軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第155話 とんでもない発明

「貴様らはこの一週間、何をやっておったのだ!?」

カーバンクルが出没したため、ゴーレムの増殖による被害を避けるべく、冒険者たちが休養日を設け始めてから一週間。

既にカーバンクルの脅威は去ったと冒険者ギルドの調査により通達があり、俺たちはブランカによるゴーレム強制召喚での魔法金属取り放題のフィーバータイムが終了したことを知った。

他の冒険者がダンジョンに来るなら やりたい放題(ゴーレムの強制召喚) は出来ない。

魔法金属同士を掛け合わせて作る合金実験も、ここで打ち止めかと残念がっていたところへ、アラバマ殿下が現れたのである。

「ダンジョンが自主閉鎖されとるのに戻ってこんと思えば、工房でずっと遊んでおったとは呆れてものも言えん!」

「殿下! 我々は遊んでおったのではありませんぞ~!」

「ですぞですぞ! ほれこのように、新たな合金が出来たのです!」

「なんとこれは!」

「なんとこれは!」

「チタンと言う、軽い上に熱に強く、しかも耐食性がある、新たな魔法金属でございます!」

ミスリルとオリハルコン、そしてほんの少しのヒヒイロカネを配合した新たな魔法金属チタン――――に一番近い金属が生まれた。

本物のチタンとは別物だけど、特徴が似ていたのでそう名付けただけである。

熱に強く錆びないので、機械の部品として活躍しそうだよね。

「そしてこれは!」

「そしてこれは!」

「アルミニウムと言う、非常に軟らかく軽い金属であり、熱伝導もよく加工がし易いのが特徴の新たな金属でございます!」

これは魔法金属ではなく、鉄にサヘールの崖から採掘した岩石(おそらく 鉄礬土(てつばんど) のような鉱石と思われ)を混ぜたら、アルミニウムにとても近い金属が出来上がった。

実際のアルミニウムとは似て非なるモノだけれど、こちらは割と安価で作れる優れた金属であることは間違いない。アルミ 箔(ホイル) にしたら料理の幅が広がるよね。

「さらにこちらは!」

「さらにこちらは!」

「ステンレスと言う――――」

「ええい、もう説明は良い! とにかくこの一週間、貴様らは希少金属を使って遊んでおったということだな!?」

えー。このステンレスに似た金属も、食器に加工したらイイ感じになるんだけど、切れたアラバマ殿下に説明をキャンセルされた。

「しかもとんでもない発明をしおってからに!」

そこは認めてくれるんだ。流石はアラバマ殿下、頭の回転が速くて助かる。

「一体どれほどの希少金属を消費したのだ!?」

「ダンジョン産なので実質無料です」

「じっしつむりょう」

俺とディエゴは胸を張って主張した。

マッチポンプとはいえ、自力で手に入れた魔法金属だからね。

「後そこら辺の岩山から採取した鉱石は完全無料ですな~」

「ですな」

「ですよ」

「ですです」

「やかましいわっ!」

今までは誰もツッコミを入れることなく好き勝手やりたい放題していたところへ、アラバマ殿下から鋭いツッコミを頂き俺たちはちょっとだけ感動した。

身の引き締まる思いです殿下。

叱られて気付いたけど、割とヤバイ事をしていたような気がしなくもない。

作ろうと思えば作れるけれど、誰も掛け合わせようと考えなかった素材での合金を作り出してしまったのだ。

これはまた面倒な特許案件になるのではなかろうか?

「貴様らの仲間から聞いてはおったが、放っておくとろくなことをせんのを、改めて実感させられたわっ!」

「何時の間に仲良くなったのですか?」

「それきになる」

「気にするところはそこではないだろう!」

聞くところによると、俺たちが留守にしていた一週間の間に色々あったっぽい。

暫くダンジョンに行ってくると告げたものの、その肝心のダンジョンはカーバンクルが出没しているために半ば閉鎖状態。なのに連絡もなく戻っても来ないので心配していたところ、チョコレート工場の拡張を終えたアラバマ殿下へ、ギガンたちが声をかけたのが切っ掛けだそうだ。

「かくちょうごくろうさまです」

「うむ。まぁ、この程度は大したことではない―――ではなく! 何故仲間に連絡も報告もせんのだ! 貴様らの身を心配してはおらんかったが、とんでもないことをしている気がすると不安がっておったぞ! 事実そうであったがなっ!」

「とんでもなくはない……よな?」

「……だよね?」

新たな合金を作ったことは置いておくとして。

これはサヘールの新たな産業になるかもしれないし、アラバマ殿下の懇意にしている(事実上のオーナー)魔道具工房の職人さんの協力の元に作り出したので、俺たちだけの功績でもないしな。寧ろ殿下 の功績にしたい(に押し付けたい) 。

確かに報告や連絡を怠ったのは、反省すべき点ではある。

これは叱られ案件だなと、ディエゴと一緒に覚悟を決めた。

だが殿下にしてみれば、合金作りが問題ではないようだ。

「それに、その肩に乗っておる白いサルだが。一週間前にはおらんかったよな?」

「そうだね」

「新たな従魔です」

「ウキュッ」

促されて可愛らしく挨拶をするブランカ。額の紅い宝石を誤魔化すために作った『 緊箍児(アクセサリー) 』が、まるでお姫様のティアラのようだ。

「……こ奴の正体を、他の者は知っておるのか?」

「いや……」

「あー……」

「知らんのだな?」

「まぁ……」

「えっと……」

ギラリとアラバマ殿下の目が鋭く光る。

思わず冷や汗が流れ、俺たちは目線を逸らした。

そんな俺たちの態度に深く溜息を吐き、殿下はやれやれと肩を竦めた。

「そもそも貴様らが従魔にするぐらいだ。普通ではなかろう?」

「……」

「……」

ちょっと話があるから裏まで来いと、アラバマ殿下に連行されることになった。

そうして殿下によって洗いざらい白状させられることになるのだが、それもこれもにゃんリンガルを殿下に渡していた所為でもある。

嘘を吐こうが誤魔化そうが全てバレてしまうので、正直に話すしかなかったんだよね……。

「ほんっとうに、ろくなことを仕出かさんな貴様らはっ! ちょっと目を離した隙に妙なことをやらかすとは聞いたが、カーバンクルを従魔にするなぞ聞いたこともないわっ!」

「俺もまさかこうなるとは思ってもみなかった」

「おれもー」

まさに予想外です。

しようと思っても出来ることではないが、やりたくてやったことでもない。

「前代未聞とはこのことだが、何故カーバンクルが子ザルになっておるのだ? 普通は砂漠キツネなどに擬態しておるのに――――ああ、そうそう、丁度そこにおる子ギツネのような―――――」

誰もいない場所を選んで説教を受けている俺たちは、遺跡ダンジョンに近い岩場の陰で話し込んでいた。

するとそこへ、アラバマ殿下が言うように指をさした場所を見れば、可愛い砂漠キツネ――――見た目は完全にフェネック――――が、ひょこっと顔を覗かせこちらを窺っているのが見えた。

「――――いや、アレは見なかったことにしよう」

「でんかー」

「現実から目を逸らさないでください」

「貴様らに言われとうないわっ!」

あの額の紅い宝石が、ブランカにそっくりなんですが。どう見てもカーバンクルが擬態したフェネックです。

もしかしてこういうことってよくあるのだろうか? (後で聞いた話によれば、アラバマ殿下だけが見える幻獣のような存在だったらしい)

「キュキュッ! ウキュッ!」

「次のボスに任命しないといけないそうだ」

「ひきつぎ?」

「そのようだな」

ブランカは冒険者であるディエゴの従魔になってるし、シルバやノワルのようにほぼくっ付いて来ることになったのでここへは戻る気はないらしい。

その為、新たにボスを任命しなくてはならないようだ。

「キキキッ!」

「実力もないクセに出しゃばるな。だそうだ」

「えらそー」

「実際、偉いんだろうがな」

「たしかに」

女王様っていうか、ボス猿だもんね。本来ならばあのような可愛らしい砂漠キツネというか、フェネックの姿だったのかと思うと惜しい気もするけど。

子ザルも可愛いとはいえ、フェネックも可愛いんだよな。

そしてブランカにお叱りを受けたフェネックだけど、妙にアラバマ殿下へと熱い視線を送っているような気がした。

これはもしや、ディエゴと同じ運命を辿るのではないだろうか?

「出すな出すなっ! そのような物を受け取る気はないぞっ!」

一週間前に見た風景が、目の前で繰り広げられる。希少金属や宝石が、フェネックの額の宝石から取り出されるのを見て殿下が叫んだ。

これはまさかの求愛行動でなかろうか?

「ウキュキュ」

「貢物だそうです。求愛行動ではないので、安心して受け取ればよいのでは?」

「受け取れんわっ! どう考えても面倒なコトになりそうな予感しかせんっ!」

でも何だかんだで面倒見の良いアラバマ殿下なので、フェネックの憐れみを誘う視線に負けて従魔にすることになるんだけどね。

元来カーバンクルは臆病で、ブランカのようにゴーレムを召喚して人間に斃させて 金品(ドロップ品) を強奪したりはしないそうだ。

ゴーレム召喚はあくまでも逃走手段であって、身を守るために使役しているだけなんだってさ。

だから人前に現れることはほぼないに等しいのに、ブランカのせいでおかしなことになっていたらしい。規格外のやんちゃなブランカが、臆病で大人しいカーバンクルの評判を落としていたようだ。

ただ他のカーバンクルが、ブランカの真似をしないといいんだけれどね。

アラバマ殿下の従魔になったフェネックが、やがてバホメールのボスのように立派な品格を備えればその心配をしなくても済みそうだけれど。

「どうしてこうなった……」

俺たちを説教するはずが、気が付けばカーバンクルを使役することになっていた殿下が呟いた。

それもまた、アラバマ殿下の人柄の賜物だろう。

ブランカとは違い、忠誠心から殿下に仕えようとボスの品格を身に付けるべく従魔になったフェネックの期待の眼差しが眩しい。

ボスもアラバマ殿下の期待に応えろよと、弟分になったフェネックへ熱いエールを贈る眼差しで見詰めていた。

流石殿下の従魔である。懐が広いね。

余談だけど。

今までカーバンクルを使役した人間が居なかったのは、額の宝石から出される希少金属や宝石に目が眩んで堕落するからだそうだ。

伝説として語り継がれる財をもたらすカーバンクルとはいえ、欲深い人間に狩られる危険性から、自ら進んで使役されるようなことはない。

だけどディエゴはそういう欲望からほど遠いし、殿下も貢物を見て拒否したことから仕えるに値すると判断されたのだろう。

でも欲望に駆られると契約を破棄するそうなので、カーバンクルを従魔として契約するには難しい存在であることは間違いないのである。