軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

323.もう一人の兄として(リカルド視点)

第一印象は、凄く無愛想な年下の少年。

「初めまして、フェルクス大公子様」

「初めまして、オルディオ殿下」

しかし、礼儀作法をきちんと身に付けており、相手の立場を重んじた態度で接してくれる非常に聡明な子どもだった。

「フェルクス大公子ーー」

「リカルドでいいですよ。殿下は我が国の王子ですから」

「……血縁の話なら、貴方と立場がそう変わらないと思うのだが」

「!」

僕は同じ話をエドモンドにしたことがある。

その時エドモンドは、言葉通りに受け取った後にどこか嬉しそうに私達の間に明確に差をつけるように呼び捨てを始めたのだった。

しかし、オルディオは違った。

この子は、自分の立場はもちろん僕を立場を理解した上で尊重する姿勢まで見せたのだ。

無愛想に見えるのも表面しか知らないからで、蓋を開けてみれば優しさと聡明さが輝く人間だった。

だからこそ不思議だった。

(エドモンドより、余程国王としての才能がある。……どうして王位継承権を放棄したんだ?)

出会った頃には、既にオルディオは継承権を放棄した後だった。

もったいないと感じる中、本人は騎士を目指すことに不満を感じていないように見えた。接していく内に、彼が兄を思って王位継承権を放棄した話を聞いたが、真偽はわからなかった。

話が本当なら、継承権第二位である僕のことが本当は嫌っている気がしたから。

ただ、仲が深まった頃、一度だけ尋ねてみたことがある。

「……オルディオはどうして騎士になりたいんだ?」

そこには多くの意味を込めていたが、ただ純粋に気になったので尋ねてみたのだ。

「……誇れる自分になりたいので」

「それはーー」

国王では駄目なのか。

思わず口からそうこぼれる所だった。

その先の言葉を察したオルディオは、どこか寂しそうな顔で微笑んだ。

「リカルド。俺は良い国になってくれればそれでいいんだ」

「……」

「俺は騎士として国を守る。……それしか方法がないから」

「オルディオ……」

(……そうか。やはり君は聡明だよ)

オルディオは自身の事情に明言はしなかった。それでも含まれた答えには、十分彼の思いが詰まっていたのだ。

「……お互いに精進しよう。応援しているよ、リカルド」

「……ありがとう。オルディオも」

第二王子として抱え込んだ事情を推察させてくれる程度には、オルディオの言葉には十分な意味があった。

抱え込んでもなお、オルディオの揺るぎない意思はただ一つ。

自分は王位を目指すことはない、ということだった。

驚くほどに真面目な話は後に先にもこの一度だけ。そしてオルディオの想いを受け取った後に、僕は王位を目指すことを決意した。

(……エドモンドでは良い国にならない)

その一つの懸念が消えれば、僕はいつでも継承権を放棄するつもりだった。リリーにもそれは最初の約束で伝えていたから。

しかし不幸なことに、エドモンドが良い方向に変化することは一度もなかったのだ。自分が継承権を放棄することはできなくなった。

そして、答えを聞いたあの日からは、騎士としての肩書きを大切にした為にオルディオから接触を避けるようになっていった。

社交界にも顔を出さなくなったオルディオだが、会う機会が完全に消えたわけではない。少ない年でも数回は会って、世間話をすることはあったのだ。

ただ、確実にオルディオは騎士として成長していった。まるで王子という肩書きを消すかのように。

そして一年前の建国祭での会話を最後に、気が付けばオルディオはトランの地へ騎士として向かったのだった。

(……良い国になればそれでいい)

そうオルディオが言ってくれたからこそ、僕はエドモンドを容赦なく引きずり落とすことにした。国王にしてはいけない人材から、継承権を取り上げたのだ。

陛下に次期国王として指名された以上、より精進しなければ。

この一つの意思で、よりよい国作りのために奔走していた。だからこそ、オルディオが継承権を主張し始めたと聞いた時は動揺したのだ。

ただ、背後にシグノアス公爵が出てきたことで、“オルディオ殿下による主張”という話は信用ならないものだと思い始めた。

そして今日、本人から本当に揺るぎない話を聞けて心底安心したのだ。

その聡明さと優秀さ、そして何よりも芯の強い部分は変わることはなかったのだと。

同時に、守るべきものを見つけたオルディオに不思議と兄としての喜びが浮かんでしまったのだ。

(オルディオは……僕にとっても弟なんだ)

何よりも、無事でいてくれたことが、安堵の理由だったと思う。

「これでも心配していたんだ。……騎士だからといって、無茶をするんじゃないかと思って」

「リカルド…………いや。無茶をするつもりだったんだ。けれど、リーンベルク大公殿下とレティシア嬢達に助けていただいた」

その事実を受けて、僕は二人に改めてお礼を伝えた。

「オルディオの親族として……もう一人の兄として、感謝を伝えさせてください」

そう言えば、オルディオは目を見開いて驚くのだった。