軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

サロヴァーラ王の事情

――ある一室にて(アルジェント視点)

サロヴァーラ王に誘われて落ち着いた一室。そこは少々、奇妙な空気が漂っていました。

まあ、サロヴァーラの皆様が言葉に困る理由も判るのですけれど。

彼らはミヅキを『ただの異世界人』と思っていたわけですしね? それなのに、先ほどの彼女の対応。あれを見れば、嫌でも自分達の認識が間違っていたと気づくでしょう。

思わず、内心笑いが込み上げます。それはきっと同行しているイルフェナの者達も同じ。

何故、ミヅキが……『魔王殿下の黒猫』などという渾名を付けられる魔導師が無能だと思ったのでしょうか。

その理由も朧気ながら推測することができます。それは偏にエルの認識が関わっているのでしょう。

北に属する国と南に属する国の差、『異世界人』や『異端と呼ばれる者達』への認識。そもそも、そこからして違うのです。

南は多少の偏見があれど、それ以上に『実力者』という認識が強い。

対して北は『異端』という認識が根付いている。

エルの『魔王』という渾名も南では『実力者』という解釈――少々の遣り過ぎがあったとしても――ですが、北は様々な意味で『脅威』という解釈をする。

まず偏見ありきなのです、北は。だからこそ、ミヅキの対応も驚くべきことだったのでしょう。

南ならば『魔王殿下の保護下にあるならば、無能であるはずがない』という判断をされるでしょうから。

それはエルがこれまで築き上げてきたもの、そして在り方が前提になっているからです。でなければ、魔導師の保護者として納得されるはずはない。

エルに自覚はないでしょうが、端から見れば様々な意味でミヅキの『保護者』であり、『親猫』なのです。そう判断するほどに……皆は『エルシュオン殿下』を見守り、認めているのですから。

少なくとも二人に接したことがある者――ミヅキの本性を知っている者、という意味で――はその渾名に非常に納得しているのです。

『魔導師がいくら凶暴だろうとも、エルシュオン殿下の保護下にあるうちは心配ない』

そういった判断を多くの国が下しています。魔導師ながらミヅキがそこまで危険視されないのは本人の『敵認定しない限りは興味無し』という姿勢もあるでしょうが、保護者の人格が認められているのです。

ミヅキが名乗る『魔王殿下の配下』という言葉。あれこそ、『エルシュオン殿下の配下であるうちは世界の脅威となることはない』という証明のようなもの。

それを見せつけるかのように、この世界の者にとって利となる結果を出すのです。ミヅキの言動は時に我々すら慌てさせますが、それ以上に望んだ方向へと状況をもっていくことも事実。

ゆえにエルの忠実な配下であり、同時に友人である私達はミヅキを信じているのです。エルやイルフェナが責任を取らなければならない事態など、ミヅキが起こすはずはありませんので。

このような認識があるのが南に属する国。ですが、北はエルに対して単に『脅威』という認識しかしてきませんでした。それが先ほどの一件での『予想外』に繋がったのだと思います。

保護下に置くならば、最低限の教育しかしないでしょう。

異世界人はあらゆることに無知であり、ただ懐かせるだけの方が管理しやすい。

普通はこういう対応の方が多いのです。それを間違っているとは思いませんが、その対象は所謂『飼い殺し』という状態になります。

それは人として扱っているということにはなりません。機嫌をとればいい、というものでもない。

ですから、エルは……『魔王殿下』は。自分達の手を離れることも想定し、ミヅキ自身に強さを身に付けさせました。

全てはミヅキを『人として扱うため』。それが優しさでなくて何だと言うのか。

『ミヅキを通じて魔王殿下と接すると別人のようだ』と言われるのは、エルの優しさが誰から見ても明らかであるからなのです。誰もが驚愕するミヅキの言動に呆れながらも、決して見捨てない姿も含めて。

魔導師であるミヅキがあれほどエルに懐くのは当然だと、今では多くの人が思っています。そしてエルに恥をかかせないよう、己が言動に気を使うこともその一環。

ちらり、とサロヴァーラ王に視線を向けると……王は随分と疲れているように見えました。自分で望んだ我々の訪問とはいえ、やはり先ほどの第二王女とミヅキの差は思うことがあるのでしょう。

「……どうやら、私達は随分とイルフェナを甘く見ていたようだな」

そう言って深く溜息を吐くと、サロヴァーラ王は顔を上げました。それを見つめるレックバリ侯爵の表情はいつもと同じように穏やかなもの。

この程度のことで感情を揺らすなどありえません。不利な状況であろうとも余裕を無くさず、有利な状況になろうとも驕らず。それが基本です。

私は意見を求められぬ限り言葉を口にしない、と事前に決めてありました。勿論、王の相手をするのは『建前上は責任者』のレックバリ侯爵です。

これは私が当事者の一人であり、サロヴァーラ王の意向を見極める役を担っているからなのですが……個人的にも言葉を交わす必要はないと思います。先ほどの謁見の間での一件で、すでに私の意思は十分伝わったでしょうから。

「おやおや、それほどミヅキの言葉は意外でしたかな? それほど難しいことを言っていたとは思わんのですが」

「勿論だ。『我々にとっては』な」

そうレックバリ侯爵に返すと、サロヴァーラ王は探るような目を侯爵に向けました。

「だが、異世界人では事情が異なる。いくら周囲に貴族や後見たる王族がいようとも、理解し馴染むことなどあるまい。あの娘は……『当然のこと』として口にした。今回に限り対応を教えられているのではなく、それが『当然』とはな」

王の言い分にレックバリ侯爵は笑みを深めます。王はミヅキを正しく理解した、と解釈して。

「殿下は実に甲斐甲斐しくミヅキの面倒を見ておられますからなぁ……まあ、どうしてもご自分が基準となってしまうのでしょう。魔導師である以上はそういった躾も必要でしょうしな」

「手駒にする気はない、と?」

「我が国が他者に頼る必要があると仰られますかな? 部外者の手助けがなくては成り立たぬ国など、無能揃いもいいところでございましょう。我が国は『実力者の国』と呼ばれております……恥を晒す気はございませんぞ」

「……っ……すまない、そういうつもりではなかった」

「いえいえ、儂こそ失礼致しました。ついつい熱くなってしまったようで」

穏やかながらも、レックバリ侯爵の言葉は刺に満ちていました。

『部外者の手助けがなくては成り立たぬ国』。それこそ、今回のサロヴァーラでしたから。

そして悪意がないとはいえ、今の王の言葉は『実力者の国』と称されるイルフェナからすれば屈辱です。ミヅキは未だ『保護されているだけ』であり、国に取り込まれているわけではありません。

ミヅキの行動は彼女自身が勝手に動いているだけであり、教育のためとされるもの以外はエルに命じられたわけではない。手駒ではないのです。

レックバリ侯爵は内心、王の言い方にカチンときたのでしょう。間違いを正すという意味もあるでしょうが、少々言葉がきつく熱が籠もっていました。

それを感じ取ったからこそ、サロヴァーラ王は即座に謝罪を口にした。そんな意図はない、と示すために。

エルに対する認識が間違っているからとはいえ、少々迂闊な方なようです。まあ、だからこそ……こんな事態を招いているのでしょうね。

「そろそろ本題に移りませんかな? 此度の訪問は貴方様が仕組まれたのではありませんか?」

「うむ。リリアンにアルジェント殿を諦めさせるために……」

そう言いかけたサロヴァーラ王の言葉が止まります。それはレックバリ侯爵の視線を感じてのものでしょう。

「王よ。儂らはな、茶番をこれ以上続ける気はございませんぞ? 『諦めさせるだけならばミヅキは必要ない』。貴方は……リリアン様を『出来の悪い第二王女』として認識させる為に、ミヅキを利用しようとなさったのではありませんかな?」

「何故、そう思われるか聞いても?」

そう聞き返す王の視線は随分と鋭くなっています。けれど、レックバリ侯爵は相変わらず感情の読めぬ表情を浮かべていました。

レックバリ侯爵の言葉だけを拾えば王の態度も当然かもしれませんが、侯爵の言葉はただの侮辱ではない。どちらかと言えば、隠していたものを見破られたからこその態度に見えます。

「リリアン様は資質という点では間違いなく姉君に劣るじゃろう。ですが、それだけではなく教育に差があるように見えてならないのですよ。先ほどの一件からも、随分と素直な方の様に見受けられましてな」

「……何故、そんな真似をしたと?」

厳しい表情のまま問い返す王に臆することなく、レックバリ侯爵は言葉を続けます。

「この国の跡取りとなるのは二人の王女。じゃが、その伴侶となる者やその一族の者達の影響力は馬鹿にできん。何より……二人の王女の『どちらが王位に就こうとも問題がない』ならば、権力争いが起こるのではありませんかな?」

「……」

「どこの国にもある問題でしょうなぁ、これは。一人が王子であればまだ納得できるじゃろうが、二人とも王女ではより優秀な方をと望むのが当然。一人を切り捨てることをせず、かといって王位を狙えるままにもせず。誰から見ても『第一王女が王位に就くことが最善』と今では思われていることでしょう」

――親としての情ではありませんか?

そう告げるレックバリ侯爵の口調は穏やかなのに、内容はとても重いものです。そして、どこの国にも起こりうる問題でもあります。

確かに継承順位は定められています。ですが、そのとおりにならない事態が起こるのも事実。

どうしても男児優先となりますが、王女二人であれば……彼女達を先頭に据えて貴族達の権力争いが始まる可能性もあるのです。

権力争いに負けた場合、当然責任を取るのはその筆頭に『された』王女。本人達が争うことを望んでいなかったとしても、己が配下を諌められなかった責任から逃れられることはありません。

――国を騒がせた罪、そして今後の憂いを断つ意味でも生涯幽閉、最悪は自害です。

そういった可能性を排除する策として『次の王に相応しいのは第一王女のみ』という認識を植え付けたと、レックバリ侯爵は言いたいのでしょう。

サロヴァーラ王は暫し睨むようにレックバリ侯爵に視線を向けていましたが、やがて溜息を吐くと肩を落としました。

「……そのとおりだ。私には子が王女二人しかおらん。だが、姉妹で争わせるようなことをさせたくはなかった」

「……王妃様と側室様のことが原因、ですかな?」

「あ、ああ。二人は仲が良かったにも関わらず、互いの一族のことで苦労した。二人とも娘を産んだ数年後に亡くなってしまったが、最後まで娘のことを案じていたよ」

レックバリ侯爵の言葉に王は一瞬反応し。我が国が『実力者の国』と呼ばれる事を思い出したのか、肩の力を抜きました。

そして一つ頷きます。レックバリ侯爵の推測は正しいと、自ら認められたのです。

これは当時から色々と噂されていたことでもあります。王妃様に続いて側室が亡くなられても、サロヴァーラ王は新たにお妃を迎えようとはなさいませんでしたから。

「二人亡き後、私に新たな妻を得よという声は大きかった。だが、そうなった場合に娘達はどんな扱いをされるのか。権力争いに巻き込まれた挙句に良くて政略結婚の駒、最悪の場合は殺される可能性とてあるだろう。新たに産まれる子のため、その血縁どもが権力を揺るぎないものにするために」

次に王の妃――望まれたのが王妃なのか側室か不明なので妃とします――となられる方は当然、お亡くなりになった二人の一族以外から選ばれます。

一つの家に権力を集中させないという意味でもそれは重要なのですが、そうなった場合は先の王妃や側室の一族に加え、新たな妃の一族も彼らと争う可能性が高い。

側室であっても妻という解釈をしますので、全く影響がないわけではないのです。王に新たな妃を、と望む者達に野心がなかったとは思えません。

そんな事態になれば、二人の王女の立場は非常に微妙なものとなるでしょう。新たな妃が確実に男児を産むとは限らないのですから。

今現在は第一王女が王位に就くという認識が揺るぎないものになっているからこそ、王位をめぐっての争いがないとも言えます。

それがサロヴァーラ王なりの守り方だった。そういう方法しか取れなかった。

……サロヴァーラ王の告白は『権力争いを抑える自信がなかった』という意味でもあります。それを聞かせる以上はイルフェナの理解を得たいと、そう望んでのことだと思われました。

拳を固く握るサロヴァーラ王の表情には苦いものが浮かんでいて……当時のことを思い出しているようでした。

今は成長された王女達とて、当時は幼かったのです。子供達だけではなく、国さえ守らねばならない立場である王には妻の死を悲しむ暇もなかったのでしょう。

そして……王は一つの方法を取りました。

王妃の娘であり、元から優秀であった第一王女はより優秀になるように。

側室の娘である第二王女は姉姫と明らかな差がつくように育て。

王女達の在り方は王によって意図的に作られたものでしょう。ですが、そこには間違いなく我が子を案じる父親の情がありました。

犠牲になったともいえる第二王女とて最低限のことは教育されているのですから、信頼の置ける者に降嫁させれば安泰です。性格的にも素直な方のようなので、教育次第でどうとでもなるでしょう。

勿論、貴族達に余計な争いをさせないという狙いもあります。権力争いに熱を上げるあまり政が疎かになり、その果てに滅んだ国など過去にいくらでもありますから。

「アルジェント殿にも随分迷惑をかけた。意図してそう育てた私が言うのもなんだが、謝罪させて欲しい。申し訳なかった」

私に向き直り、頭を下げて謝罪するサロヴァーラ王。そんな彼に対して私がとる行動は一つです。

「お気になさらず」

慣れておりますので、とは口にしません。この顔と家柄に寄って来る令嬢はそれなりにおりますし、何より私はそういった者達を利用しているのです。

……ああ、裏事情を知っているレックバリ侯爵が生温かい目を向けてきますね。この場で口にすることはお止めください、侯爵。

「魔導師殿にも謝罪せねばな。さすがに全ての事情を話すわけにはいかんが」

私達の態度に気づかないサロヴァーラ王は思案顔で呟きます。ミヅキに対しても謝罪する、という王の姿勢は非常に誠実だと思います……思うのです、が。

「……ミヅキはすでにある程度は察していると思いますぞ?」

「ええ、そうでしょうね。リリアン様の素直さはミヅキも感じていたでしょうし」

遠い目をして思わずという風にレックバリ侯爵が口にすると、私もつい同意してしまいます。

サロヴァーラ王は怪訝そうな表情で私達を見ておりますが、これには確信がありました。

「そうか? ふむ、エルシュオン殿下の教育の成果だろうか……」

独り言のように呟く王には申し訳ないのですが、これはエルの教育だけが原因ではないのです。ですが、それを話せないことも事実ですので、あえて否定せず曖昧に微笑んでおきました。

ミヅキはこれまでエルの教育、そして個人的な事情から多くの貴族や王族とぶつかっているのです。そして、その大半は貴族令嬢でありました。

はっきり申しまして。

ミヅキの『敵』となった女性達は自ら行動(意訳)するような性格であり、リリアン様のように正論をぶつけられた程度で怯む素直さはありません。

大変己の感情に素直というだけではなく、本能……いえ、目的のままに行動なさる方が殆どでした。

ミヅキの身分や立場というものも関係しているのでしょうが、基本的にミヅキを見下す方向です。私達、守護役も原因の一つとなっているでしょう。

そんな方達とミヅキの一戦。それはもう、言葉の応酬などという生温いもので済んだ試しなどあるはずがありません。

怒鳴り合い、腹の探りあいは基本。

言葉どころか、互いに手が出ること多数。

しかも平手程度ではなく、明らかに犯罪の域になっているものもあり。

ミヅキ曰く『肉食系』のお嬢様方が多数なのです。しかも女性どころか、それなりに権力のある男性が相手だろうとも、ミヅキは絶対に退きません。

何よりミヅキ本人が『十倍返しは基本』という考えをしているのですから、遣り過ぎを叱ろうとも改善などされるはずもなく。

まあ、そういった者達を足蹴にして完膚なきまでに叩きのめしてきたのがミヅキなのです。ゆえに『異世界人凶暴種』とも呼ばれております。

そんな状況に慣れたミヅキが『王位に絡んだ権力争い』という事情に思い至らないものでしょうか? どうも、私達はミヅキが気づいていて口にしないだけに思えてならないのです。

余談ですが、ミヅキの凶暴さは私にとって大変好ましいものですので、全く問題ありません。寧ろ理想的です。

エルが時々頭を抱えているのは些細なことと、皆と共に微笑ましく見守っております。

「ミヅキは継承問題にも少々関わったことがございますからなぁ……バラクシンにキヴェラ、そしてアルベルダ。内部で揉めた国は意外と多く、ミヅキはそういった事情にも理解がありましょう」

「ああ、バラクシンは教会派出身の王弟殿のことか。キヴェラは先の一件、アルベルダは内乱だな」

「ええ。これだけ周囲で起こっているのです、勝手に考察して真実に辿り着くでしょう」

レックバリ侯爵の言葉に、サロヴァーラ王は納得した表情で頷きました。頷き返すレックバリ侯爵の言葉に『それも嘘ではない』と続いた気がしますが、そのまま済ませた方が平和でしょう。

「さて、時間を取らせてしまった。魔導師殿への謝罪は別にするとして、彼女も一人で退屈していることだろう」

そう言って私達を促すサロヴァーラ王の表情に憂いは感じられません。全くないというわけではないのですが、私達に話したこと、そして私達が理解を示したことで安堵したように思います。

その言葉に従い、私達は部屋を後にしました。今回の訪問に関する事情に納得する気持ちと、ほんの少しの落胆を胸に。

――個人的な感想ですが。

サロヴァーラ王は今回の『黒幕』ではないように思えます。彼が『黒幕』ならば、もっと冷酷に国の統治者としての姿を見せると思うのです。

この場限りそういう風に見せている、というわけではないこともあるかもしれません。王女達の教育は今に始まったものではないのですから。

それを今更崩すような、愚かな行動を取るでしょうか? 娘達を守るための教育であったというのに?

不自然に思って当然です。今回の誘拐事件は一歩間違えばイルフェナどころか、被害国が一気に敵に回ります。

ご自分の代だけで終わらぬ苦難を国が背負うことになる、という可能性も十分あるのです。それが判らぬ方ではない。

そこまでして守りたかった娘達に苦労を背負わせるような真似をするのか、と。そう思うのです。

「やれやれ、ミヅキと話し合って今後を決めんとな」

レックバリ侯爵も同じ意見らしく、その言葉には少々残念そうな響きがありました。

……『黒幕』へ辿り着くのは、どうやらまだ先のようです。

※※※※※※※※※

――一方その頃、異世界人凶暴種こと魔導師ミヅキは。

「だ・か・ら・ね? じっくり、詳しく、説明して欲しいなぁ?」

「申し訳……っ……申し訳ございませんっ!」

「うふふ! 困ったさんねっ♪ ……反省は誰でもできる。謝罪だけで済むなら刑罰なんて要らねーよなぁ?」

「どうか! どうか、釈明の機会を!」

「よし、洗い浚い吐け。隠さずに話せば、犯罪者相手だろうと多少の恩情はあるかもしれん」

「いえ、その、悪事の暴露を期待されても困るのですが……」

先に部屋に向かったはずの魔導師は何故か――何故か『とある場所』で、自分の護衛に付けられた騎士に謝罪させていた。

しかも騎士はきっちり正座し土下座している。『異世界の正しい謝罪方法』としてミヅキが教えたらしかった。

それを実行するなど、どう考えても普通ではない。相手に非がある、もしくは『そうしなければならなかった事情』があるのだろう。

どうやら、予想外の方向に事態が進展したようであった。