軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話 幸運と呪いのアイテム

礼に始まり、礼に終わる。

武道の精神とは、礼儀や礼節を重んじること。そして人を敬い、思いやる精神が大切だと知ることだ。

「「「ありがとうございました!」」」

礼儀正しくお辞儀をして、軍団は各々日課の鍛錬を始めた。

本日の稽古も終了し、実に爽やかな気分だ。何となく邪気も払われているような気がするし。日本に戻れたら、 合気神社にお参り(聖地巡礼) に行こう。

とはいえ俺が教えているのは丹田呼吸法なので、集中力と忍耐力を養うためのものなんだけどね。

技を教えたって戦い方が違うし、この人たちには夫々のジョブがある。

彼らに必要なのは集中力や忍耐力。そして心を落ち着けるための呼吸法だった。

「オレさ、この呼吸法を学んでから、妙に落ち着いた気がするんだ……」

「確かにオレも、直ぐにカッとならなくなったぜ……」

「集中力が増したせいか、相手の動きも良く見えるようになった気がしねぇか?」

「わかる」

「わかりみがすぎる」

「これが隊長の言っていた、冷静な判断力って奴か……」

「今まで冷静なつもりでも、冷静じゃなかったってことか」

元々単純な人たちだったのか、効果は抜群のようである。

実力はあるけど、それに伴う精神的な成長が未熟だったみたいだしね。俺もその点においては未熟者なので、人のことは言えないのだが。

グロリアス軍団は強くなるために筋力を育てるというより、精神面を鍛えなきゃならないタイプだった。

先日俺と鬼ごっこをして散々やっつけられたことがショックだったのか、己の実力不足を痛感したグロリアス軍団は、暇つぶしにゲームで遊ぶのを止めて、今や甲板で鍛錬に勤しむようになっていた。

「なんか坊主のお陰で、アホ共が少しはまともになったような気がするんだが?」

「だよな。アイツらのあのノリで深層まで到達できる気がしねぇから、今まで高難易度のダンジョンに挑ませられなかったんだよ」

「どうせ途中で引き返すか、最悪死ぬかも知れなかったからなぁ」

「そうなんだ……」

複数のパーティを抱えるクランを纏めるのも大変なんだろうね。

やんちゃな軍団の面倒を見ているハルクさんとグラスさん、そしてハンターさんの苦労がしのばれるよ。

とはいえ、元々リーダーである三人のノリのせいで、彼らがああなっちゃった気がしないでもない。本人たちは切り替えができるから良いのかもしれないけど、そうでない人たちは表面だけ真似しちゃうからなー。

そんなこんなで。戦闘職でもない子供(に見えるだけ)の俺からいいように翻弄されたことにショックを受けた軍団のみなさんは、心を入れ替えて真面目に鍛錬するようになった。

フィジカルに恵まれていると、自分より弱い相手に油断してしまうものだ。

持てる者は持たざる者を見下す傾向が強い。そう言う部分で彼らはまだ未熟だったってことだろう。

心優しきマッチョマンであるGGGさんとは大違いである。

でも子供だから侮っていたと全員で謝ってくれたので、根は素直なんだよなー。

自分に何が足りないかを悟れるということは、伸びしろがあるってことだからね。このまま精神面が成長することを願おう。

それに引き換え、ラヴィアンの連中は「妙な術を使うなど、卑怯者めがっ!」とか言うような人たちだった。

彼らはきっとアイテムのお陰で成り上がって来たのを忘れて、自分の実力だと過信しちゃった人たちなのだろう。

妙な術とは言うけれど、術は術でも合気道という武術なんだけどね~。

しかも最終的に彼らの中で俺が卑怯な悪者になっていたんだけど、絡んできたのは自分たちのクセにどういう思考回路の持ち主なのだろうか?

ああいう大人にだけはなりたくないものだと思うよ。ほんと。

今度絡んで来たら、アマンダ姉さんとディエゴがただじゃ置かないと憤慨していたので、出来れば絡んでこないことを願うばかりである。

ゆっくりと進む魔動船での空の旅も一週間ほどたった頃。

あと数日でジボールへ到着するという案内があり、乗客である他のクランの人たちもそわそわし始めていた。

「ところで貴方たち、下船希望しなくてもいいのかしら?」

「他のクランはほぼジボールでドロップアウトするつもりらしいぞ」

グロリアス軍団に混ざって、チェリッシュやテオが鍛錬しているのを眺めながら、大人組がハルクさんたちに問い掛けた。

「そういうお前さんらは降りねぇんだろう?」

「いや。下船はする」

「カカオが欲しいっつーからな」

「買い物のために降りるだけじゃねぇか」

「そうともいうわねぇ」

あはははは、うふふふふと、誤魔化すように笑う大人組である。

これって腹の探り合いっていう奴なのではなかろうか。

「ここまで乗せられてきちまったとはいえ、帰りの旅費やキャンセル料も出るそうだし、早目に決めた方が良いと思うぜ?」

「キャンセルっつっても、こっちは金なんぞ払ってねぇじゃねぇかよ」

「むしろタダで乗せてもらってる立場だぞ。おかしいだろうが」

「途中下船させられるのよ? 慰謝料みたいなものじゃない」

「だからそれがおかしいつってんだろ」

いいから降りろと言わんばかりのアマンダ姉さんやギガンの言葉に、ハルクさんたちは訝しげな表情を浮かべた。

「騙されて乗せられたはずのお前さんらが降りねぇのに、ある程度知ってて覚悟の上で乗ってるオレらが降りるのはおかしいんだよ。ぜってぇ、なんかあるだろ」

「ラヴィアンの連中がナベリウスの話を聞いて降りねぇのもおかしいが、アイツらは幸運のアイテムがあるから仕方ねぇ。それで成り上がってきやがったしな」

「だがお前さんらはそういうアイテムを持ってねぇのに、エライ余裕かましてんじゃねぇか。もしかして、オレらの知らねぇアイテムでも持ってんじゃねぇか?」

おお、中々鋭いね。流石はクランを率いるリーダーたちである。

しかしラヴィアンはドロップアウトしないのかー。

ドロップアウトすればいいのになぁ。

あの人らが付いてきたとしても、面倒なコトにしかならなさそうなんだよね。

それに三種の神器のアイテムの秘密を知る人は少ないに越したことはない。

だからギガンたちはグロリアス軍団に下船を勧めているのだ。

いくらグロリアスの人たちが良い人だと知っていても、軍団のみなさんの中には口の軽い人もいるから、出来ればドロップアウトして欲しいと思っていた。

「そういや奴らの幸運のアイテムだが、どういう効果があるんだ?」

「ん? ああ、ラヴィアンの持ってるアイテムのことか?」

「幸運といっても効果が違うでしょ?」

「ありゃぁ、ギャンブル運が上がるみてぇな―――って、誤魔化すんじゃねぇよ!」

「騙されなかったか」

「そんなに単純じゃなかったわね」

話を逸らそうとしたけど失敗したようだ。

能天気な軍団を率いているとはいえ、リーダーたちは単細胞ではないらしい。

この三人だけならノリは軽くても口は硬そうなんだけど、問題は軍団の方である。

「冒険者には、知られたくねぇアイテムを一つや二つ持ってる奴がいるから、無理に聞き出したい訳じゃねぇんだけどよ」

「オレらだってそうだ。だから見られたくねぇなら、見なかったことにする」

「アホ共が問題なら、ボコって眠らせる」

「それでもダメなら、ジボールに捨てて行く」

「お。そっちの方がいいな。んじゃそうするか?」

「ちっとはマシになった気はするが、ナベリウスを相手にするには心許ねぇしな」

なんかもう必死だね。

そこまでしてサヘールへ行きたいのだろうか?

俺たちもドワーフの作る武器を手に入れたいので、気持ちは判るんだけどね。

「アイツらをジボールに捨てて行くというのなら、多少考えないでもないが……」

ディエゴが甲板で鍛錬している軍団を見遣って、ギガンたちの反応を窺う。

軍団を捨てて行く案、本気で考えてるのかな?

「交換条件で、ラヴィアンの幸運のアイテムについて聞くのはどうだ?」

「そうねぇ。あの連中が乗り続けてても良いことはないもの。何か弱点でも見つかればいいわね」

「幸運のアイテムがあるから、調子に乗ってるようなもんらしいしな。そいつさえなくなりゃ、大人しくなるかもしんねぇし」

「リオンを襲った罰として、幸運のアイテムとやらを壊してやろう」

「だからディエゴ、あんたはその物騒な冗談は止めなさいよ」

「冗談ではないが?」

「なお悪いわ!」

ディエゴは冗談を言ってないし、思考がサイコパスなだけなんだよな。

でもラヴィアンのアイテムを壊すのは止めとこう。持ち主を選ぶアイテムだから、報復として呪われても困るしね。

そういやSiryiは元貴族の三男の持ってる幸運のアイテムって鑑定できるのかな?

『現物を見ないことには鑑定できませんね。身に着ける物ではなさそうですし』

やっぱそっか。

身に着ける物ではないアイテムかー。それってなんだろうね?

「じゃぁ、オレらがそのアイテムの情報を渡せば、お前さんらが余裕かましてる理由を教えてくれるのか?」

「他言しねぇって約束が出来るならな」

「それについては保障する。あのアホ共にも教えねぇ」

「適当に誤魔化しとくぜ」

「アホで単純だからな」

真面目に精神修行している軍団に対するハルクさんたちの評価が酷い。

仲間だからこその正しい評価なんだろうけれど。

色々と話し合った結果、軍団はジボールに置いて行くことが決定し(だが軍団はこのことを知らない)、ハルクさんたちは残留することとなった。

おまけにラヴィアンをドロップアウトさせる案も、一緒に考えてくれるんだって。

彼らもラヴィアンが気に入らないらしく、むしろ喜んで協力を申し出てくれた。

「秘密のようで秘密じゃねぇが、アイツらのアイテムはちっと変わってんだよ」

「変わっているとは?」

「ギャンブル運が上がるって言っただろ?」

「要するにアイツの持ってるアイテムってのは――――」

そうしてラヴィアンのリーダーが持っている幸運のアイテムについて、俺たちは知ることになるのだが。

「――――てな感じで成り上がってきたんだよ」

「それって本当なのかしら?」

「相手の運を奪うアイテムか……。そりゃ、ギャンブルも戦闘も負けない訳だな」

「だがそいつを奪われたら、お終いだろう? 何故そうしないんだ?」

「帰属アイテムってあんだろ? 主人を選ぶから、奪われても本人の元に戻っちまうんだってよ」

「そりゃまた、厄介だな」

捨てても戻って来ちゃう呪いの人形みたいなアイテムだね。

というか、呪いのアイテムっぽいな? 幸運のアイテムらしいけど。それって本当に幸運のアイテムなのだろうか……。

「しかもその手のアイテムは、壊すと呪われるからぜってぇやるんじゃねぇぞ?」

「聞いたかディエゴ」

「……」

やっぱ呪われるんだ!

そしてディエゴお兄ちゃん、黙ってないでちゃんと頷いて!

良くないことを考えているのか、それとも全然違うことを考えているのか判らない表情でちょっと怖いんだけど!

自分の考えに陥っているのか、「帰属アイテムだとすると……まさかな……」等とブツブツ呟いている。こうなると暫くは帰ってこないので、ギガンもアマンダ姉さんもディエゴを放置しちゃったじゃん。

「まぁ、そんな訳で、やっこさんらは調子に乗っちまってんだよな」

「アイツらの持ってるバフアイテムも、そうやって手に入れたんだぜ?」

「だから娯楽室に行くなって、最初に警告してやったんだよ」

大変有り難い忠告だったわけだね。

だけど俺は基本的にギャンブルはしないから、娯楽室には行かないんだけど。

おみくじを引くと大吉しか引けないし。宝くじは大当たりはしないけど外しもしないから、あんまり面白くないんだよな。

そしてギャンブルと言えば、大学生時代に周りがやたらと競馬の話で盛り上がったことがあるのを思い出した。

多分、ゲームやアニメの影響なんだろうけどね。

その時は周りに誘われるままに競馬の馬券を買ったんだっけか。誘いに乗らないとノリの悪い奴扱いされるから、仕方なくだったけれど。

普通は一番人気の馬を選ぶらしいが(それかお気に入りの馬)、俺は不人気の馬がどうしても気になった。

それで何気なくその馬と適当に選んだ馬の馬連を購入したら(周りからは馬鹿にされた)、その不人気馬が一着になって大混乱になったんだよね。

恐ろしいことに、たった一枚の馬券が、十万円ぐらいになっていたのである。

勘が働くと言えばそうなのだろうけど、運が良いのも考えようだ。

なんせ俺だけ当たったものだから、やたらと奢らされたし集られたのである。知らない人にまでだよ! どこまで言いふらしてんだよ!

悪銭身に付かずとは言うけれど。

運が良くても結果として周りからやっかまれるので、目立つことはしない方が良いという教訓を得た一件でもあった。

だから俺はその後、予想に反して逆張りするようになったんだよね。あえて外すことで災難(人災)から逃れるために!

元貴族の三男坊も、あまり派手にやり過ぎてその内とんでもないことになる前に控えた方が良いと思うよ。

何となくだけどその幸運のアイテムは、運を吸い取られた人の怨念が溜まってそうなんだもん。

いつか破滅へと導くような、その布石として偽りの幸運を持ち主に与えているような気がしてならない。

なんてことを俺が考えていると、ギガンやアマンダ姉さんが俺を見ていた。

「なーに?」

「いや……まぁ、なんだ」

「どうなのかしらと思って……」

「?」

「部屋に戻ってから話した方がいいか……」

「そうねぇ」

「ディエゴも今は役に立たねぇしなぁ」

「よからぬことを企んでないと良いけど」

「そういうとこが、ほんと似てるんだよなぁ」

「兄弟(という設定)だからかしらねぇ……」

なんか気になるけど、この場では話せないことなのだろう。

だからとりあえず、グロリアストリオに俺たちの 奥の手(アイテム) について説明して、この場はお開きにすることにした。

三人ともアントネストで手に入れたアイテムに驚いていたけど、公言すると毛根が死滅する呪いをかけるから言いふらさないでね!(まだ邪気が残っている3)