軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アルベルダの思惑

警備兵達に見送られ――仕事はいいのかい、君達――現在、グレンの家へ向かう馬車の中。

セシル達は私とグレンの砕けた態度に呆気に取られてます。

まあ、そうでしょうね。一応、説明しておいた方がいいだろう。

「セシル、エマ。グレンは現在アルベルダに居るけど元は私と同じ世界の人間だよ。ただし、私より二十七年ほど前のアルベルダに迷い込んだけど」

「異世界人だと!? アルベルダに異世界人が保護されたなど聞いた事は無いが……」

「内乱でそれどころじゃなかったみたい」

「うむ、落ち着いた頃にはどうでも良くなっていてな。結局、そのまま戸籍を作ったから儂が異世界人ということはあまり知られていないだろう」

「……。それを『どうでもいい』で済ませるあたり、ミヅキの御知り合いですわね」

グレン、早くも私の同類認定されたようです。

まあ、異世界人にとって国の保護は生命線に等しいから『生活できるし面倒だから無視』で済ませる奴もそうそう居ないのだろう。

……内乱真っ只中に放り込まれたから苦労も命の危機もあった筈なのだが。それ故に保護されていようがいまいが大差は無かったとも考えられるけど。

「で、グレン殿とミヅキの関係は?」

さすがに同郷意識だけではなかろうとセシルが尋ねてくる。

その問いに私とグレンは揃って首を傾げ。

「友人だよ?」

「師弟でもあるが」

「弟分の方が正しい気が」

「ふむ……ヴァルハラの皆には随分と可愛がってもらったからなぁ」

「「……はい?」」

当時の――勿論ゲーム内での関係を口にするとセシルとエマが目を丸くする。

「……ミヅキの方が年上、なのか? しかも弟分?」

「元はね。だってグレンは十七でこっちに来たらしいし」

先程説明したのだが、やはり違和感が拭えないらしい。

『同じ時間からこちらに来ても違う時間に辿り着く事もある』なんて今回で初めて判った事みたいだもの。いきなり『そういうこともある』とは理解できんわな。

特に私がグレンに対し普通に接している事も含めて時差がある友人関係だとは思わなかったのだろう。

まあ、そうだよね。知り合いがいきなり年取って現れて尚、以前と変わらぬ関係築けてますから、私達。

『馴染むのが早過ぎだ!』とは言われましたとも。

「それでよく御互いが判りましたわね。グレン様はかなり様変わりされたでしょうに」

「グレンが気付いてくれたんだよ。ちなみに弟分という言葉から判るようにグレンも頭脳労働派です。甘く見ない方が良い」

「それでもお前に勝てる気はしないがな」

私の言葉にグレンは苦笑する。

いや、赤猫。それは以前のままだった場合の話だろ。

「現実で経験を積んでるから以前の様にはいかないでしょう。立場も違うし状況によって変わると思うよ?」

軽く首を傾げて口にするもグレンはあまり納得できないようだ。

……。

何かトラウマ作ったっけ? 私。

「いや、その……お前が敵に対して容赦しないのは判っているんだがな? あの頃と違って個人で行動できる強さを持っているだろう?」

「ああ……そう言うこと」

日陰の頭脳職は後衛向きどころかほぼ戦力外。しかも防御力は紙。

特殊ジョブの賢者だろうとそれは同じ。『神の英知に到達した者』という設定上、強力な全体魔法はあっても非常に使い難かったのだ。

威力が大きいものほど詠唱時間が長いという設定なので強力な全体魔法を使う時は隙だらけ。詠唱中に攻撃を受ければ当然キャンセル扱いなので使うリスクが高過ぎだった。護衛役必須です。

全ては『賢者なんだから使いどころも自分で見極めろ』という運営様の方針なのだが。

『神の英知に片足突っ込んだはいいが、使用説明書が無いから仲間に頼りつつ試行錯誤し自力でものにする職業』とは当時の仲間の御言葉。強力な魔法を持っている=無条件に強い、ではなかったのだ。

現在、私が有利に戦闘を行なえるのは無詠唱・複数行使可能ということが大きな要因。威力のみで考えれば一つ一つは魔術師レベル、重要なのは魔法の威力ではなく適した使い所だ。

「あの状態でさえ鬼畜だ悪魔だと呼ばれていたお前が魔法を手足の様に操るのだぞ? どう考えても以前より攻撃の幅は広まっているだろうが」

「それ私個人の功績じゃなくて私が目立ってただけなんだけど……まあ、個人で動けるようにはなったね」

「加えて保護者がイルフェナの魔王ときた。手におえん」

……。

グレン、君は私に一体どういう印象を持っていたのかね?

いや、言われた事は思いっきり事実なんだけど。

「そんな訳でな、相変わらず勝てる気がせんのだよ」

「ああ、そう。……うん、色々な意味で納得」

「尤もそれがアルベルダに向くならば死力を尽くしてみせるがね」

にやり、と挑戦的な笑みを浮かべるグレンに対し。

「上等!」

私も同じような笑みを返したのだった。

互いに優先すべきは別のもの。

『重要なのは最終的に望んだ結果を出すこと』だと教えたのは私。だから御互い手を抜くなんて事はしませんよ?

一方、思い出話に興じる私達の会話を聞いていたセシルとエマは。

「まあ、ミヅキってば以前から頼もしかったのですね!」

「中々に面白そうな話だな。時間があったら詳しく聞きたいものだ」

ドン引きするどころか絶賛してた。寧ろ面白がっていた。

本日も平常運転です。それでいいのかよ、姫様と侍女。

※※※※※※※※※

で。

馬車の中で楽しく過ごした私達を待っていたものは。

「ようこそ、異世界の魔導師殿?」

好奇心を隠そうともしない小父様でした。豪快な性格らしく、呆気に取られてガン見する私の態度を気にした様子もありません。

アンタ、誰。

……。

……。

ええ、現実逃避は良くないって判ってますよ。判ってますけどね!?

転移方陣使ってグレンの館に来た段階で手回し良過ぎとは思ったけどね!?

通された部屋に近衛騎士連れた高貴な御方――明らかに王族――が待ち構えてるとはどういうことだ、赤猫ぉぉっっ!

「あ〜……警戒するのは判るがグレンに殺気を向けるのは控えてやってくれ」

「警戒よりも散々勝手な事をしやがる赤猫を〆たいだけです」

「ああ、うん……聞いていた通りの性格だな。とりあえず落ち着いてくれないか。……グレンも部屋の隅に逃げてないでこっちに来い!」

「陛下、私に死ねと?」

「え、そこまでやるのか? 友人なんだろ?」

「友人だろうと生かさず殺さず手加減しないのがミヅキですぞっ!」

よく判っているじゃないか、グレン。

そこまで判っていながらこの状態だ。今更、青褪めようが冷や汗流そうが『無かった事』にはしないからな?

護衛の騎士共々、私をガン見しているこの人はグレンの言葉をそのまま信じるならアルベルダ王なのだろう。

当たり前だが王様は側近の家だろうとそう簡単に訪れる事は無い。私達の扱いはアルベルダ王が望んだから、ということなのか。

訝しげな視線を向けるとアルベルダ王(予想)は決まり悪げに頬を掻いた。

そして。

「すまん! 俺がグレンに頼み込んだんだ」

謝った。

「「「……」」」

……は?

……。

ええっ!?

謝っちゃったよ、頭下げちゃったよ!?

いいのかよ、王様!? 簡単に頭を下げちゃ駄目でしょ!?

思わぬ事態に警戒心も何処へやら。こちらも全員規格外だが更に上手が居ましたね。

え、何この規格外見本市状態。守護役といい、私は規格外ホイホイか何かか!?

ってことは護衛の近衛騎士達も一見まともで内面ぶっとんだ人々が――

「いや、こいつらは普通」

「……なんだ」

「期待に沿えず申し訳ない」

騎士達に期待の篭った視線を向けると、察したアルベルダ王(予想)が否定の言葉を紡ぐ。

いえ、私が勝手に期待しただけですから御気になさらず。

騎士さん達も居心地悪そうな顔をせんでくれ、君達は何も悪くない。

とりあえずこの状況をどうにかしないとならないだろう。

どうやらある程度の情報収集はされているみたいだし?

セシル達の事までバレているかは判らないから基本的に私が話す方向でいいだろう。

二人に目配せをすると改めてアルベルダ王(予想)に向き直って一礼する。

「お初に御目にかかります。イルフェナで保護されている異世界人でミヅキと申します」

「公的なものではないから楽にしてくれ。俺はウィルフレッド、アルベルダ王だ」

「ではこの場に限りウィルフレッド様と呼ばせていただきます。公の場ではございませんので」

暗に『王様に会った事は無い、ということにするね』と告げると察したらしい王は面白そうに笑う。

「ではウィルと呼んで貰おう。グレンも公の場以外ではそう呼ぶからな」

「了解しました、ウィル様。彼女達はセシルとエマです。私どもは平民ゆえ呼び捨ててくださいませ」

「……ほう? セシル殿にエマ殿、ね」

……やっぱり二人を呼び捨てにはしませんか。平民だとは思ってないね、王様?

セシルの本来の身分を知っていれば王であろうとも呼び捨てる事は出来ない。身分はあちらが上だが、他国の王女を呼び捨てなど礼儀に欠けるだろう。

本名ではないとは言え、あからさまに軽んじる事などできまい。

だからこれは引っ掛けの一つ。何の躊躇いも無く呼び捨てるならば用があるのは私個人、それ以外ならば私達の正体は全てバレているということだ。

「グレンに聞いていたとおり一筋縄ではいかんようだな」

「さあ、どのような評価を聞きましたのやら」

「会話に罠を張り巡らせ答えを導き出そうとする。……貴女が聞きたいのは俺がセレスティナ姫の事を知っているか否か、ではないか?」

「さあ、どうでしょう?」

「今ので判らないか?」

「あら……ウィル様はセレスティナ姫の事を知っているかと仰っただけではありませんか。そこで肯定するも否定するも貴方様の予想が正しいと認めるようなものですわ」

笑みを浮かべてそう言うとこちらを探るような王の瞳に一瞬獰猛な光が宿った。

『セレスティナ姫の事を知っているか』と聞いただけならば逃亡する前の状態も当て嵌まる。

向こうはこちらが警戒するあまり、その質問に答えを返す事を期待したのだ。掴んだ情報の確認も兼ねてまずは私達に喋らせようとしたのだろう。

王の質問も引っ掛けなのだ。『セレスティナ姫の事を知っているか』とは『キヴェラの王太子妃が逃亡した事を知っているか』とイコールではない。

勝手にこちらが王太子妃の逃亡の事だと解釈して答える事を狙っていたんじゃないのかね?

ちなみに王の質問にうっかり乗ると少々困った事になる。

この状態でいきなり他国の姫の話をするはずもないのだ、返事を返した場合は『おや、何故コルベラの姫のことが気になるのかな?』とでも言われて追及が始まるのだろう。

王太子妃の逃亡の事だと思ったと誤魔化そうとも、アルベルダが得た情報と照らし合わせてチクチク追及されるに違いない。

どちらにしろ碌な事にならないので答えず暈す事が最良の選択ですよ。

王はセシルを呼び捨てなかった。そして向けられたあの質問。

……アルベルダは私達を逃亡中の王太子妃一行だと判っている、ということだ。

「はは! 中々に手強いな。腹の探り合いも楽しめそうだが今回ばかりは時間が惜しい。こちらが折れるとしよう」

「宜しいのですか?」

「ああ」

そう言うと王は椅子から立ち上がり優雅に一礼した。

本来ならばセシルを前に出すべきだが、相手に正体がバレている以上は護衛として壁になるべきだ。王もそれを判っているのか特に私とエマを咎める事は無かった。

「ようこそ、セレスティナ姫。御無事で何よりだ」

「歓迎されている、と受け取って宜しいか?」

「勿論。滞在中は寛がれるがよかろう」

どうやら歓迎はされているらしい。

この様子では捕らえてキヴェラに突き出すということもないだろう。私達を捕らえるならば明らかに戦力不足だ。加えて王が人質になる可能性の方が高い。

暫くアルベルダ王を見つめていたセシルは深々と頭を下げる。

「御気遣い感謝いたします。ですが、どうぞ有事の際には御自分の国を優先させてくださいませ」

「勿論そうさせてもらう。その場合は事前に一報入れさせる。『我々が貴女達に気付かぬうち』に行かれるがよい」

『キヴェラが捕獲命令出してきたら連絡するね! だからこっちが動く前に逃げてね!』ということか。

他人事ながらいいのかね、そんな事をして。

「気にするな、魔導師殿。我等もキヴェラに対し良い感情は持っていないのだから」

「顔に出てましたか。まだまだですね」

「なに、我が国を案じてくれたのだろう? そういった面は好ましいぞ」

くく、と低く笑う王は本当に楽しげだった。

そうかい、好意的なのはキヴェラが気に食わなかったからか。

情報を掴んでる上にグレンが居るのだ、私が起こした騒動だということもバレているのだろう。

褒美か。御褒美なのか、この扱いは。

気分的には『ブラボー!』という状況なのですね? 気分は喜劇の観客か。

「さて。セレスティナ姫達には悪いが、用があるのは貴女達ではなくそこの魔導師殿だ」

王は椅子に座り直しゆっくりと指を組む。私達にも着席を促し、そして視線を私に向けた。

「まず誤解しないで欲しいのは俺の話を受けても受けなくても今の扱いに変化は無い、ということだ」

「あら、随分良くしていただいていると思いますが」

「それ以上の物を用意しよう。報酬は――我が国がコルベラの味方になること」

すいっと瞳を眇めて王を見つめ返す。

相変らず楽しげな表情を浮かべてはいるが、口にした事は随分と重い。

「へぇ……随分と思い切った事を仰いますね?」

「そうかもな。だが何時か起こる事態ならば貴女の居る今回が最良の時ではないかな?」

「貴方の独断では通りませんよ、それは」

「議会の許可は出ている。アルベルダの総意と思ってくれて構わない」

ひらりと一枚の紙がテーブルの上に置かれる。

……。

ざっと見ただけでも確かに承認されているっぽい。

だが――

「貴方の承認印が無いように見えますが」

「こちらの条件を満たした場合のみ、ということだ。受けない、若しくは失敗した場合は中立の立場を取らせてもらう」

「私個人はイルフェナの後見を受ける身です。迂闊な事は控えねばなりません」

そっと目を伏せて制約のある立場だと告げる。

無理難題を言われても困るのだよ。防衛策は必要です。

魔王様には概ね従順だとグレンも知っているから『これ以上聞かない』という選択もできる筈だ。

「なるほど、貴女は警戒心が強かったな。すまん、言葉が足りなかったようだ。とりあえず内容だけは聞いて欲しい」

「……判りました」

「感謝する。こちらの条件は『先日我が国に入国した団体を叩きのめして欲しい』ということだ」

「は?」

何だ、それは。

「妙に毛並の良いお坊ちゃん達が先日キヴェラからやって来てな? 『ある人物』を探してるらしい。尤もあまり大っぴらに動いていると知られたくないのか国の方には協力要請が来ていないんだが」

ほう、追っ手か。グレンがわざわざ馬車で迎えに来たのはこれが原因と見た。

でも他国に協力要請も無いってことは捨て駒っぽいな。本命はコルベラで王太子が正式に謝罪する事だろうし、ついでに始末したい奴等とか家とかあったんだろうか。

……ん? 『始末したい家』?

もしや。

「そういう訳でな、場所は提供するから我が国に迷惑がかからないよう痛めつけて欲しい」

「何故そんな事を?」

「気位の高い傲慢な連中に動き回られるのは鬱陶しい」

吐き捨てるように王が口にするとグレンが補うように口を開いた。

「あの国は一部に選民意識が根付いている。こちらがキヴェラを恐れて口を出せない事をいいことに好き勝手しかねないのだよ」

ああ、納得。

つまり『選民意識のある連中』がアルベルダに来たということね。

……。

王太子の親衛隊とか後宮警備の奴等じゃね? 追っ手になってるの。

『捨て駒』、『迂闊に始末できない家柄』、『毛並の良いお坊ちゃん』。

全てに当て嵌まりますよね、あの連中。

私がキヴェラ王なら間違いなく追っ手には奴等を選ぶ。身分だけは高い無能連中を処罰するチャンスだもの、彼等の実家も度重なる失態に庇いきれないだろうし。

「あれほどの騒動を起こした魔導師殿ならば手があるのではないか? 我々としては貴女の強さを知っておきたいという意味もある。コルベラの味方になる以上はキヴェラに勝てるという確信が欲しい」

それが本音か。確かにコルベラに味方するならまずそれが最重要だろう。

正義感で国を巻き込むことなどできないし、キヴェラに目を付けられる危険性もあるから当然だね。コルベラの味方が欲しい私としてもその提案は十分魅力的だ。

だが、セシルはその提案を良く思わなかったようだ。

「ミヅキ、無理をするな。……申し訳ないが私の方からお断りさせてもらう。友人を無闇に危険な目に合わせたくはない」

「……友を選ぶ、と?」

「私が此処に居るのはミヅキのお陰です。どうしてそれ以上を求める事が出来ましょう? 我が国がやらねばならぬ事なのです、彼女に頼る気はありません。降りかかる火の粉は仕方が無いとしても、わざわざ火の中に飛び込む必要など無いと思います」

セシルの言葉に王もグレンも無言だった。

情報を得ているからこそ、セシルの言葉も納得できてしまうのだろう。

様々な幸運が重なったとは言え、キヴェラからセシル達を連れ出すのはそれなりに大変だった。それはレックバリ侯爵がわざわざ私に依頼することからも窺える。

……依頼できる人材以前に連れ出せる実力を持つ者が居なかったのだ。

私も砦イベントを起こしたり、魔王様やルドルフといった個人的な人脈が無ければ厳しかっただろう。セシルもエマも捕まった場合には自分達を犠牲にして私を助けようと決めていた。そんな二人からすればこの提案は受け入れられないものに違いない。

何より条件が厳し過ぎるのだ。『魔導師が一人で行なう』、『アルベルダがキヴェラに抗議されぬような方法をとる』という二点が絶対条件なのだから。

加えて言うなら下手なことをすればアルベルダが『復讐者達』ではないかと疑われてしまう。

難易度が高いからこそ、あの報酬なのだ。セシルはそれらを察したからこそ断る方向にしたいのだろう。

だが。

「……。一つ聞かせてもらえませんか? 追っ手の誰か一人でも立場が判りません?」

「何? 立場というか……旅券の情報を聞く限り騎士、それも近衛じゃないかと思われるが」

「王太子妃の顔を知っている者達でしょうからな。後宮の警備に携わっていた者達あたりではないかと」

「ああ! 確かに。そういや、王太子が我が国に来た時に同行してた奴等な気がするな。映像を見れば判るぞ」

そこまでで十分だった。

ぎょっとしたセシルが私を振り返るがもう遅い。

聞いた。

聞きましたよ、しっかりと!

「受けます♪」

「「へ?」」

がしっ! と王の手を握る。もう決めた。待ったは無し!

にっこりと笑って答えた私に王とグレンが間抜けな声を出す。

セシルとエマは慌てているけど手遅れです。

獲物が来たぜ、私の元へ!

「迷惑がかかるといけないので、できるだけ隔離された場所を御願いしますね。ああ、殺しはしません。簡単に死ぬなんざ許しませんとも、ええ」

「ミ……ミヅキ? 落ち着け?」

「うふふ! 落ち着いてるわよ、セシル。さて、どんな楽しい目にあわせてあげようかな……?」

「ミヅキ、お馬鹿さんを相手にする必要はありませんわよ」

セシルとエマが必死に止めさせようとしているけど止める気なんてありません。

メインイベント前に奴等と遊ぶ機会を与えられるなんて気が利いてるじゃないか。

王太子はともかく、後宮警備にあたっていた連中を〆るのは無理だと思っていましたよ。

神 様 、 『 私 の 為 』 に あ り が と う !

「あ〜……話を振っておいて何だが、何で喜んでるんだ?」

微妙な表情のまま王が尋ねてくる。

あ、ごめん。喜びのあまり存在忘れてた。

「セシル……いえ、セレスティナ姫の冷遇は御存知なのですよね?」

「あ? ああ、一応は」

「では噂の『夢』がどんなものかは御存知ですか?」

「報告で内容は聞いているが」

にこり、と笑って魔道具を一個取り出す。

「御覧になりませんか? 噂の夢。記録してありますから映像として楽しめますよ」

「何故あるんだ、そんなもの」

「個人の趣味です! この楽しさを多くの人と分かち合いたいんですっ!」

ぐっ! と拳を握って力説するとグレンから生温い視線が向けられた。

「ほぉ、つまりそれにおまえが怒り狂っている原因があるというわけか」

「何だ、グレン。どうしてそう思う?」

尋ねる王にグレンは溜息を吐き。

「陛下。ミヅキは基本的に実害が無い限り自分の事では怒りません。興味が無いのです。ですが、それが自分の親しい者に向けられていた場合には……」

ちら、と私に視線を向け。

「徹底的に報復します。それこそ冗談抜きに心が折れるまで」

「はは、何だ大袈裟な」

「大袈裟ではありません! 『ゼブレストの血塗れ姫』も過大評価ではないと申し上げたでしょうっ!」

「……マジ?」

「はい」

グレンの真剣な表情に王は顔を引き攣らせる。

やだなー、グレン。ゲームの世界じゃ死ぬとか大怪我がないんだから心を折るしかトドメを刺す方法が無いじゃない!

逆らってはいけない相手を心の底から理解させなきゃならないんだから正しい行動ですよ?

それにしても王とグレンは随分と砕けた間柄のようだ。言いたい放題ですね!

まあ、グレンが居たからこそアルベルダは私に対して正しい評価をしたのか。

……鬼畜とか、悪魔とか。絶対に言ってるね、赤猫は。

「では、御覧下さい。あまりの面白さに殺意が湧き上がりますよ」

「湧き上がるな、そんなもの!」

「煩い、グレン。良い子で見てなさい」

「あたっ!」

ピシっ! とデコピンしてグレンを黙らせると、こちらに引き攣った顔を向けていた騎士達が慌てて顔を背ける。

明日は我が身と察したようだ。安心しなさい、良い子にしてればお姉ちゃんは怒らない。

そして衝撃映像を見てしまった人達の反応は。

「ああ……魔王を侮辱したのか」

王のその言葉が全てだった。

他の皆様はあまりの内容に言葉も無い。そして全員が疲れた表情をしている。

グレンに至っては胸の前で十字を切っているのだが……え、殺す気はないよ?

「私、自分を恥じたのです。過小評価してしまったって。ですから全力で事にあたらなければ失礼ですよね」

頑張らなくちゃ! と可愛らしく言えばアルベルダの皆様にドン引きされた。

失礼な。努力するのは素晴らしい事だというじゃないか。

「と、いうわけで。とっても殺る気になってますので詳しいお話を聞かせてくださいな?」

にこにこと上機嫌で先を促す私にセシルとエマは諦めたように深く溜息を吐いたのだった。