目つきに変わった。

「でも、今日はしてやられたわっ!」

「あーうん」

チャレンジメニュー完食の件だろう。

オネーサンは改めて悔しさが蘇ったのか、拳を握り締めた。

「明日はもっと凄い肉を仕入れて、チャレンジさせてやるわ!」

「がんばってねー」

ロベルタさんとシャバーニさんは、オネーサンのお店の常連になると思うから。

なんせメガ盛りチャレンジメニューは完食すると、お値段が普通のメニュー一食分になる特典があった。完食できなければ値段は十倍取られるけどね。

お値段が十倍なので、当然量も十人前。要するに、それだけ食費が浮くのである。

オネーサンも客寄せの冗談メニューとして載せていたのだけれど、まさか注文して完食する 兵(つわもの) が現れるとは思っていなかったみたい。

それで商売になるのかなと思ったけれど、オネーサンは昼間はダンジョンに入って自力で肉を仕入れていた。なので、仕入れの肉は実質無料なのだそうだ。

夜はその仕入れた肉を料理して、俺たちのような冒険者がお客としてくるのを待っているとのことだった。

「明日はもっといい肉を仕入れるわよ~!」

そう叫びながら、オネーサンは自宅兼お店に戻って行った。

中々バイタリティのある人だね。

お客さんがあんまり来ないから、夜しかお店を開けられないそうだけど。俺としては朝や昼もオネーサンの料理が食べられるなら、食べたいところである。

そろそろ自分で作ることに飽きてきたし。どうにかならないかな?

大量に作った保存食や作り置きが、予定外の【GGG】のみなさんやロベルタさんが加わったことによって、ほぼ無くなってしまったのもある。自分で招いたことなので仕方がないんだけどね。

これからダンジョンに潜るつもりなら、その分暇な時間が無くなるということで。でも料理もちゃんと作らなければならない。そうなると、どうやって時間をひねり出すかが問題になってくる。

オネーサンが毎日、せめてお昼と夜に開店できるようにならないと、この問題は解決できない気がするんだよね。

夏休みの自由研究(フリータイム) のためにも、何かいい案がないだろうか。

「とりあえず、部屋割りでもすっか?」

「そうだな」

「あ~アマンダたちから好きな部屋を選んでくれ。俺らは残りで良いわ」

「そうっすね~」

店舗部分は商品棚や台があるけれど、商品類は全くなく空だった。

カウンターの方にも空の商品棚があるので、色々何か置けそうな気がする。

旅に出る前に処分したのか、持って行ったのかは判らないけれど、商品類だけが無くなった居抜き物件みたいだった。

でも商品さえ揃えれば直ぐに商売が始められそうだ。

「何か気になるのか?」

「う~ん」

女性陣が二階の住居部分へ向かったので、俺たちは店舗部分を見ていた。

そこにディエゴがやってきて、俺に問い掛けた。

「ビン、ならべたいねー」

「……ああ、そうだな。暫く住むなら、使いやすいようにするのもいいか」

「だよねー」

カウンターに入ると、何故か喫茶店やバーのように、簡易的なキッチンがあった。

もしかしたら、スパイスを売るお店の前は、喫茶店のような軽食屋だったのかな?

それともこのお店は元々こういう作りなのか、スパイス類をカウンターで作っていたのかもしれない。丁度いい感じの作業場のようでもあるし。

俺がじっくりとカウンターを検分していると、ギガンたちが声をかけて来た。

「なんだ? もしかして、この物件が気に入ったのか?」

「リオリオが気に入ったのなら、俺は全然いいっすよ!」

「どうかな?」

女性の意見も聞かないと判んないしと、俺はちょっとだけ面白そうな店舗だと思っただけだと答えた。

もしかしたら明日には別の貸店舗を見るかもしれないしね。

俺はオネーサンのレストランが隣にあるから、ここが気に入ったんだけど。

そうして俺たちが店舗部分を粗方見たところで、二階からアマンダ姉さんたちが降りてきた。

「ちょっと掃除しなきゃダメみたいね。まぁ、寝るだけなら問題はない感じかしら」

「野宿に比べると全然マシだよ~。ベッドもあるし!」

女性二人からのOKを貰ったので、俺たちも一先ずほっと胸を撫で下ろす。

「そうか。部屋の数はどうだ?」

「大きな部屋と、小さな部屋の二つね。それと、屋根裏があったわ」

「やねうら?」

「屋根裏というか、ロフトかしらね?」

流石にアレは部屋ではないわと、アマンダ姉さんが否定する。だが俺は屋根裏と聞いてワクワクした。

二階部分を確認するべく、階段を上る。二部屋に別れている内の一つにはベッドが二つ並んでいるだけで他は何もなく、大きな部屋の方にはベッドも何もないけれど、確かにロフトが付いていた。

「おお~」

ロフトの階段を駆け上り確認すると、三畳ほどのスペースにテンションが上がる。小窓も付いていて、思わずアルプスの少女ハイジを思い出した。子供の頃に憧れた、屋根裏の秘密基地のようだ。

「……気に入ったようだな」

「こっちの部屋はアンタたちに明け渡すわ」

「そうしてくれや」

「もう一つは小さいと言っても、この部屋のロフト部分がないぐらいだしね」

既に自分の部屋のように陣取ってしまったが、良いのかなと思って顔を出すと、みんながOKサインを出してくれていた。

「ブラウニーは、狭いところが好きらしいしな」

「気に入るんじゃないかとは思ったけど、真っ先に駆け上って行ったわね」

「俺らには狭すぎるし、リオンには丁度良さそうでいいじゃねぇか」

なんだかちょっと呆れたように言われているけれど、俺はここが気に入ったので気にしないことにした。

日本の俺の自宅にも屋根裏はあるが、本当にただの屋根裏なのだ。窓もないし、薄暗くて忍者ぐらいしか住まないんじゃないかってぐらいに狭い。

こういうロフトというか、西洋風の屋根裏というのに憧れていたので、念願が叶ったような気がした。

お洒落な出窓もあるし、俺にとっては狭くはないしね。

まぁ、俺の身長的な問題があって、狭く感じないんだろうけど。

この世界のサイズは俺にとっては大きいのだ。そういうことにしておこう。