軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第129話 意識他界系ドリンク

待ちに待ったジボールに到着して、これと言った不平不満もなく下船する冒険者を見送る。

途中下船させられるというのに、みんな嬉しそうだった。

元々そこまで魔動船を購入する意欲があったのではなく、乗りたかっただけって冒険者が多かったせいでもある。

そして途中までとはいえタダ乗り出来てリゾート地で遊べる費用も貰えたらそりゃラッキーだろう。

帰りも希望者は魔動船に乗れるらしいしね。ただし三か月後であるが。なにせ運航費用が掛かり過ぎるから、値段もお高く頻繁に飛ばせないのだ。その費用も全てアマル様持ちなので、文句のつけようがなかった。

サヘールに行くには翼竜やナベリウスが出現する空域があるから運航されていないけれど、ジボールは西側の大陸までなら海と空両方の客船が出てるんだって。

だからここで豪遊するのも、ダンジョンで一稼ぎするのも自由ってことだ。

「高級ホテルの宿泊費、帰りの旅費と遊行費用まで渡しておりますので、これで不服と申し立てるのは強欲が過ぎるというモノですわ」

「なるほどねー」

「ナベリウスの討伐依頼にかかる費用に比べれば、大したことはない」

侍女さんはどこか不満そうだけれど、アマル様は平然としたものだ。

しかしこれだけ手厚く保証された条件での下船を受け入れなかったラヴィアンの自信って、やっぱり幸運のアイテムがあるからなのだろう。

「命を懸けてナベリウスを討伐する気があるとは思えんのだがな」

「命ってより、運で乗り切るつもりなんだろうぜ」

「あわよくば魔動船を購入するつもりでもあるわねぇ」

そして更なる軍資金を手にするべく、ジボールのカジノで稼ぐつもりなのだろうと大人組は予想していた。

ラヴィアンは完全にカジノへ行く恰好で船から降りてたし。紳士淑女の社交場だからか、元貴族らしく正装していた。

取り巻きの女性たちも華やかな装いだったからなー。降りて直ぐカジノに行くつもりなんだろうけど気が早いよ。

しかもすれ違う際にめっちゃ睨まれたんだけど。あえて喧嘩は売ってこなかった。

幸運のアイテムを持っているのに、こちらに勝負を持ち掛けて来なかったのは何故だろうか?

そんな疑問を残しつつ、俺たちは夫々の目的の為に二泊三日のジボールを楽しむことにした。

海に面したリゾート地であるので、魔動船は空ではなく港に停泊させている。

周辺は観光地によくある美しい景観となっていて、青い屋根と白く輝く石の建物がギリシャのサントリーニみたいだ。

「何だかロマンチック~!」

「バカンス向きの街ねぇ」

女性陣は早くもジボールの景観に魅了されている。

「取りあえずホテルにチェックインしよう」

「カカオやコーヒー豆が欲しいのなら、私が案内しよう。契約している農園がある。品質の高いモノが手に入るだろう」

「ありがとーございます」

王族自ら案内してくれる、しかも契約農家のカカオが手に入るんだって。

これはもう期待するしかないだろう。

ジボールは見かけは奇麗な観光地だけど、貧富の差はあるので危険な場所へは行かないことを約束させられた。

スリや置き引きもあるし、それは現代の海外での観光地と同じなのだろう。

ド田舎や寂れゆく街ばかりに滞在していたので、富める光と貧困の影が混在する街が初めてなだけに気を付けなくちゃね。

人も多くないし寂れていたからか、田舎にはスラム街なんてなかったもんな。

「カカオ農家は明日行く予定なんだろう?」

「うん」

「それまではどうする?」

「こっちにゃ、バザールがあるそうだが行ってみるか?」

「行きたーい!」

「行きたいっす!」

「陶器やガラス製品も売られてるそうよ」

「たのしみだねー」

そうして俺たちはホテルのチェックインを済ませ、バザールへ繰り出すことにした。

大人組は今夜カジノに潜入して、ラヴィアンの様子を窺う予定である。

彼らが如何にしてアイテムを使うのかを調べるそうだ。

日中は俺たちと一緒に買い物に出かけたり、ちょっとした観光を楽しむのでそれまで一緒だけどね。

異国の地のバザールは、賑わいを見せ俺たちを大いに楽しませた。

普段ネット通販に頼りきりだったので、品物を手にして交渉するのも新鮮な感じがして楽しいね。毎回だと面倒だけど。

バザールでは俺は主にナッツ類を買い漁った。

ナッツの女王であるピスタチオや、王様であるマカダミアナッツ。カシューナッツにヘーゼルナッツにアーモンドと、種類が豊富でウハウハしちゃうね。

おつまみにしてもいいし、お菓子に使っても良いし、砕いて揚げ物の衣に使えるし使い勝手が良いんだよな。

とてもお安いので、大量に買い込むからみんなが呆れているけど気にしない。

お店の人もあるだけ買い込もうとする俺に恐れ戦いていた。

「冬支度を始めるリスみたいだな……」

背後でディエゴがなんか言ってる。

これはみんなのおやつやおつまみになるんだよ!

俺が一人でポリポリ食べる訳じゃないんだってば!

「エダマメといい、リオンって豆が好きよね……」

これらナッツ類は豆ではない。

種実類の木の実であって、れっきとした木の実だよ!

因みにナッツと付いてるピーナッツは豆だけどね。

「あ、ホットサンドメーカーだ。リオっち、ホットサンドメーカーが売ってるよ!」

「こんなところにまで波及してたのか……」

「ライセンス料を確認してないが、かなりの収入になってそうだな」

「そうだねー」

露天商に売られている品物の中に、ホットサンドメーカーを見かけて感慨深げにみんなで眺める。

そのせいで店のおじさんからめっちゃ勧められたけど、もう持っているからと断るのに苦労した。

やたらと使い勝手の良さなどを褒め称えられるモノだから、恥ずかしくなったじゃないか。俺の手柄じゃないだけに。

「その内、アントネストの商品も見かけることになりそうだな」

「そうだといいねー」

「アントネストの冒険者には頑張ってもらわねぇとな」

「まだ周辺の街にしか出荷出来ないものね」

「色んなところでコロポックル印の商品が並ぶようになったらいいね!」

「モデルがここにいるって言いたくなるっすね!」

「それはやめて……」

その内ホットサンドメーカーみたいな商品は模倣品も出回るだろうけど、アントネストの商品は真似したくても出来ないからね。あのラベルの貼られた調味料や美容品があちこちで見かけられるようになると恥ずかしすぎて軽く死ねそうだ。

そう考えると、俺のこのウサミミ帽子もそろそろ変え時なのかもしれない。

機能性は抜群だけど、いい歳こいて耳付き帽子を被ってるのが恥ずかしいのだ。

何か良い代替品はないものだろうか?

そんなことを考えながらバザールを見渡していると、向かい側からハルクさんたちがやってくるのを見つけた。

「おう。やっぱここらに居たか」

「買い物に行くつってたからな。探してたんだぜ」

そうして齎されたのは、ラヴィアンがカジノで大暴れしているという情報だった。

暴れていると言っても暴力ではなく、アイテムによって勝ちまくっているというものだったけれど。

「取りあえずどこかに腰を落ち着けようぜ」

「ここで立ち話できるような内容でもねぇしな」

「そうだな」

「どっかで飯でも食いながら話そうぜ」

お昼時でもあったので、雰囲気の良いお店を選んでみんなで入ることにした。

異国の料理に対してまだ警戒心はあるとしても、そのレストランは清潔で高級感があるから油断していた。

そして入ったお店にはとても珍しい飲み物があり、俺はそれを頼んでみることにしたのだが……。

「お。坊主は大人だな~」

「そんな苦くて酸っぱい飲み物を頼むなんてな!」

「そのくせやたらたけぇんだよなー!」

「ここは産地だから多少は安いけど、オレなら絶対頼まねぇよ」

どわはははとハルクさんたちグロリアストリオが笑う。

それもそのはず。

高級なお店だったのか、そこではカカオを使った飲み物があったのだけれど。

「にがすっぱからい……」

そしてクソ不味い。なのにめっちゃ高い。

なんだこの飲み物は!?

『ショコラトルですね。カカオ豆を磨り潰し、スパイスを混ぜた飲み物ですので、マスターの知るショコラという飲み物とは全くと言って違う味かと思われます』

味の改善を要求する!

スパイスじゃなくてせめてミルクと砂糖を入れてほしい!

香りはカカオだから甘いと思い込んで飲んだら、薬草とかスパイスとか入れてるから、苦くて酸っぱいし辛いなんて詐欺だ!

吐き出さなかっただけ褒めて欲しいところである。

「金持ちは有難がって飲むんだけどなー」

「不老長寿だっけ? 長生きできる飲み物らしいぞ」

カカオの歴史をそこそこ知っているから、判るっちゃ判るんだけど。

神の食べ物という意味で、ギリシャ語でテオブロマという。テオブロミンという成分によって、血液の巡りが良くなるとされている。なのでカカオは神秘的な力を持つ物として儀式に用いられたそうだ。この世界では知らんけど。

少なくとも高価な薬として重宝されているという情報しかなかっただけに、想像を絶する味にひっくり返りそうだ。

「どうしてこうなった……」

なんで苦いカカオに、スパイスを混ぜて辛くしたんだろう?

どうしたらこんな発想になるのか全然わからない。

こういうのを 意識他界系(・・・・・) 料理というのだろか。マジで意識が飛びそうになっちゃったじゃん。

「坊主は何でこんなのが欲しいんだ?」

「高いだけで不味いだろうによ?」

「香りはまぁ、何となくいいんだけどな?」

「なんだっけ。精力剤だったか、そう言う効果もあるんだっけ?」

「媚薬じゃねぇか?」

「まだ若いのにこういうのに興味を持つなんて、坊主はませてるな~」

ハルクさんたちが好き勝手に言っているのをスルーする。

都会では貴族の嗜好品としてそれなりに出回っている。とはいえ高級品なので庶民が気軽に買える価格ではないので、カカオの味や香りを知っている体で俺を揶揄っているのが判った。

他のみんなはカカオが薬であるという知識はあっても、実際に口にしたことがないから黙っているんだけどさ。どうフォローを入れようか悩んでいる様子だけど、フォローのしようがないって感じだ。

そんな訳で。

この世界のカカオの味を確認したくて頼んだ結果、散々な目に遭った。

「どうにかしてやる……」

Siryiに協力してもらい、俺の知識をフル活用して開発してやるんだからな!

今は笑っているハルクさんたちも、チョコレートやココアという奇跡の甘味の魅力に目覚めさせてやろう。

そして俺をバカにしたことを反省させてやるのだ。