軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

354.長女の涙と王子達の答え

エドモンド殿下の命により、キャサリンも王家の騎士団によって連れて行かれた。安全が確保されたことがわかると、私は勢い良くベアトリスに抱きついた。

「お姉様っ!!」

「レティシア!」

ぎゅっと抱き合うと、ベアトリスは涙声で謝罪を始めた。

「ごめんなさいレティシア……私がキャサリンとシグノアス公爵の策略にはまってしまって」

「何を言うんですか……わかっていたから、署名に正規の名前を書かれなかったのでしょう?」

「それでも……私は愚かにもあの子を許してしまったのよ」

ぎゅっと力が強くなるベアトリス。それは自身に対する怒りであり、悔しさが痛い程に伝わってきた。

「命を見捨てることは……そう簡単にできることではありません。ましてや、どんなことをした相手であろうと、血の繋がった人間なら情が生まれて当然です」

「レティシア……」

私はそっと体を少し離すと、ベアトリスを見上げて顔を見た。

「私は、お姉様が誰よりも家族想いであること知っています。私はそんなお姉様に助けられ、守られ、救われたのですから。……だからどうか、ご自身の選択を責めないでください。そのおかげで上手く行ったこともあるという事実も忘れないでください」

「……レティシア。貴女は優しすぎるわ」

目にいっぱいの涙を浮かべるベアトリス。

「でも……ありがとう」

その涙を堪えながら、ベアトリスはくしゃっと笑顔になるのだった。

ベアトリスと再会し、オルディオ殿下に頼まれた手紙を渡した。

「オルディオ殿下は今、どこに……?」

「フェルクス大公子と共に、全てを終わらせに向かいました」

「ということは……今、多くの者が王城にいるのね」

「はい。カルセインお兄様も、見届けることになるかと」

「そう、カルセインも無事なのね」

安堵の笑みを浮かべるベアトリスは、そっと窓へと近付いた。その視線の先は、間違いなく王城の方向だった。

「我々も王城へ向かいましょう」

エドモンド殿下は、私達全員にそう告げた。

「もっとも……既に、決着が着いているかもしれませんが」

◆◆◆

〈オルディオ視点〉

兄エドモンドとの対話を終えると、俺はリカルドと合流して王城へと向かった。

「シグノアス公爵の息のかかった侍女は特定できた。恐らく、毒を与える機会を伺っていることだろう」

「さすがだな、リカルド」

「次期国王となるのなら、これくらいはできないとね」

表向きも優秀であることは間違いないが、リカルドを支える影の優秀さもこの先必ず国を守る力となるだろう。

「侍女が入手した毒も調べさせた。遅効性の毒だった」

「遅効性……?」

「あぁ。この後、王城で臣下を集めた議会が行われるのは知っているだろう?」

「まさかその場で……!」

「そのまさかだよ」

リカルドが言うには、会議当日の朝に遅効性かつ致死量の毒を陛下に盛った後、会議の時に倒れさせると言う判断だった。

「目の前で倒れれば、ひとまず容疑者から外れることだろう。その上、今や議会の半数がシグノアス派の者だ。あきれたことにね」

「……元第一王子派か」

長らくエドモンドを支持してきた者こそ、リカルドに付くことを拒み、シグノアス公爵の思惑に乗っている。

それ以前の話を言えば、第一王子派は元よりエドモンドを傀儡にできると企んでいた連中だった。欲深き貴族達だ。

「まとめて一掃する良い機会だね」

「そうだな。……俺は自分の役目を果たすだけだな」

「任せたよ。……オルディオ、君にしかできないことだ」

こくりと頷いた。

王城前に到着すると、そこでリカルドとは一度分かれた。俺はリカルドの手引きで王城の裏口から父である国王陛下の元へと向かった。

「オルディオ……!! 無事であったか?」

「お久しぶりです、父様。私は問題ありません。兄様も」

「そうか、エドモンドも無事か……」

ほっと安堵の様子を見せる辺り、俺自身のことも、エドモンドのこともしっかりと息子だと思ってくれている気がして嬉しかった。

「息子も守れない……不甲斐ない父ですまない」

「お止めください……!!」

頭を深く下げる父に、反射的に近付いて体を起こさせた。

「父様が、この国のために尽くしてきたことは私も兄様も理解しております。……王位継承問題は、王子として生まれた以上、簡単に終わる話ではありません。……これも覚悟の上です」

「オルディオ……」

兄と話し合い、お互いの本心を知れた今、正直胸のつっかえが取れて幾分か心が軽くなっていた。

「……父様。私は今度こそ、王位継承権を放棄致します」

「!!」

「リカルドこそが、この国の次期国王として相応しい。……これは、この国の王子二名が認めた揺るぎない事実にございます」

「オルディオ……それに、エドモンドが……」

父から見たエドモンドがどう映っているのか、正直俺にはわからない。

ただ、この一件で少しでも良い方向に変わってくれれば嬉しいものだと、無意識に感じるのだった。