軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

364.幸福の一ヶ月 後

リリアンヌとフェルクス大公子ーーリカルド大公子の結婚式は、王城で執り行われることになった。

こんなに急いで行うことはなかったのだが、レイノルト様と私の滞在日程を考えたことと、何よりもリカルド大公子が待ち焦がれていたこともあっての日程になったのだった。

ベアトリスの時と異なる点は、セシティスタ王国の国中の貴族が参加しているということ。

今回、私とレイノルト様はフィルナリア帝国の来賓として招待されることとなった。挨拶に向かえば、既にカルセインとベアトリス・オルディオ夫妻が挨拶をしていた。大公夫妻は、国王陛下とエドモンド殿下とお話をされていた。

リリアンヌ達の挨拶の話が聞こえてくる。

「あらお兄様。お姉様の時はとても号泣してらしたけど、私の時はしてくださらないのですか?」

「リリアンヌ。お前には見えないのか? こうして心の中で号泣している所だ」

「嫌味を言うリリーも可愛いよ」

「こ、こら。二人とも。こんなおめでたい席で喧嘩はよしなさい」

「ベアトリス、涙が流れているよ」

(な、なんてカオスな光景)

「ですね」

レイノルト様と見合って、少し困ったように微笑み合った。

非常に混在している状況だが、それでも平和で温かな様子が伝わってきた。

「レティシア!」

「リリアンヌお姉様、リカルド大公子様。ご結婚おめでとうございます」

「おめでとうございます」

レイノルト様と二人で、息の合う様子で頭を下げる。

「「ありがとうございます」」

形式上の挨拶を終えると、早速リリアンヌは私の方へ近付いてきた。

「今度はレティシアの番ね」

「……そうですね」

「レイノルト殿、結婚式の日取りは間近ですかね?」

「えぇ。皆様に負担にならない日取りを考えています」

リカルド大公子の疑問に、笑顔で答えるレイノルト様。

「じゃあいよいよカルセインは焦らないとだね」

「余計なお世話ですよ、リカルド」

「でも……確かにお兄様の未来が不安ですね」

「お前まで言うな、レティシア……心配なのはわかるがどうにかするさ。家は潰させない」

「それなら安心です」

ふざけ半分、本心半分でこぼした言葉だったが、その気持ちは無事伝わっていたようだ。

穏やかに締めくくれるかと思えば、そんなことはなくなった。

「当たり前ですわ。お姉様ではなくご自身で継がれるのなら、それくらいは覚悟されてください」

「うっ」

「リ、リリアンヌ! 言い過ぎよっ」

「あら。本日は主役ですので。何を言っても構わないのかと思ってましたわ」

「これが未来の国母か……」

「お兄様よりは百倍マシですわ」

「ふふっ」

(この二人は変わらないわ、本当に)

変わらない様子がどこか嬉しくて、笑みをこぼした。すると、カルセインは小さくため息をついた。

「だが、誰よりも輝いているな。さすがリリアンヌだ」

「!!」

まさか褒められるとは思わなかったのか、不意打ちを食らったように一瞬目を見開いた。そして、ふわりと笑みを浮かべた。

「当然ですわ」

「リリアンヌっ、本当に綺麗よっ」

「お姉様はいい加減泣き止んでください……!」

「リリアンヌお姉様もですよ?」

「し、静かに! 貴女もよレティシアっ」

リリアンヌこそ、この結婚式を姉弟の誰よりも長く待っていたことを知っている。だからこそ、私達は涙を流しながら祝福をするのだった。

私達の挨拶が終わると、リリアンヌとリカルド大公子はそのまま貴族達からの挨拶を受け始めていた。

私はレイノルト様と共に食事を取りに向かった。

「レイノルト様! 緑茶がありますよ!!」

「ふふっ。実はリカルド殿に提供させていただいたんです」

「そうだったんですね」

フィルナリア帝国の特産品として、友好の意味も込められた証だった。

「……懐かしいですね。この会場で、緑茶を目にするのは」

「……あっ」

それは、私とレイノルト様の出会いが含まれていた。

(あの時私、レイノルト様を邪険にしてた気が……)

「それが良かったんですよ」

「えっ」

「令嬢らしからぬ心が、私の心を引き付けたんです」

「……言ってましたね。以前にも」

「えぇ」

あの時は、邪険にしてしまったことに恥ずかしさを感じていたが、今なら「変わり者で良かった」と胸を誇れる。

「良かったです。引き付けられて」

「それは」

「でないと、レイノルト様に出会えませんでしたから」

「!!」

本心をこぼしながら微笑めば、レイノルト様は少し固まってしまった。だがすぐに手をぎゅっと握り締めた。

「では、この手は離れないように強く結んでおかねば」

「ふふっ」

二人で緑茶を手にすると、そのままフィルナリア帝国の来賓としての挨拶をこなすことにした。

幸せな空間とはこの事を言うのだろう。

悪が淘汰された王城は、誰もが楽しそうに笑っている気がした。

そんな幸せに包まれながら、リリアンヌの結婚式は幕を閉じたのであった。