軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦準備 裏

『手頃な練習相手として、よ・こ・せ☆』(意訳)

凡その目的を察したキヴェラ王はシュアンゼ殿下のことを気の毒に思ったのか、未だ、思案中。

……。

まあ、そうなりますね!

シュアンゼ殿下の本性を知らなければ、外道はどう考えても私の方。

ルーカスとて『お前……シュアンゼ殿下達に恨みでもあるのか……?』と口にしたではないか。

普通に考えたら、シュアンゼ殿下+新米当主達への苛めにしか見えなかろう。

……が。

シュアンゼ殿下の本性を知っている場合、『虐められる側』はキヴェラの方なのであ~る!

何せ、シュアンゼ殿下はマジで表舞台に立ったことがない。

それは『シュアンゼ殿下への対策がない』ということとイコールだ。

こう言っては何だが、人によって『好む会話』とか『話を持っていく傾向』といったものがある程度は存在する。

私やウィル様だったら、『言葉遊びを好む』といった感じにね。

ただし! 私の場合はそこに『どれが引き出そうとした言葉か判らず、その後の行動が読めない』と付くし、ウィル様の場合は『言質を取られる』といったことが追加されるけど。

『好む』だけでは、結果まで得られはしない。

そこから結果に繋げてこそ、『できる子』です……!

シュアンゼ殿下の場合、『経験がない』ので、『対策のしようがない』のだ。

キヴェラから差し出された生贄……もとい練習台達が『それなりに外交をこなせる』という評価を得ていようとも、ゼロからの状態では、まさに手探り状態。

つまり、『お互い、ゼロの状態から頑張れよ♪』ということだ。

練習相手として、これほど適任な存在もそうそう居まい。

何せ、シュアンゼ殿下は誰に聞いても『素人』という評価なので、そこそこ相手ができただけでも、『キヴェラ相手に外交がこなせた』となる。

モーリス君や従兄弟君もこれに該当するので、素人三人組はよっぽど無様な状態にならない限りは、それなりに評価してもらえるはず。

対して、キヴェラ勢。

彼らはそれなりにお仕事をこなしている上、第一王子であるルーカスを『不甲斐ない』と見下している。

そんな状況の彼らにとって、シュアンゼ殿下が王族であろうが、素人相手に勝つのは『当たり前』。

これで勝てなかった日には、一発で彼らの評価は下がるだろう。『素人相手に負けたくせに、王族を見下してきたのか』と。

彼らがルーカスを『不甲斐ない』と言ってきた過去がある以上、どう頑張ってもそういった評価からは逃げられないのだ。

まさに自業自得。

自分の行ないが巡り巡って、己の首を絞めただけである。

キヴェラ勢は『シュアンゼ殿下達が気の毒』とか思っているようだが、実際には『灰色猫の本性を知るが故の罠』なのであ~る!

生贄どもが負けた日には、私もこれを企画した者としてキヴェラに渡り、盛大に弄ってやろうと思う……『無能だから人の話も聞かず、王族ですら見下せたのね』って。

正直、指差して大笑いしてやりたいと思っております。

勿論、報告の義務があるし、第三者にもそいつらの情報がいくけどなー♪(大笑い!)

なに、これで弟王子君達の怒りが多少は緩和されるのだ。世代交代した後、『時は来た!』とばかりに報復されるよりはマシだろう。

なお、今回の策の肝は『生贄どもがルーカスを見下していた』という情報である。

この情報源は『キヴェラの第二王子&第三王子』という、証言者としては疑うことが難しい立場に居る人達なので、下手なことが言えなかったりする。

それに加えて、『その情報は誤りだった』と窘めていた者達(=覚醒したキヴェラ王&側近の皆さん)も居るので、馬鹿扱いされるのは生贄どもオンリー。

弟王子達よ、君達の悔しさを私は理解できている。

お姉さんが君達に、報復の機会を作ってあげようじゃないか!

……何てことを考えていようとも、今この場ではバラさないけどなー♪

仕掛け人は最後まで気付かせず、最後の最後で盛大に暴露するのが醍醐味ですよ♪

寧ろ、バレた日にはルーカスあたりに叱られてしまう。ルーカス、弟達を『兄想いで正義感の強い、真っ直ぐな子』くらいに思ってそうなんだもの。

ある意味では、それも間違ってはいない。間違ってはいないのだが。

彼らは王族なので、遣り過ぎると、『権力を振り翳し、自分達の主張をごり押しする王族』とか言われかねない。

……ルーカスもお仕事は真面目にしていたはずなのに、散々な言われようだったみたいだからねぇ。

キヴェラ王と比較して王子達を見下す輩が居る以上、目立つ行動をすべきではないだろう。

だから、今は『ひっそり報復』とか『人の報復にこっそり関与』程度がベスト。

特に魔導師である私発案ならば、文句を言ってくる奴も少ない。

私が何か言われたとしても、『今更?』とか思う奴が大半だろう。

寧ろ、今回のことだけを考えると、『今回は随分と大人しいな?』くらいの印象と予想。

だって、この場にいる人達が言っているように、この提案で利があるのは『普通に考えたら』キヴェラの方。

間違っても、『シュアンゼ殿下をけしかけ、キヴェラの馬鹿どもを笑い者にしようとした』とは思われん。

実際には、灰色猫達のために、キヴェラから生贄を調達したけれど。

大丈夫、黙っていれば『暫くは』バレまい。

後は頼んだぞ、灰色猫! か弱い振りして、やっちまってくれ!

「……。お前、本当に、本っ当に! 考えてるのはそれだけだろうな!?」

「酷いな、ルーちゃん。どう考えても、それしかないでしょうに」

鋭いな、ルーカス。弟達に関することゆえ、兄レーダーでも働いたんかい。

「確かに、『どちらが勝つか』という結果による差があれど、結果的に、キヴェラはシュアンゼ殿下の情報を得ることができるからね。ただ……」

そう言いつつも、見透かすように私を見つめてくるブラッドさん。

……。

それだけですよー? 私、何モ、企ンデ、ナイ。

「良い機会じゃないの。ルーちゃんを見下せるんだから、有能なんでしょ。結果は『勝ち』一択なんじゃない?」

「魔導師殿……俺も彼らには思うところがあるんだけどね。まあ、それでも……その、君からの提案である以上、裏を疑ってしまうと言うか」

「ヴァージル君……」

「い、いや、すまない! 君がルーカス様の味方をしてくれることは判っているからね!?」

いえいえ、鋭い考察だと思います。つーか、正解です☆

「アンタ……」

「なぁに、サイラス君」

「……。いえ、何も。結果だけを見れば、キヴェラに利があることですし、奴らの実力も判るでしょう。少なくとも、キヴェラが不利益を被ることがない。それは確実ですよね?」

「うん」

「ならば、何も言いませんよ」

なんとなーく気付いているっぽいサイラス君は、とりあえず見逃してくれる模様。

……そういえば、サイラス君はルーカスが過小評価されていることを悔しく思っていたっけ。

かつて、自分がそちら側だったことを、とても後悔しているらしいと聞いた。

だからこそ、今回のささやかな『報復』も見逃してくれるのかもしれない。

「……。いいだろう、今回は其方の提案に乗ってやる。こちらに都合よく動いてもらうのだ、多少の我侭は聞かねばなるまい」

じっと考え込んでいたキヴェラ王の言葉に、皆の視線がキヴェラ王に集中した。

皆の視線が集中する中、キヴェラ王は私をじっと見つめている。

「あら、宜しいので? 他の人達は裏を疑っているみたいですけど」

「ははっ! 今回はキヴェラのために動いてもらうのだ。寧ろ、あやつら共に関わらせた時点で、隠す恥もなかろう」

「確かに」

少し自棄になったように、怒りの籠もった笑顔で話すキヴェラ王。

ええと……まあ、そうですね。理由があったとしても、公爵夫妻がアレな存在ですもんね。

その対処をさせるのだから大目に見る……という結論に至った模様。

……。

そこで『魔導師のおねだりに裏がない』と言わないあたり、信用ねぇな!

「宜しいのですか? 父上」

「うむ。様々な状況を想定してみたが、キヴェラが不利益を被ることにはならんだろう。信用できないならば、この場で誓わせればよい。言質を取った以上、魔導師と言えども、おかしな真似はできんだろう?」

未だに私を疑いの眼で見てくるルーカスの疑問に、さらりと返すキヴェラ王。その言葉に内心、少し驚いた。

いやいや……簡単に言っているけど、今までの沈黙は『想定される全パターン』を予想していたんかい。

それ、これまでのこと(意訳)を踏まえると、結構な量になりそうな感じなんですが。

それに加えて、『誓わせればいい』で済ませる、キヴェラ王の度胸と才覚よ。

これは暗に『何かあっても、対処可能』ってことだよね? その自信がある、と!

それでは、私もキヴェラ王に倣いましょうか。

「いいですよ。私のおねだりによって、キヴェラが不利益を被ることはない。……これでいいですか?」

「あっさりと誓ったな?」

「事実ですからね」

そう、『不利益を被ることはない』んだよ。ただ、少しだけルーちゃんの評価が見直されたり、弟王子達の溜飲が下がるだけでな。

「それじゃあ、元の案件に戻りましょうか。必要な物は全部送ってもらったので、後は公爵家に赴くだけ。同行者はブラッドさんってことでいいんですよね?」

「うむ。頼んだぞ、ブラッド」

「お任せください」

さあ、ちゃっちゃと女同士の喧嘩を終わらせに行きましょうか!