軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 お茶会、その後

小話其の一『【秘密のお茶会】その後』

シャル姉様発案の『秘密のお茶会』は参加者のお姉様方も大満足だったらしく、その場で定期開催が決定された。

……。

ええ、『決定された』のですよ。魔王様の許可前に。

確かに、危ないことではないし、私個人の調理で賄える人数なので、特にお仕事がなければ可能だと思う。

それに加え、私に女性貴族の味方ができるのはありがたいことなので、こういった場で繋がりを作っておくのも悪くはない。

……が。

あの、私の飼い主は魔王様なんですが。

と言うか、私は異世界人凶暴種とか呼ばれちゃってる魔導師なんですが!?

え、そんなにあっさり決めちゃってもいいの? お姉様方、この国において高位貴族にあたる人達じゃなかったっけ?

いくらコレットさんが居ると言っても、私はぶっちぎりで危険人物扱いされている異世界人。

ブロンデル公爵家やバシュレ公爵家はともかく、シャル姉様のお友達のお家の人達には警戒されていると思うんだけど。

そんなことを告げると、お姉様方は顔を見合わせた後、にっこり笑ってこう告げた……『何の問題もない』と!

「いやいや、煩い人には『魔導師と付き合いのある家』って解釈されちゃいますよ。いくら個人的な交流と言っても、信じてくれないでしょうし」

なまじ私が実績持ちだからこそ、裏を疑う人は一定数居るのだ。こればかりはどうしようもない。

コレットさんはクラウスのお母さんだし、シャル姉様はアルの姉であることに加え、一緒にお仕事をする可能性もゼロではないので、それなりに説得力はあるだろう。

だが、他のお姉様方が相手では少々、無理がある説明なのだ。私は必要に迫られない限り、社交をやらないもの。

だが、そこは社交界を微笑みと話術で乗り切ってきたお姉様方。

ころころと楽しげに笑うと、「その程度の嫌味しか言えない方なんて、私達とは元から付き合いがないわよ」と言い切ったのだ……!

なお、これは『関わらなくてもいい相手だから問題なし』という意味ではない。

『返り討ちにする自信があるし、家単位で必要のない人だから問題ない』という意味である。

「ミヅキ様、私達もこの国の女性貴族でしてよ。降りかかる火の粉があるならば、火元から消して差し上げますわ」

「お、おう……何という頼もしいお言葉……!」

「うふふ。互いに探り合うのは貴族としての嗜みですもの。そこを楽しみ、時には必要な情報を得、誘導する……。事態の収拾にあたるのは殿方が多くとも、その切っ掛けを作り上げ、舞台を整えることは私達の方が適任だったりするのよ」

「ああ、女性の方が警戒はされにくいでしょうからね」

シャル姉様の言葉に、思わず納得する。……そういえば、公爵夫人のコレットさんも戦場に居たことがある云々と言っていたっけ。

それが事実ならば、女性貴族が戦場に出ることこそ稀であっても、それ以外の案件には女性貴族達が暗躍していてもおかしくはない。

彼女達は社交界の華であると同時に、イルフェナの戦力としての顔も持っているのか。それならば、私に対して過剰な警戒心を抱かないのも納得だ。

ここはイルフェナ、『実力者の国』という通称を持つ実力至上主義国家。

身分に伴った実力を持つことを期待されるという、非常に恐ろしい『お国柄』なので、にこやかに微笑んでいる美女が大人しいとは限らない……ということなのだろう。

うっかり見惚れてお話ししようものなら、情報収集されたり、言質を取られたりすること請け合いだ。

ただでさえ女性貴族は情報収集がお仕事なのに、この国の女性貴族は潰すことまでやってのけると言うのだから、本当に恐ろしい。綺麗な花には棘一杯、ということですね……!

アルが『彼女達のことが苦手』という言葉を否定しなかったのは、それなりに痛い目に遭ったことがあるか、そういった場面を目撃したことがあるせいだと推測。

「だから、殿下は判ってくださるわ。……今後、ミヅキ様と一緒にお仕事をすることがあるかもしれないもの。双方にとって良いことだから、何の問題もないわ」

「なるほど」

「ふふ……今後も『色々と』仲良くしましょうね」

――その後。

「君、何でそんなに素直だったんだい」

「いや、何て言うか、逆らっちゃいけないような、妙な迫力があったんですよ」

「ああ……何となく察した」

魔王様への報告の際、このような会話が交わされたのだった。

って言うか、魔王様……貴方もそれで納得しちゃうんですね。

※※※※※※※※

小話其の二『姉は弟に自慢する』(アルジェント視点)

「それでね、とっても楽しかったの!」

上機嫌で本日の集い――『秘密のお茶会』と呼ばれる、男子禁制の集まり――について語る姉に、ついつい苦笑してしまいます。

親しい者達とのお茶会でさえ、情報収集の場となるのが貴族の常。このように楽しむだけのものなど、滅多にありません。

今回は『異世界料理をあちらの食べ方で食す』という目的もあり、裏が一切ないものでした。

そういったこともあり、姉達は心行くまで楽しめたのかもしれませんね。ミヅキが居ることもあり、真面目な食事会とは程遠いものだったでしょうから。

「随分と楽しんだようですね」

「ええ!」

「私はミヅキの送迎だけだというのに、嫉妬してしまいそうです」

……いえ、この集まりの原因が私ということは判っているのですが。

それでも、こうも楽しそうにされると……ついつい、このように思ってしまうのです。『ミヅキの居場所は我々の傍ですよ』と。

姉上を筆頭に、女性貴族達と友好を深めることは、ミヅキにとっても良いことでしょう。

彼女達は独自の情報網を持っていますし、家の力もある程度は行使できますから。

――ですが、それはあくまでも『友好的な人々との繋がり』程度のもの。

ミヅキの飼い主はエルですし、彼女の居場所は騎士寮……エル直属の騎士と同様。ある意味、エルの魔導師と言ってしまっても過言ではありません。

「あら、たまにはいいじゃない」

クスリと笑う姉はどこか、意地の悪い表情で笑みを深めました。

「いつもは貴方達と一緒に居るのだもの。たまには女同士、友好を深めたいわ」

「……。友好を深めるだけで済むのですか?」

「あらあら、今のところはそれだけよ」

ジトリとした目を向けるも、姉は楽しげに笑うばかり。そんな姿に溜息を吐いてしまうのも、仕方のないことでしょう。

姉上を筆頭に、今回の集まりに参加した方達は、異世界人の魔導師であるミヅキに好意的に接してくれています。

異端と恐れ、時には蔑む者もいる中、それ自体はありがたく、良いことだと思えるのです。

……が、しかし。

そこは『猛毒夫婦の片割れ』などと呼ばれる姉上である以上、それだけで済むはずはない。

おそらくですが、交わされる言葉の中に色々と仕掛けているはずなのです。

交わされる会話の中で、ミヅキへと知識を与え。

投げかける疑問によって、ミヅキ自身の考えを引き出し。

時には盛大にからかって、自分達が上位の者――所謂、『頼られる側』――であると示し。

そうやって姉達は、彼女達なりの遣り方でミヅキを守ってくれていた。

この世界に来て一年足らずのミヅキがあそこまで他者と渡り合えるのは、彼女の周囲に良き教育者が溢れていたからではないかと思っているのです。

勿論、その成長にはミヅキ自身の努力が欠かせません。

ですが、その成長を見守り、鍛えてきたのは間違いなく、エルを筆頭とする『保護者』達でしょう。

『実力者の国』と呼ばれるだけあって、イルフェナは実力至上主義。そして、努力する者を好む傾向にあります。

そんな国に生まれ、自身も努力してきた者達からすれば、親猫と慕うエルを必死に守っている黒い子猫はさぞ、可愛く映ったことでしょう。

ですから、周囲の者達はミヅキ自身に力を付けさせました。

何も持たぬならば、牙と爪を授けてやればいいのです。それをどう利用するかはミヅキ次第。

それがなければ、ミヅキは魔導師として恐れられる未来しかなかったやも知れません。

魔法は圧倒的な強さを他者に見せ付けると同時に、恐れを抱かせるものなのですから。

国への絶対的な忠誠を持つ、『翼の名を持つ騎士』を恐れる者達とて居るのです。魔導師への警戒心はそれ以上と見た方が良い。

今のミヅキが比較的警戒されずに済んでいるのは、姉上達のように警戒心なく接している者達のお陰でしょう。

そういった方達は誘導する術にも優れていらっしゃるので、探りを入れてきた者達から、ミヅキへの警戒心を薄れさせていたはずです。

まあ、最も貢献しているのはエルなのですが。

今現在、『仲良し猫親子』として癒し枠ですからね、あの二人。

「まあ、感謝はしておりますよ。エルもそういった思惑があって、許可したのでしょうし」

少々、拗ねながら肩を竦めれば。

「お姉様に任せておきなさいな」

自信に溢れた笑みで、そう返されました。

……ですが、彼女はさすが私の姉であり。

「『今後はお菓子もリクエストしていい』と、仰ってくださったのよ! 解毒魔法を担当する人がいるならば、お茶菓子やジャネット様達が時々届けてもらっているランチボックスでも構わないのですって」

「姉上、調子に乗り過ぎです」

「あら、私達はお友達ですもの。ついつい、会話が弾んでしまって、そういった流れになっただけよ?」

自慢されるのは、やはり面白くありません!