軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

話し合い開始 其の一

――バラクシン王城にて

顔面蒼白となったブレソール伯爵は両脇を騎士――同行していたレヴィンズ殿下の部下さん達――に抱えられ、否応なく王城の一室へと連れられて行った。

今回はあくまでも私からの個人的な『お土産』なので、謁見の間とかを使う必要はない。

そう……内容的に、謁見の間を使うようなものであったとしても……!

レヴィンズ殿下もさすが王族と言うか、それを理解してくれている。

ただし、教会で『こんな情報なんだけど~』とバラした途端、鬼の形相と化したけど。

これはヒルダんからのお願いが仕事関連であったことを残念がっていた、レヴィンズ殿下の部下の皆さんも同様。

彼らは自分達の上官(=レヴィンズ殿下)の不器用な恋をずっと応援していた、気の良い人々なのだ……仕事人間な婚約者殿との(あったかもしれない)貴重な時間を邪魔されれば、そりゃ、怒るわな。

それに加えて、私からの情報提供。慈悲の心は綺麗に吹き飛んだろうさ。

余談だが、レヴィンズ殿下は王族ながら騎士という、比較的動きやすい立場にある。

つまり、今回も労働力として私『達』に認識されてしまったわけですよ。第三王子ということもポイント高し。

で。

彼らが教会に派遣されたってことは、今回もレヴィンズ殿下に動いてもらうことになったのだろう。

まあ、バラクシン王としてもそれが最良な選択か。下手な奴に頼むと、私からの情報が握り潰されかねないし。

と、言うか。

ぶっちゃけると、教会派貴族がどこまで関わっているか判らない!

ブレソール伯爵は確定としても、『お仲間』が居る可能性も捨てきれないんだよねぇ。

小父さん達曰く、『直接動いたのがブレソール伯爵なんだよなぁ』とのこと。

つまり、ブレソール伯爵がただの『 お使い要員(パシリ) 』という可能性もある。他国からの探りではこれが限界なんだそう。

騎士寮面子ならば、もっと踏み込んでもおかしくない! と思った私は悪くない。

今更、何を良い子になっているのだ。本性、出さんかい!

……などと馬鹿正直に小父さん達に言ったら、生温かい目を向けられた挙句、『興味のないことなんだろ』というお言葉を貰った。

『だいたい、お嬢ちゃんが長期的な制裁プランとやらを用意してたじゃねーか。そっちの方が楽しみなんだろうさ』とも。

……。

そうか、興味ないのか。じゃあ、無理だな。

黒騎士達は超絶自分に素直な人達なので、興味のないことは『それなり』程度にしかその才能(笑)を発揮しない。

イルフェナに関わることならばともかく、他国の事情にそこまで踏み込む気はないのだろう。

ああ……バラクシン王家を試している可能性もゼロではないか。

『僭越行為は避ける』という言い分の下、本音は『お手並み拝見』といったところかな。

小父さん達が口にした長期的な制裁プランを考えたのは私なので、後はバラクシン王家がそれをどう活かしていくかをイルフェナは見ているだろう。

今回の案件でも、情報を得たバラクシン王家の対応を見ていても不思議はない。

隣国だし、内乱が起きても困るけど、手を貸してやるから自力で頑張れ! ……とか考えてそう。ちょっと情けないイメージもあるしね、バラクシン王家。

そんなことを考えているうちに、目的の部屋に着いたようだ。レヴィンズ殿下が控えめなノックをすると、即座に中から入室を許可する声が聞こえた。

――そして、室内に居たのは。

「ひさしぶりだね、魔導師殿」

穏やかな笑みを浮かべ……いやいや、怒りを穏やかな笑みで覆い隠し……隠し損ねたバラクシン王と。

「……情報提供に感謝する」

頭が痛いと言わんばかりの表情を浮かべたライナス殿下だった。

……。

ブレソール伯爵、詰んだな。これは。

とりあえず王太子に任せるとかではなく、いきなり王&王弟が出てくるあたり、本気を感じます。

そーか、そーか、やっぱり自国の馬鹿どもにお怒りかー。

「お久し振りですね。というか、当分、会う予定はなかったはずなんですけど」

これは正式に……という意味だ。

私は現在、アグノスが教会所属になっているので、時々は教会にお邪魔している。

対して、バラクシン王家の皆様も末っ子夫婦が教会預かりになっているため、何かと理由を付けて訪れているだろう。

勿論、それほど機会は多くない。だが、比較的身軽なレヴィンズ殿下が教会の安全のための見回りと称し、訪れていることは知っている。

また、女性陣も慰問として訪れているらしいので、私とエンカウントすることもあったり。

それでも相手は王族、私は民間人なので、互いに軽く挨拶をする程度。

裏情報はヒルダん、もしくは聖人様経由と決めております。

教会派貴族に『イルフェナの魔導師との癒着云々』と言われないためにも、これが最適な距離だろう。

互いに何も言わずとも、自分達の行動がどういった結果を招くかを予想できるからこその、防衛手段。

寧ろ、王族だからこそできて当たり前くらいに思われている。お馬鹿には厳しい立場ですな。

「それで、今回の情報なのだが……」

バラクシン王の言葉に、全員の視線がブレソール伯爵へと突き刺さる。

ブレソール伯爵は皆の視線にビビりつつも、ここで無言を貫くのは身の破滅だと判っているらしく、気丈にも顔を上げた。

「こ、このような真似……ぐ!」

「はい、駄目ー!」

パチリと指を鳴らして、ブレソール伯爵の腹へと衝撃波を見舞う。何かを言い掛けたブレソール伯爵の覚悟(笑)は、あっさりと崩れ去った。

なお、ブレソール伯爵を抱えていた両隣の騎士達は実にタイミングよく、手を離して後ろに退いている。教育が行き届いているようで、何より。

「な……ゴホッ、な、なに、を……」

咳込みながらも私を睨みつけてくるブレソール伯爵に、私は蔑みの表情を浮かべたまま、徐に近づき――

「ぐ!?」

「跪け」

容赦なく、蹲っているブレソール伯爵の背を踏みつけた。

「違うでしょう……? まずは『私如きのためにお時間を取ってくださり、ありがとうございます。お忙しいところ、申し訳ございません』だろうが」

「な、何、を……」

「教会に『わざわざ』聖人様をイビリに来るあんたと違って、忙しい方達なの。お仕事あるの。これは『余計なこと』なんだよ。何を、『付き合ってもらうのが当たり前』みたいな顔してるのよ、図々しい!」

事実である。

王族の皆様はどこの国でも忙しい。お仕事がない奴は『お前には任せられない』と判断されたか、仕事を任せられない状況にあるかのどちらかだ。

魔王様とて、基本的に執務室に居るじゃないか……私、ほぼそれ以外の姿を知らないぞ?

……まあ、偶に私がその背に張り付いて手元を見ているけど。お勉強、大事だよねっ!

「な、な、な……」

私の言い分に、ブレソール伯爵は言葉が続かないらしく、『な』しか言葉を発せない。

そんな私達を生温かい目で見ていたライナス殿下は。

「遣り方はともかくとして、魔導師殿の言い分は間違っていないだろうが。特に、兄上は多忙なのだし」

どう言って良いか判らないのか、無難に纏めていた。『魔導師、でかした!』とは思わずとも、王への敬意を感じられないブレソール伯爵の態度には思うところがあった模様。

とりあえず、賛同してもらえたようで、何より。