軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

招待は突然に 其の三

――王太子直属の騎士達の寮にて

招待という名の拉致を受けた私は、どこぞの騎士寮に住むお兄さん達に囲まれていた。

見た目の年齢的に、彼らはアル達と同じか少し上くらい。ってことは――

「私達はこの国の王太子殿下に仕えているんだよ」

で す よ ね ー !

「そんな気がしてました」

「おや、どうして?」

「つい先日、国王様にはお会いしたので。ついでに言うと、ハーヴィス関連の一件において、色々と好きに動きましたからね。そろそろ、警戒されても不思議はないかと」

何のことはない、『得体の知れない生き物だから、さすがに一度は接触しておきたい』という気持ちですよ。

いくら魔王様に従順と自称していたとしても、ハーヴィスの一件では色々と動き過ぎなのです、私。

結果として、『魔王殿下の指示がなくても、勝手に動く』と証明してしまったというわけ。

まあ、普通は警戒するわな。人脈だけでも馬鹿にできない面子が揃ってしまったんだから。

しかも、彼らの大半が『魔導師に会いに来た(意訳)』という理由でイルフェナを訪れたため、報告書だけを読むと、まるで私が呼んだように見えることだろう。

……。

私 は 無 実 で す よ ?

本 当 に 、 無 実 で す か ら ね ! ?

最も警戒心を抱かせただろうこの項目、私は本当に無関係なのであ~る!

いや、マジで。私は情報を流すと同時に、『忙しいから、お仕事の依頼しないでね。つーか、ハーヴィスと揉めます♡』と言いたかっただけ。

対して、お手紙を受け取った人達は『情報を得るため』という理由も嘘ではないが、私達を案じてくれたからこそ、個人的な理由をでっち上げてイルフェナに来てくれたのである。

……が、私や魔王様がそこまで彼らに心配される理由を知らない人が大半であって。

結果として、『魔導師に会いに来た』説が有力となり、私が警戒対象に昇格したのであろう。私、イルフェナではそこまでやらかしてないし。

「理解が早くて助かるよ」

「それくらいできなければ、騎士寮面子とお仕事はできませんって」

「あ~……まあ、一から十まで説明が必要な子なら、一緒に仕事をするなんて無理だろうね」

「そもそも、そこまで細かい指示が必要な駒なんて、単独で放り出せないでしょうしねぇ」

納得したような声を上げる騎士様に対し、私もうんうんと頷く。周囲の騎士様達とて、複雑そうにしながらも反論はない模様。

これ、『行動できるか、否か』というだけではない。『自分で考えられるか』というオプションも付く。

例を出すなら、ガニアでの滞在だろう。大まかな目的こそはっきりとしていたけれど、『どうやって最良の決着(=魔王様が望むであろう決着)に導くか』は、私に一任されていたじゃないか。

良く言えば『私を信頼しているから任せた』。

悪く言うなら『それが可能と思い込んでいる』。

アル達にとってはそれが普通であり、私も自然とそう動くようになっていたので、無条件に『あいつならできる』(好意的に解釈)と思い込んでいるのだ。

ただ、私にとっては『理解ある皆様だな』で済んでも、他者から見ると『なんでそんな真似ができるんだよ!?』となっても不思議はない。

いくらそれまでの実績があろうとも、普通は無理だと判断する人が大半だ。現に、私を見つめる騎士様達も複雑そう。

「君、どうしてあっさり受け入れられるのかな? 普通は文句や批難の一つも出ると思うけど」

訝しげ……というより、探るような目を向けてくる騎士様。そんな騎士様に対し、私は――

「こちらに来た初っ端から、単独で、絶賛大揉め中のゼブレストに放り込まれたからです」

馬鹿正直に暴露してみた。途端に、騎士様達が唖然となる。

「は……?」

「ルドルフも丁度味方が欲しかったらしく、魔王様から『お仕事しておいで』って言われまして。まあ、成功報酬が私の戸籍やら、味方やら、万が一の場合の逃げ場所確保だったので、ルドルフと私にとっては良い条件だったんですけど。あ、報酬については後から知りました」

あの件で、魔王様が得たものはほぼないだろう。と言うか、ルドルフが個人的に魔王様を頼ったらしいので、当初の私は魔王様の手駒扱いだったはず。

おそらくだけど……あれは魔王様の独断だったに違いない。イルフェナで暮らす前に、私に最低限の守りと味方を付けてやりたかったんだろうな。

イルフェナとしても、そこらへんは察しているはず。ただ、『事情がよく判っていない異世界人を、揉めている国に単独で派遣した』という事実に、驚いたと思われる。

「……。そこに不満はなかったのかい」

「楽しくお仕事していたので、別に」

「い、いや、一応は命の危機だと思うんだけど」

「嘘じゃありませんって! 後宮という隔離された場所で、『ドキドキ☆ドロドロ・女だらけのバトルロワイヤル』な日々を満喫してました」

「……えっと?」

意味が判らなかったらしく、困惑したまま首を傾げる騎士様。私も一緒に首を傾げて、お付き合い。

ただし、私は楽しき日々を思い出しているので、笑顔だが。

「いや、そこまで付き合わなくても」

「なんとなく」

「そ、そう」

突っ込みを入れる騎士様にも、そのまま素直にお答えです。

困惑している騎士様が大半なので、もう少し説明が必要なのかもしれないと思い、傾げた首を元に戻して追加説明を。

「知力・体力・時の運を駆使して、殺るか・殺られるかの、楽しい日々でした。女同士の蹴落とし合いって男以上に容赦がないので、私もすぐに馴染めましたよ」

普通、お貴族様達は『裏工作上等・表と裏を使い分けろ!』な状態が大半なのだ。どちらかと言えば、陰湿と言ってしまえる。

対して、後宮騒動の側室達は『負ければ、(物理的に)脱落』と考える人達が多かったので、私も心置きなく実力行使が行なえた。

プライド激高のお嬢様達は存外、凶暴なのですよ。

そんな一面なんて、素敵な男性(笑)には絶対に見せないだろうけどな!

「味方こそ少なかったですが、逆に言えば、周囲は全部敵ってことでしょう? あと、最初にルドルフから紹介された味方は『それなりに』信頼できるということです。敵が混ざっているなら、そこから叩き出すのもお仕事ですしね」

エリザ……と言うか、アデライドの叩き出しもお仕事の一環だったろう。事実、エリザ(本物)は今でも私の味方だし。

と言うか、エリザ(偽)が味方ではないと判断することこそ、私の能力を見極める踏み絵になっていた可能性がある。

一言で言えば『馬鹿は要らない』ってことですね!

まあ、アデライドもか~な~りアレな人だったので、あの程度のお馬鹿に騙されるような奴なら、評価もそれなりだろう。

多分、発案は宰相様あたりだな。セイルだったら事故を装ってサクッと殺ってしまうだろうし、私の判断に持ち込んだのは、ルドルフの温情か。

「君さぁ……自分の置かれた状況に、疑問を持たなかったの?」

「当時はそこまでの余裕がなかったんですよ。あ、イルフェナに戻ってきてからは、魔王様に生意気な口をきいたことを謝りましたよ? 『私のことを考えてくれたのに、ごめんなさい』って」

ルドルフから報酬のことを聞くまで、そこに思い至りませんでしたもの。

気付いたからには、きちんと感謝と謝罪を言いますよ。私はできる子なので!

そう言ったら、騎士様達は何故か、深々と溜息を吐いた。

ええ~……私はお礼をきちんと言える子ですってば!