軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

366.想いを選んで

ドレスを決めることになった私は、お義母様とシャーロット様と別部屋に移動していた。

「レティシアさん。ご一緒しても大丈夫なのかしら」

「もちろんですよお義母様」

「本当に? ウェディングドレスは一生に一度のものでしょう。レイノルトと選びたかったのなら」

「いえ! レイノルト様には当日の楽しみにしていただこうかと思って。一番最初に見せることを約束しました」

心配そうな表情をするお義母様に問題ないことを伝える。

「一人だと決めきれる気がしないので、助けていただけると嬉しいです」

「もちろんよ」

「レティシアなら何でも似合うが、一番輝くものを見つけよう」

もう家族になるのだから、ということで呼び捨てで呼んでもらうことにしたのだ。一気に距離が縮まった気がして心が踊る。

「嬉しいわ。娘のウェディングドレスを選ぶ場に立ち会えて」

(娘……!!)

口角がきゅっと上がるほど、その呼び方が嬉しかった。

「シャーロット様の時はどうされたんですか?」

「お義母様と同じものを着たんだ。帝国の皇妃は着るものが決まっていてね。だからそもそも場がなかった」

「そうだったんですね」

今となっては叶わぬことだが、シャーロット様のウエディングドレスを是非見てみたいと思った。

「失礼します」

運び込まれた大量のドレスを見て、愕然とした。

「シェ、シェイラ。これは」

「全て旦那様がご用意なさったドレスになります」

「やるな、レイノルト」

「まぁまぁ、張り切ってるみたいね」

「…………」

(十、二十……えっ、三十? いや、それ以上あるかもしれないわ……!!)

まさかの大量なドレスの出現に、困惑するばかりだった。

「全て特注品となっていますので、どれを選んでも唯一無二のドレスにございます」

「!!」

とんでもない言葉にさらに固まれば、ポンッとシャーロット様が肩に手を置いた。

「今日は大変になるな、レティシア」

「……頑張ります」

もしやベアトリスも、リリアンヌも、この行程をこなしたのかと思えば、尊敬の気持ちが増すばかりだった。

「それにしても愛されているな。どれも、王家御用達のデザイナーが作ったものだ」

「や、やりすぎな気もしますが……でも、凄く嬉しいです」

レイノルト様は結婚式の準備はそこそこだと言っていた。まさか、こんなにも進んでるとは思うまい。

「ふふ。選びがいがあるわね」

「早速着てみます!」

「あぁ、頑張れ」

ドレス選びはあまりしたことがなかったものの、決して億劫な気持ちになることはなかった。というのも、お義母様とシャーロット様が絶えず褒め続けてくれたからである。

「まぁ! レティシアさんは白がよく似合うわね!!」

「さすがレイノルトが用意しただけあるな。レティシアの良さが引き立つのは前提条件のようだ」

「あ、ありがとうございます……」

一着目から既に正解を引いたような反応が飛んでくる。続いて二着目。

「こっちも良いな」

「そうね。レティシアさんの綺麗な肌が映えるわ」

「レースもよく似合っている」

「うんうん」

そして三着、四着……とどんどん着せかえ人形のように着替えていくのだった。

(お姉様達とドレス選びに行った日を思い出すわ……)

懐かしい記憶だ。あの日も、二人にあれも良いこれも良いと言われながら、何着も試着したのだ。

(あの時は言われるがままに着ていたけど、今は一つ一つ袖に通すのが楽しい)

何せレイノルト様が用意してくださったものだから。その事実だけで、疲れが生まれることはなかった。

(でも困るわ。どのドレスも良すぎる)

着替えることは苦ではなかったものの、選ぶことに時間を要することになった。

お義母様とシャーロット様の力を借りて最終的に絞っていった結果、最上級の一着を選ぶことができたのだった。

◆◆◆

〈レイノルト視点〉

朝から押し掛けられるとは思わなかった。どうやら王家御用達のデザイナーを使ったことで、結婚式準備を行っていることが知られたようだった。

「そう怒るなレイノルト。俺は口出ししない。シャーロットと母様が、レティシアのドレス選びに立ち会えたら良いという話をしていたから連れてきたまでだ」

「それならお二人で来ればいい話では?」

「もちろんそうだが、レイノルトは当分登城するつもりがなさそうだったからな」

「……」

「やっぱりな」

ははっと快活に笑う兄には、自分の行動は見通されているようだ。

「報告はしましたよ」

「手紙でな。全く……心配くらいさせろ。王国の一大事に可愛い弟が巻き込まれたんだからな」

「……そうですか」

「元気そうで良かったよ。怪我もなかったようで」

「えぇ。ご心配ありがとうございます」

父も心配をしていたようで、何も言わなかったが表情が物語っていた。じっと見つめられていたのだ。

「……レイノルト」

「はい、父様」

「私は、手伝うつもりできたのだが……することはないのか?」

「えっ」

「ぷっ! あっはっはっ!!」

まさかそれを言い出せる機会を伺っていたとは。俺の間抜けな声も相まって、兄に笑われてしまうのだった。