軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

とある傭兵達の受難

――サロヴァーラにて

「本当に、本当にありがとう!」

「凄く感謝してるの。至れり尽くせりで申し訳ないわ」

「こちらも罰として奴らを捧げているので、お気になさらず~♪」

興奮を隠しきれない様子で、何度も感謝を告げてくるのは二人の女性。なお、彼女達の職業は『作家』と『画家』である。

もっと言うならば……キヴェラで売られていたBでLな本の作家&イラストレイター様方だ。

グラント侯爵家に雇われていた傭兵団の様子を連絡したところ、『次のシリーズの登場人物たちのイメージにピッタリ♪』という好感触な反応が貰えたので、早速お招きしてみました。

勿論、ティルシア達には許可済み。と言うか、ティルシアだけには『傭兵団がどんな内容の本のモデルになるか』ということを説明したため、あっさりと許可が出た。

……いや、許可を出すどころか、滞在費全て無料と言う超高待遇である。

ティルシア曰く、やはり『侯爵家に雇われていただけの傭兵団』(=王家に対してはまだ何もやっていない)という立ち位置では、処罰は難しいらしい。

『グラント侯爵家だって、証拠があっても取り調べは必須なのよ? しかも、今回はまだ行動していない。野心を抱いただけでは、私達も動けなかったもの』

やはり、『あくまでも計画されていただけ、もしくは脅しに見える状況』というだけでは色々と難しいのだろう。

そこで処罰を強行すれば貴族達からの反発待ったなしなので、ティルシア達もタイミングを計っていた模様。

手際が良いわけですね!

やっぱりあいつら、すでにマークされてたんじゃねーか!

そんなことを味方サイドで話し合っていると、『傭兵団は厳重注意で終わりかも?』という方向になって来ちゃったんだよねぇ……。

うん、まあ、ある意味では仕方がない。今後のことを考えると、無理はできん。

……が。

そこで私が『一部の人達に絶大な人気を誇る【ある特殊設定】の本のモデルに推薦してもいい?』とお伺い。

心境的には『サイラス君を始めとする親しい人達がモデルにされないよう、あいつら売ろう』であろうとも、馬鹿正直に言ったりしませんよ。建前、超大事。

怪訝そうな表情になった人々に対し、『その特殊設定のモデルにされると、男として色々プライドが砕けるというか……』という感じに、ぼんやりと説明。

さすがにそれでは許可が出ないと感じたので、ティルシアだけには嘘偽りなく盛大にぶっちゃけた。

す・る・と♡

『あら……あらあらあら! そんな素敵な本のモデルになれるのね! いいわ、許可しましょう』

と、素晴らしい笑顔と共に、大変乗り気になった。やはり、無罪放免は悔しかったらしい。

そこで私が、更に一歩進んだ処罰にするよう進言。

『どうせなら実名で。今後、奴らが何か遣らかしたら、【この本の内容は実話】って噂を流せばいいと思う。社会的に終わるか、そちら方面のお仕事が来たりして♪』

『楽しそうね! ミヅキの案、採用するわ!』

という感じに、あっさりと許可が下りた。

今後、かの傭兵団はサロヴァーラ王家の敵になりかける度、『魔導師発案の罰』――内容があまりにもアレなため、魔導師主導の罰で通す模様――が脅しとして使われるのだろう。

可哀想ね♪ 素直に『ごめんなさい』をするか、王家に忠誠でも誓っていれば、こんなことにはならなかったのにぃー♪(棒)

そして本日、待ち望まれた――主に私とティルシアに――二人が到着した。見た目は極普通の二十代の女性のため、貴族達には全くと言っていいほど警戒されていない。

しかし、彼女達は正真正銘、キヴェラの近衛騎士(※サイラス君のこと)を震え上がらせた猛者(笑)である。

ようこそ、サロヴァーラへ♪ 歓迎致します♪

お越しませ、対野郎どもの最終兵器様♪

お 待 ち し て お り ま し た … … !

本日、サロヴァーラに到着なさったこの二人。グラント侯爵家に雇われていた傭兵団の処罰に必須な人達なのであ~る!

彼女達は騎士でも傭兵でもない。その武器は紙とペン。ただし、使い方によってはとんでもない威力を持つ。

……。

本 当 に な 。

バレたら社会的に死ぬし、イラストそっくり&同姓同名という証拠モドキがあるため、周囲の目も疑惑一直線。

傭兵とは『誰かに雇われる商売、もしくは戦力』なので、評価に関わる噂は貴族と同じくらい大ダメージだ。

嗚呼……今後の彼らの苦労を想像するだけで、(笑い過ぎて)涙が止まりません(笑)

そのためにはまず、お仕事の説明をしなきゃね♪

「今回、モデルにする許可が下りたのは、罰の一環という扱いだからです。ですから、まずはこの誓約書を確認の上、サインして欲しいのですが」

そう言って、二人に誓約書を差し出す。さすがに口約束だけじゃアウトだと思い、ティルシア監修の下、作ってもらった。

「簡単に言うと、貴女達は魔導師の要請に従い、サロヴァーラでの処罰に協力したことになる。貴女達の身の安全のため、『あくまでも要請に従った』という形にしてもらいたいんです」

逆恨みされても困るのです。何かあっても、『魔導師に逆らえませんでした』で通してもらえばいい。これまでのこともあり、大抵の国はそれで納得する。

「私達はありがたいけれど、それで構わないの?」

「私はすでにこの国で色々遣らかしている上、『様々な意味で』力を見せ付けちゃってるので。今更、か弱い振りをしても手遅れです。ちなみに渾名は『異世界人凶暴種』」

「そ、そう……」

そう言うなり、作家さんは何かを察したらしく口を噤む。……賢いようで何より。

「モデル料とかは必要かしら?」

誓約書を読みながら、イラストレイターさんが聞いてくる。すでに心は仕事に飛んでいるらしく、身の安全云々という私達の会話に興味はない模様。

「あ、要らないです。寧ろ、こちらが依頼料を払わなきゃならないくらいなので、稼いだお金は全額そちらのものですよ」

「いいの? こちらに条件が良過ぎない?」

「処罰に関わらせるなんて、普通は有り得ませんからね。条件が良いと感じるのは、たまたま求める素材と噛み合っていただけですし」

『好みじゃない』と言われてしまえば、それまでだ。彼女達にとってどれほど都合が良くとも、それは本当に偶然なのだ。

「どういった表情が見たいとか、言ってくれればお手伝いしますよ。貴女達と読者の期待に応える作品作りのため、そういった要望にはできる限り応える所存です」

だから、宜しくお願いします――と頭を下げた途端。

「素敵! 是非とも頑張らせてもらうわ!」

「期待以上のものに仕上げてみせると誓うわ!」

歓喜の声と共に、力強い決意の言葉を頂いた。その目と声に力が満ちている。

やる気になっているようで何より。やはり、萌えの精神は異世界であろうとも同じだったか。

――その後。

「体の線が判らないわね……脱いでもらってもいい?」

「おっけー♪ ほら、先生がお望みだ! さっさと脱げ!」

「ちょ、お前ら一体、何を……」

「素直に脱げば食事がちょっと豪華になって酒が出ます。脱がなかったら、強制脱衣。以上! 反論は認めない」

「女が何を言ってるんだぁぁぁ!?」

「あ……あのね、その、苦悶の表情とか見たいのだけど……」

「えーと……悪夢に魘されてるとかでもいいですか?」

「大丈夫よ! 汗とかかいても、色気があって良いと思うわ! そ、それでね? 拘束とかしてもらえると嬉しいな……♡」

「……。じゃあ、食事に睡眠薬を混ぜた上で、悪夢を見てもらいましょうね」

「あのよー……お前ら一体、何をしてるんだ……? 痴女扱いされても文句言えねーぞ?」

「極一部の人達に喜んでもらえるよう、頑張ってます」

「はぁ……?」

「お前ら、頭は大丈夫か?」

※私と傭兵の会話をよそに、作家は小ネタをネタ帳に書き込み、イラストレイターは一心不乱にスケッチ中。

なお、一冊どころか数冊にわたって書き込みが行なわれ、その量は着々と増えていっている模様。

上記のような遣り取りが数日にわたって成された後、キラキラと輝く笑顔のまま、二人の女性は帰路についたのだった。

「必ず満足してもらえるものを書くから、待っててね!」

「心の望むまま、描いて見せるわ!」

という、頼もしい言葉を残して。