軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

今回の共犯者

――キヴェラ王城にて

サイラス君からのお誘い(笑)を貰った私は、無事にシュアンゼ殿下の了解を得た。

シュアンゼ殿下の課題をお手伝いしている途中だったし、魔王様達にも連絡入れなきゃならなかったしね。モーリス君のこともある。

勿論、キヴェラへと向かう理由は暈したまま。私も詳細を語られていないので、『馬鹿が馬鹿なことをやったので、〆てきます』(意訳)くらいしか言えない。

そう、言えなかったんだよ……仕方がないんだけど!

しかし、皆は優しかった。

シュアンゼ殿下は王弟夫妻の実子であり、自身も苦労してきた過去を持ち。

ヴァイスは長年、貴族達が王族を嘗めてきたサロヴァーラの貴重な王家派。

三人組は傭兵時代に何かあったのか、理解を見せ。

結果として、誰からも『そんな馬鹿なことがあるわけないだろう!?』とは言われなかった。

なお、普通は信じてもらえないと思われる。だって、該当人物達は高位貴族、それもキヴェラ王に叱責されたばかりなんだもの。

大国キヴェラの、偉大なるキヴェラ王陛下からの叱責ですぜ? それも、他国の者達が居る夜会での叱責!

これ、大人しくなるのが普通。いや、大人しくなるどころか将来に不安を感じ、胃の痛い思いをしつつ引き籠もるくらいするだろう。

……そんな一般的な発想が当て嵌まらないのが、当のアロガンシア公爵夫妻。

夫人はキヴェラ王の実妹、公爵家は第二王子殿下の実母である側室様の実家にして、第二王子殿下の最大の後ろ盾。

ぶっちゃけ、雲の上の存在と言うか、他国からも一目置かれる家なのですよ。他国に当て嵌めるならば、筆頭公爵家と言ったところか。

……が。

『現時点の』(重要!)アロガンシア公爵家は、ちょっとばかり訳ありであって。

戦狂いの遊び相手(意訳)から逃れ、血を残させるために、目を付けられない人物達(=無能)がその地位に就いているのであった。

なお、この情報はほんの少し前に、キヴェラ王によって伝えられたばかりである。

その事実を知った時の皆様の反応は……まあ、推して知るべし。

ただ、戦狂いの異様さは、奴が生存していた頃を知っている人達にとっては納得のできるものだったらしく、概ね信じられていた。

つまり、戦狂いこと先代キヴェラ王はガチで『そういう人』(意訳)だったのだ。

皆の反応を見る限り、先祖返りとか血の淀みといったものを知る人達から見ても、異質な存在だと思われた。

……で。

そんな風にシリアスな雰囲気を漂わせておいて大変申し訳ないが、今回は『血を残すためだけの存在』であるアロガンシア公爵夫妻が原因。

彼らがその地位に就いている経緯を知っている上、前科があるので、元から信頼なんて皆無。

その結果――

(皆からの言葉・意訳)

『大丈夫! あいつらならやりかねないって、判ってるから! 嘘だなんて思ってないよ!』

(皆の本心・意訳)

『馬鹿の相手は大変ね。そういう奴らが身近に居たから、常識が通じないって知ってるから! つーか、キヴェラ王にも同情してる。大丈夫か、あの人』

といった感じに、優しい言葉と生温かい目で見送られ、私はキヴェラへと旅立ったのだった。

……。

畜 生 、 他 人 事 だ と 思 い や が っ て … … !

いや、サイラス君からの手紙を読む限り、今回はキヴェラ王公認で『やってしまえ!』とばかりに、GO! サインが出ているとは思う。

しかし、こいつらに『次の機会』を与えないためには、『生かさず、殺さず』が最善。

もっと言うなら、第二王子殿下が立太子し、アロガンシア公爵家の次男が家を継ぐまでの間、大人しくしていてほしい。

家を潰すわけにもいかないので、処罰に問うことや不幸な事故や病気(※お貴族様にはよくあることですねぇ?)も駄目。

それらを踏まえると、やはり『反省しない態度にブチ切れた魔導師の制裁』が一番説得力がありそうなんだけど。

「こんな感じに考えているんだけどさ。どう思う? サイラス君や」

目の前で頭を抱えているサイラス君に問えば、ジトっとした目を向けてくる。

「あいつらに対する扱いとか、最善の状況についての解釈は間違ってないと思います。だけど、他国の人達からもそう思われてるって……理解があるって……!」

「あ、シュアンゼ殿下には私から話してる。ヴァイスに至っては、あの時、リーリエ嬢に抗議した騎士だよ。だから、今更」

それを伝えると、サイラス君にもヴァイスが誰だか判ったのだろう。一気に諦めの表情になった。

「あ? あ~……彼もガニアに居たんですか」

「うん、居た。だから、暈しても無駄」

「我が国の恥がぁ~!」

煩いぞ、玩具。と言うか、魔王様襲撃事件で顔を合わせている以上、情報共有は成されていると見るべきだろうに。

「まあまあ、今回は理解者が居るのは有難いじゃない」

「……」

「公爵夫妻以外の人達の風評被害を防ぐためには、ある程度、今回のことを広める必要があるでしょ。多分、キヴェラ王への同情いっぱいに報告してくれると思うよ?」

「それは……まあ、期待してますけど」

事実である。今回ばかりは国の恥だろうとも、ある程度の情報拡散は必要だ。

この後、アロガンシア公爵夫妻へと接触を図る奴らの大量発生を防ぐ――立場だけを見れば、優良物件なのだ――ためにも、『魔導師に喧嘩を売ったアホども』という告知は必須。

その流れで、キヴェラ王が公爵家から嘗められていると解釈されるかもしれないけれど、これ以上、騒動を起こされるよりマシだろう。

サイラス君もそれは判っているらしく、反論はしなかった。そう、反論はしないんだ……彼は自分が唯一の主として忠誠を誓っている、キヴェラ王の評価が気になるだけで。

「今回は陛下も乗り気ですけど、できるだけ被害が来ないようにしてくださいよ?」

「はいな、了解! 私としてもキヴェラ王にはまだ強者でいてもらいたいし、公爵夫妻だけを狙うよ」

「本当ですね!? 頼みますよ!?」

「涙目で駄目押ししなくても……」

信頼ねぇな。その気持ちも判るけど。

ところでね?

「私達は今、どこに向かっているのさ」

一応、個人的にキヴェラを訪れたことになっているので、サイラス君の部屋に直行……と思いきや、王城を移動中。

はて、私は一体、どこに連れて行かれるんでしょ?

「……今回のことは陛下も了承済み、なんですけど」

どことなく苦い顔のサイラス君が話し出す。

「アンタ個人の報復ということにする以上、陛下自身が指示を出すわけにもいかないんですよ」

「まあ、そりゃね」

普通は宥める立場だもんね、キヴェラ王は。

「それに加えて、アロガンシア公爵夫妻に恩を売ろうとする輩も警戒しなきゃならないんです。言いたくはないんですが、あんなのでも次代の筆頭公爵家であることは事実なので」

「ああ、そういうこと」

どこの国も一枚岩ではない。お馬鹿で誘導し易い公爵夫妻ならば、さぞ簡単に都合よく使うことができるだろう。

王太子時代のルーカスでさえ、色々と言われていたくらいなのだ。大国キヴェラと言えども、内部にはそれなりに権力闘争みたいなものがあるのだろう。

そういった背景事情を踏まえると、キヴェラ王が直々に私の味方……というのは止めた方がいいかもしれない。

何らかのトラブルが発生した際、最高権力者として場を収めてもらった方が安心できそう。

「……で、こうなるわけか」

辿り着いた部屋は以前にも訪れたことがある。ちらりとサイラス君に視線を向けると、サイラス君は深々と溜息を吐き、扉をノックした。

「失礼します、ルーカス様。魔導師殿をお連れしました」

「入れ」

短い返事と共に、内側から扉が開く。どうやら待っていてくれたらしく、中に居たヴァージル君が開けてくれたらしい。

「へい、ルーちゃん、おひさ!」

「お前は相変わらずだな。騒々しい奴め」

「今回のことは同情するよ。聞いていた以上の逸材(笑)ぶりに、乾いた笑いしか浮かばないわー」

「く……!」

当たり前だが、皮肉である。ルーカスもそれを判っているので、悔しげにするばかり。

……。

うん、判ってた! 同情するわ、マジに。

「サイラスから聞いたと思うが、今回は俺が担当になる。情報は基本的に俺経由、何らかの事を起こす時は、事前に相談しろ」

「らじゃー!」

さて、お馬鹿への対処、その方針を決めましょうかね。