軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第49話 収穫の喜び

俺の仕掛けた罠に、見事に引っ掛かったバカがいる。

くくり罠だけでは心もとないので、ディエゴと一緒にピタゴラスイッチした結果。

「死んでいないのが不思議だな……」

「クッションになる素材を下に敷き詰めてある」

巨大な穴に落ちている賊を見下ろす、ギガンのぼやきにディエゴが答える。

穴の中では、賊が呻きながらのたうち回っていた。(熊避け用の唐辛子爆弾が効いたのかな?)

この程度の穴であれば登れると思うだろうが、そこはそれ。ディエゴの土魔法で、ネズミ返しのような反りのある穴にして貰ったので(魔法って便利だね)、スパイダーマンか、とんでもない跳躍力がなければ登れないようになっているのだ。でもそんな能力があれば、賊にまで落ちぶれないだろうけどねぇ。

そんなこんなで。追い込み漁のように誰か一人でも罠にかかれば、驚いて分散した賊を落とし穴に誘導するように 仕掛け(ピタゴラスイッチ) を施し、逃げ場を無くす作戦が成功したようだった。

獣と違って人間の方が法則性があるから、案外誘導し易いのだ。

例えるのなら【お化け屋敷の法則】(俺が勝手に名付けた)というものがある。アレと同じ原理で、最後尾の人間だけを驚かせば自然と前に進むようになる習性を利用させてもらった。(怖がりの人は決して最後尾にだけはならないように気を付けよう)

「しっかし、どうやってコイツラを引き上げるつもりだ?」

「よわらせてからー」

「どうやって……?」

俺に視線を落として、ギガンが訊ねる。

放血する時は活きが良い状態の方がいいけど、別に賊は 獲物(イノシシ) じゃないからね。

抵抗力を失くしてから、弱った状態で引き上げるのが良いだろう。

「いそぐ?」

「いや、急いじゃいねぇが……。誰か近くの町の警邏隊にでも連絡を入れさせるか?」

「ノワルに頼もう。いいか?ノワル」

「ワカッタ! ジャーキークレ!」

「はいはい」

お仕事が出来て良かったねと、俺はイキイキとおねだりをするノワルにジャーキーを与えた。欲しかったらいつでもあげられるんだけど、それはノワルのプライドが許さないらしい。なんて仕事熱心な従魔だろうか。(見習わないけど)

そうしてノワルが近くの(とはいえ、人間の足なら数時間はかかる)町へ向かうのを見送りながら、俺はざわめく周辺を振り返った。

他の冒険者たちは、【くくり罠】に引っ掛かった賊の救助をしているようだ。

幾つものくくり罠を仕掛けたけど、引っ掛かったのは半分ほどかな? 残りはほぼこの落とし穴に 誘導(ピタゴラスイッチ) されながら捕獲されているようである。

仕掛けた罠でまだ残っている物もあるので、冒険者さんには気を付けるように伝えているが、危ないので回収しなくては。

「まだ残党がいる可能性もある。シルバにも捜索に向かわせよう」

「そだね」

「それがいい。まぁ、一応ってことでな」

明け方のまだ薄暗い中(俺の起床時間である)、罠にかかった賊の処理やら残党狩りなどがあるので、眠い目を擦りながら他の冒険者たちも起き出し、一緒に周辺を探索することになった。

とはいえシルバの鋭い嗅覚によって、賊はほぼ罠に引っ掛かって捕獲されたのが判明するのだけれど。追い込み漁だからね!

「みずいれてー」

弱らせるには水攻めが一番簡単でいいよねとばかりに、俺はディエゴに落とし穴に水を撒いて貰うことにした。

溺れるか溺れないかの瀬戸際に調節して貰うのも忘れない。

人様の命を奪って財産を強奪しようとしたのだ。この程度のお仕置きで済ませてやるのだから優しい方だと思う。

死ぬこと以外掠り傷っていうし。生きてさえいれば困難を乗り越えられるとしても、この落とし穴からは逃れられないけどね。

「おーい!くくり罠に引っ掛かった連中も一緒に落としておいてくれやー」

「おーう!」

「了解したぜ!」

ギガンの呼びかけに夜警をしていた冒険者が応え、罠を解除されて捕まった賊が次々と穴へ落とし込まれる。

叫びながら落ちていく賊たち。落ちてくる仲間を悲壮な表情で迎え入れる者たちと共に、そこで己の罪を悔い改めて反省するがいい。

警邏隊へ無事連絡が出来たとノワルから念波で知らされたディエゴは、シルバからも残党はいないと報告を受けたのもあり、俺たちは数名の見張りを落とし穴付近に残して朝食をとることにした。

「いやしかし、こんな楽に賊が捕まえられるとはな……」

「誰も怪我してねぇってのも、不思議だよな……」

なにも不思議なことではない。俺は怪我をしない為に罠を仕掛けたのだ。

賊もなるべく無傷で捕らえた方が、治療の費用もかからなくて済むしね。

「坊主のお陰だな!」

「お手柄だぞ~!」

「ありがとうねぇ」

「どういたしましてー」

湯を沸かしている鍋を囲みつつ。枝豆を枝からプチプチと引き千切る作業を手伝ってもらいながら返答する。

大量に収穫したのはいいけど、この作業は地味に面倒なので、昨夜俺たちが食べていた枝豆に興味を持っていたらしい冒険者や、シュテルさん含む商人さんに手伝って貰っているのである。

報酬は自分の千切った枝豆だ。自分の食べる分は自分でやってねと、目の前にどっさりと置いてあげたら、みんな喜んで飛びついてきた。

「まだあったんだね~」

「てつだってもらったからねー」

「でも俺、この作業楽しいっすよ~」

「よかったねー」

枝豆はシルバとノワルに魔法で刈り取って貰ったので、収穫自体は楽だった。

問題はこの枝から千切る作業なのである。これを全部自分でやる程、俺はお人好しでも馬鹿でもないので、興味を持っているなら手伝ってとばかりに、丁度良いのでやらせているのだ。

それに最初は意外に楽しい作業だからね。千切った分だけ食べられるなら、誰だって頑張るだろう。

共にこの収穫(エダマメ&賊)の喜びを味わうにもちょうどいいしね!

「これは絶対に売れますよ!」

「未熟だからといって、侮ってはなりませんな。完熟したソイとは違った味わいで、実に美味い!」

「しかも調理方法も簡単で、味付けは塩のみとは思えないほどです」

「是非とも他の領地に行って、この枝豆を仕入れなければなりませんなぁ!」

「……このエダマメ。エールに合うと思われませんか?」

「そちらもそう思われますか?酒類と一緒に食すとなると、やはり酒場などでの提供が宜しいかと思われますが……」

商人さんたちにも好評である。(お陰でシュテルさんはこっちに来ない)

既に買い付けや売る場まで算段しているので、この人たちって本当に商売に命を賭けてるなぁ。護衛する冒険者も仕事が増えてヨカッタネ。

と。それはともかくとして。

「全くあんたって、ほんっと卑しいんだから!」

大量の枝付き枝豆を確保した一人の女性に、誰かが罵声を浴びせるような声がして、俺はちらりと視線を向けた。

「どれだけ食べれば気が済むの?その食べ物はどこに消えてるの?」

「だ、だって……お腹が、す、空くんだもん」

「それにしたって異常でしょ?」

「アンタのせいで、アタシたちのパーティは、食費だけで尋常じゃない出費がかさんでるんだからね!」

「少しは遠慮しなさいよ!」

「で、でも、自分でちぎったら、た、食べていいって……っ」

「だからって、限度があるでしょっ!!」

四人で一人の女性を取り囲む、おそらくは同じパーティメンバーであろうグループだが。どうも大量の枝豆を確保した彼女を責めているようだ。

まだあるから気にしなくてもいいのに。っていうか、そういうのとは違うんだろうけど。

「もうっ、アタシらまで大食漢だと思われたら恥ずかしいじゃないっ!」

ああ、そういう心配か。そんなに気にしなくても、誰も気にしないと思うんだけどね。他人は自分が思っているよりも、他人に対して無関心だよ?

気にされる程に目立つのは、とびっきりの美女や美男子とかだからね。君らはその範疇にないと思われる。(失礼)

いっぱい食べる君が好きとかいう人もいるし。俺はどちらかというと、美味しそうに食べてくれるなら、老若男女問わず好感を持つからね。(食べてる姿を性的な目で見る性癖の人とは違うよ)

寧ろ小食ぶって食べ残す奴が嫌いだ。

異性に対しての小食アピールに意味はないと思うのだが。

本当に食べられないなら、食べられる分だけ頼めばいいのに、何で色々頼んでちょっとずつしか食べない人がいるんだろうか?バカなのかな?(失礼2)

「もーやだ!暫くアタシたちの傍には寄らないで!」

「同じように見られたくないわっ!」

何がヤダなのかわからんけれども、大量の枝豆を確保している女性を置いて、他の四人は腹を立てて立ち去った。

同じパーティメンバーだとは思うんだけど、仲良くできないなんて残念だな。

俺の所属しているスプリガンは、そういう意味では仲がいい。ズッ友ぶったような気持ちの悪い仲の良さではなく、お互いの役割を分担して、出来ることと出来ないことを理解した上での信頼関係を築いている感じだ。

だから居心地が良いんだけど。

普段は他人なんかどうでもいいと思っちゃう薄情な俺だけど、ちょっとだけ取り残された大食漢らしき女性のことが気になったのであった。