軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第151話 求愛行動

カーバンクルことキングなコングは、母を訪ねる子ザルサイズになった。

見た目は完全にホワイト(コモン)マーモセットの子供だね。愛らしく小首をかしげて、愛嬌を振りまいているのがあざとい。

俺だけでなくシルバやノワルも、訝しげな表情で新たに仲間に加わった元コングを冷めた目で見ていた。

コングに石を与えたのは俺なのに、契約者であるディエゴに猛烈アピールをしているのが何とも言えず複雑な気分である。

寧ろ俺はパワーストーンを強奪された被害者なのではなかろうか?

「いいか、今後は絶対に俺の命令がない限り、人を傷つけたり攻撃しては駄目だぞ」

「キキッ!」

はーいというポーズで、良い子のお返事をするコング。

「それと、俺たち以外の前で、鉱石類を取り出すのも禁止だ」

「キッ!」

了解しましたというポーズで、キリッとした表情をするコング。

「勝手にうろつくのも禁止だ。必ず俺たちの誰かと共に行動するように」

「キャキャ~ッ!」

そんなの当たり前でしょと、ディエゴの肩に飛び乗って頬を摺り寄せるコング。

「……」

「……」

「……」

もしかしてこのコング、メスなのかな?

しかもかなりの面食いのようで、恋する乙女のようにキラキラした瞳でディエゴを見つめていた。

きっと大切な 鉱石類(ヒヒイロカネやミスリル) を差し出したのも、求愛行動の一種だったのかもしれない。(俺に差し出していたのではなく、実はディエゴに差し出していた!)

邪気は払ったつもりではあるが、愛情を深めるガーネットの効果なのか、ディエゴにやたらと懐きまくっている。

……うん。シルバやノワルも、このパターンは想定していなかったようで。本来であれば、好物の石を与えた俺に懐くんじゃないかって念波で突っ込んでくれた。

だが予想とは裏腹に、コングはディエゴにメロメロである。

いや別にいいんだけどね。俺にはシルバもノワルもいるし。

それにディエゴは召喚士だし、コングと契約を交わした相手である。

好みのタイプだったから、仲間にして欲しいと願ったのだろうし。俺からはパワーストーンを強奪する目的で近付いてきただけのようなもので、ホラーのような近付き方をしてきたのさえ、計画的犯行としか思えなかったけどね。

「しゅうごう」

俺はシルバとノワルを呼んで、まだ色々と契約内容を確認し合っているディエゴとコングをよそに、しゃがみこんで円陣を組んだ。

「むりそうだけど、がまんしよー」

仲良くできそうにもないとノワルが愚痴を零すのに、よしよしとジャーキーを与えながら宥める。

「シルバがいちばんだよー」

お供一号は自分なのにと、しょんぼりとしているシルバに、新入りとは格が違うから安心しなよとこれまたよしよしと宥めた。

お兄ちゃん。ソイツのせいで、シルバとノワルがしょげてますよー。ご主人様ならちゃんとケアもしてよねー。

名前を何にしようかって考えるのはいいけど、そいつ元はキングなコングだよ。

シルバも言ってるけど、カーバンクルは姿を変幻自在にできるらしいですよ。

従魔契約で存在を認識できるようになったから判明したことではあるけれど。

可愛い見た目に騙されないでね? 多分ソイツ、今は可愛い手のひらサイズの子ザルだけど、またウホウホなコングになることも可能だと思うから。

質量保存の法則とか無視した存在であるのは、契約者であるディエゴにとって百も承知なんだろうけど、 珍獣(カーバンクル) と契約したことで浮かれているようだ。

性格的に研究心が旺盛だから仕方がないんだけどね。

俺だったらそんな面倒な生き物を飼う気にはなれないんだけどなー。

初回のインパクトのせいで、俺の中ではコング呼びをしていたカーバンクルだが。ディエゴから『ブランカ』という可愛らしい名前を与えられた。

色が白いからだろうね。シルバもノワルもカッコイイ名前のようで、実は色に関連した単純明快な名付けである。

ただその名前を聞いてオレンジの髪で緑の肌をした某格闘ゲームに出てくるキャラが思い浮かんだので、ある意味納得してしまった。

きっとコング改めブランカは、トロピカルフルーツが好物に違いない。

その名に恥じぬよう、心優しき大自然の戦士に育つが良い。

新たに仲間に加わったブランカは、ラノベだときっとウザイタイプのヒロインとして一部では批判を受けそうな感じだった。

がしかし。ディエゴにメロメロなだけで、俺たちを威嚇することなく愛想を振りまくことに余念はないようだ。

仲間と仲良くするようにと、ディエゴから念を押されたからだろう。それを素直に聞き入れて、愛くるしい姿で俺たちに何度も挨拶のお辞儀をするので毒気が抜けてしまったのである。

拗ねていたノワルも、しょげていたシルバも、先輩として敬ってくる相手を無碍にすることはできず、広い心で受け入れた。

大人だね、君ら……。俺もパワーストーン狙いで近付いてきたブランカを警戒していたけど、ちょっと反省しなきゃいけないね。

それから変幻自在な ブランカ(カーバンクル) だが、どうやらコングと子ザルにしか変化できなくなったそうだ。

人型にも変化できていたのに何故だろうかと首をしきりに傾げている。

とはいえディエゴから「そのままでも十分可愛いから良いのでは?」と言われて、単純なブランカは「キャッキャッ」とはしゃいで喜んでいた。

本人がその姿で満足しているのならまぁいいだろう。可愛いは正義らしいし。

多分その姿に固定されたのは、俺のせいなんだろうけどね。

そして今まで謎の多かったカーバンクルだけど、ディエゴと契約して色々と判明したことがある。

都市伝説的な妖精がボガードに転変した存在ではなく、聖獣に近いが邪気が強いので魔獣寄りらしい。まぁ、宝石や希少金属が大好きな俗な性質があるからね。聖獣に進化できないのも仕方がなかろう。

幻獣とは実際に存在しない、空想上の生物を指すけれど。ここでは姿形が一定しない存在という意味だ。

要するに、見た人間の様々な想像を読み取って変化するので、幻獣とカテゴライズされている。妖精とどう違うのかは置いておくとして。

ブランカの場合は、ターゲットである俺の意識から、ゴリラが心優しくそして強い動物という認識を読み取り、それに影響されて姿がゴリラになっていたようだ。

おまけに幽霊だと思っていたせいで、俺以外に姿が認識できなかったらしい。

でも強い魔物としてレヴィアタンを選択されなくて本当に良かった。

シャバーニさんやGGGさんたちのお陰です。本当にありがとうございます。

そして天国の爺さんにもありがとうと伝えたい。子供の頃に見せられた名作アニメの白いサルを思い浮かべたおかげで、ブランカがとっても可愛くなりました。

下手したらとんでもない化け物に固定される恐れもあったからね。

流石のディエゴも巨大なゴリラと契約するのは躊躇しただろうし。(絶対にしないとは言い切れないのがディエゴである)

ところで。ゴーレムを斃さずして、棚ぼた的にヒヒイロカネやミスリルを手に入れたと思ったのだけれど。

「かえすの?」

「ああ。流石に対価もなく、従魔から物を貰うのはな……」

ディエゴは希少金属であるヒヒイロカネやミスリルをプレゼントされるのを断り、収納器官である額の宝石へ戻すように命令した。

「貢ぎ癖が付くのは拙い。判るな?」

「ウキュゥ……」

公私の区別をつける為――――ではなく。

大切な貴金属を渡すというのは、カーバンクルにとっては求愛行動なのだ。

受け取ればOKしたことになるので、ディエゴはきっぱりと断った。

思ったよりディエゴは確りしてるね。ポンコツだからそのままもらっちゃうんじゃないかな? って思って、黙って成り行きを見守ろうとしてたよ。

執着相手が希少金属や宝石からディエゴに変更されたのは、俺の渡したガーネットの浄化と愛情が深まる効果のせいなんだろうけどそれはそれとして。面白いからそのままでいてもらおう。

ブランカよ、お前の恋する相手はかなり手強いぞ。だが頑張れ。

俺は密かにブランカへ、念波にて仕事で成果を出せとエールを贈った。

「ウキュッ!」

アタイガンバル! という返答が返ってきたので、めげない乙女のブランカの評価が上がった。

この子はきっとできる子だ。

今後の活躍如何では、俺からパワーストーンを強奪しようとしたことは不問にしてやろう。

大好きなディエゴお兄ちゃんに褒められたいなら、下層に行かなきゃ出くわさないゴーレムを召喚したら良いと思うよ――――という俺からの適当なアドバイスを直ぐに実行し、その後とんでもない数のゴーレムをブランカは召喚した。

驚くディエゴ。そしてシルバ&ノワル。ホントゴメンて。

因みにコングへ変化したブランカが、パンチ一つでゴーレムを殴り倒していたのは言うまでもない。(まさかのパワータイプ)

自ら召喚した相手を殴り倒すっていうのもどうかと思うけれど。

お陰様で大量のヒヒイロカネやミスリル、そして他の希少金属を手に入れることが出来たので、結果オーライだよね?