軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新居は風通しがいい方がいい

引くほど号泣する父にエスコートされ、誰だおまえくらいの笑みを浮かべる夫と誓いを交わし、オリビアはモメント公爵夫人となった。

なぜか夫はとてもにこやかで、細々と気遣ってくれる。

氷華の君(笑)はどこいった。と思いつつも、気遣いは素直に嬉しい。

オリビアが逐一お礼を言うからか、彼はとても張り切っているようだ。変わり身がすごい。

「ようこそおいでくださいました、奥様。これからは、侍女長の私が奥様に公爵夫人としての教育をさせていただきます」

あー、ね。よくあるよね。嫁いで来たら、使用人に舐められまくる令嬢の話。

でっぷりと恰幅のよい女性からの〝お出迎え〟を、オリビアは笑顔で迎え撃った。ええ、弾は充分。

「うふふふ。 た(・) か(・) が(・) 使(・) 用(・) 人(・) の(・) お(・) ま(・) え(・) が(・) 、 王(・) 家(・) の(・) 血(・) 筋(・) た(・) る(・) わ(・) た(・) く(・) し(・) に(・) 教(・) 育(・) ですって? あらあら、まあまあ。いいご身分ですこと」

一見、淑やかで大人しそうなオリビアである。半笑いで状況を眺めていた使用人たちが凍りついた。

ぐるりと一同を見渡し、なるほど、と笑みを深める。

次男だった夫は、屋敷内ですら掌握できていないらしい。そりゃオリビアが召喚されるわけである。

ということで。

「あなた」

夫を呼ぶと、侍女長の悪意にも使用人たちの舐めくさった態度にも気づいていなかったらしい彼は、そそくさとオリビアに寄り添った。

「こちらの使用人たちは、どうやら 主(・) を(・) 見(・) 失(・) っ(・) て(・) い(・) る(・) ようですわ。前当主ご夫妻をよほど慕っていたのね。旦那様が新しい主だと、今一度ご挨拶しては?」

「そうだな」

険しい表情の夫が、使用人たちに向き直る。

美人が怒ると怖い。それぞれ居住まいを正した使用人一同の顔色は真っ青だ。

「私がモメント公爵家の当主であり、妻は家政の一切を取り仕切る当主夫人である。軽視することは許さない。仮にそのような言動が見られれば、厳しく罰せられると心得よ」

「か、かしこまりました……」

「なお、侍女長はその地位を返上し、一侍女として妻に教えを乞うがいい。異論があるなら辞めてもらって構わない」

「いいえ……仰せのままにいたします」

あらまあ旦那様ってば、気が利きますこと。

ヒロインに媚びっ媚びで悪妻を売り渡す侍女長から権限を奪ってくれた夫に、オリビアは上機嫌でにこにこ笑う。

あとでたっぷり褒めておかねば。これは伸びるぞ。

この調子で、しっかりがっしり家政を掌握するとしよう。

結婚式と披露パーティーが別日でいいのかなと思っていたが、さてはお父様、これも織り込み済みだな。

夫人の部屋への案内を頼むと、当主の私室の隣へと連れて行かれたが、換気も清掃も充分ではない。

おそらく、案内するつもりではなかったのだろう。玄関ロビーでのやり取りでビビって急遽変更しただけで。

もっとみすぼらしい部屋を用意していたんだろうと思いつつ、オリビアは今一度支度を申しつけた。

思惑通りいびられてやる謂れはないし、やられたらやり返せばいいのだ。こちとら権力もあることだし。

充分に清掃の行き届いた部屋に再度赴き、侍女長だった女をこき使いながら、速達で実家に手紙を送る。

すぐさまスーパー侍女たちが送り込まれ、使用人の再教育を担うことに決まった。

さてさて、質を上げねば!