軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

予期せぬ訪問

カルロッサから無事に帰国し、セシル達への説明も終わり。

漸く元の生活に戻った今日この頃。再びお勉強の日々だったり。

いや、旅の間に試した魔法のあれこれをちゃんと習得したいと思うのですよ。どうも元の世界の娯楽という創造物をイメージしているせいか、この世界の魔法とは認識に差があるのだ。

推測だが、この世界の魔法はアンシェスとか古代に実在した種族が生まれ持った能力を能力の劣る別種族にも使えるよう作り出したものじゃないかと思う。

努力せずとも使えてしまう能力だから他種族に説明しようがなかったんじゃないかと。天才に凡人の苦労が判らないようなものというか。

勿論、理解できるものは術式として組み上げられ改良可能だったろう。教える側と教えられる側、双方の苦労と努力があって今がある。

これはこの世界の魔術師達や学者達も唱えている有力な説らしい。そんな凄い先人達がいたなら、居るか居ないか不明の神なんて霞むわなー……。

どうりで政治的利用という目的がない限り、信仰が薄いわけですよ。バラクシンで『神の奇跡』なんてものが有効だったのは、意図的に民の拠り所として仕向けた存在が居たからだったしね。

ただ、術式として受け継がれる過程で弱体化したり失われた魔法も結構あるとか。問題のあるものも多く、特に禁呪指定になっているものは『使えても使っちゃいけない』という扱いなので、普通は学べない。

これはクラウスに教えられたことだ。『お前なら話を聞いただけで可能にしかねん』と。

要は興味本位で試すなってこと。私の魔法ではそれで出来てしまう可能性があるから、最初に釘を刺されたのだ。

……まあ、残っている話からその魔法をイメージできちゃう可能性があるものね。ゲーム内にあったかもしれないし。

そんなわけで、私の魔法は『使う魔力量を見誤らない限り万能』というものにも拘わらず、大変偏っている。ならば今できるものだけでも極めたいと思うのですよ。

とりあえず転移魔法! これ、今のままだと不安定過ぎて使用状況が物凄く限られる。

グレンにも『使えないなんて意外』とか言われたしね、ここはきちっと習得しておくべきだろう。

ただし、『顔』を目印にするのは相変らずなので協力者必須。

重要なのはその目印との距離である。

下手すると上に出て落下するんだぜー……何この残念さ。

普通の人は咄嗟に抱きとめるとか避けるなんてできないので、私にとっても相手にとっても出現場所は重要です。

今のところ目印も問題もなく可能なのは自室への転移だけ。馴染んだ場所であり、視界も見慣れた高さだから、ここだけは安全に転移可能。

騎士sには『緊急時専用か』とまで言われた使い道のなさである。……普段はここに居るものね、ここに居なくても騎士寮には居るものね。

先生が逃亡旅行でそれほど心配していなかったのは、これを知っていたからだ。『命大事、何かあったら逃げて来る』という最終手段、ただし確実ではない――私が使わない可能性があるという意味で――ので気休め程度だったらしいけど。

まあ、過ぎたことは気にしないで前を向こう。

とりあえず、目印を見立てて早速練習しますかー!

※※※※※※※※※

――そして実行した結果。

「……お前は何をやってるんだ」

「えーと……その、ごめん」

現在の私の状況は。

長椅子に寝ていたクラウスの上に跨る形で乗っていたり。

唐突に腹に乗られた割に、クラウスは平然としている。さすが騎士、鍛えているだけあってこれくらいは平気らしい。ジークも剣を取り上げる時に腹踏んだもんな、そういえば。

呆れているのと眠いのが混ざっているのか、少々ぼんやりとした印象のクラウスは大変珍しい。……が、それでも無罪放免とはいかないらしく、しっかり腕を掴まれた。逃げられません!

「実家に戻ってたんだね、クラウス。っていうか、何故昼間から寝てるのさ」

「昨夜、気になる書物を読み耽っていてな。今はやることもないから仮眠を取っていた」

集中し過ぎて気づいたら朝ってことかい。実に研究熱心な職人らしいお答えだ。

あ〜……『顔』を目印にするから『少し距離置けばいいや』って思ったけど、対象が寝てるとこんなことになる可能性もあるのか。

距離的には間違ってないけど、一歩間違えば大変危険だ。今後は気をつけよう。

「それで、これは一体どういうことだ?」

寝起きのせいか色気駄々漏れな状態でも、クラウスはやっぱりクラウスで。

「唐突な出現……転移魔法、だな?」

「う……うん」

「ほお……?」

きらりと目を光らせると、あっさり魔術大好きな職人の顔になった。

正直に言え、さっさと吐け、気になるじゃないか、さあ俺に言え――そんな無言の圧力がビシバシと……!

腹の上に乗ってるのはどうでもいいんかい! と突っ込む間もなく、そのまま魔法談議に雪崩れ込みそうな勢いだ。

と、その時――

「失礼致します。クラウス様、お客様でもいらっしゃって……!?」

ノックと共に執事らしい小父さんが扉を開け……そして固まった。

ああ、そういえばまだ私はクラウスに跨っていましたね。でも、本人が離してくれないだけなので不可抗力です。

そのことを説明すべく口を開きかけたが、それより先に執事さんの声が響き渡った。

「な……何をなさっているのです! クラウス様は魔導師様の婚約者! 捨てられたら後がないのですぞ!?」

……。

不審者というよりも、そちらの方が重要らしいです。っていうか『捨てられたら』って何だ、『捨てられたら』って!

対してクラウスは動じることなく、私を指差した。

「こいつがその魔導師だが?」

「なんと!? すでにそのような仲に……これは失礼致しました! どうぞご存分にイチャついてくださいませ! 煩いことなど申しませんぞ、既成事実の一つや二つあった方が我らも安心できますゆえ!」

「はい!?」

一方的に盛り上がり、即座に去ろうとする執事さん。

おいおい、人の話聞こうぜ!? しかも明らかに『襲った責任取って婿に貰ってください』な発言しなかったか、今。

「落ち着け! 話を聞け! いや、聞いてください?」

「私の事などお気になさらずに! 皆にも邪魔をしないようきつく言っておきますので! ああ、旦那様方にも御報告せねば……希望は捨てずにおくものですな……!」

「いやいや、その必要ない! っていうか、出て行くな! 鍵かけるなってば!」

満面の笑みで扉を閉め鍵さえかけようとする執事さん、誤解を解くべく声を上げる私。

そして肝心のクラウスは――

「さて、これで邪魔はされないな。話を聞こうか」

私達の騒動を綺麗にスルーして魔法談議する気満々だった。話を聞いていないというより、内容的にどうでもいいらしい。

確かにクラウス的には『これで魔導師所有確定? やりぃ!』くらいな心境でしょうとも。

そもそも彼が魔王様の配下である以上は、婚約者だろうと守護役だろうと私の扱いは今と変わらないものね。

だけどさ?

「これ以上、私に守護役達を弄ぶ悪女なイメージつけることないじゃん!?」

「諦めろ。周囲にどう思われようと現状は変わらん。寧ろ好都合じゃないか」

さらりと言い切り、にやりと笑うクラウス。

おのれ、やっぱり執事さんに対する対応はわざとか。

その後もくだらない言い合いが繰り返され、騒ぎに気づいたコレットさんが部屋に来るまで私はクラウスの腹の上だった。

「あらあら、ミヅキ様ってば大胆ね〜」

「コレットさん、ふざけてないで貴女の息子に放すよう言ってください」

「うふふ、希望を捨てないで良かったわ。クラウスのこんな姿を見る日が来るなんて……!」

そのお母様も微妙にぶっ飛んだ妄言を吐いていたが。

あの、クラウス? 君はブロンデル家の人達にどれほど心配させていたのかなー?

※※※※※※※※※

……で。

「大変申し訳ありませんでした。嬉しさのあまり、つい……」

「いえ、突然来た私も悪いので」

頭を下げる執事さんに対して、私も謝罪する。

普通に考えれば私が一方的に悪いのだが、先ほどの騒ぎの手前どちらも謝罪するのが正しいような気がするから不思議。

現在は落ち着いてソファに座っていますとも……クラウスが。私はその膝の上に座って拘束されとります。無言で去ることは許されない模様。

テーブルを挟んだ正面にはブロンデル公爵とコレットさん。どうやら偶然屋敷に戻っていたらしく、二人とも私がここに来た方法――転移に興味があるようだ。

うん、魔術特化の家って聞いてたけど納得です。クラウスが傾倒し過ぎるだけで、基本的に皆同類ってことらしい。要は使用人含めて魔術大好きな人達なんですね、ブロンデル家の皆さんって。

一応『息子の部屋に不法侵入したことは重要じゃないのかよ』などと思ったのだが、御両親は全く気にしていないらしい。それどころか喜んでいる。

どうも私が顔見知りということに加えて『放っておけば恋人同士的な展開は絶対起こらないから、保険の意味でもこの事実は歓迎』と考えている模様。

まあ、さっきの執事さんの態度を見てもこれまでの深刻さが窺えるのだが。

魔道具の嫁が現実になるかもしれなかったのだ。理解できない人は家族が等身大フィギュアを連れてきて「嫁(婿)だ」とほざく姿を想像してもらいたい。修羅場は確実だ。

「それでね、ミヅキ様。どうやって屋敷の探知に引っ掛からずにクラウスの所へ転移したのか聞かせて欲しいわ」

にこにこと期待一杯にコレットさんが聞いて来る。

……うん? 『屋敷の探知に引っ掛からずに』ってどういうこった?

「あの〜……転移魔法って結界とかに引っ掛かるんですか?」

「そうよ? だから突如侵入されても判るのよ」

「通過することになるからね。内部に対応する転移法陣を置かれているから転移自体は可能だけど、侵入した時点で魔力同士の軽い衝突が起こるんだよ」

ほう。一時的に魔力が跳ね上がるとか、結界に触れた不審な魔力を察知するとかそんな感じだろうか。

だが、どうもブロンデル公爵の説明は私の考えている転移と差があるような。

内心首を傾げる私、そしてそれに気づいたのは日頃から私に慣れたクラウスだった。

「母上、一度この世界の転移について解説した方がいい。ミヅキの認識と違う可能性がある」

「あら……そうなの?」

「ぶっちゃけますとクラウスの言うとおりなので、解説お願いします」

片手を口元に当てて驚いたように聞いて来るコレットさんに対し、素直にお願いする。ブロンデル公爵もまさかそう来るとは思わなかったらしく、やはり驚愕を滲ませていた。

これが普通の反応なのだろう。平然と理解に努めるクラウス達黒騎士の方がおかしいのだ。

だって、これまでの常識が覆るかもしれないんだよ?

平然と受け入れ、理解しようとする超前向き姿勢になんて普通はなるまい。

更に言うなら、それを自分達なりに理解して形にする彼らは間違いなく天才と呼べる集団なのだろう。

私は元の世界にある知識を形にしているに過ぎないからね、ゼロから作り出す彼らは純粋に凄いと思う。

「そうねぇ……絵にするとこんな感じね」

そう言ってコレットさんは紙に簡単な図を描く。

「印をつけたこの二箇所を繋ぐ、ということが転移だと言えばいいかしら。対応する転移法陣への確実な道を魔力で作り上げる術式だから、送る時は攻撃魔法のように一瞬魔力が高まるの」

「転移法陣同士を魔力で繋いで道を作るってことですか?」

「完全に正しいともいえないけれど、そんな感じね」

あれか、SFとかにあるような『対応する装置へ物を粒子化して送り再構築』みたいなものなのか。もしくは一瞬で送る、とか。

どちらにせよ、『魔力で繋いだ道』ってのが存在し、使用すると魔力が高まって『結界などに引っ掛かる』ってことになるのかな。普段も『道』は存在するけど魔力が感じ取れない程度、ということか。

ああ、確かにこれなら安全・確実に送れるだろう。元々始点と終点が決まっているんだし。

この世界の魔法は詠唱といい安全面に重きを置いている節があるから、この認識の仕方にも納得だ。というか、転移という現象を一番理解しやすいのが『離れている場所を繋いで一瞬で移動』だったんじゃないか?

これなら大抵の人は理解できるだろう。ただし、術の使用者は魔力を結構使いそうだが。

「ミヅキ、お前は転移法陣無しで跳ぶから違うだろう? そもそも転移法陣組めるのか?」

「ううん、無理。っていうか、結果は同じだけど別物だね」

クラウスの指摘にこっくりと頷くと、コレットさん達は驚愕を露にした。

……違うんですよ、コレットさん。私の世界は娯楽が多いから様々な解釈で映像化されてて、それを知ってるだけなんですって。

そもそも転移法陣を組めない時点で、魔術師としてのこの世界でのレベルなどたかが知れている。単に参考にしているものが別物なだけだ。

「どういうことかな? 転移はこれ以外にも方法があるのかい?」

代表するように聞いて来るブロンデル公爵に一つ頷いて、先ほどコレットさんが図を描いた紙を手に取る。

「結果は同じでも、起こす現象は別物なんです。私の場合はこう……点と点を繋ぐ、つまり空間を繋ぐことで転移を行なっているんですよ」

紙を折って二箇所を合わせる。これも結果としては『転移』だろう。

「この世界の転移魔法は『対象の場所へ送る』。私の行なっている転移は『空間を直接繋げる』ってことですね。だから私の方は殆ど自分が動きませんし、使う魔力も少なくて済みます」

「……なるほど、これが『認識の違い』ということか」

「ええ。ただし、この方法だと繋げる場所も術者が明確にイメージしなければならないので……」

「先ほどのようにクラウスの上に出ることもある、と」

「はい」

決まった終点がないようなものだと言えば判りやすいだろう。だから距離が掴めなくて出現場所が安定しない。

「誰にでも使えるように、確実で安全に。そういった前提で作られたのがこの世界の転移法陣じゃないですかね?」

そう締め括ると「確かに」と呟いてブロンデル公爵は難しい顔で黙り込んだ。

私のやり方だとあくまでも個人仕様。人に教えたり伝えるにはいい加減過ぎ、不安定過ぎという欠点満載なので間違いなく廃れる。っていうか、体で覚えろとしか言えない。

「これが世界の差というものなのね。娯楽の溢れた世界ってやっぱり凄いわ」

「実際に可能かはともかく、アイデアを映像化する技術がありますからね。思いつく人の想像力が凄い上に、そういった意味でもどういった現象か理解し易いんですよ」

アイデアとか想像力はこの世界の比ではないと思う。まあ、この世界は常に『現実に可能か』という前提で術式を開発するので、その差も大きいのだが。

「お前、俺が騎士寮に居ると思ったな?」

「アルは魔王様についてるし、特に何も聞いてなかったからね」

基本的に守護役って監視じゃない――そう言うと、クラウスは気まずげに視線を逸らした。

私がクラウスなら大丈夫だと思った理由がこれ。アルが不在な以上、クラウスが私の監視担当なはず。だから騎士寮内に居ると思っていたのだから。ま、異端に対する扱いとしては当然だ。

だが、離れていたところを見ると騎士寮内ならば大丈夫と最近は思ってくれているらしい。これはクラウス個人の見解ではなく、魔王様達も了承済みなのだろう。

それを知らぬアホ猫、もとい私が勝手な思い込みで当初のままだと思っていただけで。

説教は確定なのだろうか、今回。

「……。すまん、今回は俺にも非があるな。言っておくべきだった」

「じゃあ、離せ」

「断る」

「……」

不毛な会話だ。何故そこで『断る』と言うんだ、クラウスよ。

一つ溜息を吐くと、私はぺしぺしと拘束している腕を軽く叩く。

「帰るから離せ。っていうか、さすがに無断外出は拙いでしょ」

「……。着替えてくるから少し待て。俺も一緒に戻る」

さすがにクラウスも拙いと判ったのか、今度は大人しく離してくれた。クラウスはそのまま隣の部屋へと向かう。さっさと戻る意見に賛成らしい。

その姿を見送って、正面を向くと……ブロンデル夫妻が微笑ましげに私を見ていた。

「クラウスはミヅキ様のことを信頼しているのねぇ」

「……そう、でしょうか?」

「ええ、あの子は態度にすぐ出るから」

そう言って苦笑するコレットさんの意見には同意だ。クラウスはとっても自分に正直だもの。

とはいえ、私はほぼ騎士寮面子に接するクラウスしか知らないので、私に関しては差が判らない。

そんな感情が表情に出たのだろう。ブロンデル公爵も苦笑しつつ話を続けた。

「クラウスは自分が認めるか否か、という基準があるからね。無関心な相手には本当に冷めた態度なんだよ」

「ああ……それなら何となく判ります」

「さっき君も言っただろう? 限られた場所とはいえ、監視をしなくてもいいと判断したということはそういうことだよ」

なるほど、そういった解釈もあるのか。確かに皆とは仲良くなったと思う。

「それにミヅキ様は自分が監視されていることも当然と捉えているでしょう? そういった面も受け入れられる要素なのね」

「まあ、彼らは国第一でなければならないですからね。その在り方にも納得してますし」

「だから私達はミヅキ様のことを良いことだと思っているのよ。そう割り切ってくれる人って中々いないから」

そう言うコレットさんが何だか寂しげなのは、これまでの経験からだろう。何を言われても優先順位が変わることはないが、傷付かないわけではないのだと。

「ありのままのクラウスを受け入れてくれる子なんて無理だと諦めていたのよ。だから、あの子をお願いね」

それは守護役として、友人としてという意味か。

それとも時には魔導師としてクラウスを諌めろという願いか。

どちらなのかは判らないけど、親として我が子を案じているのだということは伝わった。

そんな話をしているとクラウスが戻って来る。その姿は見慣れた騎士服……どうやらそのまま帰っていたらしい。

「さて、帰るぞ」

「へ!?」

そう言うなり、私をひょいっと抱き上げる。そして一言。

「さあ、跳べ。空間を繋ぐ転移を体験させろ」

……職人は本日も絶好調。早速興味を持った模様。

いや、大鎌持って転移とかしても平気だったから一人くらいなら大丈夫そうだけどさ。少しくらいは危険性について考えるとかしようよ、クラウス。

と思っても目の前のクラウスを見る限りは諦めさせるなど不可能だろう。術者の私をよそにやる気満々なのだから。

「判ったから、下に降ろして。この姿勢だとちょっと怖い」

そう言うとクラウスは素直に降ろしてくれた。一つ溜息を吐いて気を落ち着けてから、呆気に取られているブロンデル夫妻に向き直って別れの挨拶を。

「それでは、お邪魔しました」

ぺこり、と頭を下げ。

即座にクラウスの片腕に抱きつくようにして部屋への転移を行なう。

……クラウスだけじゃなく、この人達も興味を示したら大変だ。今回はさっさと帰るに限る!

「あ、ああ、いつでもおいで」

唐突過ぎる退場に面食らったか、僅かに上ずったブロンデル公爵の声を聞きながら私達の姿は消えた。

その後、私達が無事に部屋に戻ったことは言うまでもない。言うまでもないのだが……

「君、勝手に出歩いたね?」

親猫様にしっかりバレ――短い時間だったのに何故だ? チクったの誰よ? ――説教されたのも言うまでもない。

ただ、私の横に同じく説教されるクラウスの姿があったのは大変珍しいことだと思う。