軽量なろうリーダー

姉ちゃん虐めはやめよう、突然貴族になって脳がバグるのもわかるけど

作者: 満原こもじ

本文

貴族の父ちゃんとその奥さんは典型的な政略結婚で。

そこに愛はなかったんだそーな。

で、父ちゃんは平民であるあたしの母ちゃんに愛を求めたとゆー、よくあるケースだ。

愛があってあたしは生まれた。

で、父ちゃんの奥さんが亡くなって。

母ちゃんとあたしが父ちゃん家に迎えられることになった。

バーンズ子爵家とかいうお貴族様。

あたしと母ちゃんは一夜にしてお貴族になってしまうというサプライズなんだけどさ。

母ちゃんの脳内がフィーバーしてるんよ。

万に一つの幸運だ、絶対に幸せになってみせるって。

でも言葉の端々から滲み出ている方向性がどーも。

賢いあたしが意見してやらねばならん。

「お母様」

「ど、どうしたのミノリ。『お母様』なんて。ぞわっとしたわ」

「なるべく丁寧な言葉遣いを心がけようと、一瞬だけ思ったんだよ。だってあたし達は貴族になっちゃうんだから」

「そ、そうね」

「母ちゃんのビジョンを聞きたい。幸せないい暮らしがしたいとゆー方針でいいかな?」

「もちろんだわ」

「でも漏れてくる母ちゃんの心の声を聞いてると、あたしの異母姉を虐めようとしてるみたいじゃん」

父ちゃんには亡くなった奥さんとの間に娘が一人いるそうで。

年齢はあたしの一つ上みたい。

「そうよ」

「何で?」

「だって父親の愛人がズカズカ家に乗り込んできて、大きな顔しようとしているのよ? よく思うはずないじゃない。だからグスタフ様の愛情が私にある間に、上下関係を躾けておかないと」

「父ちゃんの名前はグスタフってゆーのか」

母ちゃんの考え方はわかった。

が……。

「いいかな、母ちゃん」

「何が?」

「父ちゃんの亡くなった奥さんとゆーのは、どこぞの貴族の出なんでしょ?」

「エイトケン伯爵家の出と聞いたわ。気位ばかり高くて、全然安らげないと」

「わかってる? 母ちゃんがあたしの姉ちゃんになる人を虐めるとゆーことは、エイトケン伯爵家を敵に回すのとイコールなわけだ」

「……えっ?」

ほら、わかってないじゃないか。

「新しく来た継母が虐めるんですと、姉ちゃんが親戚であるエイトケン伯爵家に訴えたとする。そんな平民の母娘は追い出せと詰め寄られたら、父ちゃんが対抗できると思わない方がいいぞ? だって相手の方が格上なんだから」

「そ、そうね」

「母ちゃんのやり方だと、豊かな生活だぜバンザーイとならない可能性が高い」

「ど、どうしたらいいかしら?」

そこを相談しようと思ったんだけどな。

あたしに丸投げか。

仕方ない。

「頭っから姉ちゃんを敵に回すのはやめてちょうだい。できれば丸め込みたい」

「そんなことできるかしら?」

「母ちゃんの言う通り、父親の愛人がズカズカ家に乗り込んできたのに、姉ちゃんが歓迎してくれるなんてことはあたしもあり得んと思う」

「でしょう?」

「母ちゃんはね。でもあたしは違うじゃん? 姉ちゃんとは半分血を分けた姉妹なんだもん。アプローチの仕方はあるんじゃないかな」

つまり母ちゃんが出しゃばるんじゃなくて、あたしから姉ちゃんに接触すべき。

「姉ちゃんがどんな人かってゆー、情報ある?」

「グスタフ様に聞いたところだと、奥様に似ている。最近ギクシャクしていてあまり話していないとだけ」

「そーか。じゃああたしはまず姉ちゃんを受け持つよ。母ちゃんは使用人連中のウケをよくしといてね」

「ええ」

「姉ちゃんがあたしの手に負えないとんでもないやつだったらごめん。その時は作戦を変えよう」

――――――――――オーレリア・バーンズ子爵令嬢視点。

「字を書くってのは疲れるね」

「慣れていないからよ」

「だよね。余計な力が入ってるんだろうな。頑張んべえ!」

異母妹ミノリと一緒に勉強しています。

お母様が亡くなって、お父様がジーナという愛人とその娘を連れてきたのは一〇日前でした。

……我ながらナーバスになっていたと思います。

初めての出会いの時はミノリに当たってしまって。

『ここはあなた達のいるべき場所じゃないの! 出て行って!』

『まあ姉ちゃんから見るとそうだわなあ』

『姉ちゃん?』

『あたしは姉ちゃんと半分血が繋がってるわけじゃん? 主に父ちゃんのせいで』

父ちゃんのせい。

思わず笑わされてしまいました。

話してる内に打ち解けてきて。

二、三日経ったらすっかり仲良くなってしまいました。

『学べる環境にあるというのは貴族の素晴らしいところだね』

『そうですの?』

『そうそう。平民は日々どう食べていくかに頭を使わなきゃいけないの。勉強に頭を使えるとゆーのはとっても贅沢なこと』

『ふうん。変わった考え方ですのね』

『あたしは贅沢したいので、たくさん勉強するんだ』

嬉々として勉強に励むミノリを見て、わたくし焦りを感じました。

勉強が贅沢なこと、恵まれていることだなんて、考えもしなかったから。

でもミノリの言う通りなのです。

根本的な姿勢を元平民の妹に教わるだなんて。

わたくしも負けずに勉強するようになりました。

「今日はここまでです」

「先生ありがとう!」「ありがとうございました」

家庭教師が帰った後、ミノリが提案しました。

「姉ちゃん、裏街に行かない?」

「裏街?」

「行ったことないでしょ? 貴族の行くところじゃないから。でも王都の中で一番賑っているところだから楽しいよ」

そう言われると行ってみたくなりますね。

興味はあります。

「治安が悪いのではなくて?」

「庶民にとっては治安が悪いわけじゃないんだ。でも上流階級の人間って抜けたところあるじゃん?」

「そうなのです?」

「そうそう。そーゆー隙だらけの人は裏街では狙われるね」

「怖いのですけれど」

「あたしがいれば平気だぞ? 逆に仮に腕の立つ護衛がいたとしても、貴族の令嬢が裏街を歩くのは推奨しない」

ミノリは裏街に住んでいたから大丈夫ということのようです。

「あたしも貴族の子になったから、挨拶しとかないと。姉ちゃんもいい経験になると思うよ」

「行ってみたいです」

「よし決まり。行こうか」

――――――――――裏街にて。

本当です。

表の目抜き通りなんて比較にならないくらい人がごった返しています。

こんなに裏街が活気のある場所だったなんて。

「いい匂いがしますね」

「この辺は屋台街でさ。屋台を置ける場所には限りがあるから、許可を受けないと営業できないんだよ」

「そうなのですね?」

「大変な激戦区なんだ。不味いと退場せざるを得ないから。流行ってる店は絶対に美味いよ」

「あれっ? ミノリじゃねえか」

「大将こんにちはー。串焼きロング二つ」

「あいよっ!」

ミノリの知り合いのようです。

「そちらのお嬢さんが?」

「あたしがお貴族様になったって聞いた?」

「噂では」

「その貴族家の腹違いの姉ちゃんだよ。あたしと違って純度一〇〇パーセントの貴族の令嬢」

「こりゃどうも。へい、串焼きロング二本お待ち!」

「はい、勘定ね。姉ちゃん、カトラリーなんてお上品なものはないから、がぶっと口で迎えに行って」

かぷり。

わあ、熱々でジューシーでとても素敵!

「おいしいです!」

「へへっ、どうも」

「大将んとこの串焼きは間違いないよなー。次行こうか」

どこへ連れて行ってくれるのでしょう。

ワクワク。

屋台街から離れて少し歩くと、大きなお店がありますね。

「『ナリヤス商店』は裏街で一番大きなお店だよ」

「表に出ているのは食料品ですけれど、いろんなものを売っていますね」

「そうそう。必要なものは大体何でも売りますってコンセプトのお店」

「へえ、便利なお店もあるのですね」

「店員が親切だから、困った何を揃えればいいんだって時は教えてくれる。すげえ役に立つお店なの」

「ミノリちゃん、宣伝ありがとう」

「あっ、若旦那」

若旦那ということは、この大きいお店の経営者の息子さん?

ミノリの人脈は裏街に広がっていますのね。

「ミノリちゃん、バーンズ子爵家に迎えられたと聞いたよ」

「うん。こちらは姉ちゃんだよ」

「これはどうも。ナリヤスをよろしく御贔屓にお願いいたします」

「せっかくだから早速御贔屓にしちゃおうか」

「えっ? 御贔屓にとは言ったけど、お貴族様に売るようなものはないよ」

「そんなことないって。姉ちゃん、ナリヤスは芸術家の卵の作品とかを安く売っているんだよ」

「一種の支援活動ですね?」

「そうなのですよ。もちろん人気作家になるのは一〇〇人に一人もいないのですが」

「逆に言うと、将来メチャクチャ高くなる芸術家の作品がバーゲン価格で手に入っちゃうかもしれないの。バクチ感覚で買う人もいるんだよ」

「面白いですね」

わたくしも一つ買っていこうかしら。

ええと、当てようと思ってもダメですね。

自分の好きなのは、と。

「ではこの船の絵ください」

「毎度あり。ミノリちゃんも何か買っていくかい?」

「お小遣いありったけでお肉ちょうだい。孤児院に届けてあげてくれる? バーンズ子爵家名義で」

「えっ?」

ここでいきなり慈善活動ですか?

自分が恥ずかしくなりますね。

「孤児達はいつもお腹を減らしているからですか?」

「もちろんそーゆー面はあるね。報酬の先払いってこともある」

「報酬の先払い?」

「すぐにわかるよ」

何が何だか。

「若旦那ばいばーい」

「毎度! 今後もよろしくね」

『ナリヤス商店』を出、通りを一本さらに内に入ります。

「ここは人が少ないですのね」

「店が少ないからね。さっき言ってた孤児院があそこだよ」

あっ、孤児院の案内でしたか。

慈善活動というのは生活に余裕のある貴族の務めだとは聞きます。

でもあまり真剣に考えたことはなかったです。

ミノリは貴族ではなかったのに、意識が高いですねえ。

「ミノリは……あっ?」

先ほど買った絵をひったくられました。

何てこと!

「ドロボーだあっ!」

ミノリのすごい大声!

えっ? どこからともなく出てきた子供達が泥棒に襲いかかり、絵を取り返してくれました。

そんなことあります?

子供達がわらわら集まってきました。

孤児かしら?

「よしよし、皆、ごくろーさん。ありがとうね」

「どうしたんだ? 荷物奪われるなんて、姐御らしくねえじゃねえか」

「まあね。あたしがお貴族様になったってことは知ってるかな?」

「聞いた」

「こっちは腹違いの姉ちゃんだよ。よろしくね」

「よろしくお願いいたします」

「お、おう」

恥ずかしそうですね。

戸惑っているのかしら?

貴族が来るところではないようだから。

「姉ちゃんは生まれた時から貴族だから、裏町の特に寂しい区域のルールなんて知らんわけよ。ひったくりを体験してもらおうかと」

「「「「「えっ?」」」」」

そんな意図があったのですの?

「あたし達が来たことを皆がチェックしてたことはわかってたからさ。取り返してくれるだろうと思って」

「ひでえなあ」

「姐御は人使いが荒いよ」

「まあまあ。バーンズ子爵家の名前で孤児院にお肉が届くから。皆で食べてちょうだい」

「「「「やったあ!」」」」

大喜びの孤児達。

報酬の先払いってこういうことですの?

ミノリはどこまで計算していたのでしょう?

ともかく今日は王都裏街というものを少し知る機会になったのです。

――――――――――ジーナとミノリが来て一ヶ月後、バーンズ子爵家邸にて。当主グスタフ視点。

俺は温かい家庭というものに飢えていた。

エイトケン伯爵家から来た妻には全く馴染めず。

たまたま酒場の女給として働いていたジーナと知り合い、深い仲になった。

ミノリという子供まで儲けた。

所詮平民ではあるしな。

ジーナとミノリを我が家に連れてくることなど考えてはいなかった。

しかし妻がちょっとカゼを拗らせただけであっさり逝ってしまった時、新たな考えが生まれた。

温かい家庭を作るチャンスなのではないかと。

母を亡くしたばかりであるオーレリアのことを考えないではなかった。

しかし俺も視野が狭くなっていた。

半ば強引にジーナとミノリを迎えて。

『ここはあなた達のいるべき場所じゃないの! 出て行って!』

オーレリアが爆発した。

やはりダメか。

家庭に別の問題を持ち込んだだけだったかと絶望しかけた時、ジーナの娘ミノリがのほほんと言った。

『まあ姉ちゃんから見るとそうだわなあ』

『姉ちゃん?』

『あたしは姉ちゃんと半分血が繋がってるわけじゃん? 主に父ちゃんのせいで』

あれっ?

オーレリアの表情が和らいだ。

その後はミノリの独壇場で、すぐオーレリアとも打ち解けた。

望外の成功だ!

ジーナに話しかける。

「ミノリのおかげだな」

「あの子はすごく頭がいいんですよ。私達がこの家に来る時も、あたしが姉ちゃんを受け持つから、母ちゃんは使用人連中のウケをよくしといて、って」

「ふうむ。姉妹であれば懐柔のしようがあると、ミノリは考えたわけか」

「はい」

オーレリアは心を閉ざしていた。

俺とも話さなかったくらいだ。

愛人母娘との関係をよくしろなんて、かなり難しいミッションだったと思う。

俺ですら手のつけようがなかったのに。

ところがどうだ。

まだ一ヶ月にも拘らず、三人仲良くしているではないか。

「ジーナ、君に感謝する」

「あら、嫌ですよ。グスタフ様らしくもない」

「オーレリアとミノリは?」

「午前中は勉強で、午後にお出かけというのが多いですよ」

「オーレリアが言っていた。ミノリと行動していると考えさせられることが多いと」

オーレリアと隔意なく普通に話せるようになった。

これもありがたいことだ。

「教会の孤児院とか憲兵詰め所にも行ってるようではないか」

「ミノリが言うんですよ。憲兵さんはみかじめ料なしで庶民の味方になってくれる。親しくしといて絶対に損はないって。それで平民時代も、私の焼いた菓子を差し入れに行くことがあって」

「憲兵長官殿とも面識があるようではないか」

憲兵長官カムデン・モンタギュー殿と言えば陛下の信頼も厚い、王都の平和を守る大物役人だ。

モンタギュー伯爵家の当主でもある。

「ミノリは誰とでもすぐ仲良くなりますからね」

「うむ、話を聞いて驚いた」

となると考えねばならんのは、我がバーンズ子爵家の跡継ぎのことだ。

今後貴族学校に進学すると、ミノリの交友関係は大変広くなるのではないか?

「オーレリアとミノリ、どちらにバーンズ子爵家を継がせるべきか。ジーナはどう思う?」

「オーレリアさんとミノリと話していた時も、そういう話題になったことがあったんですよ」

「えっ?」

かなり突っ込んだ話題だぞ?

以前のオーレリアならば、頑なに自分が継ぐと言い張っただろうが。

「ミノリの考えとしては、姉ちゃんが継ぐべきだろうって」

「それは何故だ?」

「オーレリアさんの母方の実家、エイトケン伯爵家への配慮が必要だろうということだと思います」

問題はそこだ。

しかし実際のところ、エイトケン伯爵家も代替わりして我がバーンズ子爵家にほとんど興味がないようなのだ。

考えなくてもいい気はするが、もう少し判断する時間が欲しい。

「逆にオーレリアさんはミノリが継ぐ方がいいって」

「それは?」

「私のことを考えてくれているのだと」

だろうな。

オーレリアが継ぐのなら、義母であるジーナはいづらいだろうと考えても不思議じゃない。

「ジーナとしてはミノリが継ぐのが都合がいいのか?」

「いえ、オーレリアさんもよくしてくれますし、どちらでも」

本当にいい関係を築いているのだな。

「私はグスタフ様がいらっしゃればいいんですよ」

「ハハッ、可愛いことを言う」

まあ家をどうするなど、まだ先の話だ。

来年再来年と、オーレリア及びミノリが相次いで貴族学校に入学するわけだからな。

そちらを考えるのが先だ。

――――――――――五年後。ミノリ視点。

貴族学校とゆーのは実に楽しいな。

専門の先生はいるわ、たくさんの出会いがあるわ。

姉ちゃんはモンタギュー伯爵家の嫡男ラッセル様と婚約した。

ラッセル様は憲兵長官のおっちゃんの自慢の息子ってやつでさ。

憲兵詰め所に差し入れ持ってった時に、たまたまラッセル様が現場の見学に来ていて。

ラッセル様と姉ちゃん、よっぽど馬が合ったのか、二人して赤い顔してずーっと喋ってたわ。

人が恋に落ちる瞬間というのを初めて見たわ。

姉ちゃんおめでとう。

じゃあバーンズ子爵家はあたしが継ぐのかとゆーと、そんなことはなくて。

父ちゃんと母ちゃんの間に男の子が生まれたの、二人も。

今四歳と二歳。

どっちかが継ぐだろ。

こちらもおめでとう。

あたし?

今王宮にいるよ。

お茶会なのだ。

「どうしたのだ、ミノリ。ぼーっとして」

「人生は流転するものだと知ったね」

王太子殿下の第三子、王孫ネヴィル様と婚約しちゃいました。

ネヴィル様貴族学校であたしと同級でさ。

まああたしはできる子でしかも可愛いから、惚れられちゃったってことだよ。

「また適当なことを考えているのではないのか? できる子でしかも可愛いから僕に惚れられたとか」

「何でわかるのよ。王子エスパー?」

アハハと笑い合う。

いや、ネヴィル様メッチャ鋭い人でさ。

あたしが使える子だっていち早く見抜いたね。

これは陛下に直接言われたことなんだけどさ。

王都再開発の構想があるんだそーな。

半分平民で街に知り合いの多いあたしは役に立つだろうって意味のことを、小難しい言葉で言われた。

了解です。

いずれ働くわ。

だからあたしをキープしておきたいとか。

憲兵長官のおっちゃんやネヴィル様の推しがあったとか。

ネヴィル様の婚約者はある程度低い身分の方が、世継ぎ争いが起きにくいとかの思惑があってさ。

婚約ってことになったんよ。

「いや、マジで色々あって婚約になったなーと思ってさ」

「ミノリは僕の婚約者が嫌なのか?」

「嫌なわけないじゃん。このハンサムボーイが」

「ミノリのようなビューティフルガールに言われると嬉しいな」

「いくらでも言ったるわ。イケメンボーイめ」

王子だからどうこうってわけじゃなくてさ。

こうやって軽口を言い合える関係って素敵だなと思うわけよ。

やっぱり心からいいって思える人がいいから。

「たまたま王子だったなあ」

「何が?」

「あたしの好きな人が」

「身分でなくて、人格が好みだということか?」

「うん」

ハハッ、ネヴィル様嬉しそう。

「よろしく頼む」

「こちらこそ」

差し出された手を握る。

婚約ってこうして握手で絆を深めるものじゃない気はするけど、ネヴィル様とあたしの場合はしっくり来る気がするなあ。

ちょっと愛情を込めてぎゅっとしたった。