軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第160話 楽しい農作業

本日も晴天なり。

相変わらずサヘールの気候はギラつく太陽に照らされている。

今日は魔道具工房の職人さんと一緒に、新たに作った魔道具の実験に来た。

アラバマ殿下と愉快なカーバンクル部隊 withディエゴは、砂漠化した元農地の整地を行っている。

「まるで地中を泳いでおるようですなぁ~」

「そうだね……」

耕す作業をしているのだろうが、カーバンクル部隊(&ディエゴ)が作成したイルカのような形をしたゴーレムが土中を泳ぐように搔きまわしていた。

まるでB級映画みたいなことになっている。サメじゃなくてイルカなので、掘り起こした岩石をビーチボールのように弾いて、それを受け取ったアラバマ殿下が 釘鈀(ていは) で粉砕していた。

俺の作った農作業用のフォークをちゃんと使ってくれていて有難い。

「これはいいな! 農作業が捗って仕方がない!」

ウハハハハと笑いながら、開墾作業をしている。

乾燥した農地だけではなく、新たな農地にしようと岩がゴロゴロしている場所にまで手を伸ばし、楽しそうで何よりです。

「ブランカ、棘に気を付けろよ」

「ウキュキュ!」

一方のディエゴはというと、ブランカと一緒にバホメールの狩って来たサボテンの魔物の刺抜き作業中である。

なんだかんだブランカも器用にこなしているし、地味な作業なんだけどディエゴって枝豆のプチプチと同じでこういう作業が楽しいみたいなんだよね。

派手に農作業を手伝ってはいないけど、重要なお仕事を引き受けてくれている。

そしてお手伝いに来てくれた農家のみなさんは、サボテンの塩焼きという名の液体肥料作りをしていた。

ついでに俺の教えたサボテン料理もしている。他の食べ物も持ち寄り焼いているので、まるでBBQのようだ。

サボテンの魔物をサイコロ状にして肉と一緒に焼くと、肉が凄く柔らかくなって美味しくなるという新たな発見をしたのもある。

狩りのご褒美にバホメールと一緒に味見をしながら美味い美味いと食べているんだけど、肥料の分もちゃんと残しておいてください。

それにしても。どういう状況なのか、一見すると訳が判んないカオスである。

あっちはなんかもうおかしなことになっているので、俺は職人さんと一緒に真面目に農業用魔道具の実験をすることにしよう。

「このスプリンクラーという魔道具ですが、実に画期的ですな~」

「まだ実験段階ですが、歩き回って水やりをする必要がないのが実に良い」

「魔晶石の消費量をもう少し抑えられるようになれば、もっと良いのですがね」

「これは屑石扱いされている細かい魔晶石の使用実験ですからな~」

「リオン君が魔晶石と他の鉱石を組み合わせてみればどうかと提案してくれましたので、現在はその研究と実験を行っておるところです」

魔晶石鉱山には、掘り出されて捨てられる屑石の中に様々な鉱石が含まれている。

俺はその中からパワーストーンを掘り出していたのだが、たまに魔晶石の小さい欠片を見つけることがあった。

「何故捨てられているのか……ですか?」

「これだけ小さいと、直ぐにエネルギー切れになりますからな。売り物にならないんですわ」

「もったいないね」

「それにほら、光に翳しても虹彩が歪なモノは屑石扱いなんですよ」

「ふ~ん?」

魔晶石は魔力の結晶だから魔晶石と呼ばれている。それは一見すると黒いダイヤのようで、光に翳すと表面が虹色に輝いていた。

判りやすい例えで言えば、地面に零れたガソリンやオイルに水をかけた時のような模様になっている。油膜が光に反射して、虹色になっているような感じだ。

この虹色に光る部分の円を描く美しさで魔力の保有量が判るらしい。

「綺麗な円を描いてないので、持って数時間と言ったところでしょうなぁ」

「これだけ小さく虹彩も歪だと、使いどころに困りますからね。物によっては数分しか持ちませんし」

「ふむ?」

数分でも数時間でも持てば別にいいんじゃね? と思う俺の考えはここではおかしいのだろうか?

アマンダ姉さんのような魔術師の使用する魔晶石なら、威力も弱くて短時間で切れちゃうと困るだろうけど。

魔道具なら使いたい時にだけ起動させればいいようなものだろうに。

「魔道具に使用するには、持続時間がありませんから」

「動力として役に立たないんです」

だから屑石扱いにされていると?

というか、この世界の魔道具はデカすぎる問題がある。

大きすぎるから使用するエネルギーも膨大になるし、魔力を放出する起動装置的な役割も含めてコスパが悪いんだよね。

走ればいいだけの車なのに、スーパーカー仕様になっているというか、軽自動車で十分なのに大型トラックになってて、とにかく意味もなくデカイのである。

なのでもっと無駄を省いて動力を最小に抑えればいいのにと思ったことは一度や二度ではない。お風呂の湯沸かし魔道具にしたってそうだ。

見た目はとても立派でゴージャスなのだが、何でこんな部品が必要なのか判らないモノが多すぎた。

そもそも富裕層相手に売る為の仕様なんだろうけど、安価にして庶民に売ろうという方向に何故持って行かないんだろうね?

とまぁ、そんなこんなで。

「この小型の魔道具で、必要な時間、必要な量だけ水を出せばよいのですか」

だから色々と不必要な部分を排除して、ただ水が噴き出るだけのスプリンクラーを作ってみた。応用としてシャワーにもなる。

短時間の作動であれば、屑石だって立派な動力になる。

魔道具自体を作ったのはディエゴなんだけど、いらないモノをポイポイと外させたのは俺だ。何せ俺自身が魔道具を改造するとおかしなことになるんだよね。

西遊記の浪漫武器(おもしろ宝具シリーズ)みたいになってしまうと、製品化できなくなってしまうから仕方がない。

そしていらない部品を全て取り除き、作り上げたスプリンクラーはハンドボールサイズぐらいにまで小型化されたのである。

魔道具の改造、略して魔改造だ。なんつって。

「必要な分だけ放出すれば良いという、当たり前のことを何故忘れていたのでしょうかね……?」

「全くだ……」

「これが固定観念というものですかな……」

「既成概念かもしれません」

ただ小型化すると盗まれやすいという欠点はある。そこはもう個人の倫理観に任せるしかないので、俺は小型化する方向でしかアイデアは出さないけどね。

魔晶石を使い捨て乾電池みたいに扱うので、切れた魔晶石を一々取り外ししないといけないのが面倒という難点もある。

だがそんな難点より、利点の方が大きいのだ。

このスプリンクラー&シャワー装置は、他の魔道具に比べてコンパクトサイズであり、起動エネルギーである魔晶石も屑石扱いされているモノを使用しているので全体的にとてもお安い。

とはいえ、日本円にして原価が数万円程なので、販売すると庶民はかなり頑張れば買えるかな? レベルのお値段になるから普及するかどうかは未知数である。

元々の魔道具の値段に比べれば全然安いんだけどね。

ちょっと稼ぎの良い冒険者なら買ってくれるかもな~。そうなるとお湯の出る機能も追加しなきゃならないから難しいかな?

「高価な水やり魔道具に比べれば、魔晶石の取り換え程度、大した労力にはなりますまいて」

「そうですなぁ~」

水の不足しがちな乾燥地域にとっては、画期的な魔道具になりそうだ。

庶民には一個だけ買えば、簡単何処でもシャワー魔道具にもなるしね。ただし威力を弱めたり強めたりする部分を改善してからになるけれど。

ご使用の際は乾電池―――じゃなかった、安価な魔晶石を購入して頂ければよろしいかと思います。

現在は小さな屑魔晶石を、子供たちが拾い集めてくれている。

買取り価格は一個日本円で数十円程度だけど、子供にとっては遊びがてら稼げるいい仕事になっているようだ。

「よーし地均しをするから、皆は畑から出るが良い!」

後方では開墾し終えたのか、アラバマ殿下が従魔を呼び集めていた。

既にカーバンクルを従魔にしていることを隠しもしない。

これが開き直りというものなのか、王族なので恐れ多くて誰も突っ込んだりしていないからなのか。

農家のみなさんは、アラバマ殿下だからカーバンクルが従魔になるのも当然であるという雰囲気なんだよな。

農作業のお手伝いをしているから、とても優秀な従魔という認識なんだろう。

これがディエゴならヤベェヤツ扱いになるんだろうけどね。なんせ従魔のブランカがヤベェ奴なので、堂々とカーバンクルが従魔になってますとは言えないんだよ。

今まではバホメールに協力してもらっていた開墾や耕す作業をカーバンクルが代わりに引き受け、バホメールは液体肥料となるサボテンの魔物を狩るという仕事を新たに与えられている。

そして農家のみなさんは肥料作りや作物のお世話をする作業と、お仕事の振り分けがされていた。

「これで少しでも食料自給率が上がればよいですな~」

「そうだねー」

スプリンクラーが良い感じで作動して、耕された畑に満遍なく水を撒いている。

そこには綺麗に虹がかかって、キラキラとした眩しさを放っていた。