軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

思わぬ幸運、楽しき飲み会

ルーカスに偶然会い、『途中まで送ってあげるから、今日はここにお泊り』(意訳)という言葉をもらった後。

「……以上、今回の出来事です」

皆を呼びに行き、夜は本当に飲み会をした。気を遣ってくれたんだろうなぁ、宿とかさ。

この宿、多分だけど……ルーカス達の貸し切りに近いはず。いくらお忍びだろうとも、キヴェラの第一王子が騎士一人を連れての旅とか無理だろう。

ルーカスが自衛できるほどに強く、ヴァージル君がルーカスの腹心であったとしても、許されまい。常に傍に人がいる状況が『当然』……身分とはそういうものなのだから。

勿論、ただお世話になるだけで終わる気はない。イルフェナで何があったのかを、できるだけ詳しく話しておく。

ルーカスも狙われる色彩をしているので、自衛のためにもこれは必要だろう。イルフェナが駄目なら次……という感じに狙われる可能性もゼロではないし。

「予想以上に酷いというか、呆れてものが言えん」

「サイラスは的確な報告をしたと思っていましたが、その、当事者達の話は重みが違いますね」

私の話を聞くなり、ルーカス達は難しい顔をして無言になった。サイラス君からの手紙以上に詳しい私の話を聞き、イルフェナ側の対処の難しさが理解できたらしかった。

『遣られたら、遣り返す』で済まないものね、今回は。

これでキヴェラが最初に狙われでもしていたら、正直なところ詰みである。

キヴェラは漸く、周辺の国との関係修繕に乗り出したばかりなので、はっきり言ってしまうと『協力者になってくれそうな、他国の味方が居ない』。

ほぼ間違いなく、魔導師である私の呼び出しになること請け合い。それ以前に、ルーカスには自力で生き残ってもらわねばならんのだ……そこがまず、最初にして最大の難関だろう。

「改めて、理解した。お前達が怒るだけのことはあったのだな」

「そうですー! 冗談抜きに、魔王様はヤバかったんだって」

呟かれた言葉に、全力で頷いておく。マジだぞ、これ。私とゴードン先生のプライドをかけた魔道具がなければ、魔王様は落命の可能性もあった。

捕らえた襲撃者達には余裕を見せていたけれど、襲撃者達が『あの魔王、何で死なないの? おかしくね!?』とパニックになるのも当然の理由があったわけですよ。

寧ろ、この世界の常識を踏まえた場合、襲撃者達と同じ考えになる人の方が圧倒的に多かろう。

そうならなかったのは偏に、『異世界の知識とこの世界の治癒魔法の複合技』という、表に出せないものの存在があったから。

『奇跡』と言ってしまえる案件なのですよ。

ただ安堵するだけなんて、そんなはずないじゃん?

私一人が居ないだけで、立派に『イルフェナVSハーヴィスの開戦理由になること』ですぞ。ハーヴィス、貴様らは軽く考え過ぎだ。

そうならなかったのは、『魔王様とルドルフが無事だった』という事実のお陰。いくら魔王様が優しくとも、イルフェナは黙っていまい。

最悪の場合を想定した場合、決して笑って流せるものではないのだ。ルーカスは当然、これに気が付いた。だからこそ、判りやすく顔色を変えたのだろう。

「そこにハーヴィス王妃からの書……しかも、その内容か」

「あはは……大変なのは判るし、パニックを起こしていても仕方ないとは思うよ? だけどね、ちょっとばかり許せる範囲を超えているんだわ」

「……」

「まあ、こんな理由があって、私は『ご挨拶』に行こうと思ったの。一応、イルフェナの顔は立てたよ? でもね、これ以上は無理。まともに『ごめんなさい』すらできない国への優しさなんて、存在しないわ」

さすがにルーカスも宥める言葉が出ないらしい。寧ろ、ハーヴィス王妃からの書はとどめに等しい――悪意がなかったとしても、内容その他が色々とアレであるため――ので、言葉もないのだろう。

「これは……まあ、そうなっても仕方がないかな。俺から見ても、ハーヴィスはイルフェナにしでかしたことを軽く見ているようにしか思えないな」

「あ、ヴァージル君から見てもそう思う?」

「勿論。というか、君がいること前提で考えちゃ駄目だろうね。君は異世界人だし、『居ないことが当たり前』なんだ。そこに気付けば、事の重大さを理解できると思うよ? 魔導師殿」

で す よ ね 。

全力でヴァージル君に同意しますよ。結果云々ではなく、『他国の王族、それも優秀と言われている王子を、確実に死に至らしめようとした』んだからね!?

魔王様が軽傷で済んだだけでなく、私が明るく振る舞ったり、アル達が動いていなかったりしているからこそ、周囲の人々もそこまで危機感を覚えていないだけ。

事実だけを並べた場合――ヴァージル君のように、『異世界人は居ないのが当たり前』と想定した場合――、間違ってもイルフェナに何らかの要求ができる状態ではない。

イルフェナに送られる使者は、死ぬことを覚悟しなければならないだろう。殺されて帰って来ようとも、『そこまで怒っても仕方がない』と言われる案件です。

「私が未だ、魔王様に会えない理由も判るでしょ? いくら懐いていようとも、状況的にそれが許されないのよ。私もそれには納得してる。だから……必要なことは整えてきたし、今回の『ご挨拶』の決行です」

「そういえば、ミヅキはそういった要求を一切していないと聞きました。ルドルフ様に会えたのは……」

「私とルドルフの仲の良さを考慮した上で、ルドルフの精神状態を優先したからこそ、可能になっただけ」

「つまり……貴女ではなく、ルドルフ様の方を優先した結果ですか」

「そう。『食事量が落ちている』っていう事実があったから、心配されたんだろうね」

ルドルフは隣国の王であり、今回の襲撃の当事者でもある。いくら互いに親友と公言していたとしても、『会いたい』だけでは許可が出まい。

セイルとて、そんな状態のルドルフを案じていたからこそ、私との面会に同意したはず。

「お前の方が理解があると思える時点で、ハーヴィスに期待はできんな」

「ルーちゃん、酷い」

「黙れ、珍獣。今回ばかりはお前の方がまともに思えるんだ。それだけで十分、説得力がある」

本 当 に 失 礼 な 奴 だ な 。

……。

あの、ヴァージル君はともかくとして。

何故、君達まで深く頷いているのか聞いてもいい? そこの三人……いや、ジークは多分、判っていないだろうから、二人だな。理由を簡潔に述べよ、セイルとアベル。

ジトっとした目を向けると、セイルは楽しそうに微笑んだ。

「貴女の日頃の行いのせいですよ、ミヅキ」

「色々な人に貢献してるじゃん!」

「それは判っていますが、その行動が褒められたものではないことも事実でしょうに」

麗しの将軍様はどこか意地悪な顔で私を見返した。対して、アベルは深々と溜息を吐いた後、徐に私の肩を叩く。

「良い機会だ、いい加減に少しは落ち着け。いや、百歩譲って落ち着かなくてもいいから、殿下を労われ。お前、そのうち首輪を着けられるぞ」

「……」

「……」

「希望は魔王様カラーって言っておけばいいかな?」

「そうじゃないだろ! 着けなくてもいいようにしろってことだ!」

「無理。真っ当な方法を取っていたら、望まれた役割を果たせない」

「だからって……だからって、毎回、殿下を疲労させてるの、お前だろうが……!」

上手い反論を思いつかないのか、ずるずると崩れ落ちるアベル。どうやら、少し酔っていた模様。

そんな私達へと呆れた視線を向けつつ、ルーカスはヴァージル君へと話しかけていた。

「ヴァージル。王都に戻ったら、ガニアに向かってもらうが……ガニアへの転移法陣を出たら、近くにこいつらを捨てて来い」

「は……捨てて、ですか」

どうやら、『移動した後は知らねっ』とばかりに、ポイ捨てされる模様。

おいおい、ルーちゃん。心境的にも、行動的にも事実だろうけど、もう少し言い方ってものがあるだろう。見ろ、ヴァージル君が困っているじゃないか。

「子供じゃないんだ、後は自分で何とかするだろう」

「はぁ……宜しいので?」

「関係者と思われる方が厄介だ。半ば野良に近いんだ。勝手に動いて、獲物を狩るだろうさ」

「獲物を狩るのはいいのかい、ルーちゃん」

「猫としての本能なんだろう? 今更、人間ぶるな」

言い切って、にやりと笑うルーカス。その笑みに、彼は確かにキヴェラ王の息子であると思い出す。

……似てるのよ、物凄く。こういった言い方をする時のキヴェラ王にそっくり!

だけど、微妙にムカつくのも事実なので。

「その珍獣の方がエレーナに愛されていたという、『事実』について一言」

「喧しいわっ!」

思い出を振りかざしつつ、ちょっとばかり心に蹴りを入れておこうと思う。はっは、怒るなよ、ルーちゃん!

それはさておき、これで明日にはガニアに行けるみたい。一気に時間短縮が可能になったけれど、それでもイルフェナを出て数日は経っている。

ハーヴィスから使者は……来ていらっしゃいますかねぇ?