軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七不思議の合間の雑談

アベル殿の話が終わった後、騎士達は暫し、考え込んでいるようだった。

どうしてなのか不思議に思い、尋ねてみると、『彼らの能力の凄さを知っているからだ』と告げられる。

「あのね、この二人……って言うか、彼らを含めたディーボルト子爵家の子供達ってね、危機察知能力が半端ないんだわ」

『危機察知能力……ですか?』

意味が判らず首を傾げると、魔導師殿は更に続けた。

「危険を察知する能力って言うか、本能的な勘? みたいなものがずば抜けているんだよ。それこそ、落とし穴なんかはどんなに隠しても全部避けるレベル」

『なんと……!』

それは確かに、凄い。そのような異能のことは聞いたことがないけれど、そんな私ですら、その凄さを察することができる。

「だからね……今、話に出てきた『呼びかける【何か】』って、普通の人は回避不可能なんじゃないかと思えるんだ。騎士達はそれに気が付いたから、この状態なんだよ」

『え゛』

「回避不可能な事態ってことでしょ、これ。しかも、『その後がどうなるか判らない』」

『……!』

改めて説明され、私は背筋が寒くなった。

そうだ、そんな能力を持っている人でさえ避けられない……いや、『何の不信感も抱かず、違和感に気付けない存在』だというならば。

……『それ』は一体、どんな存在だというのだろうか。

「クラウス、魔術師としての見解は?」

どことなく厳しい表情のエルシュオン殿下が尋ねると、クラウス殿は暫し、思案するような顔になり。

……困惑を漂わせた表情のまま、首を傾げた。

「可能か、不可能か、ということならば、『一応は可能』ということになるのだろうな」

『……? 【一応は】ですか?』

何とも不思議な物言いに、私は首を傾げた。何故、『可能』と言い切れないのだろうか。

「魔法を駆使すれば、可能ではあるだろう。この場合、対象者の認識を歪める……と言うか、精神に干渉する魔法を使えば可能だと思う」

『では、何故【一応】などと言ったのですか?』

「一言で言えば、難易度が高い。もっと言うなら、そこまでする必要があるのか?」

『あ……!』

そう。そうだ、これは『田舎での出来事』だと言っていたじゃないか。

これが王都や、王城といった場所ならば、その価値はあるだろう。警備の騎士達を翻弄したかった愉快犯という可能性だってあるかもしれない。

だが、それをわざわざ田舎……それも子供達相手に行なう必要があるのかと聞かれれば、誰だって首を傾げてしまうだろう。

だって、全く意味のないことじゃないか。

アベル殿は貴族だが、話を聞く限り、それは身分を問わず警戒すべき存在なのだ。

「それにな、わざわざ『扉を内側から開けさせる』という条件付けをする意味が判らん。室内に人が居るなら、問答無用に誘い出せばいい。何故、回避する手段が確立されているんだ? それを伝えたのは一体、『誰』なんだ?」

『……!?』

クラウス殿の声に恐怖は感じられず、ただ疑問に思ったことを口にしているだけだろう。

だが、聞かされる方はたまったものではない。

アベル殿が遭遇した当時、彼は子供だったという。だが、あれほどしっかりと覚えているのだ、それほど幼くはなかっただろう。

そうなると、クラウス殿の疑問はもっともなことだった。特に『回避方法を教えたのは誰だ?』というものに対しては!

「あのさぁ、ちょっといい?」

そんな雰囲気を壊すように、魔導師殿が軽く片手を上げた。

「どうしたの、ミヅキ」

「私の世界のオカルトにもあるんですよね、今みたいな話。その解釈の一つに『扉はこちらとあちらを隔てる境界線』みたいなものがあるんですよ」

「へぇ……」

「で、ですね。呼び掛けられたら、絶対に応えちゃいけないんです。勿論、扉を開けるなんて論外。だって、それは『存在を受け入れた』ってことや、『招き入れた』ということになっちゃうから」

エルシュオン殿下と魔導師殿の会話を、皆は興味深そうに聞いている。

いや、この場合は『異世界にも似たようなものが存在することに興味がある』と言うべきか。

「扉を開けることは判るけど、答えることも駄目なのかい?」

「ええ。判りやすく言うなら、会話に喩えればいいんですよ。問い掛けて、答えが返る。少なくとも、『相手を認めている』っていうことになりますよね? 会話が成り立ってしまった以上、二人以上がそこに居るんですから」

「ああ、そういうこと」

「だから、扉を開けていなくとも、呼びかけに応えてしまった場合、『縁』……所謂、繋がりができてしまう。そうなると、どこまでも追って来るんじゃないですかね? それこそ、扉のある場所ならどこにでも現れるようになりそう」

それはとてつもなく嫌な展開だ。呼びかけに応えなければそこで終わるが、応えてしまったら、場所を問わずに現れる可能性があるということじゃないか。

呪いにも等しいそれに、生涯、向き合わなければならない。

単純だが、常に気を張っていなければならないなんて、何という苦痛だろう!

「あのさ、次は俺の番なんだけど。アベルの話に補足する形っていうのでいいか?」

嫌な気分になりかけた時、双子の片割れ……カイン殿の声が響いた。当然、皆の視線も彼に集中する。

そうか、彼もある意味、遭遇した一人。決して、他人事ではないのだろう。

「じゃあ、次はカインに頼むよ」

「判りました。と言っても、アベルの話の補足程度なんで短いですけどね」

さあ、どのような話が聞けるのだろうか。

……いや、こういう言い方は正しくないのかもしれないな。

カイン殿は一体、どのようなことを知っているのだろうか――