軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第131話 パワーストーンの威力

翌日。

大人組は正装してカジノに出かけ、若手組はカカオを手に入れるべくアマル様を筆頭に護衛役のグロリアス軍団のメンバーたちを率いてカカオ農園に来ていた。

案内されたカカオ農園は都市部から離れた場所にある。

カカオの栽培には広い土地が必要で、都市の近くでは栽培できないのだ。

だからなのか、高価なカカオを作っている農場なのに、どこか貧しさを感じさせていた。

それでもアマル様が契約している農園はまだマシな方らしいけれど。常に一定の取引をしてくれる相手がいるだけで、マシな生活ができるんだって。時期や相手によっては安く買い叩かれたりするそうだし。

他の農園ではカカオをそのまま地面に並べて乾燥させていて、カビが生えているものも平気で混ぜ込んだりしているらしい。

アマル様が契約している農園では、王族に献上するとあって衛生面はきちんと管理されている。だからここを紹介してくれたのだ。

お店で買うのは止めた方が良いと言われたのも、これらが理由だった。

どの時代のどこの農園も、抱える問題は多いということなのだろう。

俺もどこかの農園と契約したいなぁ。衛生管理をちゃんとしていて、安定供給してくれるなら、高価買取も辞さないんだけどねー。ってなことを拙い口調で説明した。

「商売をしている訳ではないのに、大量にカカオを仕入れてどうするのだ?」

アマル様の疑問はごもっともである。

俺の大量買いのクセは日本に居た頃もそこそこあったが、この世界に来てから更に加速した気がしなくもない。

日本に住んでいた時は、毎日買い物に出かけるのが億劫で、保存の利く食料を大量に買い込んで、なるべく出かけずに済むようにしていたからだ。

田舎だから仕方がないね。家庭菜園のような畑もあるし、持ち山もあるからできたことなんだけど。

だがこの世界では、ある時にあるだけ買わなければ無くなってしまうし、二度と手に入らないこともざらだった。

季節に関係なく、何時だって欲しい時に欲しいものが買える世界じゃないからね。

それに時間停止魔法のある四次元リュックに入れておけば、腐ることも劣化することもない。だから大量買いが当たり前になっちゃったんだよなぁ。

「まんがいちのときにそなえてかな?」

「カカオはそんなに必要なモノなのか?」

「じっけんにつかうからね」

「実験とは?」

「おいしくたべるためだよ」

「美味しくなるのか?」

「うん」

「どうやって?」

「それはあとのおたのしみー」

アマル様のような王族も、カカオは高価な薬で苦いという認識しかないらしく、美味しく食べるということに首を傾げていた。

だからこんなに大量に買い込んでいる俺が不思議なのだろう。

商人だってここまで買わないと、カカオ農園の人も言っていた。

苦労して作っている割には、高価な薬だから庶民には需要はないし、嗜好品であるコーヒー豆程の実入りはないのだそうだ。

だからカカオ農園のいくつかは、カカオ作りを止めて他の作物に変える傾向にあるんだって。なんということでしょう。

誰かー! 誰かこの貴重なカカオの美味しい食べ方を教えてあげてー!

一部の富裕層に不老長寿の薬として有難がられているとはいえ、庶民の口に入るまでに至っていないのは、美味しくないのが原因だと思う。

高価なスパイスや高価な薬草を加えなければ、もっと安価にできるというのに!

しかも薬として認識しているため、余計に高いだけの代物にしていた。

どうしてこうなった!

「とあるアルケミストが、カカオが薬としての効能があるということを発見して、更にその効果を高める飲み物が作られたのだ」

「そいつがせんぱんか」

「戦犯とは?」

「なんでもないよー」

効能まで突き止めたなら、もっと追求しろと言いたいが黙っておく。

追求した結果が、あの苦くて酸っぱくて辛い飲み物になったのだろう。

この世界のアルケミストの評価や信頼が高いのも問題だよね。

「リオンさんが手を加えられるとなると、このカカオは更なる価値が付加されるんでしょうねぇ」

そして案内役として、シュテルさんもいる。

お仕置きを食らった割には、上機嫌でニコニコしてて不気味なんだけどね。

しかしここにディエゴが居ない今、シュテルさんが一番俺の言いたいことを察してくれるので必要な存在でもあった。

「もし必要であれば、私が他の農園と契約できるように取り計らいますよ」

といった具合に、交渉役としてとても便利なのだ。

商人だから俺に不利になる契約はしないだろうし、長い付き合いをしたがっているから、それを利用させてもらうことにした。

なんだかんだシュテルさんは、庶民にも手が届く商品を売る商人なので、俺の目的と一致しているからね。宣伝もしてくれるから助かるし。

「じゃぁ、おねがいねー」

「かしこまりました」

そして俺は、アマル様の契約している農園に、お礼としてオニキスの石を渡した。

これは何だと問われたので、豊穣のお守りだよと伝える。

基本的にこれら鉱石類は邪気を払う厄除けの石とされるけど、夫々ちょっとずつ効果が違う。オニキスは豊穣の石とされるので、苦労の多い農家の人には役に立つと思うのだ。

「その石を粗雑に扱わないよう、気を付けてくださいね。大切にしていれば、必ずあなた方に幸福をもたらしますので。寧ろ家宝にすべきです!」

シュテルさんが、過剰なまでに渡したオニキスに付加価値を与える。

家宝にするまではいかなくても、大切に持っていてくれるだけでいいのだけれど。

農園の人たちがビビってるじゃん。そういう言い方は止めてよー。

『パワーストーンの大盤振る舞いですね』

Siryiもちょっと呆れているぐらい、最近の俺は色んな石を色んな人に渡している。

俺の世界では信じる者は救われる程度のお守りだけど、この世界ではその信じる力が強ければさらに効果が倍増しているような気がしたんだよね。

だからちょっとした実験でもある。

後はアレクサに、宝石でもないクズ石を大量に持っていても役に立たないと言われたのがカチンときたのもあるのだろう。

コレクションをバカにされて、悔しかったのだ。

だから俺は、この世界にパワーストーンの威力を振りまくことにした。

危ないアイテムではないし、呪うような効果はないからね。寧ろ邪気を払うし、持ち主に細やかな幸福を齎すだけの効果がある――――と思われ。

そして頑張って努力した分、報われますようにと願いを込めた。

いくつか農園を案内してもらいながら、勘だよりにここだと思ったところと契約を交わす。衛生管理の徹底に加え、お互いが納得できるよう取り計らうシュテルさんが大活躍していたので、少しだけ評価を上げることにした。

一方的な契約にならないよう俺の監視が付いているので、無茶が出来ないってだけなのだろうが。

しかもアマル様の協力により、これらの作物が魔動船便で仕入れられることになったのである。

カカオ農園の他にも、コーヒーやサトウキビ農園とも契約した。

何故サトウキビがあるのに、カカオを甘くしようという発想がないのだ。薬は苦いモノという認識しかないからなのか。同じ苦みのあるコーヒーは甘くするのに。飲み物としての扱いが違うのはどういうことなのだ。

やはりカカオ革命を起こすしかないのか。農園のみなさんが、もっと豊かで幸せに暮らせるようにしなければならないような気がしてきたぞ。

そして契約した農園にオニキスを渡すことも忘れない。苦労の多い農家の人たちがもっと幸せになりますようにと願いを込めて、俺はパワーストーンを配りまくった。

そんな中、ディエゴから念波が送られて来た。

身代わり石のヘマタイトが何個か割れたという報告だった。

そのことから、やはり相手の持っている幸運のアイテムは、福を齎すというより相手を不幸に陥れるアイテムであることが判明した。

相手の持っているアイテムが、本人の努力や信じることで開運するのならば問題はない。本人にしか効果がないモノだからね。

だが片方に幸せを齎すことで、片方が不幸を背負わされるのであれば話は違ってくる。因果関係のようなモノだね。

それが気になったので、予防として身代わり石を持たせたのだ。

結果的に不幸を押し付けられる物だったからこそ、ヘマタイトが反撃の効果を発揮したのだろう。

詳しい報告はホテルに戻ってからとなり、ディエゴからの念波を終了した。

大人組の経過も気になるけれど、悪くない状況のようなので問題はないだろう。

終始楽しそうな波動が伝わって来たし、良い報告が聞けそうだね。

「アマル様。つられて大量にカカオを仕入れましたが、宜しいのでしょうか?」

「よい」

「あまり需要がないと思うのですが……」

「よいのだ」

気が付けば予定数を上回るカカオをアマル様も仕入れていた。

侍女さんが不安そうにしてるんだけど、しれっとし過ぎじゃない?

しかもちらちらと俺を見ながら、どことなくウキウキしている。

お菓子にするよってポロリとネタバラシしちゃったからかな……。

チョコレートやココアを気に入るかどうか判らないし、そんなに期待されると困っちゃうんだけど。

王侯貴族や富裕層の口にするお菓子って、俺の作るふわふわしたモノとか、甘さを控えた物ではないからかな?

高価な物を大量に使用する事こそが贅沢だと思っているからだろうね。

キャリュフとかがそういう扱いだったし。

それに富裕層は特に生活習慣病を患っている人が多いみたいなんだよね。

売れ筋の薬を聞くとそれがよく判る。しかも安易に高価な薬でどうにかなっているという現状も良くない。だから冒険者が薬草採取で稼げるっていうのも皮肉なのだけれど。

庶民の方がよく働いて動くから健康的だし、寧ろ美味しいモノを沢山食べているような気がするよ。

だからアマル様は屋台の食べ物をよく購入しているのだろう。多分。

「お主の作る食べ物は、本当に体に良いモノだと判るからな。是非姉上にも食べさせたいと思っているのだ」

「えっと……がんばります」

どうかディエゴお兄ちゃんが、人間魔道具として頑張ってくれますように!

そして人間魔道具として酷使されないように、サヘールのドワーフの職人さんが、便利な道具を作ってくれるように祈らずにはいられない。

っていうか、ここ最近の俺、やたらと祈ってるんだけど。

誰に祈っているのかよく判んないだけに、八百万の神のような存在がこの世界にもいると良いなと思ったのであった。