軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七不思議の後日談 其の十一

――『一人かくれんぼ』が行なわれていた館の庭にて

深夜とは言え、何人かが手にしたランプの明かりに照らされた庭はそれなりに明るい。

その最たる光源となっているのは、パチパチと音を立てる焚火である。

……。

訂正、『お焚き上げの炎』だ。

ただし、私も本職ではないため、どう見ても野営の焚火だが。

いや、だってねぇ……真夜中のお焚き上げですし?

火の粉が飛んでも嫌だと話し合った結果、野営用の道具が貸し出されてきたのだよ。

誰が考案したのかは判らないが、どう見てもキャンプの焚火台にしか見えないのは余談である。

さらに言うなら、何~故~か串焼きセット――食材と食材を炙る用の串――までが準備されているあたり、完全に打ち上げ仕様~『一人かくれんぼ』、お疲れ! の会~なのだろう。

……。

皆の認識は完全に『お焚き上げ』=キャンプファイヤーです。

『使った物は全部燃やす』って言った私も悪いけどさ。

一応、『火で燃やすことによって浄化されるんだよ!』とは教えた。

そう、教えはしたんだ。即座に『浄化魔法じゃ駄目なのか?』って返されただけで。

魔法のあるこの世界、当然、呪いや呪詛といったものが存在する。当たり前だけど、本物だ。

元の世界だと、専門的な知識や霊感などが備わっていない限り『何となく嫌な気配のする物』程度の認識なんだけど、この世界的には『呪術』が魔法の一つとして存在しているのであ~る!

当然、それらを処理する方法というものも存在する。ただし、認識は『解呪』だが。

その一つの方法と言うか、嫌な気配を消す方法の一つとして有名なのが、浄化魔法なんだそうな。

簡単に言うと、『残っている呪術の気配を消す』程度の認識らしい。あまりにも汚染が酷い場合は、専門にしている人を呼ぶこともあるそうな。

それを当たり前のようにできるのが、クラウス以下黒騎士達。こういう時は本当に、彼らが凄い魔術師集団だと痛感する。

……が。

私は知っている。彼らがこの魔法を独自に改良し、『こびり付いたしつこい汚れを落とす』(意訳)という場合にも使用していることを……!

なお、証人は私である。使ってもらった時は『さすが魔法世界! 便利~♪』としか思わなかったんだよねぇ。

後に、本来の使い方と元となった魔法を教えられ、唖然としたのも良い思い出さ。

天才とは、何とかと紙一重なのである。

揚げ物食いたさに、便利な掃除魔法を開発するほどに。

……黒騎士達は私の『油を最後まで使い切りたいから、綺麗にしたり、品質を保つ魔道具ってない?』の言葉から、これらの魔法を作り上げたのだ。

まさか、『作ってくれたら、食事に揚げ物が出てくるようになります』で釣れるとは思わなんだ。

魔王様が唖然とするのも当然ですね! アルを始めとする白騎士達は誰一人、そういったことを教えてくれなかったもの!

なお、クラウス曰く『魔法や魔道具の開発に最も重要なのは、発想と切っ掛け』だとか。

彼ら曰く、私はそれらの宝庫らしいので、基本的には話に乗ってやる方針らしい。

止める気は皆無どころか、推奨方向です。

魔王様、貴方の苦労は今後も続く。

「……で。今はその浄化……『お焚き上げ』とやらをやっている最中なんだよね?」

「そうでーす」

尋ねてきたのは魔王様。その腕にはしっかりと親猫(偽)が抱えられていた。

多分だけど、子猫(偽)が私の方に来たように、親猫(偽)も魔王様達を守ってくれるつもりだったのだろう。

こう言っては何だけど、『一人かくれんぼ』で何らかの存在が依代に降りてきたのは事実なのだ。ポルターガイストも同様。

皆も魔道具の映像を見ているわけだし、向こうで何らかの怪奇現象が起きても不思議はない状況だよね。

まあ、騎士s曰く『一番の怪奇現象が、親猫(偽)の登場だった』とのことなので、大丈夫だったみたいだが。

もしも何らかの怪奇現象が起きたとしても、親猫(偽)の方が圧倒的に強い気がするし、黒騎士達が喜ぶだけなので、問題なし。

「私の目にはその……ウサギのぬいぐるみが火炙りにされているようにしか見えないんだけど」

「……」

目の前の焚火台の中、ウサちゃんは磔にされ、絶賛、火炙り中である。勿論、これには理由があるのだ。

「そうは言ってもですね、『一人かくれんぼ』の終わらせ方って、『依代に塩水を掛ける』んですよ」

「あ~……そういうこと」

「ご理解いただけたようで何よりです。……そのまま火に放り込んだとしても、たっぷり塩水を吸ったぬいぐるみなんて焼けないと思うんですよね」

魔王様は納得したように頷いた。その割には、ウサちゃん(火炙り中)へ向ける視線が生暖かい気がするが。

ぬいぐるみがいくら布と綿でできていようとも、水浸しで燃えるわけがない。その結果、『磔にして火炙り』という方法になったわけですね!

なお、その過程に魔法は使われていない。クラウス曰く『一度はお前の居た世界の方法で終わらせておくべきだ』とのこと。

全てが燃えた後に浄化魔法を使って、完全に終了したことが確認できれば、今後は魔法が使われるかもしれないね。

つまり、第二回、第三回は既に決定事項。

『我こそが、殺ってみせる!』という死霊の方、ご降臨をお待ちしております!

「てっきり、あまりにもウサギの行動に腹が立って、火炙りにしているのかと……」

「酷いですね! 違いますよ!? それなら、油でも掛けて『ポイッ!』ですって!」

「……。扱いが雑になるだけなんだね」

「どのみち燃やすことに変わりはないじゃないですか」

「お馬鹿」

「痛っ!?」

馬鹿正直に言ったら、叩かれた。酷いですよ、魔王様!

そんな遣り取りをする間、子猫(偽)はどこか楽しそうにキャンプファイヤー……じゃなかった、お焚き上げの炎を見つめていた。

火をつける直前まで前足でウサちゃんを突いたりしていたので、『ウサちゃん復活があるかも!?』と期待しているのかもしれない。

……そして。

そんな子猫(偽)の活躍(笑)を思い出したせいか、私の視線は自然と親猫(偽)の方へと向く。

「親猫(偽)……子猫(偽)があれだけ動いたり、喋ったりしている以上、皆にもバレてるだろうしさ? もう『普通のぬいぐるみです!』と言わんばかりの演技、止めよう?」

『親猫様ー、もう隠すの止めようよー』

『……』

『ミヅキ達ならいいじゃないー。私、今後も一緒に遊びたい!』

子猫(偽)の説得(?)に、親猫(偽)は暫し沈黙(?)し。

「わっ!?」

いきなり、魔王様の腕から私の方へと飛び掛かってきた。咄嗟に抱き留めて、落とすことだけは避ける。

『……楽しむのもいいけど、あんまり心配させるんじゃないよ』

「はーい」

『はーい』

子猫(偽)と共に良い子のお返事をすると、親猫(偽)は満足そうに尻尾を揺らす。

「なるほど、エルよりも素直なんですね」

「エルが素直になれない時は良い切っ掛けになりそうだな」

「ちょ、アル!? クラウス!?」

猫型セキュリティは『様々な意味』で、優秀なようですよ? 魔王様。