軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔導師、お友達の所に遊びに行く 其の四

「さぁて。どうしよっか?」

そう言いつつ、私は私兵の皆さんを見回した。彼らも騎士が出てきたことは拙いと感じているらしく、その表情は厳しい。

ヴァイス達が家宅捜索しようとするのを止めたいみたいなんだけど、私と対峙している以上、私を無視することはできないのだろう。

あれですよ、先ほどの家令みたいな人を怯えさせた魔法。あんなものを見ちゃったものだから、迂闊に警戒を解けないに違いない。

その警戒心、大・正・解☆

そもそも、私にとっての君達は玩具であり、ティルシア公認で『好きにして良い』と言われたようなもの。

私を戦力としてカウントしたからな~、女狐様。絶対に、何をしてもお咎めは来ないだろう。

第一、この家宅捜索が正当なもの――手続きとかも含む――である以上、邪魔をすることは完全に悪手。

『調べられたら拙い』って言っているようなものですからね!

私のことを不審に思っても、騎士様達が同行を許していますからね!

その上、『この国の王女達と魔導師は仲良し』という噂もある。つまり……『魔導師は騎士達の協力者』という答えには誰だって辿り着くわけだ。

先ほどの出来事とて、騎士達からは批難の声が上がらなかった。よって、グラント侯爵の私兵の皆さんは抗議することもできず、私への警戒を強めているらしい。

……。

自 分 達 が 悪 い っ て い う 自 覚 、 あ っ た ん だ ?

なるほど、それならば今後の扱いだってそれなりでもいいだろう。だって、『知らなかったわけじゃない』ものね?

私は内心、ひっそりと喜んだ。だって、一番最悪……いや、厄介なパターンが『私兵として雇われていた者達は何も知らなかった』というものだもん。

暴力による妨害とて、『お仕事に忠実なだけでした』で済まされてしまう可能性が考えられていただけに、これはかなりの朗報だ。

……あまり言いたくはないが、すっ呆けられる可能性もあったからね。

ヴァイスが持ってきた書状にどこまでの権限があるのかは判らないけど、さすがに『雇われていただけでした』と言い張る人間にまでは強く出れなかろう。

言い方は悪いが、私達が危険視したのはあくまでも『グラント侯爵家』。

しかも、『侯爵』なんですよ、こ・う・しゃ・く!

だから、『治安が悪くなってきたので、警備の兵を雇っている』という言い訳も嘘じゃないと言うか、押し切られてしまう可能性・大。

ティルシアが私の同行を求めたのって、『魔導師ならば、邪魔をする奴らを問答無用に〆そう』という意図があったからじゃないのかね?

私兵の皆さんが真面目にお仕事をしただけだとしても、ヴァイス達の邪魔をしてきた場合、私にとっても彼らは『邪魔者』じゃないか。

当然、私がそんなことを許すはずはない。私兵の皆さんが事情を知らずとも、問答無用に沈めること請け合い。

そういった展開を狙っていたんじゃないのかな~? と思うのですよ。女狐様だし。

……実際には家令らしき人が挙動不審だったり、私兵の皆さんも私達への敵意があからさまだったりと、非常に判りやすい態度を取ってくれたわけですが。

まあ、折角だ。一応、確認だけはしておこうか。

「騎士達の捜査は正当なもの。貴方達が邪魔をするならば、事情を知らずに雇われたとかではなく、グラント侯爵の共犯として扱われる。それは勿論、判っているよね?」

「……」

確認のために尋ねるも、私兵の皆さんは誰も口を開かない。どうやら、迂闊なことを言って不利になることを警戒している模様。

ただ……その表情は非常に素直なもので、あからさまに顔を顰めたり、睨み付けてきたりと様々だ。

「これは確認だよ。黙秘はこちらの言い分に納得しているものとみなす」

「……俺達はこの家を守ることが仕事だ」

リーダー格らしい人がそれだけを口にする。ほほう……曖昧で、中々に賢いお答えだ。

しかし、私もそれで済ませてあげるほどお人好しではないわけで。

「あのね、そんなことは見れば判るの。私が問いかけているのは、『貴方達の答えによって、貴方達の罪状が変わってくるから』なんだけど」

「……っ」

判りやすく言ってやれば、何人かの表情が動いた。今後の展開を予想し、どうすべきかを考えている模様。

これ、別に揺さぶりをかけているとかではなく、単なる事実である。傭兵のような職業の場合、貴族に雇われることも立派なお仕事なのだ。

よって、無罪放免こそありえない――多分、何かしらのことには関わっているだろう――けれど、共犯か、否かという差は絶対に出る。

それを踏まえて、一応は聞いてやろうという私の優しさですよ。ガニアに居る三人組のこともあるしね。

「……生憎だが、雇い主を裏切ることはできん。そもそも、その処罰の差って奴がどれほどのものか提示されていない以上、信じることはできないな」

リーダー格の男がそう言うなり武器を構える。数名は迷っていたようだけど、それでも『処罰の差が提示されていない』ということが不安要素だったのか、全員が男に従って武器を構えた。

対して、私は全く慌てていない。

だって、本当~に確認しただけだもん。

それ以外の意味はない。こちらとしても、家宅捜査をスムーズに行ないたいので、こいつらが抵抗するなら、問答無用に黙らせるだけだ。

……が、そこでふと『あること』が頭を過った。

思い出すのは、キヴェラの玩具ことサイラス君。彼は実によく働いてくれるので、そろそろボーナスがあってもいいだろう。

タイミングが良いことに、つい最近、『ある情報』が私の下に寄せられたのだ。これを使わない手はない。

「……」

私は私兵の皆さんにそっと視線を走らせる。

貴族的な優美さと言うか、線の細さはないけれど、中々に顔立ちが整っている人達が半数以上。

それに加え、私兵になるだけあって、体つきも騎士のそれと大差ない。

……。

……。

よ し 、 売 ろ う 。

「……何だ? 何を考えている」

私の様子を不審に思ったのか、怪訝そうにリーダー格の男が尋ねて来る。……が、私は上機嫌でにっこりと笑った。

「そいつは魔導師だ! 気を付けろ!」

「チッ! 何を仕掛けてくるか予想できん!」

私兵の皆さんは警戒を露にするが、彼らの予想は全てハズレだ。いや、誰も予想がつかないだろうと推測。

それでも私が一切動かない上、何も喋らないので、彼らの警戒心は増すばかりなのだろう。

そんな彼らの姿に、私は内心、大笑い!

大丈夫。なに、ちょっとばかりBでLな本のモデルにされるだけだ。

実は最近、例の本の作家様&絵師様と連絡が取れるようになったんだよねぇ。

彼女達――やっぱり、女性だった!――は元からそういった類のものが好きらしく、私も理解があると知るや、非常に好意的に接してくれたのだ。

決定打は『うちの世界にもそういうの沢山ありますよ』という言葉。

同人誌どころか、商業誌として普通に売っているのです。それを知った彼女達が本気で悔しがっていたことは余談だが。

まあ、ともかく。

私としては私兵の皆さんを実名掲載可のモデルとして、作家様達に献上したいと思うわけですよ! ファンもそれなりに居るみたいだしね。

サイラス君は心の平穏を得る!

こいつらは心に深い傷と後悔を刻み込まれる!

作家様達&ファンの皆さんは大喜び!

何より! 『私が』超楽しい……!

きっと、彼らは後にこう思うだろう……素直に投降しておけば良かった、と。

第一、私は最初から彼らのことをこう言っているじゃないか……『玩具』と!

そうと決まれば、彼らは拘束一択だ。この場は戦力としての彼らを無力化して捕らえ、牢で作家様達にじっくり、しっかり、観察していただこう。

表情の変化が見たいと言うなら、喜んで協力しますとも。……その後、完成した本を彼らに一冊ずつプレゼントする時がとても楽しみだ。

「とりあえず、この場は捕獲だけね♪」

『は?』

「そ~れ☆」

パチリと指を鳴らして、瞬間氷結。哀れ、やる気満々だった彼らはあっという間に囚われの身だ。

「な……っ」

さすがに驚いたのか、其々が驚愕の表情のまま体を動かして抵抗を試みる。

しかし、甘い。私の氷結による拘束は完璧です。自害どころか、傷なんてつけさせませんよ。大事な贈り物なのだから。

「貴方達に会わせたい人が居るから、今は捕らえるだけ。……ああ、私は魔導師だし? 自害なんてしようものなら、体をどうされるか判らないわよ?」

……いや、その方が遥かにマシかもしれんがな。

しかし、この場でそんなことが判るはずもない。寧ろ、魔術師・魔導師は研究職なので、こんな風に考える方が一般的だろう。

事実、この脅しは効果覿面だった。苦々しい顔をしながらも、体力の温存に努めることにしたのか、抵抗を止める人が続出する。

「チッ、化け物め!」

「お褒めの言葉をどうも♪」

さあさあ、これで彼らは無力化できた。暴力が全てじゃないと、彼らは今後、身をもって知ることになるだろう。

「魔導師殿、妙に機嫌が良いですね……?」

ヴァイスよ、そういうことはスルーで宜しい!