軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

話し合い開始 其の二

室内は『ある意味』、ピリピリとした空気が流れている。

……が。

私達とブレソール伯爵では『全く』理由が違っていたり。

私……ブレソール伯爵を踏みつけ中。

ブレソール伯爵……踏み付けられて、お怒り中。

バラクシン王家の皆さん……『ある案件』により、ブレソール伯爵にお怒り中。

ブレソール伯爵は連行&怒りを滲ませた王達という状況に、ついさっきまではパニックを起こしていたと推測。

心当たりがあると、恐怖は倍増です。それが私に踏み付けられる原因になった『自己保身最優先の態度』(意訳)に繋がったのだろう。

それに。

こう言っては何だが、ブレソール伯爵は教会派貴族として、王家と対立する立ち位置にあったはず。

それを踏まえると、本来、貴族としては当たり前の『王族への敬意』とか『王族が国の頂点に位置する』という情報が、すこーんと欠落したとしても不思議はない。

勿論、普段は上手く取り繕っていただろう。しかし、パニックを起こしたことで本性が露呈してしまったのではなかろうか。

と、言うか。

バラクシン王とライナス殿下もこういった態度を取る貴族には慣れているようなので、王家の力が弱まった時は割と日常だったのかもしれない。

少なくとも、先王の時代は教会派貴族がそこそこ強かったと思う。

その結果が、教会派貴族一押しの側室(笑)カトリーナなんだもの。

相思相愛だったのか、同類(=ブラコン)ゆえの仲の良さだったのかは判らないが、現在の国王夫妻には側室なんていらなかったはず。

……『ライナス殿下に弟を作ってあげたいのです!』という決意の賜か、王子を三人も生んでいるのよ、王妃様。

魔法があろうとも、子供はガチで天からの授かりものなので、その夢を叶えてしまった国王夫妻――当時は王太子夫妻――はある意味、凄い。

人の想いって凄いな、と思います。

これが今後、教会派貴族達に向かうと思うと、胸が熱くなりますね……!

まあ、そんな未来のことはさて置いて。

これからは今回、私が手にした情報について話し合おうじゃないか。

「さて、ブレソール伯爵。実はな、魔導師殿……もっと言うならばイルフェナから、無視できない情報がもたらされたのだよ」

怒りを滲ませながらも、笑みを浮かべつつ、バラクシン王が切り出す。

「キヴェラ……『アロガンシア公爵家に、縁談を持ち掛けた』とな」

「くっ……それがどうなさいましたかな? かの家は第二王子の後ろ盾であり、将来的にはキヴェラにおいて絶対的な力を持つ公爵家! 我が国に招きたいと思っても不思議はないでしょう」

覚悟を決めたのか、ブレソール伯爵が言い返す。そんなブレソール伯爵の態度に、バラクシン王はスゥっと目を眇めた。

「そうだな、『家柄だけを見れば』そなたの言い分も間違ってはいない。まあ、教会派に属する高位貴族の家か、王太子の側室として潜り込ませようとしたのかは判らんが」

『王太子の側室として潜り込ませようとした』というのは、第二のカトリーナやフェリクスを狙ってのことだろう。

その場合、一度、教会派貴族の家に養女として迎えるのか、それとも直接実家から嫁ぐことになるのかは判らないけど、どちらにしろ彼女の後ろ盾になるのは『教会派貴族』。

期待の星・ライナス殿下には、『臣下の誓約』によって夢を潰され。

カトリーナは側室に押し込んだにも拘らず、アホ過ぎて使い物にならず。

フェリクスはサンドラという良妻を得て家族と向き合うようになった挙句、身分を捨て。

教会派貴族の目論見は悉く失敗してきたわけですよ。神がどちらの味方をしたのか、判る現実です。

しかも、魔導師によって教会派貴族は大きく力を削がれる事態となってしまっている。

これに危機感を抱いたのが、ブレソール伯爵というか、教会派貴族の皆さんなのだろう。

……まあ、カトリーナに関しては、早々に期待することを諦めたのかもしれない。

あの女、いい歳をして『自称・王子様を待つ乙女(笑)』なんだもの。そりゃ、捨てる。

その結果、手駒にされかけたのがカトリーナの子であり、第四王子のフェリクスなんだけど、この子は良くも、悪くも、素直な性格。

誘導しないと王家と敵対しないと言うか、教会に属する信者だけあって、善良だ。

しかも、今では教会預かりの身となってしまっているので、王族として政に関わる日は来ないだろう。国王一家との関係も良好だもん。

そんな中、キヴェラのアロガンシア公爵家との縁談を思いついた、と。

……。

確かに、優良物件ですね♪ うんうん、キヴェラの次代において、トップクラスの優良物件となる家ですねぇ♡

ただし!

……隣国のアルベルダ王家に良く思われていないことや、キヴェラ王の怒りを買っていることや、魔導師と揉めたことを気にしなければ、だが。

しかもこの情報、キヴェラとイルフェナの共同事業のお披露目と称した『あの』断罪を知らなければ、出回っていないのであ~る!

建前に使った『キヴェラとイルフェナの共同事業(=絵本)』という情報ならばともかく、リーリエ嬢への断罪については、あの場に参加していないと知り得ない。

この国からはライナス殿下を呼んだけど、あれはあくまでも『魔導師側の招待』なんだよねぇ。

勿論、キヴェラ王の許可は得ている。ただ、キヴェラの醜聞となる内容でもあるため、招待客による各国への情報拡散はかなり限定されていた。

ゆえに、彼女達の営業はほぼ王家+αのみ。

他にはカルロッサの宰相補佐様みたいな、所謂『王家に近い人』が対象だったのだ。王の相談役みたいな立場だもんね、あの人達。

その営業も、この国は第三王子の婚約者であるヒルダんによって駄目だしされ、手厚い指導を受ける羽目になったので、部外者に目撃されることはなかったと聞いている。

だから……ブレソール伯爵と教会派貴族達は知らなかった。

アロガンシア公爵家と接触することは無条件で、目を付けられるということに。

「情報が古いわね」

クスリと笑いながら、踏み付けたままのブレソール伯爵に蔑んだ目を向ける。

「アロガンシア公爵家は……数年後ならば、優良物件と言えるかもしれない。だけど、『今』は『関わるな、危険』っていう状況なのに」

「は? 側室の実家であり、第二王子の後ろ盾だぞ?」

「第二王子はまとも、その側近となるアロガンシア公爵家の『子息達は』まとも。だけど、公爵夫妻とリーリエ嬢は例外なの」

「は、はぁ?」

できるだけ詳しく教えてあげたのに、ブレソール伯爵は訝しそうな表情のまま、私を睨んでいる。

うんうん、普通ならばブレソール伯爵の考えは間違っていないよね。

だ・け・ど。

『キヴェラが各国に歩み寄りを見せる』という姿勢を見せている以上、今はとんでもない地雷なんですわ。

「確かに、アロガンシア公爵夫人は元王女であり、キヴェラ王の妹。だけどね、随分と問題のある人なんだよ。……戦狂いは内部、それも血縁者でさえ遊び相手と認識し、牙を剥いた。生き残ったのがキヴェラ王」

「……っ」

「だけど、王族は数を減らし過ぎた。だから……キヴェラ王は『無能過ぎて目を向けられなかった』妹に、血を残させることにした。それがアロガンシア公爵家の事情」

「な……」

あまりな内容に、ブレソール伯爵が絶句する。

ですよねー、驚愕の事実よねー、怖過ぎるだろ、戦狂い。

「ちなみに、その情報は各国の王も知ってるから。今回はキヴェラ王に許可を取ってないから、私が話してる」

「そのような戯言、信じられるか! 貴様とて部外者だろうに!」

「うん、私はキヴェラ所属じゃないから部外者だね。だけど、リーリエ嬢は私と守護役連中に喧嘩を売ってるんだな」

あれです、ヴァイスが堪えきれずに抗議した案件。

抗議したのはヴァイスだけど、怒らせたのは彼一人ではない。

「まあ、信じられないって言うなら、ライナス殿下に聞いたら?」

「何故、ライナス殿下に……?」

「居たから」

「は?」

「だから、キヴェラとイルフェナの共同事業の発表……という名の断罪の場に」

「馬鹿な! キヴェラとて、自国の醜聞を晒すはずなかろう!」

激高し、否定するブレソール伯爵。その目は明らかに私を馬鹿にする光を宿している。

……。

そだな、普通はそう考える。

だけど、私は言ったじゃないか……『リーリエ嬢に喧嘩を売られた』と!

「嫌がらせと情報拡散を兼ねて呼んじゃった♪」

――だって、それ以前にも喧嘩を売られたんだもの。

実際にはアルベルダでのお仕事が増えただけである。しかし、アルベルダでのことも『リーリエ嬢に喧嘩を売られた』と纏めてもいいだろう。

何せ、奴が元凶だ。我侭娘が他国で好き勝手し、王族でさえ見下した結果、私とキヴェラ王が手を組んでしまったわけですよ。

「な、な……」

「……魔導師殿がどのような形で迷惑を掛けられたかは知らないが、確かに、あの場でリーリエ嬢や公爵夫妻に絡まれていたな」

ライナス殿下、追い打ちと証言、ありがとーう!