軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イベントは盛大に

感動の再会と報告、王様との御話が終わった後。

……何故か私も今後の方針を決める会議に参加させられております。

セシルに捕獲され拉致られた、とか。

一応関係者なんだからと押し切られた、とか。

お母様一同も会議を見学――参加はできないらしい。発言権が無いってことですね――とか。

突っ込み所満載です。いいのかよ、コルベラ!?

「……閉鎖的って言ってませんでした?」

「うむ、部外者には閉鎖的だと思うぞ?」

「私は思いっきり部外者じゃないですかね? 私はイルフェナ所属、参加しちゃ駄目、内政干渉よくない」

「はは! 当事者なのだから見学と助言程度は許そうじゃないか」

楽しそうに笑うコルベラ王に参加者の皆様は笑顔で私の存在をスルー。

『大丈夫! 自分達が気にしなければOK!』とばかりに平然としておいでだ。

「いいじゃないか、ミヅキ。どうせ何かするのだろう?」

「するよ? だけど場を貸してもらうだけで何をするかを事前にコルベラに伝えるつもりは無い」

きっぱりと言い切るとセシルは怪訝そうな顔になる。

ちなみに現在の私の居場所はセシルの膝の上。何時ぞやのように横向きに座ってます。

立ってるって言ったのに笑顔で却下。今後の付き合いを考えてか周囲への仲良しアピールに余念がありませんな、姫様。

……。

誰か『姫様も女性なのですから』と突っ込めよ。

お兄さんしか居ないからって発想が男性寄りなのはどうかと思うぞ、セシル。

エマ曰く「セシルの言動は幼少の頃より変わってませんわ」とのことなので、昔から凛々しく頼もしい男装の麗人キャラだったのだろう。

……それが王太子のコンプレックスを刺激したような気がしなくもない。

王族どころか男性的な面で妃に劣っているという劣等感も冷遇に拍車をかけたんじゃあるまいか。セシルって『姫』というより『王子』なんだよね、思考回路が。

まあ、ともかく。

王妃様達でさえ見学しかできない状況で私を参加させることはできないというのがセシルの行動の原因なのだ。

ここで『姫の逃亡に手を貸した魔導師』が参加してしまえば『魔導師は最初からコルベラと繋がりがあった』と言われてしまうだろう。黙っていればいいというものではない。

その対策としてこの場に居てもおかしくない当事者であるセシルが私を連れているわけだ。

なお理由は『助けてくれた魔導師殿が傍に居ると安心できる』という、誰が聞いても嘘だと判るものだったりする。

逃亡生活では心の拠り所でした的な言い分は一般論としては納得できますね。セシル本人を知ってると無理だけど。

そんなわけでこの状態なのですよ。

現状は教育番組にありがちな『人形とお姉さん』。それが一番近い。

会議の会話を聞いていた『お姉さん』(=セシル)が『人形のミヅキちゃん』(=私)相手に会話するという形ですね!

その会話を会議に参加していた人達が『偶然』聞いており、気になるならセシルに尋ねるという形式です。誰だ、この方法を考えた奴。

そんなわけで私とセシルの会話に周囲は聞き耳を立てている。

「何故だ? 打ち合わせをしていた方が良いと思うが」

「『知らない』って言い分は最強なんだよ、セシル。私が何かしても『謝罪の場に当事者として参加させただけ』なら当然の事と誰もが納得するでしょう。それ以外の事は私だけの問題になる。巻き込むつもりは無いよ」

「しかし、我が国の事だぞ?」

「今はキヴェラに対し圧倒的に不利な立場でしょ? 只でさえキヴェラにとっては屈辱的な状況だし、付け込まれる隙は作るべきじゃない」

下手すると逃亡全てがコルベラの策略とか言ってきそうだしね、と付け加えるとさすがにセシルも黙った。

確かに打ち合わせをしていれば私が何をしてもあまり驚く事は無いだろう。

だが、それを不自然に思われたら?

落ち着いている事に不信感を抱くのが当然だ。そうなるとコルベラが一方的に被害者という認識が崩れる可能性がある。

『コルベラはキヴェラを貶める為に今回の事を画策したのではないか?』

証拠は無くとも大国の言葉ならば無視できまい。

アホ王太子だけなら何の心配も要らないが、状況を報告されればキヴェラ上層部がそう疑うかもしれないじゃないか。

現状はキヴェラが一方的に悪役なのだ、それを覆す要素を見逃すとは思えない。

陰謀云々は私に対しては思いっきり正解なのだが、魔導師個人を攻撃するよりコルベラを黙らせる手段として使う方が有効だとキヴェラ上層部ならば判断するだろう。

『とにかく疑え、最悪の可能性を想定した上で勝つ方法を考えろ』

策を練る時の私の信条にございます。常にそう考えていれば想定外の事態が起きても絶対に何処かで巻き返しが可能だと私は信じている。

懲りない・めげない・リトライ上等! な不屈の精神で挑み最終的に勝てば問題無し。

最後に自分が笑う為には柔軟な発想が必要なのだよ。頭脳労働とはそういうものだ。

「……ではコルベラが今後すべき事は?」

軽く溜息を吐くとセシルは私に問い掛けた。

「多くの国から今回の事に対して問い合わせが来てるだろうから全てに返信を。できる限り『詳しく』事情説明をした後にこう付け加えるべきだと思う。『謝罪の場にお招きしましょう。判断は其々の使者殿にお任せします』ってね!」

「他国の者を謝罪の場に呼ぶのか?」

「そう。王太子様が誠意ある行動をとるならばキヴェラの勝ち。事実はともかくキヴェラへの批難は収まるでしょう。どう? これならコルベラはキヴェラに対して十分過ぎるほど誠意ある姿勢を見せているでしょ?」

「確かにそれならば部外者を呼ぶ十分な言い分にはなるが……」

そう言いつつもセシルは納得していないようだ。まあ、仕方ない。セシル的には『何故コルベラが王太子の誠意を見せつける場を用意しなければならないのか』といったところだろう。

周囲の人達の反応も微妙。普通に考えたらそうなるね。

だが。

「あの王太子が素直に……いえ、まともに謝罪できると思う?」

「表面上は取り繕えると思うぞ?」

「だから煽る」

「は?」

セシルの言葉に頷きつつも、にやりと笑う。

「私も参加するんだよ? それにさ……何の手も無くその場に居ると思う?」

王太子の性格はある意味非常に判り易い。煽れば簡単に乗ってくるだろう。

問題は決定打ともいうべき失言を本人にさせることなのだが、これは今までの旅で十分過ぎるほどカードが揃っている。

『キヴェラも私達が逃げてる間に考えればいいんだよ、どうするのが最善なのか』

『それが君の優しさかい?』

『ある意味優しさで、ある意味惨酷さです』

セシル達は知らない、魔王様との会話。それが全て。

時間稼ぎの利点は逃亡側だけではなく、キヴェラ側にも当て嵌まる事なのだから。

「私がコルベラ側に願うのは二つ。一つは謝罪の場への参加、もう一つはその際セレスティナ姫の傍にいる事。あとは……個人的な御願いなんだけど」

そう言ってからセシルの耳に片手を充てて口を近づけ内緒話。

怪訝そうな周囲の皆様を他所にセシルの表情が楽しそうなものへと変わる。

「それは楽しそうだな! 私も頼んでみよう」

「ふふ、これくらいは許されるよね」

「ああ、状況を考えれば不自然ではないな」

にこやかに微笑み合う私達に周囲は益々首を傾げた。

私に対する認識が甘いですねー、コルベラの皆様。これがイルフェナなら即座に首根っこ掴まれて洗い浚い暴露させられてます。

つまり、そういう雰囲気。罠とか悪企みとも言う。

年頃の御嬢さん達がきゃっきゃと楽しげに戯れるのとイコールではないのだ、私の場合。セシルも同類だが。

「父上、発言を許していただきたいのですが」

「う……うむ、申してみよ」

妙に機嫌のいいセシルにコルベラ王は若干引きながらも発言の許可を与える。

「では……」

セシルの言葉を聞きながらも私は窓の外に視線を向けた。

山に囲まれているからこそ薬草類は豊富でも農作物は乏しいと聞いた。……農地が少ないってことだな。

でも山があるなら山芋とかありそう。筍とか。食べ物と認識されていないだけであるんじゃね?

今回の件が終ったら探しに行ってみようかなー?

「ミヅキ、どうした?」

「……山を探索したいと思って」

「今回の事が片付いたら行こうな」

何となく考えている事を察したのか、セシルが生温かい視線と若干の期待を向けてくる。

大丈夫、私にとって王太子への興味は山芋以下だがちゃんと葬り……はしないけど黙らせるから。

※※※※※※※※※

そんなわけで当日です。

と言うかキヴェラの行動が予想以上に早かったのだ。

キヴェラは『あの馬鹿を何時までも王太子にしとくのはやべぇ!』とばかりに姫帰還を知るや即座に訪問の打診をしてきた。物凄く納得できます、それだけは同情しよう。

ちなみにそれが帰還から三日後のこと。普通は議会の承認を得たりスケジュールを調整したり――王太子の訪問なので他随行員含む――警備体勢の話し合いなど色々やることがある筈である。

特に警備に関しては次代の王となる人物なので重要だ。……普通なら。

つまりこの訪問は結構前から既に決まっていたと?

王太子の警備はいい加減でも問題ないと?

何かあったらコルベラの所為になるじゃねーかよ、ざけんな!

正式に謁見の申し込みがなければ大国の王太子様をお迎えするとは思えませんな。

この事からもコルベラに対する見下しと誓約を盾に取る姿勢が透けて見える。確かに国としては優位な立場にあるんだけどさ。誠実さはゼロですぜ?

そして現在、私がどうしているかと言うと。

「……お前は何をするつもりだ」

何故か宰相様に捕まっております。そうか、ゼブレストからは宰相様が派遣されたか。

ちなみにイルフェナからは魔王様と愉快な仲間達、バラクシンからはライナス殿下とリカード君、アルベルダからは何故か王とグレン、カルロッサからは宰相補佐様を確認済み。

他にも居るらしいけど、私が知ってるのはそれくらい。ちなみに情報源はセシル。

どう考えても見世物扱いです。一応、謝罪の場なのですが。

『国として信頼できる者を派遣されたし』とコルベラ王は告げたらしいので、彼等は間違いなく其々国の代表。

カルロッサとバラクシンは一般的な人選かもしれないが、アルベルダは完璧に見物だ。元気一杯のウィル様に比べてグレンが何だか疲れてるもの。

皆様、別室にて情報整理の真っ最中ですよ。情報交換の場として広い部屋も用意されているみたいだしね。

で。

私もそれなりの服装をしなければならないので与えられた客室にいたのだが、支度が終わって廊下へ繋がる扉を開けた先に宰相様。

……ええ、偶然その場を歩いていただけだったみたいですがね。問題児探索機能が備わっているとかではないだろう。

思わず扉を閉じようとする私に素早く反応、即座に捕獲されて部屋に後戻り。

困惑していたコルベラの騎士さん達は宰相様が連れていたゼブレストの騎士に「いつもの事ですから!」と笑顔で言われて沈黙した。そんなわけで部屋には宰相様と私の二人だけ。

「当事者として謝罪とやらの見学を」

「本当にそれだけか!? いいか、ここはイルフェナやゼブレストじゃないんだ。勝手な振る舞いが許される筈なかろう!」

「酷いわ、おかん! 公の場だし、淑女として目覚めたとは思わないの!?」

「誰がおかんだ! お前にそんなものを期待する方がどうかしている!」

「酷っ!」

「日頃の行いを振り返ってから物を言え」

胸に手を当てて思わず視線を逸らしたら頭を鷲掴みにされた。宰相様、私の扱いが地味に酷くね?

ああ、でも折角だから聞いておこう。

「宰相様、聞きたい事があるんですが」

「……何だ?」

やや警戒しつつも話は聞いてくれるらしい。おかん、とりあえず手を離せ。

「後宮破壊の裏事情ってさー、キヴェラが関わってるよねぇ? 側室達の実家って裏切り者?」

「……何のことだ」

「後から考えると実家ごと潰すのはやり過ぎかなって。それに十年程度で側室達の実家があれほど余裕があるのは不自然じゃない?」

「……」

一応聞いておきたかったんだよね、これ。宰相様、沈黙してるってことは肯定と受け取るよ?

対して宰相様は探るように私を見ている。

……あの、シリアス展開なのでいい加減手を離してくれませんか。

「お前、まさかそれが原因で今回の事を引き受けたんじゃなかろうな?」

「さあ? レックバリ侯爵が姫を助けたかったのは本当だよ。その為の事情説明で十年前にゼブレストに侵攻したのがキヴェラだと知ったんだけどね。今回の件でキヴェラがどういう国かも知ったし」

「あの、古狸……余計な事を」

苦々しく呟く宰相様は余裕が無いのか珍しく暴言を口にする。

元凶の古狸は相変らず元気一杯みたいですよ。最近も魔王様とバラクシン泣かせたみたいだし。

「後はゼブレストで一度も十年前の侵攻国に触れなかったり、国第一のルドルフが国力の低下を予想しつつも側室達の実家を潰した事から推測!」

そう続けると宰相様は黙り込んでしまった。まあ、コルベラで自国の内情暴露なんてできんわな。

とりあえず私の予想は当たってたってことか? 細かい事情は知らんけど。

掴んでいた力が抜け、頭に添えられているだけになっていた宰相様の手を外して立ち上がる。そろそろセシルの支度も済んでいる頃だろう。

「じゃあ、そろそろ行くね。私も謁見の間にいるから後で」

「やはり今回の事はお前の発案か」

「賛同してくれたのはセレスティナ姫と王妃様一同だけどね」

「は!? おい、ちょっと待て!?」

慌てる宰相様の声を無視して今度こそ部屋を後にする。

うふふ……楽しんでくださいね、宰相様! 私が言ったとおり賛同を得られたからこそ実現しているのですから!

別にキヴェラが不利になるとかではない。寧ろ有利なことですよ?

さあ、王太子様? きちんと御使いできるかな?

コルベラに到着した使者達には私からの御願いも追加させてもらったぞ?

『この度、我が国の提案に乗ってくれた事を感謝する』

『其々情報を得てはいるだろうが、その多くは噂に留まっていることだろう』

『我がコルベラが事実を語ろうとも全てを信じられる事は無いと思っている』

『ゆえに其々信頼できる者達の目でキヴェラの誠意が真か否かを確認してもらいたいのだ』

『だが』

『王太子殿下は他国の者の目があれば余計に気を張らねばならぬだろう』

『そこで出席者にある条件を飲んでもらいたい』

『服装は我が国が用意した貴族、もしくは騎士の装い』

『そして顔が正しく判別できなくなる魔道具の着用』

『誠意ある謝罪ならば他者の目が無くとも変わらぬ行動をとるだろう』

……という『全員コルベラ関係者の装いで御願いね』というもの。当日に御願いするのは情報漏洩を防ぐ為だ。

他国の目があれば演技も力が入る事だろう。では、コルベラだけでも同じ態度を取るのか観察しようぜ! という試みです。

重要ですよ? だって『キヴェラの王太子』が『コルベラ』に対し誠意を見せる場面なんだから。

公の場での謝罪と言ってもキヴェラはコルベラに対し圧倒的に優位なのだ、物凄く簡単な謝罪でも『謝罪した!』と言いかねない。

逃げ道は塞ぐ。これ、基本中の基本。

ついでに娯楽方向に捉えている皆様の好感度を上げるべくネタに走ってみました。上記の真面目な文章の他に私からの提案そのままを別紙に書いて渡している。

そのタイトルは『王太子殿下を見守る会(今回限定で設立)について』。コルベラ王の真面目な文章を私なりの解釈で今回の事についての御願いをしてみました。

大国の王太子が主役の『はじめての「ごめんなさい」』イベント開催。

概要は幼児が対象の『大人が見守る中、初めてを成功させる子供』的なもの。

微笑ましく見守りましょうね、お坊ちゃんを!

……という内容(意訳)だったのだが、怒るどころかほぼ全員が快く受け入れてくれたらしい。『姫の逃亡を手助けした魔導師からの提案』というのも大きいだろう。

後はキヴェラに対して皆さん思うところがあったという事だろうか。

噂では嬉々として受け入れたのがアルベルダ、頭を抱えたのがイルフェナとゼブレスト。唖然としたのがそれ以外だったとか。明らかに私の認識の差だな。

まあ、私の評価はどうでもいいよ。提案を受けて貰う事が重要だからさ。

良かったな〜、王太子。見守ってくれる大人達が沢山居て。誰も助けないけど。

なお、この計画の時点で既に苛めに近いとはエマ談。その割には楽しそうにしているね。

コルベラの人達もそれはそれは生温かく見守ってくれるそうだ。彼等の怒りも下火になることだろう……憐れみとか優越感的な意味で。

「セシル、支度はできた?」

軽くノックすると話を聞いていたのか侍女さんが笑みを浮かべて迎え入れてくれる。

奥の部屋から出てきたセシルも支度ができているようだ。おお、美しいぞ! 侍女さん達が誇らしげになるのも判る気がする。

「今日は私がセシルの護衛ね」

「判っている。さて、どう出るかな?」

楽しげに笑い合い手を取る。

さて、王太子様。

互いに待ちに待ったイベントの始まりですよ?