軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

騎士様の素朴な疑問

「君はゼブレスト王陛下と仲が良いんだよね?」

「はい」

事実なので頷いておく。今更、聞かれるとは思っていなかったので、少し意外だ。

……が。

今回の一件――ハーヴィス関連のこと――において、ルドルフ……と言うか、ゼブレストが見せた全面協力の姿勢を思えば、ある意味では当然なのだろう。

元々、イルフェナとゼブレストは友好国である。だが、いくら友好国であろうとも、ルドルフが個人的に魔王様と友人であろうとも、『訪れた国で襲撃された』ということは、見過ごせるものではない。

騎士様達の疑問はそこに付随するものだろう。いくら何でも、対応が優し過ぎる、と。

「魔王様もルドルフと仲が良いですが、どちらかと言えば、兄的存在ですからね」

「ああ……何となく判るよ」

想像したのか、騎士様は苦笑した。

イルフェナにおける魔王様は第二王子であり、彼らの主である王太子殿下から見て『弟』だ。

家族仲は悪くないみたいだし、王太子殿下が魔王様に劣っているという悪評も聞いたことがない。

ただ、あくまでも『私が聞いたことがない』というだけ――魔王様は私にそういった類のことを聞かせたがらない――なので、陰で囁かれている可能性もある。

だが、魔王様には『魔力が高過ぎるゆえの威圧』という難点があって。

兄弟で優劣をつけるというより、魔王様単独での悪評じみたものが多かった……らしい。

なお、これらの情報源は騎士寮面子。

『気が向いたら、報復してこい』と言わんばかりの、暴露です。

……で。

そんな魔王様ですが、ゼブレスト、特にルドルフの味方である人々からは、『ルドルフにとって、兄のような友人』という認識をされていたりする。

ルドルフの状況を見かねて、幾度となく口を挟んだ結果、そうなったとか。

私の派遣も『エルシュオン殿下が送り込んできたのだから』で済まされてしまったあたり、信頼されている様が窺える。

ただし、来たのは魔王様ですら性格を掴みかねていた黒猫一匹。

真っ当な性格の魔王様が頭を抱えるほど、超絶フリーダムに祟りまくった。

その結果がルドルフ陣営の勝利だったので、ゼブレストの皆様は何も言えなかったわけですね!

当時、『さすが、エルシュオン殿下が選んだ逸材』としか言われなかったのも、それしか誉め言葉が出て来なかったのだろう。

……。

今更だが、すまんかった。その、マジでごめん。

報告書などの制作担当者の苦労を思うと、さすがにちょっとは反省する。

「ところでね……これは我々が非常に疑問に思っていたことなんだけど」

「……ん?」

当時を思い出して『味方サイドで大変な思いをした人、マジでごめん!』と思っていると、騎士様が話しかけてきた。

「ゼブレストの宰相殿は、その、君のような態度を許さない方のような気がしてね。いくらルドルフ様と仲が良いと言っても、ある程度の礼儀は弁えろと言われるような気がするんだ」

「ああ……何となく想像つきますね」

宰相様は確かに、そういったことには煩そう。お馬鹿な頃のフェリクスの態度にもブチ切れていたし、基本的には『親しき仲にも礼儀あり』という方向なのだろう。

それなのに、私のルドルフに対する態度は『親友』と互いに公言している通り、全く遠慮のないものである。

それは今回も発揮された。

一国の王であるルドルフを、魔王様へのメッセンジャーに使い。

一緒に食事をしようと、アルと共に、手料理を持って部屋に押し掛け。

成人男性のルドルフ君に、『寂しそうだから』とぬいぐるみを貸し出し。

……。

ろ く な こ と し て ね ぇ な 。

騎士様としては、そんな態度を取っているにもかかわらず、ゼブレストの宰相様が抗議の一つもして来ないことが不思議で仕方ないのだろう。

と言うか、私も今、気が付いた。

私とルドルフは普段からこういった態度が平常運転のため、騎士様に言われて、初めて、『そういや、抗議されても仕方ない態度だわな』と思い至る。

「ああ……魔王様や騎士寮面子は慣れている……と言うか、今更なので、そんな風に思わなかったんですね」

「うん。私達としては、殿下がゼブレストに詫び状でも送ると思っていたからね」

「なるほど。王子ではなく、保護者、もしくは私の飼い主として、お詫びが必要だと思ったと」

「普通はそう思うんじゃないのかなぁ……」

騎 士 様 、 遠 い 目 を し な い で く だ さ い ね … … ?

まあ、その気持ちも判るので、黙っておく。

世間的に……と言うか、常識的に考えた場合、いくらルドルフ本人が許していたとしても、他国の目がある。

一国の王として嘗められないためにも、許してはいけないことなのだろう。

……が。

それは『自国の王と他国の友人』の場合であって。

多分、宰相様の認識はそれと違っている。勿論、私限定で。

「……あのですね、私とルドルフが『双子のように仲が良い』と言われていることはご存じで?」

「え? あ、ああ、知っているよ」

良かった。ならば、話が早い。

「先ほど、『魔王様は兄のような友人』という言い方をしましたが、私も似たような認識なのですよ」

「まあ、それは判るけど……」

「ゼブレストの宰相様が『二人で大はしゃぎしながら遊ぶ私達』に向ける認識って、『仲良く遊び、目を離すととんでもないことを仕出かす幼児二人』ですよ?」

『は?』

意味が判らなかったのか、騎士様達の声が綺麗にハモる。

「幼児って、何を仕出かすか判りませんよね。しかも、動き回るから、目を離すと、とんでもない悪戯をしたりするじゃないですか。あれですよ、あれ!」

「……」

「もしくは、『キャッキャとはしゃぐ、子犬と子猫』」

意味が判らないのか、騎士様達は困惑したままだ。

ですよねー! うん、その気持ちも判る。

でもね、それが事実なんですよ。ついでに言うと、魔王様は『手のかかる双子の、しっかり者の兄』的な立ち位置です。

「最初にゼブレストに行った時、側室相手に遣りたい放題したんですよね。ルドルフも相当ストレスが溜まっていたらしく、『いいぞ、もっとやれ!』といった感じでして」

嘘ではない。絶えない嫌味と奴らに対する殺意で、ルドルフ君は本当にお疲れだったのだ。

頭のネジが数本抜けても、おかしくない状況だったのです。……そういうことにしておいてやってくれ。

「『俺も交ざりたい!』って言うから、『じゃあ、後宮内の私の部屋で酒盛りしようぜ! 本命扱いの側室と王が一緒に居るもの、絶対に、誰か釣れる!』とか提案したり、『次は誰で遊ぼうか?』って感じで過ごしまして」

「待って、側室達は玩具じゃないからね!?」

「当時の私達にとっては、玩具でした。だから余計に『仲良く遊ぶ幼児』という認識をされたんですよ」

――ほら、幼児ってよく判ってないから、虫を平気で殺したり、残酷なことをするじゃないですか。

そう言うと、騎士様は一瞬、納得しかけ。

「いやいやいや! 君達は大人! 幼児は無邪気の延長線上でやらかすけど、君達は悪意を持ってやっていたでしょ!」

「……チッ」

「舌打ちしない!」

やはり、騙されてはくれないようだ。ただ、それらの行動が元となり、宰相様に『悪戯好きの双子』扱いされているのは本当。

「でも、それが事実なんですよね。ルドルフとお昼寝していたりすると、宰相様が様子を見に来て、薄掛けをかけていくこともありますし」

「え゛」

「それを見た人達はこう思うそうです……『お母さんか、アンタ』と!」

「お……お母さん……」

「私はたまに『おかん』と呼んでいますけどね。宰相様って、人にも自分にも厳しいですが、基本的に面倒見がいいですし。対象が幼児モドキの私達だと、余計にその傾向が強まるらしく」

「……」

騎士様達にとっては予想外のことだったのか、呆気にとられた表情で私を見つめている。

ま、まあね、基本的に宰相様は厳しい表情を崩さないから、『冷徹』とか言われることもあったみたいだし、想像がつかない気持ちも判る。

でも、私とルドルフ+αにとっては面倒見の良い、過保護な保護者様。

頼れる、皆のお母さん。それがゼブレストの宰相様。

なお、宰相様にとってお子様認定されているのは、私、ルドルフ、セイル、エリザの四人。

『お前達は目を離すと、何を仕出かすか判らん!』って言われているし。

それでも『誰も』反省しないあたり、宰相様の苦労は続く。セイルのことは弟扱いしているけど、態度は完全に、私達『問題児』の側に組み込まれている。

「……。ゼブレストの宰相様って……そういう方だったのか……」

「魔王様と同じく、愛情深い方ですよー」

だから、その『お前達が問題児というだけだろう』的な目で見るのやめれ。

私は……私達はきちんとお仕事してますからね!?