軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

招待は突然に 其の六

さあさあ、続いていきましょう♪

……。

魔王様の許可なく拉致ったのは貴様らだ。どんな結果になろうと、私に責任はないからね?

「まあ、色々ありましたが、最終的にはコルベラに無事到着」

「待ちなさい。その『色々』が割ととんでもないことだった気がするんだけど」

「『追っ手を返り討ちにした』でいいじゃないですか。そいつらが偶然にも、キヴェラにとって要らない子達だっただけですよ」

「だが、アルベルダやカルロッサからの認識は……」

「似たようなものですって。要らない子なだけあって態度に問題ありですし、私が〆ることが一番、どちらにとっても波風立たなかったんですよ。だって、『魔導師は世界の災厄』でしょう? そんな生き物に喧嘩を売った以上、誰だって同情なんてしませんよ」

アルベルダはウィル様との交渉の結果だし、カルロッサでの出来事に至っては、向こうがろくでなしだっただけである。

私に非は全くない。かと言って、アルベルダやカルロッサがキヴェラに抗議することも難しいだろう。

所謂、大人の事情……『当時の力関係の差』があるのだから。絶対に、一定数は反対する者が出る。

そんな中、キヴェラの方が先に謝罪を申し出てくれた。二ヶ国的には、ありがたく乗ってしまった方が良い。

魔導師である私が、どのような方法を取ったかは問題じゃないのだ。

世間的に見た場合、『今回は魔導師の方が正義』なのだよ。

そもそも、それらの愚行が発覚したのは『他国』、それも『キヴェラに良い感情を持っていない国』!

……さっさと認めちゃった方が、絶対に傷が浅い。下手にごねれば、さらに該当者の悪事を盛られる可能性とてゼロではない。

だから、キヴェラもそこは突きようがなかったじゃないか。寧ろ、さくっと処罰して『キヴェラとしてもこいつらの所業は認めません!』と、世間的に示したもの。

つまり、キヴェラが私の行ないを支持したってこと。

まあ、これで抗議なんてしていたら、騎士の質が疑われるけど。

「その後、これまでの報復とばかりに、コルベラでルーカスを〆て。後は保護者付きで、キヴェラへと向かいました」

「いや、あの、さらっと流さないでくれ……」

「元から色々な人がルーカスに同情的でしたし、私も彼の置かれた状況に思うところがありますしね。今となっては友好的な関係を築けているので、特に問題ありません。寧ろ、無事でいろ」

言い切ると、彼らも当時のルーカスが置かれていた状況を知っているのだろう。顔を見合わせながらも、反対意見は出なかった。

ただ……。

「リーリエ嬢の騒動の時のことを報告書で読んだけど……君達にとって、あれが『友好的な態度』なのかい?」

そこだけは突っ込まれたが。

まあね、私もルーカスも言いたい放題してるし、端から見れば『こいつらの感覚って、どうなってるの?』と疑問に思う気持ちも判る。

しかし。

私からすれば、あの当時のルーカスの態度って、そこまで問題視されるものじゃないと思うんだ。いや、セシル達への冷遇は問題だけど!

「こう言っては何ですが、ルーカスの起こした問題って、『親の決めた結婚相手への冷遇』だけですよね。それを咎めたら、結構な数の王族や貴族も同じじゃないですか」

「まあ、それはね」

「あと、最も重要なことですが。ルーカス、お馬鹿じゃないですよ。やろうと思えば、自分の血を取引材料にして他国と手を組む……なんて真似もできたでしょ。でも、やってないんです。セレスティナ姫の問題は遅くきた反抗期って感じですよ」

「思いつかなかっただけでは?」

疑惑の視線を向ける騎士様に、私は首を横に振った。

「リーリエ嬢の時のルーカスの立ち回りや察しの良さを見ていたら、その可能性はないでしょう。事実、あの時、私の傍に居た人達はルーカスへの評価を良い方向に改めていました。馬鹿には無理です」

ルーカスの対抗馬が『狡賢い』評価のリーリエ嬢と言えば、理解してもらえるだろう。

彼女、自分の立場や言葉がどういった方向に作用するかは考えられても、状況を覆すような一手は打てなかったのだから。

「ちなみに、私は『お前の性格は最悪だが、能力だけは評価できる』と言われてます。親しさを演出することと揶揄うことが目的で『ルーちゃん』呼びをしていますが、今後のことを想定した結果、許されてますよ。自分よりも国優先、相手の能力も認めることができる子です」

「……。君は随分とルーカス様を認めているんだね」

「認めていると言うか、今までが不憫過ぎでしょう。そもそも、『あの』キヴェラ王を比較対象にされ、『出来が悪い』とか言われていたんですよ? グレるでしょ、そりゃ」

寧ろ、それを言われた日には、各国の王達だって困るだろう。父と比べるのは当然としても、『比較対象が悪過ぎる』。

普通じゃないのよ、あそこの父子! 『戦狂い』と呼ばれた先代をその勢力ごと倒し、国を立て直した天才が比較対象とか、嫌過ぎる……!

だいたい、『キヴェラ王より優秀』もしくは『同じくらい優秀』といった評価を貰える奴って、何人いるのさ?

それを聞かれたら、大抵の奴は困るぞ? 自国の王族・貴族を顧みても、楽観的なお返事はできまい。

だって……『戦狂い』の恐怖は、ある程度の年齢の者なら知っているのだから。

下手なことを言えば、当時を知る人達にボコられます。『貴様は軽く考え過ぎだ!』と。

なにせ、『戦狂い』を他国がどうにもできなかったからこそ、自国の恥を雪ぐ意味も兼ね、現キヴェラ王が動いたのだから。

ある意味、最悪な『人災』ですよ。そんなものを内部から仕留めたのだ……この件だけは、現キヴェラ王――当時は王太子――の英断に拍手喝采だったろうさ。

自分の命を守りつつ己が勢力を整え、『戦狂い』と『その配下達』を討ち取ったのだ。

すぐ傍に奴らが居ることもあり、それがどれほど難しいかは誰でも察せる。

「そこらへんのことをキヴェラ王や側近の皆様に伝えたところ、盛大に落ち込みました。まあ、当然ですよね! キヴェラ王に従っただけのくせに、自分の息子と同年代の子を『出来が悪い』なんて評価していたんですから」

「え゛」

「私からすれば、『お前らに文句を言う資格はない』ってだけなんですよねぇ……リーリエ嬢を断罪した夜会の時、何もしていなかったし。ああ、連中の御子息達は今後が大変でしょうね。絶対に、父親に付随する形で、ルーカスを悪く言っていたでしょうから」

ルーカスの評価って、あくまでも『キヴェラ王と比較した場合』なのよね。だけど、同年代の子達と比較した場合、同じ評価であるはずがない。

事実、リーリエ嬢の一件の時、彼女を庇うなり、ルーカスを宥めるなりしてくる奴はいなかった。

いくら事前に役割分担がされていようと、キヴェラ側では実質、ルーカス一人がキヴェラ王登場(=とどめ)まで持って行ったと言える。

「馬鹿が馬鹿なことをしても平常運転ですが、『無能な働き者』とか『自称・忠臣』、『方向性の間違った真面目』って、厄介ですよね。自分が正しいことをしていると思い込んでいるから主張を変えませんし、対処する側も躊躇する」

「馬鹿……平常運転……」

「誰も期待しないし、道化として見られるか、捨て駒扱い程度じゃないですか。本当に有能な人は情勢を読めるし、軽率な行動を取ったりもしませんよ。当事者でない限り、第三者的立場で冷静に状況を見極めようとすると思います」

……キヴェラ王やウィル様の凄いところって、これを当事者にも拘らずやってのけるところなのよね。カルロッサの宰相閣下も割とそんな感じ。

ティルシアを含めたその他の人々がここに含まれないのは、各自、地雷とも言える要素が存在するからであ~る。

ティルシア、リリアンが関わると一気に感情的になると言うか、凶暴性が増すんだもの。しかも、本人が全く恥じていない。

冷静さこそ失ってはいないけれど、『どうやったら効果的に苦しめられるか』という方向に発想が振り切れるため、大惨事になること請け合い。

「そんなわけで、今現在の姿を見る限り、ルーカスはお馬鹿じゃないですよ」

「な、なるほど。君なりに、これまでの経験が前提となった評価なのか」

……まあ、多少はエレーナのためでもあるんだけどさ。

この人達相手に、そこまで言う必要はないだろう。他には使い勝手の良い玩具……じゃなかった、サイラス君への見返りだ。

何だかんだ言いつつ、サイラス君はいつも非常に良い働きをしてくれる。『魔導師からの手紙を携え、キヴェラ王の下に全力疾走する騎士』なんて、奴くらいだろう。

……。

そろそろ名物になってそうだが、キヴェラ王のお役に立てるならば、今後も許してくれるに違いない。サイラス君はそういう子。

「そんな凄い人であるキヴェラ王を殴り、復讐者・ゼブレスト双方に謝罪させたので、あの一件は私の中で片が付いています」

「……」

私、頑張った! と清々しい笑顔で胸を張れば、騎士様達は複雑そうな表情で黙り込む。

まあ、そうですね。その気持ちも判ります。

だって、これまで彼らがキヴェラに対し、何もやらなかったとは思えない。それでも、キヴェラ王を謝罪させることは不可能だったのだから。

真面目にやった奴が失敗し、自分が楽しむ方向に振り切った奴が成功するとか、屈辱ですよね……?

なにせ、私は自称・最高のエンターテイナーとして、皆様に胸の空く話題を提供しただけである。別に、キヴェラ滅亡なんて願ってないやい。

はっきり言って、レックバリ侯爵からの依頼に『大国に謝罪させたい』&『大国をコケにしたい(重要)』という、自身の望みをプラスした結果、ああなっただけ。

真面目にキヴェラを警戒し、いつか報復をと願っていた人々からすれば、予想外を通り越して喜劇である。

それまでのキヴェラの所業を聞く限り、喜ぶ以前に虚しさのあまり、泣いた人とかが居ても不思議じゃない。

元気出せよ、人生なんてそんなものだ。世の中は理不尽で一杯さ。

元の世界でも、大真面目に恐怖を追求したものより、コメディ方向に振り切ったホラーの方がウケるとかあるんだし!

「ええと……じゃあ、最後に聞かせてくれるかな。君、キヴェラ王城を崩そうとしただろう? 崩壊のさせ方は聞いたけれど、どうして怪しまれなかったんだい?」

疲れたような騎士様はそれでもお仕事に忠実らしく、私にそれだけを聞いてきた。

それに対し、私の答えは――

「え、真面目にお仕事していたからじゃないですかね?」

だった。

「は……?」

「後宮からのお手伝い、という名目だったので、元から顔が知られていなくてもある程度は大丈夫だったんですよ。そこに加えて、後宮に居た侍女って、エレーナの機嫌を取ったり、ルーカスに媚びたりする奴らばっかり。おそらくですが、似たような状況で派遣されてきても『使えない奴』認定されてでもいたかと」

「ええと……?」

「あの当時って、ルーカスの行動が問題視されていたじゃないですか。だから、本当に有能な人は監視とかを担っていて、最終的には行動されても抑え込める奴しか居なかったと思うんですよ」

当時のルーカス君は問題児である。その問題児が警戒すらしない奴ばかりだったからこそ、エレーナもセシルも無事だったんじゃないのかね?

だって、『できる侍女』ことエリザやエマって侍女の仕事だけじゃなく、護衛は勿論のこと、指示を出されれば単独で動くことも可能じゃないか。

そんな侍女がキヴェラ王から派遣されていたら、ルーカスはもっと警戒していたはずだ。エレーナの身が危ういし、セレスティナ姫に対する扱いだってバレる。

……なお、そんな状況だからこそ、私が付け入る隙があったのは言うまでもない。

「使えない奴より、真面目に仕事をする子が好印象を持たれるのって、よくあることですよね」

「それを利用しなければ……いや、裏がなければ、微笑ましい場面かもしれないね」

「働くのは嫌いじゃないですし、割と楽しかったですよ? ……『若くて小柄なのに、よく働く』って褒められましたし」

「それ、子供が頑張っているように見えただけじゃ……?」

「平均身長の差と童顔の勝利と言ってください。私は成人しています!」

「うん、そうだろうね。子供は人からの好意を逆手に取って悪事を働かないと思うよ」

「何という邪悪な子猫だ……」

騎士様達は口々に『それってどうよ?』と言わんばかりの視線を向けてくる。

「悪事じゃありません! 勝利への布石です!」

文句は私に仕事を依頼した狸に言いたまえ! 権力皆無のお嬢さんに無茶苦茶な依頼したの、あの人ですからね!?