軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

私達に勝利を、貴方達には絶望を

会場に居る人々の視線はキヴェラ王に集中している。特に、キヴェラの貴族達はリーリエ嬢と公爵夫妻の処遇が気になるらしく、彼らに向けられる視線は容赦がない。

まあ、第二王子が王太子になるか、ならないかという時に、最大の後ろ盾が問題を起こしたわけだからね。

今後の展開によっては、大きく勢力図が変わる可能性が高いこともあり、決して他人事ではないのだろう。

そんな人々の姿に納得しながらも、私は内心大笑い。

だって、めっちゃ他人事じゃん。私がキヴェラ内部でできることはない。

ルーカスの将来にはちょこっと関与するかもしれないけど、それ以外は関与しない……というか、できない。内政干渉になりかねない上、キヴェラ王家に貴族を抑え込む力がないように思われてしまうからね。

というか、ルーカスの評価が上方修正されることが確実だし、弟王子達もその……大人しくはない(意訳)らしいので、全く心配はいらないと思うけど。

報復の機会を得た弟君達は嬉しそうだった。今回の一件のダメージ受けてねぇ!

ルーちゃん、『まだまだ無邪気な可愛い弟達』って、誰のこと?

なお、ヴァージル君とサイラス君に弟王子達の評価を聞いたところ、視線を泳がせた挙句、『兄上が大好きです』しか返って来なかった。

おそらく、それが世間一般の弟王子達の評価なのだろう。ルーカスの陰に隠れていただけなのか、表に出せない隠された本性があるのかは謎である。……真実は闇の中。私ハ何モ知ラナイ。

勿論、こういったことだけが『他人事だからお気楽・人の不幸は蜜の味♪』とばかりに、傍観している理由じゃない。リーリエ達の処遇が『絵本の広告塔となり、各国に営業に行け!』であることを知っているからだ。

つーか、今回のことはキヴェラにとってマイナスの決着にはなるまい。だから、キヴェラの貴族達が心配する必要ってないのよね。

なにせ、彼らが心配している事態――今回の一件が次代に響く――を最も避けたいのは、キヴェラ王その人なんだから。

そのための起爆剤……もとい魔導師の投下であり、守護役達一同を招いた理由なのですよ。いい加減な情報が出回ることを防ぎ、しっかり『(都合のいい)事実』を各国に持って帰ってもらおうという魂胆です。

私は対リーリエ嬢だけではなく、守護役達+αに対する餌なのさ。

協力者だろうとも徹底的に利用する。それがキヴェラ王。

まあ、キヴェラとの共同事業は商人さん達とイルフェナに利をもたらしてくれるので、特に文句はないけどさ。

いつもの商人の小父さんからも『兄貴が張り切り過ぎてて、心配になるんだけどよ……何をしやがった、お嬢ちゃん』と相談(?)されたので、絵本の出版に携わっている商人達は盛大に盛り上がっているのだろう。

楽しそうで、何よりです。その勢いのまま、絵本の普及に努めてください。

娯楽方面充実の切っ掛けになれば、更なる利益が見込めますからね!

そんなことを考えていたら、いつの間にか公爵夫妻が連れて来られていた。『リーリエ嬢だけの問題ではない』とキヴェラ王が暴露したので、元凶夫妻も同罪と知らしめるためだろう。

さりげなく公爵夫妻を窺えば、先ほどと違って、随分と大人しい。そう思ったのは私だけではなかったようで、こちらの面子は揃って意外そうな顔をしている。

……?

一体、何があったんだ? 退場している間に、キヴェラ王からお説教でもされました?

「どうした? 魔導師殿。何か気になることでも?」

「いえ、公爵夫妻が随分と大人しくなったなって」

私達の様子が気になったのか、キヴェラ王が声をかけてきた。馬鹿正直に答えれば、キヴェラ王はにやりと笑い――

「なに、少し現実を教えてやっただけだ。少なくとも、儂は無条件に身内に甘い性質ではない。そこを勘違いするな、とな」

トドメに等しいことを言った。公爵夫妻は益々、顔を蒼褪めさせている。

「それ、トドメっていうか、致命傷になってません? その言葉だけで、この一件が終わってしまうような気が」

「事実なのだから、仕方あるまい。そもそも、身内というならば、儂の性格くらい理解すべきだろう。他人、しかも一年程度の付き合いしかないそなたの方が理解があるなど、おかしいではないか」

「……」

「……」

「確かに、正論ですね」

「だろう?」

本 当 に な 。

成程、こういった言い方ができる意味でも、私の存在は有効なのか。

他国の人間相手にこんな言い方をすれば、癒着や必要以上の親しさを勘繰られる可能性があるかもしれない。だが、私にはそれがない……いや、キヴェラ王が賢王と言われているからこそ、無理なのだ。

だって、『異世界人は民間人扱い』だもの。いくら貴い身分の方と懇意になったところで、王自ら身分制度を崩すような真似はできない。他国の所属ということも大きいだろう。

しかも、キヴェラと敵対した前科もあるので、『その程度の付き合いしかない奴でさえ、知っている情報』という言い方もできるじゃないか。

今回、私はとても有効な駒のようです。大変、キヴェラ王に活用されております。労働報酬寄越せ。

「さて、皆も気になっているだろう。……この者達は罪人でこそないが、我が国にとって害悪であることは明白」

威厳のある声で紡がれた『害悪』という言葉に、該当者達は肩を震わせる。

「よって、魔導師殿曰くの『お仕置き』とやらを実行しようと思う」

『は?』

『お仕置き』という単語が予想外過ぎたのか、事前に知らされていなかった者達――キヴェラの人々の大半は聞かされていないはず――は間抜けな声を上げ。

一斉に私へと視線を向けた。おおぅ、皆の視線が突き刺さる……!

その状況に満足げに笑うと、キヴェラ王はリーリエ嬢達の処遇を言い渡した。

「先ほど聞いたように、イルフェナとキヴェラには共同事業を行う予定がある。これは他国にも関心を持たれていてな、その営業をしてもらおうではないか。キヴェラへの貢献をもって、此度のことを見逃すとしよう」

(意訳)

『元ネタ連中よ、各国の笑い者になって来い! でも、これまでのことまで許すとは言ってないからね☆』

誰が聞いても、そうとしか聞こえない『お仕置き』だ。思わずといった感じに、皆の表情が微妙なものになる。

そうですねー、確かに『処罰』じゃありませんねー、罪人にはしてませんし。ただ、ちょっとばかり今後が生き辛くなる(意訳)だけですね!

これを聞いた人達の大半はこう思うだろう……『嫌がらせ!? 嫌がらせだろ、これ!?』と!

ええ、全くその通り! キヴェラが誇る賢王様は意外とお茶目な性格をしておいでです。そして、激おこですぞ。

物凄く良い方向に捉えるならば、『他国との共同事業の広報を任された』。悪い意味……というか本音をぶっちゃけるなら『晒し者』。温度差、凄ぇな!?

「数量限定とはいえ、『薔薇』のいくつかは魔導師殿の手によって、二属性の魔道具となっていると聞いておる。妃達も薔薇姫に倣い、購入する予定だそうだ」

キヴェラ王のさり気ない暴露に、周囲がざわめいた。正式な告知前の情報に、貴族達の関心が一気に高まったようだ。

しかも、キヴェラ王はそれを『薔薇』と言った。絵本の内容との関連性も含め、手に入れようと動く者達はかなりの数になりそうだ。

キヴェラ王……貴方もしっかりしてますね? 処罰という意味でも、新たな事業という意味でも、利を得る気満々ですか。

OK! 私も便乗させてもらいます! 私だって、イルフェナには稼いでもらいたいですからね!

「魔道具仕様は高額になっていますけど、期待に添えると思いますよ。勿論、本だけの購入も可能です。……ああ、彼の処遇を決めるのはアルベルダ王ですが、きっと快く協力してくれますよ! 絵本の営業に協力させるだけの方が簡単ですもの」

……建前的にはね。

それを決めるのはウィル様だけど、今回ばかりはグレンが手ぐすね引いて待ち構えていることだろう。

そもそも、アルベルダ勢が不参加なのは、リーリエ嬢の処遇に口を挟めないからではない。彼らの担当が近衛騎士というだけなのだ。

というか、リーリエ嬢達には今後、『恐怖の営業ツアー』が待ち構えている。営業先で、彼らは目にするだろう……王族や高位貴族の女性達を飾る薔薇の装飾品の数々を。

お買い上げいただければ、デザインは応相談。共通点は薔薇を模した宝石と二属性の魔道具ということ。

わざわざ『私はローザさんの味方です』なんてことを言わずとも、心当たりのあるリーリエ嬢達が勝手に『薔薇の装飾持ち=自分達に批判的な意見を持つ人々』と認識するだけだ。さぞ、恐ろしい時間となるに違いない。

ただね、一つだけ言いたいことがあるんですよ。

「あの、どうして私が彼らの処遇を決めたみたいに扱われますかね……?」

「そなたが言い出したことだろうが」

「いや、確かにそうですけど! 提案! 私は提案しただけですからね!? キヴェラの決定に口出ししてないから! 採用したのは王である自分だって、ちゃんと言いましょうよ!?」

私一人が彼らを弄んだみたいじゃん! と抗議すれば、キヴェラ王は暫し考える素振りを見せ――ふいっと顔を逸らしやがった。

……。

お の れ 、 わ ざ と や り や が っ た な ?

「諦めてくださいよ。アンタの性格が悪いのなんて、今に始まったことじゃないでしょう?」

「サイラス君、煩い。ステイ!」

「あのような愚か者達に、父上が心を砕く必要はなかろう。お前の玩具で十分だろうが」

呆れを滲ませながら、『当然!』と言わんばかりの態度を取るルーカスよ、その『玩具』とやらはキヴェラ王の妹夫婦と第二王子の従姉妹だ。王家の濃い血を受け継ぐお貴族様だ。そして、私の身分は平民だ。

……。

私 に 怒 り の 矛 先 が 向 く よ う 仕 向 け や が っ た な … … ?

辛く苦しい営業生活(笑)に公爵夫人達がブチ切れたら、その怒りを私に向くようにしたいってことかい。父子揃って、いい性格してるじゃねーか。

父と子の連係プレーに、私はジトッとした目を向ける。対して、キヴェラ王は涼しい顔で無視を決め込み、ルーカスに至っては鼻で笑いやがった! わざとだ! これ、絶対にわざとだ!

「まあ、いいじゃないですか。キヴェラ王が相手では、彼女達は何もできないでしょうが……貴女相手ならば、手を出してきそうですし」

落ち着いてください、とアルが嗜める。他の守護役達は苦笑すれども、キヴェラ王達に抗議する気はなさそうだ。

「私はキヴェラを敗北させた魔導師だけど?」

「ですが、直接の暴力めいたものは、先ほどのワインをかけた一件のみでしょう? ……『この場では』これ以上のことはできませんが、今後、あちらから仕掛けてきた場合は別です。『楽しく』遊びましょう?」

「……」

アル、奴らにムカついてるなら、素直にそう言えよ。

まあ、今回はイルフェナの商人達……もっと言えば、魔王様がお怒りだしね。アル達にとって『何もできない・しちゃいけない』ってのは、ストレスだったのか。

でもね、その悪どい笑みは人に見せちゃいけないと思うの。お前、『素敵な騎士様』じゃん。

「提案、どうもありがと。だけど、その歪な笑みは止めた方がいいよ? 『素敵な騎士様』じゃなくて、『腹黒い騎士様』って一目で判るくらい、悪い顔してるから」

「おや、私としたことが」

クスクスと笑うアルは、全く悪いと思っていないに違いない。……私達の会話を聞いた人々が思案顔になったのは、きっと気のせい。

いや、セシル? 「そうか、自国ならば少しは嫌味を言えるな」って、どういうこと。いつの間に、そんなキャラになっちゃったの!?

保護者様からクレームが入りそうな事態に、ひっそり冷や汗をかいていると……不意にリーリエ嬢と視線が合った。

キヴェラ王が恐ろしくて逆らえない、けれど、私如きに屈するのは納得いかない……って感じかな。キヴェラ王の目論み通り、彼女の怒りは私へと向いたようだ。

「元気が良いですね。イルフェナではエルだけでなく、姉上達も待ち構えているのですが」

「シャル姉様とクラレンスさんかぁ……」

シャル姉様は公爵令嬢。そして、クラレンスさんの職業は近衛副騎士団長であり、その実家は伯爵位を戴く貴族。

リーリエ嬢達と被りまくりな設定なのよね。さぞかし、リーリエ嬢達の劣等感を煽ってくれるに違いない。

「血筋だけなら、姉上よりもリーリエ嬢の方が良いでしょうね。ですが、相手の男性の方は色々と『辛い現実』を突き付けられるかと」

「実力者の国で、近衛の副騎士団長にまで出世した人だもんね。あちらの婚約者様は反省しているみたいだけど、現実を突き付けられて凹むでしょうよ」

多分、あの近衛騎士にとってはクラレンスさんの存在が一番きつい。野心家で、自己評価がそこそこ高いからこそ、『本物』との差を痛感させられてしまう。

あの近衛騎士にとっての一番の罰はこれだったりする。ウィル様達も説教はするだろうけど、罪人扱いはしないそうだ。

……。

『その方が今後、色々と面白そうだからな』とは、グレン談。赤猫、彼を許してません。いびる気、満々です。

あ、そうだ。私も一つ言っておきたいことがあったんだった。

「リーリエ嬢、ちょっといい?」

いきなり問いかければ、皆の視線が一斉に集中した。視線でキヴェラ王に許しを請えば、片眉を上げながらも、快く頷いてくれる。

では、『私なりのトドメ』を。

「一つ聞きたいんだけどさ。貴女、子供産めるの?」

「え……?」

言われた意味を即座に理解できなかったのか、彼女は『何を言っているんだ』と言わんばかりの表情になる。

うーん、私としては当たり前の心配なんだけどな。

「貴女は散々、自分の血筋を自慢してきた。だけどね、それならば『囲い込まれなきゃおかしい』んじゃないの? 王族の数が少ない以上、適当な縁談を見繕って自国に確保し、外には出さないよ。……普通はね」

脅すわけではないけど、そうなるのは当然だと思う。現に、キヴェラ王は面白そうな顔をしながらも、私の言葉を否定しない。

「え……それは……」

「国の上層部の揉め事に関わってきたからこそ、濃い王家の血は特別だと、私は知っている。その前提を踏まえると、貴女が野放しになっていた理由に、『子供が産めない』ということが挙げられる」

「わ……私にはそのような事実などありません! 侮辱もいいところです! 王女が降嫁した家なのですから、たとえ病床に就こうとも、最高の治療が成されますわ! 民間人の貴女と一緒にしないで!」

顔を赤らめ、怒りを露にするリーリエ嬢。だが、私は怯まずに言葉を続けた。

「それだよ」

「え?」

「『王女が降嫁した』ってとこ。当然、付いてくるのは王女につき従う者と……『王の意向を受けた者』」

はっとして、リーリエ嬢は顔を蒼褪めさせた。そして、キヴェラ王をガン見する。

「だからね、リーリエ嬢。『公爵家には最初から、王の手の者が入り込んでいても不思議はない』の。貴女の兄弟達は、貴女の縁談について何も言わなかった? 貴女の言動を諫めようとしたのは、その可能性を危惧したからじゃないの?」

――王家に近い者ほど、思い至ることだからねぇ……?

哀れみを滲ませながら締め括ると、これまでのリーリエ嬢達の様子――兄弟達が王家寄りであること、そして家族を諫めていたこと――を知る人々は揃って思案顔になった。

否定の言葉は、誰の口からも紡がれない模様。正確には……『否定する要素がない』。

「へ……陛下? あの……私、は……そんなことありませんよ、ね……?」

顔面蒼白になりながらも、キヴェラ王に否定の言葉を求めようとするリーリエ嬢。

――だが。

「さあ、な」

口元を僅かに歪め、キヴェラ王はそう返すのみ。明確な否定の言葉を貰えず、リーリエ嬢は絶望した顔になってへたり込んだ。

そんな彼女と、公爵夫妻の蒼褪めた顔を見て、私は口元に笑みを浮かべる。その途端、周囲の貴族達はざわめきながらも顔を引き攣らせた……私が見せた『残酷さ』に気が付いて。

この場でその疑問を口にする必要はなかった。少なくとも、リーリエ嬢を少しでも哀れむ気持ちがあるならば。

だけど、私はわざわざ多くの人の前で口にした。そこに込められたものを単純に捉えるならば『悪意』、もっと深く考えるならば『キヴェラ王の意図を汲み取った共犯者』。

どちらに受け取ったとしても、私の評価に『残酷さ』が加わるだろう。私は『何の躊躇いもなく、その可能性を口にした』のだから。

大規模な破壊活動をしていないからといって、優しいとは限らない。

そんな言い分が通るならば、『恐れられる王』なんてものは存在しないじゃないか。

一国の頂点に立つ者と共闘できる以上、『彼らの立場を重視した選択』にだって理解があるのは当然のこと。……私はそれを選ぶどころか、そうなるよう仕向けることすらあった。

それを後悔したことは、一度もない。寧ろ、必要事項と割り切ってしまえるからこそ、アル達も私を仲間として見てくれる。

立場を言い訳にできない以上、私の方がよほど残酷だろう。貴族達が顔を引き攣らせたのは、そこに気付いたからだ。

へたり込んだリーリエ嬢に視線を向ける。彼女は涙を流しながらも、小さく「嘘……嘘でしょ……」と呟いていた。

やはり、かなりのショックを受けたのだろう。そんな姿は哀れみを誘うが、私が後悔することはない。口元に浮かぶのは笑み、だ。

――ごめんね? リーリエ嬢。だけど、『化け物』に喧嘩を売ったのは貴女の方。

怒っているのはキヴェラ王だけじゃなく、私も同じ。だからこの場で、最悪な形で、『疑惑』を植え付けさせてもらった。

私が口にしたことが『事実』かどうかは判らない。だが、この場に居るキヴェラの貴族達の胸には間違いなく、疑惑の芽が芽吹いたことだろう。キヴェラ王の態度もそれを後押しする。

その前提があれば、いくらリーリエ嬢が王家の濃い血を持っていようとも、家に迎え入れようとはしないだろう。『利用価値がない』と、知られてしまったから。

事実か、事実でないかは重要ではない。キヴェラ王がこの場で否定しなかった以上、『その可能性が十分ありえる』のだ。他国の目があることも含め、その気がないなら、きっぱりと否定するだろう。

キヴェラ王もそれを判っていたから、わざと否定の言葉を紡がなかったに違いない。『血縁』という繋がりに縋るリーリエ嬢達へと、言葉の刃を突き付けたのだ。

現時点での不安要素たる『リーリエ嬢が持つ王家の血』。リーリエ嬢の性格が最悪だろうと、彼女の持つ血に価値があることは、紛れもない事実である。

それを巡って、くだらないことを画策する輩が出ないとも限らない。そして……リーリエ嬢達がいらん知恵を付け、王家に牙を剥かないとも限らない。

だから……潰す。

「『戦狂い』とて、血縁者なんですけどねぇ……追い落としてまで国を、民を守った人が、甘いはずはないでしょうに」

「王ならばこそ、当然だ」

「ごもっとも!」

この場には過ぎるほどの毒を、疑惑という形でばら撒こう。だって、私は『世界の災厄』と呼ばれる魔導師。……異世界から来た『化け物』。

国としての処罰を免れていようと、個人的な報復を諦めることはない。そう認識していたのは、この世界の住人じゃないか。

旧知の友をわざわざ激怒させただけにとどまらず、飼い主に牙を剥いた存在を『嫌い』と、私は言い切ったでしょう? 中途半端な絶望で許すはずはないじゃない。

『キヴェラ王にさえ、魔導師と認められている』私だからこそ、それくらいの手腕は見せなきゃね?