作品タイトル不明
断罪の舞台裏
――時は暫し、遡る。
グラント侯爵があっさりと大人しくなったので、次はクソガキ様の番である。正直、グラント侯爵の反応はちょっと予想外だった。
……。
うん、でもまあ、グラント侯爵は自分がやってきたことの自覚があっただろうしね?
その自覚があった場合、王家サイドの死者・生者を問わず恨まれていたとしても不思議はないと悟るだろう。特に、王妃様達には。
でも、ちょっと意外だった……幽霊、怖いんだ?
実のところ、幽霊役をやってくれた王女達は当初、そこまで効果があるとは思っていなかった。
こちらにオカルト文化がないことも一因だけど、サロヴァーラの貴族達……特に私の言葉を無視するような連中に、罪悪感なんてあるとは思えなかったから。
……ただし、その理由は姉妹で大きく異なっていたけれど。
『お母様達のことなど、とっくに忘れているのではないのでしょうか?』
リリアンは『直接命を奪ったわけではないなら、そんな昔のことなんて覚えていないのでは?』という感じに、グラント侯爵が罪悪感を覚えないことを懸念し。
『恨まれている自覚はあるでしょうし、怖がるかしら?』
ティルシアは『恨まれる覚悟があってやらかしてきただろうから、死者であろうとも恐れるだろうか?』と、『そんな繊細さなんてある?』という方向で首を傾げていた。
リリアンはともかく、ティルシアは覚悟を持って国の改善を図ろうとした人なので、グラント侯爵を『野心家』と捉えた結果だろう。
で。
その結果が『あんな感じ』(意訳)になったわけでして。
リリアンは呆気に取られ、ティルシアは……『その程度の覚悟だったの』と蔑みの目を向けていた。
まあ、その後は地味~に脅かされ続けるグラント侯爵の無様な姿を見て、留飲を下げていたようだったけど。
なお、これらの悪戯は『腹を立てた魔導師が王族の許可を得てやった悪戯』という扱いのため、処罰とは無関係である。
だって、あいつらが大人しくしていたら、私はここに来る必要なかったもん。
サロヴァーラとしては大変に申し訳なく、また情けない状況なので、『ごめんなさい。魔導師様のお好きにどうぞ』的な心境なのですよ。
勿論、彼らを死なせたり、国が下す処罰に影響が出ないことが大前提。あくまでも『悪戯』なのだ。協力者がサロヴァーラの王族ってだけでな!
……そして次はMVPなクソガキ様の番でして。
私としても、クソガキ様には感謝している。彼の暴言がなかったら、ここまであっさりと捕縛は叶わなかっただろうしね。
それでもグラント侯爵家の一員として、家が行なってきた罪を自覚してもらいたいという気持ちもあった。
『家を誇る以上、その歴史も背負うことになる』――そう判らせたかったのだ。クソガキ様、侯爵家であることをただの特権のように認識していた節があるからね。
そうはいっても、クソガキ様は子供。その上、こちらに都合よく動いてくれたMVP。
その結果、『お化け屋敷とかハロウィンレベルなら問題なくね?』という結論に落ち着いた。ちょっと怖いけど楽しめる、的な?
大丈夫だよ、クソガキ様!
ちゃんとお子様仕様にしてあげるから!
得体の知れないものに追いかけられるとか、顔を覗き込まれるといった恐怖演出はなし。転んだりして怪我をする可能性がありますからね!
あと、攻撃されるといったことも却下だな。あくまでも脅かすだけにとどめておくか。
ゾンビ系は大人でも無条件にビビるらしいので、精々が『話していた人が朽ちる』程度だろうな。まあ、これは新作にあるので、折角だからそれを使うか。
……そんな感じで色々と吟味し。
クソガキ様仕様の悪戯は以下のものを組み込んだ悪夢(※新作の魔道具使用)に決定♪
『霧の中の人影』
効果:立ち込めた靄の中に時折、人影が見える。無害。
『鏡に映るのは』
効果:鏡に自分ではない人影が映る。無害。
『絵柄が変わる絵』
効果:普通の絵が不気味な絵に代わる。無害。
※参考にしたのは、ハロウィンの玩具『角度によって変わる絵』。
『仲間に誘う貴族達』
効果:人の姿に安心した途端、彼らの姿がガイコツ(亡霊)に。無害。
どうよ、このお子様仕様。本当~に! ただ不気味と言うか、驚くだけ。
しかも、実際には夢を見ているだけなので、怪我すらしない安全仕様……!
……。
自分で組んでおいてなんだけど……これ、本当に怖い夢になる……?
いや、あまりにも無害と言うか、恐怖要素が薄くてね? マジでホラー要素が某夢の国のお化け屋敷レベル(※全年齢向け・怖いというより楽しい)なんですが。
最後だけ『君も仲間に云々』的なことを言われるため、少しだけ怖いかもしれないけれど……基本的に動かないしなぁ?
なお、この『仲間に誘う貴族達』の正体は騎士寮面子である。イルフェナにて撮影済みの新作だ。
これまで幻影を利用し、骸骨剣士や死神といったものを使ってきたけれど……騎士寮面子から『使える場所が限られる』『剣の使い方で所属している国が判る場合がある』といった指摘を受けたのだ。
まあ、確かに使いどころは限られる。砦とか戦場跡ならば問題ないけど、それ以外だと『何でここに出てくる?』と疑問に思われてしまうだろう。
そこで考案されたのが『ゴースト・貴族ヴァージョン』。
『貴族だったら、城や館などに出ても違和感はない。牢で死ぬこともあれば、失意のまま自害することもあるからな』
『未練がましく徘徊していても不思議はありません。野心のままに生きる方もおりますので』
以上、クラウスとアルの言葉である。……確かに、室内だったら貴族の方が使い勝手が良さそう。
そこで『とりあえず作ってみる?』となったのだ。騎士寮面子は貴族も多いので、古着がそれなりに眠っていたことも幸いした。
・普通の姿から、亡霊の姿になる。
・最初から亡霊の姿。
この二パターンが試しに製作され、今回使われたのは『普通の姿から、亡霊の姿になる』方。
何のことはない、室内に居た貴族達があるタイミングで一気に亡霊化――室内も廃墟となる――するだけだ。
それだけではつまらないので、『貴方も仲間に~』な言葉が掛けられる。お前もすぐにこちら側に来るぞ、という脅しだ。
余談だが、この役目はアルが嬉々として演じている。その他キャストは白騎士達。魔法を使えない彼ら的には、こういったものに興味津々なのだ。
そして、その他効果は黒騎士達が頑張ってくれた。骸骨化は各自幻影の魔道具を身に着けてもらえばいいけど、変化のある服装などは魔法の領分。
『人影が薄ら判り、転ばない程度に薄暗い』やら『服装が一気に風化』、『一気に廃墟化する』といった現象は魔法のお陰。細かい注文をしようとも、期待に応えてくれる頼もしい人達です。
これらのことを撮影・編集。個別使用してもいいけど、処罰や脅しに使う可能性も踏まえて、夢を見せる魔道具にも組み込む。
これなら全部夢オチなわけです。怪我をさせる心配もないから、安全でしょ? クラレンスさんもニッコリです。
そんなわけで、試しに魔王様――内容やネタばらし済み――にも体験してもらった。
その結果――
『これだけのものを作り出せることは素直に凄いと思う。だけど、明らかに技術や知恵の使い方を間違っているだろ、このお馬鹿ども!』
というお言葉を頂いた。一言で言うと、『君達、こそこそ何やってるんだい!』だろう。
魔王様としては、物騒なことに盛り上がるよりはいいけれど、褒めるべきか迷う案件だった模様。
クソガキ様は温い仕様のものとはいえ、関係者以外では初の体験者になるわけですよ。
楽 し ん で く れ た ま え … … !